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2024年6月19日水曜日

ビソルボン 吸入液・注 販売中止と代替品



 ビソルボン吸入液 0.2%とビソルボン注4mgが販売中止となるようです。
https://www.e-mr.sanofi.co.jp/dam/jcr:3dcedb88-adb2-45a2-82d8-0c23f28d4bf7/bisolvon.pdf(サノフィ 2024年6月)

経過措置満了時期は2025年3月末まで〈予定〉です。

販売中止理由は原薬の調達が困難になったためです。



ビソルボンの成分はブロムヘキシンは、ドイツベーリンガーインゲルハイムファルマ KG によりインドの生薬Adhatoda vasica の有効成分を基礎として開発された気道粘液溶解剤です。
気道分泌増大作用をもち、また喀痰の粘度に大きく関与する酸性糖蛋白を溶解・低分子化することによって気道粘液溶解作用をあらわします。

ビソルボン注射液は1976年に発売されました。
その後、経口剤・注射剤に加えて吸入剤に対する要望も高まり1991年ビソルボン吸入液が発売されました。

『ビソルボン』の名前の由来は Bi+Solvon の合成語です。二つの作用により気道粘液溶解作用をあらわすことを意味しています。Bi はビソルボンが主に漿液性分泌増大作用及び酸性糖蛋白を溶解・低分子化するという二つの作用を有することを意味し、また Solvon は Solvieren (溶解する) というドイツ語に由来しています。

ビソルボン注4mgの代替品


気道粘液溶解剤の注射剤はブロムヘキシンの他にはありません。
ビソルボン注には後発品があります。
・ブロムヘキシン塩酸塩注射液 4mg「タイヨー」(武田テバファーマ株式会社)

ビソルボン吸入液の代替品


気道粘液溶解剤の吸入液剤にはブロムヘキシンの他にアセチルシステイン(ムコフィリン吸入液20%)があります。
ビソルボン吸入液には後発品があります。



2024年6月13日木曜日

バイエッタ皮下注 販売中止と代替品



GLP-1受容体作動薬のバイエッタ皮下注が販売中止となるようです。
バイエッタ皮下注5μgペン300・10μgペン300 販売中止のお知らせ(アストラゼネカ)
https://www2.astrazeneca.co.jp/revise/revdisp.asp?revision_no=364

販売中止時期は2024年9月ごろです。
経過措置期間満了は2025年3月末を予定しています。

販売中止理由は諸般の事情とされています。

バイエッタ皮下注は化学合成(ペプチド固相合成法)により製造され、GLP-1受容体作動薬に分類される2型糖尿病治療薬です。その有効成分であるエキセナチドの起源がトカゲの一種であるHeloderma suspectumの唾液という、驚くべき医薬品です。この薬は、39個のアミノ酸から構成されるペプチドExendin-4と同じアミノ酸配列を有し、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の主成分であるGLP-1(7-36)amideの対応部分のアミノ酸配列において53%の相同性を示します。
エキセナチドは、膵β細胞からのグルコース依存性のインスリン分泌促進作用、高血糖時における過度のグルカゴン分泌抑制作用、胃内容物排出遅延作用など、多様な作用機序により2型糖尿病患者の血糖コントロールを改善します。
バイエッタ皮下注は固定用量を投与するため、細かな用量調節が不要であるという簡便性も有する薬剤です。

エキセナチドはイーライリリー社及びアミリン社が2002年に共同開発を開始し、2005年4月に米国で世界初の承認を受けました。その後、2006年11月にはEUでも承認され、2020年3月には、世界約60の国と地域で承認されていました。

日本では、スルホニルウレア剤を含む経口血糖降下薬による血糖コントロールが不十分であった日本人2型糖尿病患者を対象とした国内臨床試験において、エキセナチドの有効性及び安全性が確認され、2010年10月に2型糖尿病の効能又は効果でバイエッタ皮下注が製造販売承認を取得しました。

2012年10月、イーライリリー社からアストラゼネカ社が製造販売承認を承継し、アストラゼネカ社が販売を行うこととなりました。
2024年9月に諸般の事情で販売中止となりました。

バイエッタ皮下注の代替品

GLP-1受容体作動薬の心血管イベント抑制効果については、大規模臨床研究の結果でプラセボと比較して有意な抑制が認められています。
また、cardiovascular outcome trials:CVOTのメタ解析では、心血管疾患の既往歴の有無によらずに効果が示されています。現在使用されている製剤のうち、心血管イベントを有意に抑制するエビデンスがあるのは、週1回製剤のデュラグルチドとセマグルチドです。

