ページ

2023年11月10日金曜日

乳糖水和物の形状と特徴 粉末と結晶のちがい



 散剤を調製するとき、1包あたりの量が少ない場合には、調剤しやすくするためや服用しやすくするために、それ自身薬理作用をもたない散剤(賦形剤)が加えられます。

調剤に使用される賦形剤は通常、乳糖(乳糖水和物)またはデンプン、あるいは乳糖とデンプンの混合物です。

乳糖は使用頻度の高い賦形剤です。

その性状は日本薬局方で「本品は白色の結晶、粉末又は造粒した粉末である。」と定められています。

散剤の形状には粉末、微細粒(VFG:Very Fine Granule)、細粒(FG:Fine Granule)、顆粒(G:Granule)、微結晶(EFC:Extra Fine Crystal)、結晶(CF:Crystal Form)など 粒子径の大きさ(粒度分布)が様々であるため散剤の粒度分布にできるだけ類似した乳糖を1種類または組み合わせて使用します。


乳糖水和物の粉末と結晶のちがい

乳糖では、粒子が粗いほど流動性をもたらし、粒子が細かくなると混和した主薬の分離防止効果をもたらします。
乳糖は各社、異なる形状のものを販売しています。「粉末」「末」「粒状」「結晶」「倍散用結晶」「細粒」様々あります。
大きな違いは、粒度分布です。粉末は小さい粒子が多く、粒状や結晶、細粒は大きい粒子が多くなります。
注意が必要なのは、「粉末」や「結晶」には明確な粒度分布の定義がありません。メーカーごとに「粉末」や「結晶」の粒度分布が異なります。

一般的な形状の特徴

  • 粉末
    ・・・ 飛び散りやすい。粒子が細かく取り扱いが少し大変(付着しやすい、ダマになる)。ロートエキス散のように飛散性と滑沢性のある散剤には適しています。
  • 結晶(大きめ)
    ・・・ 流動性が高い。器具などに付着しない、分包機の清掃用に適しています。
  • 結晶(小さめ)
    ・・・ 調剤しやすい。「結晶」と謳われている乳糖の殆どがコレ。
  • 倍散用結晶
    ・・・中心粒子径150~250μmと75μm以下のダブルピークの粒度分布をもっています。大小の粒子の両方の性質をもっているので、調剤の際に多くの主剤となじみやすく混ざりやすいです。

※日医工の乳糖水和物は2023年12月販売中止予定


2023年11月9日木曜日

タミフルドライシロップ3%が入手困難な場合の 脱力プセル対応について



タミフルドライシロップ3%が入手困難な場合

  • 5歳以上のインフルエンザ患者においては吸入できる吸入薬で対応します。
  • タミフルカプセル75を脱カプセルし、賦形剤を加えるなどの調剤上の工夫をおこなった上でタミフルドライシロップの用法用量したがって投与します。

タミフルカプセルを脱カプセルした場合、オセルタミビルはとても苦いので小さな子供に飲ませるには一工夫必要です。
乳糖や砂糖を加える、あるいはジュースにとかして飲ませるなどの説明を充分に保護者などにする必要があります。
ジュースなどへ用事懸濁させて飲ませることに関しては、オセルタミビルは、薬物の代謝酵素であるチトクロームP450(CYP)で代謝されず、またCYPの活性にも影響を与えないので可能です。
個人的には「おくすり飲めたね」のチョコレート味と混ぜるのが飲みやすかったです。

脱カプセル調整例

タミフルドライシロップ3%は1g中にオセルタミビルとして30mg含有する散剤です。

30mg/gの散剤10gを予製する場合(15kgの幼児[3~4歳]の5日分に相当)
タミフルカプセル75、4カプセルを脱カプセルします。
カプセル中身に全量が10gとなるよう乳糖で賦形します。
この散剤を1gづつ分包します。

インフルエンザ治療における用法用量
オセルタミビルとして以下の1回用量を1日2回、5日間、用時懸濁して経口投与する。
ただし、1回最高用量はオセルタミビルとして75mgとする。

幼小児の場合:2mg/kg
新生児、乳児の場合:3mg/kg



脱カプセルの保険算定について


2009年の新型インフルエンザ流行時にタミフルドライシロップが入手困難だったときには、厚生労働省がタミフルカプセルを脱カプセルしタミフルドライシロップの用法用量に従って投与した場合に限り薬剤料も算定可能という事務連絡を出していました。

また、タミフルカプセル75mgを脱カプセルし、賦形剤を加えて調剤した上で交付した場合、タミフルドライシロップ3%が入手困難な場合であれば、保険薬局は自家製剤加算を算定できるという事務連絡も出されていました。

