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2023年2月28日火曜日

プラセンタを含む製剤一覧 メルスモン ラエンネック



メルスモン注射剤 出荷停止に関するお詫び (メルスモン製薬:2023.02)
https://melsmon.co.jp/content/img/top/20220215_bunsyo1.pdf

「ラエンネック」限定出荷に関するご連絡(日本生物製剤:2023.02)
http://jbp.placenta.co.jp/files/2017/09/20230216.pdf

2023年プラセンタ製剤の供給が滞っています。



プラセンタ(placenta)は、哺乳類の胎盤のことです。

胎盤は母体の子宮内腔に形成され、母体と胎児の臍帯を連絡する器官です。
胎児への酸素や生育に必要な栄養素を供給する等の機能のほかに、造血、タンパク質合成、ホルモン分泌なども行うとされます。プラセンタは、中国では16世紀に「紫河車(シカシャ)」の名で「本草綱目」に記録されるなど、生薬として古くから知られています。日本では、1956年に医療用医薬品として更年期障害等の適応で注射剤が承認されています。現在は、医薬品のほか、化粧品、健康食品等の多くの製品が販売されています。

プラセンタの原材料については、ヒト由来の胎盤とウシ、ヒツジ、ブタ由来の胎盤の使用が認められています。ヒト由来の胎盤「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)」に区分されています。ウシ、ヒツジ、ブタ由来の胎盤は「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)」に区分されています。つまり、ヒト由来のプラセンタは「専ら医薬品として使用される成分本質 (原材料) 」であるため食品には使えません。健康食品の素材としては、ブタ、ヒツジ、ウマのプラセンタから成分を抽出したエキスおよびそれを凍結粉末化したエキス純末が使用されています。


プラセンタの健康効果が質の高い研究で示された事は皆無

プラセンタの成分としては、各種アミノ酸、ペプタイド、ミネラル、ビタミン、酵素類、糖類などから成る生理活性物質が分析され、さらに未知の成分も含まれるといわれています。
また、標榜されている効用は多岐にわたり、末梢血行促進作用、細胞賦活作用、活性酸素除去作用、抗炎症作用、抗疲労効果、発育促進、造血機能の活性化などが使用されています。しかし、これら効用に関する情報の信頼性が高いとされる研究方法で検討した報告は見当たらずその効果は期待し難いものです。
最近では、美容目的でプラセンタを点滴したり塗ったりする方がいます。しかし、プラセンタの健康効果が質の高い研究で示された事は皆無で、効果は期待し難いです。プラセンタの美容効果は示されていないどころか、「プラセンタの成分がメラニン(シミのもと)を増やす」との可能性が報告されています。「高いお金を出したのに逆効果でシミを促進」という結果になりかねません。
副作用として感染症やアレルギーなどのリスクもあります。斑状強皮症や薬剤性好酸球性肺炎、自己免疫性肺胞蛋白症という病気を発症した方もいます。

「がんに効く」と未承認サプリを販売した容疑で逮捕された医師が「プラセンタで美肌」というエセ医学を日本で広めた過去があります。

嘘でお金儲けをする医師も多いので、宣伝文句を鵜呑みにせずに「本当に適切な科学的根拠はあるのか?」を確認する習慣をつけましょう。


プラセンタ製剤の注射薬を使用したことがある方の献血について

2006 年 10 月から、過去にプラセンタの注射薬を使用したことがある方からの献血はできません。プラセンタを一度でも打った方は、献血ができなくなります。感染症のリスクがある方の血液は輸血に使えないからです

ヒト胎盤エキス(プラセンタ)注射剤使用者の献血制限について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/08/h0824-3.html

Q. プラセンタ製剤を注射した人が献血できないのはなぜですか?

A.これまでヒト胎盤エキス(プラセンタ)注射薬の使用により、vCJD(変異型クロイツフェルト・ヤコブ病)の感染事例は報告されていません。しかし、ヒト由来の臓器から製造されており、念のための措置として献血をご遠慮いただいています。
また、現段階での対象は注射薬のみとなり、健康食品(サプリメント・ドリンク剤)、化粧品、内服薬等は含みません。

日本赤十字社大阪府赤十字血液センター ホームページより一部抜粋
https://www.bs.jrc.or.jp/kk/osaka/donation/m2_01_02_placenta.html


プラセンタを含む製剤一覧

●医療用医薬品

ヒト胎盤由来製剤であり、医療用医薬品として承認を受けている注射薬は以下の 2 製品のみです(2023年時点)

