2021年3月22日月曜日

2021年度介護報酬改定 居宅療養管理指導(薬局関連) 



2021年度の介護報酬改定について薬局に関係する部分(居宅療養管理指導費)について、告示および通知等を抜粋してみました。

 まず、2021年度改定において、居宅療養管理指導について、在宅の利用者であって通院が困難なものに対して行うサービスであることを踏まえ、適切なサービスの提供を進める観点から、診療報酬の例を参考に、少なくとも独歩で家族・介助者等の助けを借りずに通院ができるような人への算定はできないことが明確化されました。


 また、薬剤師による情報通信機器を用いた服薬指導の評価が新設されました。薬剤師による居宅療養管理指導について、診療報酬では2020年改定において既に算定可能な情報通信機器を用いた服薬指導を新たに介護報酬でも算定できるよう整合性をとったものです。

令和3年度介護報酬改定の主な事項(厚生労働省)



居宅療養管理指導費については居住場所に応じた評価が見直され、単位数が変更されています。高齢者マンションなど単一建物居住者が10人以上の場合、算定単位が減っている(345単位/回 → 341単位/回)一方で、単一建物居住者1人に対して行う場合は単位数が増えています。

令和3年度介護報酬改定の主な事項(厚生労働省)


 さらに、居宅療養管理指導費の算定要件として『利用者の社会生活面の課題にも目を向け、地域社会における様々な支援へとつながるよう留意し、(中略)提供するよう努めることとする』という文言が加わっています。これは、在宅療養に欠かせない最低限の情報だけでなく、社会的処方の観点から必要だと考えられる情報も併せて医師、ケアマネ等チームに伝達することで、より質の高いサービスの提供、利用者のQOLの向上につなげる狙いがあります。


細かいところでは、用語の呼称が若干変わっています。2020年度までは居宅療養管理指導を行っている保険薬局(在宅基幹薬局)が連携する他の保険薬局を「サポート薬局」と呼んでいましたが、サポート薬局の呼称が『在宅協力薬局』に変更になりました。これは、健康サポート薬局と混同を避けるためと思われます。


[指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準]改正告示(令和3年厚生労働省告示第73号

5 居宅療養管理指導費
イ 医師が行う場合
 (略)

ロ 歯科医師が行う場合
 (略)

ハ 薬剤師が行う場合
⑴ 病院又は診療所の薬剤師が行う場合
㈠ 単一建物居住者1人に対して行う場合         565単位
㈡ 単一建物居住者2人以上9人以下に対して行う場合 416単位
㈢ ㈠及び㈡以外の場合 379単位


⑵ 薬局の薬剤師が行う場合
㈠ 単一建物居住者1人に対して行う場合  517単位
㈡ 単一建物居住者2人以上9人以下に対して行う場合 378単位
㈢ ㈠及び㈡以外の場合 341単位


注1 在宅の利用者であって通院が困難なものに対して、指定居宅療養管理指導事業所( 指定居宅サービス基準第85条第1項に規定する指定居宅療養管理指導事業所をいう。以下この注及び注4から注6までにおいて同じ。) の薬剤師が、医師又は歯科医師の指示( 薬局の薬剤師にあっては、医師又は歯科医師の指示に基づき、当該薬剤師が策定した薬学的管理指導計画)に基づき、当該利用者を訪問し、薬学的な管理指導を行い、介護支援専門員に対する居宅サービス計画の策定等に必要な情報提供を行った場合に、単一建物居住者( 当該利用者が居住する建物に居住する者のうち、当該指定居宅療養管理指導事業所の薬剤師が、同一月に 指定居宅療養管理指導を行っているものをいう。)の人数に従い、1月に2回( 薬局の薬剤師にあっては、4回)を限度として、所定単位数を算定する。

ただし、薬局の薬剤師にあっては、別に厚生労働大臣が定める者に対して、当該利用者を訪問し、薬学的な管理指導等を行った場合は、1週に2回、かつ、1月に8回を限度として、所定単位数を算定する。