バイエッタは1日2回投与のデイリー製剤です。

1日1回製剤リラグルチド(ビクトーザ)はLEADER試験で、標準治療への上乗せ効果をプラセボ群と比較して初めて優位性を示しましたが、日本では保険適用外となる1日1.8mg(日本では1日0.9mgまでしか使用できません)での試験結果なため、日本の処方量で同等の効果が得られるかは不明です。
バイエッタと同じく販売中止となる1日1回製剤リキシセナチド(リキスミア)の心血管イベント抑制に関してはELIXA試験で標準治療への上乗せ効果をプラセボ群と比較して非劣性を示したものの、優位性は認められませんでした。

1日1回製剤で心血管イベント抑制エビデンスがあるものは注射製剤はありませんが、経口セマグルチド(リベルサス)が候補となります。


2024年6月12日水曜日

パキシル錠 販売中止と代替品



 パキシル錠が販売中止となるようです。

「パキシル錠 5mg・10mg・20mg」 販売中止のご案内(2024.06 GSK)
https://gskpro.com/content/dam/global/hcpportal/ja_JP/documents/news/PM-JP-PRX-LTR-240001.pdf

2024年12月販売中止。
経過措置期間は2025年3月までを予定しています。

中止理由は諸般の事情です。

パキシルの有効成分であるパロキセチンは、1975年にデンマークのFerrosan社で合成されました。
Ferrosan社はFemoxetineも開発しており、パロキセチンは持続性はあるもののFemoxetineには及ばないと考え、1980年にイギリスのスミスクライン ビーチャム社(現:グラクソ・スミスクライン社)に売却されました。
1970年代という早い段階で合成されていましたが、ビーチャム社もパロキセチンは安全性は高いが効果では三環系に劣ると考えており開発に力はいれられていませんでした。
合成はパロキセチンより後ですが、いち早く市場に登場したフルボキサミンがアメリカで評判が高まると、ビーチャム社も本気でうつ病の治療薬として開発に取り組み、1990 年に抗うつ薬として初めてイギリスで承認された後、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害等の治療薬として各国で承認を取得しました。
日本では2000年9月にうつ病・うつ状態のみならず、パニック障害の適応を取得しています。

パキシルといえば、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor:SSRI)の代名詞と言っても過言ではありませんが、この「SSRI」という名を最初に使ってプロモーションをしたのはパキシルです。
市場進出に後塵を拝していいたパキシルですがこの「SSRI」という響きの新鮮さや、選択性という余計な受容体に作用しないシンプルな作用、これまでも三環系とは一線を画すものという宣伝文句に医者を乗せることに成功し抗うつ薬の一時代を築くことになります。

パキシル発売後6年間、ジェイゾロフトの登場まで日本に新規の抗うつ薬は登場せず、日本の抗うつ薬市場の1/4を占める規模にまで成長しました。

パキシルの抗うつ効果はフルボキサミンと比較すると初期からはっきり現れます。
これはパキシルのセロトニントランスポーターへの親和性の高さによるものです。
また、パキシルはそれ自身が代謝酵素を阻害し分解されにくい状態を作り投与量以上の働きをします。
さらに、パキシルはアドレナリン受容体やセロトニン受容体には結合しないため三環系抗うつ薬のような心毒性がありません。
三環系の過量服用は致命的ですが、パキシルなら過量に服用されても致命的な状態にはなりません。
わかりやすさと、効きを患者が実感しやすい点や長期投与しやすさが精神科のみならず、知識のない内科などでもウケて爆発的に売上を伸ばすことになります。

しかし、しかしこれだけ売れると影の部分が目立つわけでして、特に服用をやめたときの離脱症状の激しさは他のSSRIの比ではないと言われています。
パキシルは半減期が他のSSRIと比べると短く更に、自身が代謝酵素を阻害するので服用をやめると血中濃度は一気に下がります。
これによりシナプス間隙のセロトニンが急激に減少しセロトニン系の副作用である頭痛、めまい、倦怠感、知覚異常を引き起こします。
金属音のような「シャンシャン」という耳鳴りと、電気が流れたような「ビリビリ」というしびれる感じ、いわゆる「シャンビリ感」です。

シャンビリ感は急な断薬が原因と考えられています。
投与量を微調整するためにも低用量の規格が求められていました。
そして2010年9月に5mg錠が発売されました。5mg錠は日本でしか発売されていない規格で、それだけよく売れて、それなりに影響を与えた薬なのだと実感させられます。

そんなパキシルですが、2025年には処方されることはなくなります。一時代を築いた薬がなくなるのは寂しいものです。


パキシル錠の代替品

パキシル、パロキセチンには後発品が存在します。
後発品が代替品の候補になります。

また、パロキセチン錠の徐放製剤、パロキセチンCR錠も存在しています。
ただし、パロキセチンCR錠は適応が「うつ病・うつ状態」しかなく、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害、外傷後ストレス障害へは使用できない点に注意が必要です。