ガドリニウム造影剤
ガドリニウム造影剤は、MRI検査の際に使用される医薬品で、画像にコントラストをつけるために使用されます。
ガドリニウムは重金属であり、体内に蓄積すると毒性を示す可能性があります。
しかし、ガドリニウム造影剤はガドリニウムをキレート化することで毒性を著しく低減し、速やかに腎臓から排泄されるように工夫されています。
ガドリニウム造影剤の種類
ガドリニウム造影剤には主に線状型と環状型の2つの種類があります。
以下に、それぞれの特徴と具体的な製品名を示します。
線状型
- オムニスキャン静注(ガドジアミド水和物)【販売中止】
- マグネビスト静注(ガドペンテト酸メグルミン)【販売中止】
- EOB・プリモビスト注(ガドキセト酸ナトリウム):肝造影専用
環状型
- プロハンス静注(ガドテリドール)
- マグネスコープ静注(ガドテル酸メグルミン)
- ガドビスト静注(ガドブトロール)
ガドリニウム造影剤の使用上の注意
ガドリニウム造影剤は、腎障害の有無にかかわらず、診断のために不可欠と考えられる場合にのみ使用されるべきであり、投与にあたっては各々の医薬品添付文章に則り、用法、用量を厳守すること。また、CT や血管造影などのX線検査のための造影剤として、ガドリニウム造影剤を使用してはならないとされています。
腎機能が低下している患者では、MRI 検査に用いられるガドリニウム造影剤の投与数日から数か月後、時に数年後に、皮膚の腫脹や硬化、疼痛などにて発症する疾患である腎性全身性線維症(Nephrogenic Systemic Fibrosis;NSF)のリスクが高まるためガドリニウム造影剤の使用前には、緊急検査などでやむを得ない場合を除き、腎機能(推算糸球体濾過量: eGFR)を評価します。
可能な限りガドリニウム造影剤の投与を避け、他の検査法で代替することが望ましい病態として「長期透析が行われている終末期腎障害」「非透析例で eGFR が 30ml/min/1.73m2未満の慢性腎不全」「急性腎不全」があります。
他の検査法で代替困難な場合は、NSF のリスクを考慮し、ガドリニウム造影剤の適正使用量を守る、繰り返し使用する必要がある場合は可能な限り間隔を空ける(海外のガイドラインでは 7 日以上の間隔を空けることを推奨)など、十分に注意して投与します。
重篤な腎障害には禁忌とされていたガドジアミドとガドペンテト酸は販売中止となっており、2024年時点で重篤な腎障害に禁忌となっているガドリニウム造影剤はありません。
障害患者におけるガドリニウム造影剤使用に関するガイドライン(第 3 版: 2024 年 5 月 20 日改訂)
透析患者にはどうする?
造影 MRI よりも造影 CT を選択するeGFR が30ml/min/1.73m2未満の患者にはどうする?
ガドテリドール、ガドテル酸、ガドブトロールの使用を考慮します。ACR Committee on Drugs and Contrast Media. ACR Manual on Contrast Media ver. 2023.