メルスモン(メルスモン製薬)
[成分・含量]
2mL 中:胎盤絨毛分解物の水溶性物質 100mg
[効能効果]
更年期障害、乳汁分泌不全

ラエンネック(日本生物製剤)
[成分・含量]
2mL 中:胎盤酵素分解物の水溶性物質 112mg
[効能効果]
慢性肝疾患における肝機能の改善

●一般用医薬品[第 2 類医薬品]

ビタエックス 30内服液(大木製薬、森田薬品工業)
[成分・含量]
1 瓶(30mL)中:プラセンタエキス(E)10,000mg、イカリソウ流エキス0.6mL(原生薬として 600mg)、ニンジン流エキス 0.6mL(原生薬として 600mg)、ピリドキシン塩酸塩 15mg
[効能効果]
滋養強壮、虚弱体質、肉体疲労・病中病後・胃腸障害・栄養障害・発熱性消耗性疾患・妊娠授乳期などの場合の栄養補給

プラセントップ液(スノーデン)
[成分・含量]
瓶(30mL)中:絨毛組織加水分解物 600.0mg(プラセンタエキスとして2,000mg)、チアミン硝化物 5.0mg、ピリドキシン塩酸塩5.0mg、ニコチン酸アミド 20.0mg、無水カフェイン 50.0mg
[効能効果]
滋養強壮、虚弱体質、肉体疲労・病後の体力低下・食欲不振・栄養障害・発熱性消耗性疾患・妊娠授乳期などの場合の栄養補給

新ゴールドビタX錠(森田薬品工業)
[成分・含量]
6 錠中:胎盤加水分解物(G)400mg、胎盤乾燥微粉末100mg、チアミンジスルフィド 10mg、リボフラビン 6mg、ピリドキシン塩酸塩6mg、ビタミンE 散60mg(トコフェロール酢酸エステルとして30mg)、反鼻末 50mg、胆汁末50mg、ロクジョウ末15mg、地黄軟エキス 100mg(原生薬として 200mg)、トウキエキスS100mg(原生薬として 400mg)、オウギエキス 100mg(原生薬として2,000mg)
[効能効果]
滋養強壮、虚弱体質、肉体疲労・病後の体力低下・食欲不振・栄養障害・発熱性消耗性疾患・妊娠授乳期などの場合の栄養補給

新ビタエックス錠剤(森田薬品工業)
新ビタエックス糖衣錠(森田薬品工業)

[成分・含量]
12 錠中(糖衣錠は9 錠中):胎盤加水分解物0.54mL、胎盤乾燥微粉末750mg、チアミンジスルフィド18mg
[効能効果]
滋養強壮、虚弱体質、肉体疲労・病中病後・胃腸障害・栄養障害・発熱性消耗性疾患・産前産後などの場合の栄養補給、偏食児・幼小児の発育期などの栄養補給

プラセントップ錠(スノーデン)
[成分・含量]
6 錠中:絨毛組織加水分解物600.0mg(プラセンタエキスとして2,000mg)、チアミン硝化物 6.0mg、ピリドキシン塩酸塩6.0mg、シアノコバラミン60μg
[効能効果]
滋養強壮、虚弱体質、肉体疲労・病後の体力低下・食欲不振・栄養障害・発熱性消耗性疾患・妊娠授乳期などの場合の栄養補給

ビタエックス顆粒(森田薬品工業)
[成分・含量]
4.5g 中:胎盤加水分解物 0.70mL、胎盤乾燥微粉末 1,000mg、チアミン硝化物 15mg
[効能効果]
滋養強壮、虚弱体質、肉体疲労・病中病後・胃腸障害・栄養障害・発熱性消耗性疾患・産前産後などの場合の栄養補給

パルモアー(三宝製薬)
[成分・含量]
100g 中:プラセンターリキッド 5g、ジパルミチン酸ピリドキシン 1g
[効能効果]
進行性指掌角皮症、脂漏性皮膚炎、湿疹、粃糠疹、日光皮膚炎、口唇炎、にきび、酒さ、皮膚の栄養及び保護、肌あれ、ひび、あかぎれ、口唇乾燥症、口唇き裂、その他皮膚乾燥及び角化症

