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2023年2月21日火曜日

アモキサン自主回収 出荷停止 2023年2月




アモキサンカプセル、アモキサン細粒からニトロソアミン化合物が検出されたことを踏まえ、 2023 年 2 月下旬から自主回収(クラスII)されることになりました。また、回収と合わせ、アモキサンカプセル、アモキサン細粒の出荷が停止されることになるようです。

ニトロソアミン類は、ヒトが長期間にわたって許容範囲を超えて摂取した場合、発がん性のリスクを高める可能性があるといわれています。


U.S Food & Drugs Association Information about Nitrosamine Impurities in Medications
https://www.fda.gov/drugs/drug-safety-and-availability/information-about-nitrosamine-impurities-medications


このことから、医薬品におけるニトロソアミンの混入について、海外では製薬会社に対してリスク評価が求められています。日本においても、2021 年 10 月付で厚生労働省より「医薬品におけるニトロソアミン類の混入リスクに関する自主点検について」が発出されています。

アモキサンの有効成分であるアモキサピンに由来するニトロソアミン(N-ニトロソアモキサピン)が、メーカーの設定した基準を超えて検出されたため自主回収されることになりました。


今回の自主回収は既に2022年8月に予告されていました。アモキサンの急激な投与中止による「離脱症状」が発生する恐れがあることから「離脱症状」のリスクをできうる限り減らすため、自主回収の着手まで猶予を持たせていました。


N-ニトロアモキサピンの安全性

N-ニトロアモキサピンは、ニトロソアミン類に分類される化合物です。

ニトロソアミン類は水、肉や乳製品や野菜を焼き加工した食品などにも含まれています。日常生活においてもある程度のニトロソアミン類を摂取しています。ニトロソアミン類は、人々が長期間にわたって許容範囲を超えて摂取した場合、発がん性のリスクを高める可能性があるとされています。日本およびアメリカ、ヨーロッパの規制当局が示しているガイドライン(ICH-M7(R1))では、医薬品等に含まれるニトロソアミン類などの量は、発がん性リスクを許容できる(10 万分の 1 以下) 摂取量を超えないことが推奨されています。

N-ニトロソアモキサピンの動物における発がん性の有無は不明です。

N-ニトロソアモキサピンが発がん性を有すると仮定した場合の発がんリスクの程度について、アモキサン 75mgまたは 300mgを一生涯 70 年間毎日服用したときの理論上の発がんリスクは、75mg 投与ではおよそ 20 万人に 1 人が生涯(70 年間)でその曝露により過剰にがんを発症する程度のリスクに相当します。300mg 投与ではおよそ 5 万人に 1 人が生涯(70 年間)でその曝露により過剰にがんを発症する程度のリスクに相当します。


アモキサンは1981年に国内における販売を開始しました。約 40 年が最長の投与期間であり、これまでに得られている安全性情報も鑑みると、現時点において重篤な健康被害のおそれはないと考えられます。


令和 4 年度 第 17 回薬事・食品衛生審議会(医薬品等安全対策部会安全対策調査会)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28762.html

令和 4 年度 第 17 回薬事・食品衛生審議会(医薬品等安全対策部会安全対策調査会)議事録
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29807.html

令和 4 年 11 月 9 日付 N-ニトロソアモキサピンが検出されたアモキサピン製剤の使用による健康影響評価の結果等について 事務連絡
https://www.pmda.go.jp/files/000248844.pdf


アモキサンのプロファイル

アモキサンの有効成分アモキサピンは、ジベンズオキサゼピン誘導体の 1 つであって、側鎖にピペラジニル基をもつ三環系抗うつ薬に分類されます。ジベンゾキサゼピンクラスに属する第1世代抗精神病薬のロキサピンの活性代謝物として発見されました。ロキサピンもアモキサピンもセロトニン・ドパミンアンタゴニスト作用が強く、抗精神病薬と抗うつ薬の性格を合わせもちます。構造をよくみると非定型抗精神病薬のクロザピンに酷似しています。


アモキサンは、1963 年、スイスの J. Schmutz により合成され、アメリカン・サイアナミッド社のレダリー研究所において開発された抗コリン作用の少ない強力な抗うつ剤といわれています。日本においては、米国レダリー研究所の実験データをもとに、1970 年より前臨床試験が開始されました。1981年アモキサンの名前で販売が開始されます。その後、ワイス、ファイザーと製造販売メーカーは変わりますが、カプセルに刻印された「LL」のマークが「Lederle Labo.(レダリー研究所)の面影を残しています。


海外ではアモキサピンの評価はそれほど高くはありません。これはアモキサピンがD2阻害作用をもっており、海外での常用量(200mg~600mg)では錐体外路症状が発現しやすくなるためです。日本における古典的抗精神病薬としての位置づけでしかありません。

一方、日本では低用量使用が主体のためD2阻害作用よりも5-HT2A阻害作用が強く現れ、SNRIとしてのトランスポーター阻害作用との相乗効果で強力な賦活作用を発揮します。


アモキサンの代わりにどうするか

アモキサン(アモキサピン)の薬理的作用は
ノルアドレナリン、セロトニンの取り込みを阻害する作用、
そしてドーパミンD2受容体阻害作用と5-HT2A遮断作用を持ちます。

⇒メインのノルアドレナリン、セロトニンの取り込みを阻害する作用を
SNRIに担わせて
ドパミン遮断作用を少量の抗精神病薬で調整するという考えが
理論的には成り立ちます。


SNRI=デュロキセチンに、
以下のいずれかを加える。

・エビリファイ

・オランザピン

・ラツーダ


症状により患者個別に違うと思うので手探りでいくしかないと思います。