デトルシトールカプセルが販売中止となるようです。
2024年4月19日販売中止のご案内_デトルシトールカプセル
販売中止理由は「使用している添加物原料の変更に伴い、本邦のガイドラインの規格要件を満たすことが困難になった為」です。
経過措置期間満了は 2025年3月末の予定です。
デトルシトール(トルテロジン酒石酸塩)は、日本で初めて「過活動膀胱」としての効能・効果が認められた抗コリン薬です。
過活動膀胱治療薬としてファイザー社によって開発されました。
この薬は、膀胱のムスカリン受容体に対する高い選択性を持つ受容体拮抗薬です。
デトルシトールは、徐放性製剤(カプセル剤)として提供され、過活動膀胱の症状である尿意切迫感、頻尿、および切迫性尿失禁に対して、1日1回の投与で効果的な改善をもたらします。
海外では、徐放性製剤に加えて1日2回の非徐放性製剤(錠剤)もあり、両方の製剤が世界約80ヵ国で販売され、約1,000万人の患者に使用されていました。また、徐放性製剤は、米国やEU諸国など約40ヵ国で販売されていました。
日本では、徐放性製剤の開発が2000年に始まり、外国人および日本人・韓国人を対象とした臨床試験が行われました。これらの試験結果に基づき、2006年4月に日本で承認されました。約20年にわたり過活動膀胱に苦しむ患者の生活を改善するために重要な役割を果たしてきました。
トルテロジンの作用機序 |
デトルシトールカプセルの代替品
デトルシトール(トルテロジン酒石酸塩)の代替としてはトビエース(フェソテロジン)があげられます。トルテロジンと同様に、フェソテロジンも高い膀胱選択性を持ち、中枢神経への影響が少ない特徴を備えています。また、トルテロジンの活性代謝物である5-ヒドロキシメチルトルテロジンは、フェソテロジンの活性代謝物と同様であることもポイントです。
さらに、フェソテロジンも4mgと8mgの2つの製剤を有しており、用量を調節できる柔軟性という共通点もあります。過去の様々な試験において、フェソテロジンは過活動膀胱の各症状や生活の質に対する有効性と安全性が実証されています。特に、65歳以上の高齢者を対象としたプラセボ対照二重盲検比較試験でも、フェソテロジンの有用性が報告されています。
さらに、Fit fOR The Aged(FORTA)という高齢者向け薬物療法評価ツールによる評価では、フェソテロジンが下部尿路症状の治療薬として唯一、FORTA分類のClass B(高齢者における有効性は明らかだが安全性に懸念がある薬剤)に分類されています。
このように、フェソテロジンはトルテロジンの代替として、安全性と有効性が確認された過活動膀胱治療薬として考えられます。
抗コリン薬以外では、選択的β3アドレナリン受容体作動性過活動膀胱治療剤のベオーバ(日べグロン)も候補に挙げられます。
海外の第III相試験では、1,518例の過活動膀胱患者を対象に、ビベグロン75 mg、トルテロジン徐放剤(4 mg)、プラセボの3つのグループに無作為に割り付けられ、12週間投与されました。
主要評価項目の一つである排尿回数では、12週後にビベグロン群では平均で1.8回、プラセボ群では1.3回の減少が見られました。これに対し、トルテロジン徐放剤群では1.6回の減少でした。また、切迫性尿失禁回数も同様に、ビベグロン群で2.0回、プラセボ群で1.4回の減少が見られましたが、トルテロジン徐放剤群では1.8回の減少でした。
副次評価項目においても、ビベグロン群がトルテロジン徐放剤群を上回っており、尿意切迫感回数や排尿量、尿失禁が消失した割合などの面でも良好な結果が示されました。
また、有害事象による中止率も比較的低く、ビベグロン群が1.7%、プラセボ群が1.1%、トルテロジン徐放剤群が3.3%と報告されています。これにより、ビベグロン75 mgの有効性と安全性が十分に検証されています。なお、ベオーバの日本での承認用量は50 mgです
Staskin D, Frankel J, Varano S et al. International phase III, randomized, double-blind, placebo and active controlled study to evaluate the safety and efficacy of vibegron in patients with symptoms of overactive bladder: EMPOWUR. J Urol 2020; 204: 316 – 324(I)