●プラセンタ含有健康補助食品

JBP プラセンタゼリーピュア(日本生物製剤)
1 包(15g)中:プラセンタエキス純末 1,000mg ゼリー 15g×20 包/箱

JBP ポーサイン 100(日本生物製剤)
1 カプセル中:プラセンタエキス 350mg カプセル 100 カプセル

プラセンタボンリッチ(クラシエ薬品)
10mL 中:プラセンタエキス純末 400mg 液 10mL×30 本

プラセン人参(クラシエ薬品)
10mL 中:プラセンタエキス純末 300mg 液 10mL×30 本


2023年2月21日火曜日

アモキサン自主回収 出荷停止 2023年2月




アモキサンカプセル、アモキサン細粒からニトロソアミン化合物が検出されたことを踏まえ、 2023 年 2 月下旬から自主回収(クラスII)されることになりました。また、回収と合わせ、アモキサンカプセル、アモキサン細粒の出荷が停止されることになるようです。

ニトロソアミン類は、ヒトが長期間にわたって許容範囲を超えて摂取した場合、発がん性のリスクを高める可能性があるといわれています。


U.S Food & Drugs Association Information about Nitrosamine Impurities in Medications
https://www.fda.gov/drugs/drug-safety-and-availability/information-about-nitrosamine-impurities-medications


このことから、医薬品におけるニトロソアミンの混入について、海外では製薬会社に対してリスク評価が求められています。日本においても、2021 年 10 月付で厚生労働省より「医薬品におけるニトロソアミン類の混入リスクに関する自主点検について」が発出されています。

アモキサンの有効成分であるアモキサピンに由来するニトロソアミン(N-ニトロソアモキサピン)が、メーカーの設定した基準を超えて検出されたため自主回収されることになりました。


今回の自主回収は既に2022年8月に予告されていました。アモキサンの急激な投与中止による「離脱症状」が発生する恐れがあることから「離脱症状」のリスクをできうる限り減らすため、自主回収の着手まで猶予を持たせていました。


N-ニトロアモキサピンの安全性

N-ニトロアモキサピンは、ニトロソアミン類に分類される化合物です。

ニトロソアミン類は水、肉や乳製品や野菜を焼き加工した食品などにも含まれています。日常生活においてもある程度のニトロソアミン類を摂取しています。ニトロソアミン類は、人々が長期間にわたって許容範囲を超えて摂取した場合、発がん性のリスクを高める可能性があるとされています。日本およびアメリカ、ヨーロッパの規制当局が示しているガイドライン(ICH-M7(R1))では、医薬品等に含まれるニトロソアミン類などの量は、発がん性リスクを許容できる(10 万分の 1 以下) 摂取量を超えないことが推奨されています。

N-ニトロソアモキサピンの動物における発がん性の有無は不明です。

N-ニトロソアモキサピンが発がん性を有すると仮定した場合の発がんリスクの程度について、アモキサン 75mgまたは 300mgを一生涯 70 年間毎日服用したときの理論上の発がんリスクは、75mg 投与ではおよそ 20 万人に 1 人が生涯(70 年間)でその曝露により過剰にがんを発症する程度のリスクに相当します。300mg 投与ではおよそ 5 万人に 1 人が生涯(70 年間)でその曝露により過剰にがんを発症する程度のリスクに相当します。


アモキサンは1981年に国内における販売を開始しました。約 40 年が最長の投与期間であり、これまでに得られている安全性情報も鑑みると、現時点において重篤な健康被害のおそれはないと考えられます。


令和 4 年度 第 17 回薬事・食品衛生審議会(医薬品等安全対策部会安全対策調査会)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28762.html

令和 4 年度 第 17 回薬事・食品衛生審議会(医薬品等安全対策部会安全対策調査会)議事録
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29807.html

令和 4 年 11 月 9 日付 N-ニトロソアモキサピンが検出されたアモキサピン製剤の使用による健康影響評価の結果等について 事務連絡
https://www.pmda.go.jp/files/000248844.pdf


アモキサンのプロファイル

アモキサンの有効成分アモキサピンは、ジベンズオキサゼピン誘導体の 1 つであって、側鎖にピペラジニル基をもつ三環系抗うつ薬に分類されます。ジベンゾキサゼピンクラスに属する第1世代抗精神病薬のロキサピンの活性代謝物として発見されました。ロキサピンもアモキサピンもセロトニン・ドパミンアンタゴニスト作用が強く、抗精神病薬と抗うつ薬の性格を合わせもちます。構造をよくみると非定型抗精神病薬のクロザピンに酷似しています。


アモキサンは、1963 年、スイスの J. Schmutz により合成され、アメリカン・サイアナミッド社のレダリー研究所において開発された抗コリン作用の少ない強力な抗うつ剤といわれています。日本においては、米国レダリー研究所の実験データをもとに、1970 年より前臨床試験が開始されました。1981年アモキサンの名前で販売が開始されます。その後、ワイス、ファイザーと製造販売メーカーは変わりますが、カプセルに刻印された「LL」のマークが「Lederle Labo.(レダリー研究所)の面影を残しています。


