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2024年5月23日木曜日

ガドリニウム造影剤にはどんなものがあるか



ガドリニウム造影剤

ガドリニウム造影剤は、MRI検査の際に使用される医薬品で、画像にコントラストをつけるために使用されます。
ガドリニウムは重金属であり、体内に蓄積すると毒性を示す可能性があります。
しかし、ガドリニウム造影剤はガドリニウムをキレート化することで毒性を著しく低減し、速やかに腎臓から排泄されるように工夫されています。


ガドリニウム造影剤の種類

ガドリニウム造影剤には主に線状型と環状型の2つの種類があります。
以下に、それぞれの特徴と具体的な製品名を示します。


線状型

- オムニスキャン静注(ガドジアミド水和物)【販売中止】

- マグネビスト静注(ガドペンテト酸メグルミン)【販売中止】

- EOB・プリモビスト注(ガドキセト酸ナトリウム):肝造影専用


環状型

- プロハンス静注(ガドテリドール)

- マグネスコープ静注(ガドテル酸メグルミン)

- ガドビスト静注(ガドブトロール)


ガドリニウム造影剤の使用上の注意

ガドリニウム造影剤は、腎障害の有無にかかわらず、診断のために不可欠と考えられる場合にのみ使用されるべきであり、投与にあたっては各々の医薬品添付文章に則り、用法、用量を厳守すること。また、CT や血管造影などのX線検査のための造影剤として、ガドリニウム造影剤を使用してはならないとされています。

腎機能が低下している患者では、MRI 検査に用いられるガドリニウム造影剤の投与数日から数か月後、時に数年後に、皮膚の腫脹や硬化、疼痛などにて発症する疾患である腎性全身性線維症(Nephrogenic Systemic Fibrosis;NSF)のリスクが高まるためガドリニウム造影剤の使用前には、緊急検査などでやむを得ない場合を除き、腎機能(推算糸球体濾過量: eGFR)を評価します。

可能な限りガドリニウム造影剤の投与を避け、他の検査法で代替することが望ましい病態として「長期透析が行われている終末期腎障害」「非透析例で eGFR が 30ml/min/1.73m2未満の慢性腎不全」「急性腎不全」があります。

他の検査法で代替困難な場合は、NSF のリスクを考慮し、ガドリニウム造影剤の適正使用量を守る、繰り返し使用する必要がある場合は可能な限り間隔を空ける(海外のガイドラインでは 7 日以上の間隔を空けることを推奨)など、十分に注意して投与します。

重篤な腎障害には禁忌とされていたガドジアミドとガドペンテト酸は販売中止となっており、2024年時点で重篤な腎障害に禁忌となっているガドリニウム造影剤はありません。

障害患者におけるガドリニウム造影剤使用に関するガイドライン(第 3 版: 2024 年 5 月 20 日改訂) 

透析患者にはどうする?

造影 MRI よりも造影 CT を選択する

eGFR が30ml/min/1.73m2未満の患者にはどうする?

ガドテリドール、ガドテル酸、ガドブトロールの使用を考慮します。

 ACR Committee on Drugs and Contrast Media. ACR Manual on Contrast Media ver. 2023.



参考:造影剤 製剤別適応一覧表(日本医学放射線学会)


2024年5月16日木曜日

レボトミン筋注/ヒルナミン筋注 販売中止と代替品



長年にわたり抗精神病薬として使用されてきたヒルナミン筋注(レボメプロマジン)とレボトミン筋注(レボメプロマジン)が販売中止となります。

ヒルナミン筋注販売中止のお知らせ

レボトミン筋注販売中止のお知らせ

経過措置期間は2025年3月31日までです。

販売中止の理由は諸般の事情です。

クロルプロマジンが 1953 年以来精神神経用薬として臨床に用いられるようになってから、フェノチアジンの構造変換の研究が進められました。レボメプロマジンは、1957 年ローヌ・プーラン社(現:サノフィ・アベンティス社)の Courvoisierらによって開発されました。日本では1958 年に製造が許可され、ヒルナミン筋注は1960年に、レボトミン筋注は1963年に製造販売承認を得て販売が開始されました。