医科診療報酬点数表の区分番号C 002に掲げる在宅時医学総合管理料に規定する訪問診療の実施に伴い、処方箋が交 付された利用者であって、別に厚生労働大臣が定めるものに対して、情報通信機器を用いた服薬指導( 指定居宅療養管理指導と同日に行う場合を除く。) を行った場合は、注1の規定にかかわらず、1月に1回に限り45単位を算定する。


疼痛緩和のために別に厚生労働大臣が定める特別な薬剤の投薬が行われている利用者に対して、当該薬剤の使用に関し必要な薬学的管理指導を行った場合は、1回につき100単位を所定単位数に加算する。ただし、注2を算定している場合は、算定しない。


別に厚生労働大臣が定める地域に所在する指定居宅療養管理指導事業所の薬剤師が指定居宅療養管理指導を行った場合は、特別地域居宅療養管理指導として、1回につき所 定単位数の100分の15に相当する単位数を所定単位数に加算する。ただし、注2を算定している場合は、算定しない。


別に厚生労働大臣が定める地域に所在し、かつ、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合する指定居宅療養管理指導事業所の薬剤師が指定居宅療養管理指導を行った場合は、1回につき所定単位数の100分の10に相当する単位数 を所定単位数に加算する。ただし、注2を算定している場合は、算定しない。


指定居宅療養管理指導事業所の薬剤師が、別に厚生労働大臣が定める地域に居住している利用者に対して、通常の 事業の実施地域( 指定居宅サービス基準第90条第5号に規定する通常の事業の実施地域をいう。) を越えて、指定居宅療養管理指導を行った場合は、1回につき所定単位数の100分の5に相当する単位数を所定単位数に加算する。ただし、注2を算定している場合は、算定しない。





6 居宅療養管理指導費
⑴ 通院が困難な利用者について
居宅療養管理指導費は、在宅の利用者であって通院が困難なものに対して、定期的に訪問して指導等を行った場合の評価であり、継続的な指導等の 必要のないものや通院が可能なものに対して安易に算定してはならない。
例えば、少なくとも独歩で家族・介助者等の助けを借りずに通院ができるものなどは、通院は容易であると考えられるため、居宅療養管理指導費は算定できない(やむを得ない事情がある場合を除く。)

⑵ (略)

⑶ 医師・歯科医師の居宅療養管理指導について
① 算定内容
 主治の医師及び歯科医師の行う居宅療養管理指導については、計画的かつ継続的な医学的管理又は歯科医学的管理に基づき、介護支援専門員
(指定居宅介護支援事業者により指定居宅介護支援を受けている居宅要介護被保険者については居宅サービス計画(以下6において「ケアプラン」という。)を作成している介護支援専門員を、特定施設入居者生活介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護又は看護小規模多機能型居宅介護の利用者にあっては、当該事業所の介護支援専門員をいう。以下6において「ケアマネジャー」という。)
に対するケアプランの作成等に必要な情報提供並びに利用者若しくはその家族等に対する介護サービスを利用する上での留意点、介護方法等についての指導及び助言を行った場合に算定する。
ケアマネジャーへの情報提供がない場合には、算定できないこととなるため留意すること。
利用者が他の介護サービスを利用している場合にあっては、必要に応じて、利用者又は家族の同意を得た上で、当該介護サービス事業者等に介護サービスを提供する上での情報提供及び助言を行うこととする。

 また、必要に応じて、利用者の社会生活面の課題にも目を向け、地域社会における様々な支援へとつながるよう留意し、また、関連する情報については、ケアマネジャー等に提供するよう努めることとする。
 なお、当該医師が当該月に医療保険において、「在宅時医学総合管理料」又は「施設入居時等医学総合管理料」を当該利用者について算定した場合には、当該医師に限り居宅療養管理指導費(Ⅱ)を算定する。