2023年においてもインフルエンザが流行している状況下で、オセルタミビルリン酸塩の
ドライシロップ製剤の供給が限定されているため、やむを得ず脱カプセルを行い賦形剤を加えるなどの対応をした場合自家製剤加算を算定できる旨の疑義解釈が示されました。このような場合には、レセプトの摘要欄に「オセルタミビルリン酸塩ドライシロップ製剤の不足のため」等のやむを得ない事情を記載することが必要です。




・「疑義解釈資料の送付について(その 60)」厚生労働省保険局医療課事務連絡(2023年11月8日)
https://ajhc.or.jp/siryo/20231108-60.pdf

・「新型インフルエンザに関連する診療報酬の取扱いについて」厚生労働省保険局医療課 事務連絡(2009年5月26日)
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/hourei/2009/05/dl/info0527-01.pdf

・「新型インフルエンザに係るタミフル等に関するQ&Aについて」厚生労働省新型インフルエンザ対策推進本部(2009年11月6日)
https://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/hourei/2009/11/dl/info1106-02.pdf

・「限定出荷に関するご案内 タミフルドライシロップ3%」中外製薬(2023年11月8日)
https://chugai-pharm.jp/content/dam/chugai/product/notice/2023/20231108_01.pdf


・「オセルタミビルリン酸塩ドライシロップの在庫逼迫に伴う協力依頼」厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課 (2023年11月8日)
https://www.mhlw.go.jp/content/001165070.pdf

2023年11月6日月曜日

メンタックス外⽤液1% メンタックススプレー1% 販売中止と代替品



メンタックス外⽤液1%とスプレー1%が販売中止となるようです。

https://www.kaken.co.jp/wp/wp-content/uploads/medical_products3/2022/09/mentax_202310.pdf

抗⽩癬菌剤 ⽇本薬局⽅ ブテナフィン塩酸塩液 メンタックス外⽤液1%につきましては1992 年発売、抗⽩癬菌剤 ⽇本薬局⽅ ブテナフィン塩酸塩スプレー メンタックススプレー1%につきましては、2004 年発売以来皆様のご愛顧をいただいてまいりましたが、この度諸般の事情により在庫終了をもちまして販売を中⽌することにいたしました。

2025年3⽉末薬価基準削除(予定)です。


メンタックスは科研製薬において合成されたベンジルアミン誘導体、ブテナフィン塩酸塩を有効成分とする外用抗真菌剤です。

1990年代、表在性皮膚真菌症の治療薬はビホナゾール、ミコナゾール、クロトリマゾール等のイミダゾール系抗真菌剤が主流でした。この当時、国内外で強い抗菌活性を有するアリルアミン系化合物(テルビナフィン、ナフチフィン)が発売・開発され注目されていました。

ブテナフィン塩酸塩は骨格的にはアリルアミン系に類似した新しい骨格のベンジルアミン系化合物で、強い抗真菌活性を有し、イミダゾール系に代わるものとして開発され、1994年に承認されました。科研製薬からは「メンタックス」、久光製薬からは「ボレー」というブランド名で発売されました。

また、クリーム剤、ゲル剤、軟膏剤、液剤よりも簡単に塗ることができて、手を汚すことがないため使用感がよく、容器を患部に直接付けることがなく衛生的に投与できると考えられるスプレー剤が2008年2月に承認され発売されていました。


メンタックス外⽤液1%の代替品

併売品のボレー外用液が代替品となります。
最小発育阻止濃度の観点で白癬に効果が高いと考えられているのはルリコナゾール、ラノコナゾール、アモロルフィン、テルビナフィン、リラナフタートがあります。
このなかで、液剤が販売されているのは以下のとおりです。

<ルリコナゾール>
・ルリコン液

<ラノコナゾール>
・アスタット液

<テルビナフィン>
・ラミシール液 ほか後発品

<リラナフタート>
・ゼフナート液


メンタックススプレー1%の代替品

スプレー剤は比較的広範囲な部位に対してクリーム剤、ゲル剤、軟膏剤、液剤よりも簡単に塗ることができ、手を汚すことがないため使用感がよく、容器を患部に直接付けることがなく衛生的に投与できると考えられます。治療上のコンプライアンスの向上が期待できる製剤として選択されます。
ただ、スプレー剤(噴霧剤)が設定されている抗真菌薬はケトコナゾール、ブテナフィン塩酸塩の2つしかありません。
※テルビナフィン(ラミシール)のスプレーが存在していましたが2022年に販売中止となっています。

まず代替は併売品のボレースプレー(ブテナフィン塩酸塩)が挙げられます。
ほかは、以下のとおりです。
<ケトコナゾール>
・ケトコナゾール外用ポンプスプレー2%「日本臓器」
・ケトコナゾール外用ポンプスプレー2%「NR」