レボトミン筋注/ヒルナミン筋注の代替品

コントミン筋注(クロルプロマジン)
ヒルナミンとレボトミンはフェノチアジン系の精神神経安定剤で、統合失調症、躁病、うつ病における不安・緊張に用いられています。同効薬のコントミン筋注(クロルプロマジン)が代替となります。

セレネース(ハロペリドール)
サイレース(フルニトラゼパム)
筋注であるレボトミン、ヒルナミンはせん妄にも用いられています。
せん妄に使用する注射の代替案としてはセレネース(ハロペリドール)があります。

しかし、レボトミン、ヒルナミンはセレネースで効果不十分な場合に使われることが多いのでその場合はサイレースやミダゾラムが候補となります。ただし、ベンゾジアゼピン系薬剤は基本的にはせん妄の悪化につながることを意識したうえで使用することになります。また、呼吸抑制にも注意が必要なので、投与前にアンビューバックやフルマゼニル注の準備をしておきましょう。


2024年5月14日火曜日

ジェムザール 販売中止と代替品



ジェムザールが販売中止となるようです。
ジェムザール(日本イーライリリー) ※2024年5月時点案内なし
https://medical.lilly.com/jp/gemzar

販売中止時期:2025年4月(予定)

経過措置期間:未定

販売中止の理由は、ジェムザールが後発医薬品への置き換えが進んでいる⾧期収載品(G1品目)に該当となったため、G1品目の市場撤退スキームにしたがった供給終了が当局に認められたことによります。

★G1品目の市場撤退スキームとは★
このスキームは、後発品への置き換え率が80%以上に達している長期品(G1品目)の薬価を段階的に引き下げることを主眼としています。具体的には、6年間をかけて後発品と同水準の価格まで引き下げられる計画です。さらに、企業側が市場からの撤退を希望する場合、後発品企業が増産対応を行うことなどが条件として提示されます。
この制度の導入により、後発品の普及が促進され、市場からの健全な競争が生まれると期待されています。同時に、先発医薬品メーカーには新たな投資や研究開発への動機付けが生まれることが期待されます

ジェムザール注射用200mg及び1gは、ゲムシタビン塩酸塩を含有する注射用製剤です。
ゲムシタビン塩酸塩は1983年に米国のイーライリリー社によって合成されたデオキシシチジンの糖鎖の2'位の水素をフッ素に置換したヌクレオシド誘導体です。
この化合物は抗悪性腫瘍剤のスクリーニングにおいて優れた抗悪性腫瘍作用を示し、強力で特異性の高い代謝拮抗作用を有することが判明しました。
前臨床試験の結果、ジェムザールは抗悪性腫瘍剤としての有効性が期待され、動物実験においても安全性が確認されたため、1987年に米国および欧州各国で臨床試験が開始されました。
日本では、海外での非臨床試験および臨床試験の成績に基づき、1989年より臨床試験が開始され、非小細胞肺癌に対する臨床効果が確認されたことから、1999年3月に承認されました。
また、膵癌に対する臨床効果の評価を行うため、海外では症状緩和効果を主要評価項目とし、生存率などを副次的評価項目とした試験が実施され、ジェムザールの有用性が確認されました。
日本でも、1996年に希少疾病用医薬品に指定され、1998年から国内第Ⅰ相試験が実施され、膵癌の治療薬として承認されました。
胆道癌に対しても、2001年から国内で第Ⅱ相試験が実施され、ジェムザール単独投与による臨床効果が確認され、2006年6月に承認されました。
尿路上皮癌に関しては、海外での比較第Ⅲ相試験が実施され、臨床的な有用性が確認されました。
日本でも、ジェムザール単独投与の第Ⅱ相試験を実施し、有効性及び安全性が確認され、2008年11月に承認されました。
手術不能又は再発乳癌に関しては、海外での第Ⅲ相試験により、ジェムザールとパクリタキセルの併用療法の有効性及び安全性が確認されました。日本でも、ジェムザール単独投与及びジェムザールとパクリタキセルの併用療法の第Ⅱ相試験を実施し、2010年2月に承認されました。
その後、がん化学療法後の増悪した卵巣癌や再発又は難治性の悪性リンパ腫に対する適応追加や、非小細胞肺癌に対するジェムザールとシスプラチンの併用投与における用法及び用量の追加も行われ、それぞれ2011年2月、2013年2月、2019年6月に承認されました。
そして、2025年にジェムザールの販売中止が予定されています。

