GLP-1受容体作動薬のバイエッタ皮下注が販売中止となるようです。
バイエッタ皮下注5μgペン300・10μgペン300 販売中止のお知らせ(アストラゼネカ)
https://www2.astrazeneca.co.jp/revise/revdisp.asp?revision_no=364
販売中止時期は2024年9月ごろです。
経過措置期間満了は2025年3月末を予定しています。
販売中止理由は諸般の事情とされています。
バイエッタ皮下注は化学合成(ペプチド固相合成法)により製造され、GLP-1受容体作動薬に分類される2型糖尿病治療薬です。その有効成分であるエキセナチドの起源がトカゲの一種であるHeloderma suspectumの唾液という、驚くべき医薬品です。この薬は、39個のアミノ酸から構成されるペプチドExendin-4と同じアミノ酸配列を有し、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の主成分であるGLP-1(7-36)amideの対応部分のアミノ酸配列において53%の相同性を示します。
エキセナチドは、膵β細胞からのグルコース依存性のインスリン分泌促進作用、高血糖時における過度のグルカゴン分泌抑制作用、胃内容物排出遅延作用など、多様な作用機序により2型糖尿病患者の血糖コントロールを改善します。
バイエッタ皮下注は固定用量を投与するため、細かな用量調節が不要であるという簡便性も有する薬剤です。
エキセナチドはイーライリリー社及びアミリン社が2002年に共同開発を開始し、2005年4月に米国で世界初の承認を受けました。その後、2006年11月にはEUでも承認され、2020年3月には、世界約60の国と地域で承認されていました。
日本では、スルホニルウレア剤を含む経口血糖降下薬による血糖コントロールが不十分であった日本人2型糖尿病患者を対象とした国内臨床試験において、エキセナチドの有効性及び安全性が確認され、2010年10月に2型糖尿病の効能又は効果でバイエッタ皮下注が製造販売承認を取得しました。
2012年10月、イーライリリー社からアストラゼネカ社が製造販売承認を承継し、アストラゼネカ社が販売を行うこととなりました。
2024年9月に諸般の事情で販売中止となりました。
バイエッタ皮下注の代替品
GLP-1受容体作動薬の心血管イベント抑制効果については、大規模臨床研究の結果でプラセボと比較して有意な抑制が認められています。
また、
cardiovascular outcome trials:CVOTのメタ解析では、心血管疾患の既往歴の有無によらずに効果が示されています。現在使用されている製剤のうち、心血管イベントを有意に抑制するエビデンスがあるのは、週1回製剤のデュラグルチドとセマグルチドです。
バイエッタは1日2回投与のデイリー製剤です。
1日1回製剤リラグルチド(ビクトーザ)はLEADER試験で、標準治療への上乗せ効果をプラセボ群と比較して初めて優位性を示しましたが、日本では保険適用外となる1日1.8mg(日本では1日0.9mgまでしか使用できません)での試験結果なため、日本の処方量で同等の効果が得られるかは不明です。
バイエッタと同じく販売中止となる1日1回製剤リキシセナチド(リキスミア)の心血管イベント抑制に関してはELIXA試験で標準治療への上乗せ効果をプラセボ群と比較して非劣性を示したものの、優位性は認められませんでした。
1日1回製剤で心血管イベント抑制エビデンスがあるものは注射製剤はありませんが、経口セマグルチド(リベルサス)が候補となります。