海外ではアモキサピンの評価はそれほど高くはありません。これはアモキサピンがD2阻害作用をもっており、海外での常用量(200mg~600mg)では錐体外路症状が発現しやすくなるためです。日本における古典的抗精神病薬としての位置づけでしかありません。

一方、日本では低用量使用が主体のためD2阻害作用よりも5-HT2A阻害作用が強く現れ、SNRIとしてのトランスポーター阻害作用との相乗効果で強力な賦活作用を発揮します。


アモキサンの代わりにどうするか

アモキサン(アモキサピン)の薬理的作用は
ノルアドレナリン、セロトニンの取り込みを阻害する作用、
そしてドーパミンD2受容体阻害作用と5-HT2A遮断作用を持ちます。

⇒メインのノルアドレナリン、セロトニンの取り込みを阻害する作用を
SNRIに担わせて
ドパミン遮断作用を少量の抗精神病薬で調整するという考えが
理論的には成り立ちます。


SNRI=デュロキセチンに、
以下のいずれかを加える。

・エビリファイ

・オランザピン

・ラツーダ


症状により患者個別に違うと思うので手探りでいくしかないと思います。


2023年2月1日水曜日

ノベルジン顆粒5%のあれこれ(味、経管投与、安定性)



ノベルジンは酢酸亜鉛を成分とするウィルソン病および低亜鉛血症の治療剤です。
もともと、錠剤が発売されていましたが、錠剤は低年齢の小児で服用が困難であること、また投与量の細やかな調整が不可能という問題が存在していました。これらの医療ニーズを鑑み、顆粒剤が開発されました。


ノベルジン顆粒5%の発売日

ノベルジン顆粒5%の発売日は2023年2月1日です。


ノベルジン顆粒5%の味と臭い

甘味料としてスクラロースが添加されているので甘みを感じられます。
また、バナナフレーバーの香料が原薬の酢酸臭をマスクしています。


ノベルジン顆粒5%はフィルムコーティングされている

ノベルジン顆粒5%の有効成分である酢酸亜鉛は、その物性として収れん性を有しています。
服薬時の収れん性を軽減する目的でコーティング顆粒とされています。
そのため、水に溶かしたり、顆粒を潰して粉末にすると渋みを感じることがあります。
小児に処方されることが多い薬ですので、他の粉薬やドライシロップ製剤とは別包にするほうが良いでしょう。



ノベルジン顆粒の粒径

直径約0.5mmの球状顆粒です。


ノベルジン顆粒の経管投与

顆粒のままでは懸濁状態はあまり良くはないようですが、5Fr、6Frまでのチューブであれば通過が可能であったとのデータがあります。3Fr、4Frのチューブでは目詰まりを起こすので注意が必要です。顆粒を乳鉢で潰して粉末化すれば3Frでも問題無く通過したとの報告もあるようです。なお、チューブへの薬剤吸着性はなかったそうです。

<ノベルジン顆粒の経管投与における通過性試験及び吸着性試験>

  • 1.6gのノベルジン顆粒5%を注入器に入れ、55℃の温湯を20mL吸い取る。
  • 5分静置後、注入器を手で15往復横転して懸濁の状況を観察。
  • 懸濁不良の場合には再度5分静置後、同様に15往復横転する。
  • この時点でも懸濁しない場合は、
  • 薬剤を乳鉢で粉砕して粉末化したものを注入器に入れ、上記の作業を初めから行う。
  • 注入器をチューブに取り付け、流速約2~3mL/秒で懸濁液を全て押し込む。
  • 適量の水(約20mL)を注入器で注入し、薬剤が残存していなければ通過と判定。
  • 薬剤が接触するチューブ表面積の大きい経鼻胃管6Fr及び胃瘻管14Fr、シャフト長4.5cmについては、チューブ通過前後の薬液濃度を薬剤の定量法(UV法)に準じて測定する。


ノベルジン顆粒の分包後の安定性

ノベルジン顆粒をセロファン+ポリエチレンで分包した場合の安定性試験の結果をご紹介します。

結果は以下のとおりです。
温度25℃、湿度60%RHで3ヵ月保存。結果は規格内。
温度30℃、湿度75%RHで3ヵ月保存。結果は規格内。

なお、添付文書の【取扱い上の注意】の項に、「ボトル包装品を分包した場合は、高温多湿を避けて保存すること」と記載があります。