ジェムザールの代替品

ジェムザールの後発品は3社が販売しています(2024年5月時点)、このうちゲムシタビン点滴静注用「SUN」(サンファーマ)は販売中止に伴う経過措置期間中です。
残りはゲムシタビン点滴静注用「ヤクルト」(高田製薬)とゲムシタビン点滴静注液「NK」(日本化薬)。このうち高田製薬が増産対応を引き受けるそうです。
そのため、ジェムザールから切り替える場合、安定供給の面を鑑みると、ゲムシタビン点滴静注用「ヤクルト」が候補となります。
【代替製品】
製造販売元/高田製薬株式会社
  • ゲムシタビン点滴静注用200mg「ヤクルト」
  • ゲムシタビン点滴静注用1g「ヤクルト」

2024年5月11日土曜日

シュアポスト 販売中止と代替品



シュアポストが販売中止となるようです。
シュアポスト錠0.25mg/錠0.5mg 販売中止予定のご案内(住友ファーマ)
https://sumitomo-pharma.jp/product/surepost/notification_list/surepost_tyushi_20240510.html

販売中止の理由は「諸般の事情」です。
導入元のノボノルディスクファーマが世界的に製造中止するためのようです。

経過措置期間は未定です。


シュアポストはレパグリニリドを成分とする、速効型インスリン分泌促進剤(グリニド系)です。1985年にドイツのKarl Thomae GmbH社によって発見されました。その後、海外ではノボノルディスク社による臨床試験が行われ、1997年には米国、1998年には欧州で、食事療法と運動療法だけでは十分な血糖コントロールができない2型糖尿病の適応として承認され、Prandin®の名前で販売されました。
国内では、ノボノルディスクファーマ社が開発を開始し、その後、大日本住友製薬(現:住友ファーマ)でも臨床試験が行われました。食事療法と運動療法だけでは血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者を対象にした臨床試験に加えて、食事療法と運動療法に加えてα-グルコシダーゼ阻害剤を併用しても血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者を対象にした試験も実施されました。その結果、2型糖尿病患者の食後血糖経過の改善とHbA1cの改善作用が確認され、2011年1月に「シュアポスト錠0.25mg」と「シュアポスト錠0.5mg」が承認されました。
さらに、食事療法と運動療法に加えてメトホルミンまたはピオグリタゾンを併用しても血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者を対象にした臨床試験も実施され、2013年2月にはビグアナイド系薬剤とチアゾリジン系薬剤との併用効果が認められました。
さらに、平成22年7月9日に発行された「経口血糖降下薬の臨床評価方法に関するガイドライン」に基づき、DPP-4阻害剤併用長期投与試験が実施され、DPP-4阻害剤併用療法における長期投与時の有効性と安全性が確認され、2014年11月には「2型糖尿病」の効能を取得しました。
2024年5月に日本国内の販売中止が発表されています。

シュアポストの代替品

シュアポスト(レパグリニリド)は膵臓のΒ細胞上のカリウムチャネルを閉じることでインスリンの分泌を増加させ、食前・食後血糖値を硬化させます。レパグリニドの半減期は、1時間未満であり、1日3回食前に内服します。レパグリニドの作用機序はSU薬と同じくインスリン分泌を抑えるものですがその効果時間が短いために、食後血糖の上昇抑制を目的として使用されます。レパグリニドは速効型インスリン分泌促進剤とよばれます。レパグリニド投与によりHbA1c 値が約1%低下します。レパグリニドはインスリン分泌のが残存する2型糖尿病患者で、零血糖発作に対し対処可能な非肥満患者を対象として使用されています。

速効型インスリン分泌促進剤にはシュアポスト(レパグリニリド)のほかに、ナテグリニド、ミチグリニドがあります。
代替品にはナテグリニド、ミチグリニドが候補となります。
切り替える際、ナテグリニドは「透析を必要とするような重篤な腎機能障害のある患者」には禁忌となっているので注意が必要です。