アボビスカプセルが販売中止となるようです。
経過措置期間移行品目のご案内 (富士フイルム富山化学株式会社)
http://fftc.fujifilm.co.jp/med/news/pack/pdf/fftc_news_201125_01.pdf
経過措置:2021年3月31日
アボビスカプセルはアクラトニウムナパジシル酸塩を成分とするコリン作動性の消化管運動機能改善剤です。古くから漢方に用いられてきた葛根の有効成分として分離した消化管運動の促進作用を有するKassein Rをモデルとして、富山化学工業株式会社(現:富士フイルム富山化学株式会社)綜合研究所で開発されました。
アクラトニウムナパジシル酸塩が研究されていた1970年代では、消化管運動機能の低下とこれに伴う愁訴を改善する薬物として、副交感神経刺激剤や中枢性の消化管運動機能改善剤が広く用いられてきていました。しかし、その当時既存の副交感神経刺激剤は生体内で分解されにくいため、消化器系以外にも好ましくない作用の発現が問題となっていました。
また、中枢性の消化管運動機能改善剤は中枢を介して消化管に作用するため、中枢性の副作用や内分泌系の異常を発現する恐れがありました。
そこで、さらに有効性と安全性の高い薬剤の開発が望まれ、このような要望にこたえるべく、誕生したのがアボビスカプセルです。
1976年~1978年、国内26研究機関において787症例に臨床的検討が行われ、慢性胃炎、胆道ジスキネジー、消化管手術後などに伴い消化管運動機能が低下した症例に対し、運動機能の促進と各種症状を速やかに改善したという臨床試験の結果や、二重盲検比較試験において、対照薬のメトクロプラミドと比較し有意に優れた成績が認められ、1981年6月に承認を得て発売に至りました。
アボビスカプセルは経口投与の後、速やかに消化管組織に取り込まれ、各組織のアセチルコリン受容体に直接作用して消化管の運動を促進します。その作用は生体の生理的なリズムによく一致し、しかもその際、胃液分泌にはほとんど影響を与えないとされています。
アボビスカプセルは副作用が少ないのはよいのですが、その効果もマイルド過ぎて既存薬に比べるとその効果が見劣りするものでした。エビデンスも積み上げられることもなく、コリン作動性の消化管運動改善剤が主流ではなくなっていくのと同じくその影を潜め、発売中止となりました。
アボビスカプセル代替品
化管運動機能改善剤には、メトクロプラミド、ドンペリドン、モサプリドが現在のスタンダードとなっています。
メトクロプラミドとドンペリドンの作用は上部消化管と小腸にとどまります。モサプリドは上部消化管と小腸に加えて大腸運動亢進作用も併せもつのが特徴です。
コリン作動薬の経口剤であれば、ベタネコール塩化物が代替となるでしょう。
しかし、全身性副作用強いため非常に扱いづらいです。腹痛、下痢、発汗、目が暗い、徐脈、全身脱力、唾液排出困難、呼吸困難などのコリン作動性クリーゼには十分な注意が必要です。リスクとベネフィットを勘案するとこれを代替に選ぶ場面はそんなにないと思います。