2024年5月14日火曜日

ジェムザール 販売中止と代替品

ジェムザールが販売中止となるようです。
ジェムザール(日本イーライリリー) ※2024年5月時点案内なし
https://medical.lilly.com/jp/gemzar

販売中止時期:2025年4月(予定)

経過措置期間:未定

販売中止の理由は、ジェムザールが後発医薬品への置き換えが進んでいる⾧期収載品(G1品目)に該当となったため、G1品目の市場撤退スキームにしたがった供給終了が当局に認められたことによります。

★G1品目の市場撤退スキームとは★
このスキームは、後発品への置き換え率が80%以上に達している長期品(G1品目)の薬価を段階的に引き下げることを主眼としています。具体的には、6年間をかけて後発品と同水準の価格まで引き下げられる計画です。さらに、企業側が市場からの撤退を希望する場合、後発品企業が増産対応を行うことなどが条件として提示されます。
この制度の導入により、後発品の普及が促進され、市場からの健全な競争が生まれると期待されています。同時に、先発医薬品メーカーには新たな投資や研究開発への動機付けが生まれることが期待されます

ジェムザール注射用200mg及び1gは、ゲムシタビン塩酸塩を含有する注射用製剤です。
ゲムシタビン塩酸塩は1983年に米国のイーライリリー社によって合成されたデオキシシチジンの糖鎖の2'位の水素をフッ素に置換したヌクレオシド誘導体です。
この化合物は抗悪性腫瘍剤のスクリーニングにおいて優れた抗悪性腫瘍作用を示し、強力で特異性の高い代謝拮抗作用を有することが判明しました。
前臨床試験の結果、ジェムザールは抗悪性腫瘍剤としての有効性が期待され、動物実験においても安全性が確認されたため、1987年に米国および欧州各国で臨床試験が開始されました。
日本では、海外での非臨床試験および臨床試験の成績に基づき、1989年より臨床試験が開始され、非小細胞肺癌に対する臨床効果が確認されたことから、1999年3月に承認されました。
また、膵癌に対する臨床効果の評価を行うため、海外では症状緩和効果を主要評価項目とし、生存率などを副次的評価項目とした試験が実施され、ジェムザールの有用性が確認されました。
日本でも、1996年に希少疾病用医薬品に指定され、1998年から国内第Ⅰ相試験が実施され、膵癌の治療薬として承認されました。
胆道癌に対しても、2001年から国内で第Ⅱ相試験が実施され、ジェムザール単独投与による臨床効果が確認され、2006年6月に承認されました。
尿路上皮癌に関しては、海外での比較第Ⅲ相試験が実施され、臨床的な有用性が確認されました。
日本でも、ジェムザール単独投与の第Ⅱ相試験を実施し、有効性及び安全性が確認され、2008年11月に承認されました。
手術不能又は再発乳癌に関しては、海外での第Ⅲ相試験により、ジェムザールとパクリタキセルの併用療法の有効性及び安全性が確認されました。日本でも、ジェムザール単独投与及びジェムザールとパクリタキセルの併用療法の第Ⅱ相試験を実施し、2010年2月に承認されました。
その後、がん化学療法後の増悪した卵巣癌や再発又は難治性の悪性リンパ腫に対する適応追加や、非小細胞肺癌に対するジェムザールとシスプラチンの併用投与における用法及び用量の追加も行われ、それぞれ2011年2月、2013年2月、2019年6月に承認されました。
そして、2025年にジェムザールの販売中止が予定されています。

ジェムザールの代替品

ジェムザールの後発品は3社が販売しています(2024年5月時点)、このうちゲムシタビン点滴静注用「SUN」(サンファーマ)は販売中止に伴う経過措置期間中です。
残りはゲムシタビン点滴静注用「ヤクルト」(高田製薬)とゲムシタビン点滴静注液「NK」(日本化薬)。このうち高田製薬が増産対応を引き受けるそうです。
そのため、ジェムザールから切り替える場合、安定供給の面を鑑みると、ゲムシタビン点滴静注用「ヤクルト」が候補となります。
【代替製品】
製造販売元/高田製薬株式会社
  • ゲムシタビン点滴静注用200mg「ヤクルト」
  • ゲムシタビン点滴静注用1g「ヤクルト」