② 「情報提供」及び「指導又は助言」の方法ア ケアマネジャーに対する情報提供の方法
ケアプランの策定等に必要な情報提供は、サービス担当者会議への参加により行うことを基本とする(必ずしも文書等による必要はない。)
当該会議への参加が困難な場合やサービス担当者会議が開催されない場合等においては、下記の「情報提供すべき事項」(薬局薬剤師に情報提供する場合は、診療状況を示す文書等の内容も含む。)について、別紙様式1(医師)又は2 (歯科医師)(メール、FAX等でも可)により、ケアマネジャーに対して情報提供を行うことで足りるものとする。
なお、サービス担当者会議等への参加により情報提供を行った場合については、別紙様式1(医師)又は2 (歯科医師)を参考に、その情報提供の要点を記載すること。当該記載については、医療保険の診療録に記載することは差し支えないが、下線又は枠で囲う等により、他の記載と区別できるようにすること。
また、別紙様式1(医師)又は2 (歯科医師)等により情報提供を行った場合については、当該様式等の写しを診療録に添付する等により保存すること。

(情報提供すべき事項)
 (a)~(c) (略)
 (d) 利用者の日常生活上の留意事項、社会生活面の課題と地域社会において必要な支援等

イ (略)
③~⑤ (略)

⑷ 薬剤師が行う居宅療養管理指導について
① 薬局薬剤師が行う居宅療養管理指導については、医師又は歯科医師の指示に基づき、薬剤師が薬学的管理指導計画を策定し、また、医療機関の薬剤師が行う場合にあっては、医師又は歯科医師の指示に基づき、利用者の居宅を訪問して、薬歴管理、服薬指導、薬剤服用状況及び薬剤保管状況の確認等の薬学的管理指導を行い、提供した居宅療養管理指導の内容について、利用者又はその家族等に対して積極的に文書等にて提出するよう努め、速やかに記録(薬局薬剤師にあっては、薬剤服用歴の記録、医療機関の薬剤師にあっては、薬剤管理指導記録)を作成するとともに、医師又は歯科医師に報告した上で、ケアマネジャーに対するケアプランの作成等に必要な情報提供を行うこととする。
ケアマネジャーへの情報提供がない場合には、算定できないこととなるため留意すること。
ただし、ケアマネジャーによるケアプランの作成が行われていない場合の取扱いについては、⑶Ⓒを準用する。
 併せて、利用者の服薬状況や薬剤の保管状況に問題がある場合等、その改善のため訪問介護員等の援助が必要と判断される場合には、関連事業者等に対して情報提供及び必要な助言を行うこととする。
薬局薬剤師にあっては当該居宅療養管理指導の指示を行った医師又は歯科医師に 対し訪問結果について必要な情報提供を文書で行うこととする。
また、必要に応じて、⑶①の社会生活面の課題にも目を向けた地域社会における様々な支援につながる情報を把握し、関連する情報を指示を行った医師又は歯科医師に提供するよう努めることとする。
提供した文書等の写しがある場合は、記録に添付する等により保存することとする。
なお、請求明細書の摘要欄に訪問日を記入することとする。

②~⑧ (略)

⑨ ⑧にかかわらず、居宅療養管理指導を行っている保険薬局(以下「在宅基幹薬局」という。)が連携する他の保険薬局(以下「在宅協力薬局」という。)と薬学的管理指導計画の内容を共有していること及び緊急その他やむを得ない事由がある場合には在宅基幹薬局の薬剤師に代わって当該利用者又はその家族等に居宅療養管理指導を行うことについて、あらかじめ当該利用者又はその家族等の同意を得ている場合には、在宅基幹薬局に代わって在宅協力薬局が居宅療養管理指導を行った場合は居宅療養管理指導費を算定できること。
なお、居宅療養管理指導費の算定は在宅基幹薬局が行うこと。

在宅協力薬局の薬剤師が在宅基幹薬局の薬剤師に代わって居宅療養管理指導を行った場合には次のとおり、薬剤服用歴の記録等を行うこととする。

在宅協力薬局は、薬剤服用歴の記録を記載し、在宅基幹薬局と当該記録の内容を共有すること。
イ (略)
ウ 在宅基幹薬局は、薬剤服用歴に当該居宅療養管理指導を行った在宅協力薬局名及びやむを得ない事由等を記載するとともに、請求明細書の摘要欄に在宅協力薬局が当該業務を行った日付等を記載すること。

⑪~⑮ (略)

⑯ 情報通信機器を用いた服薬指導
ア 医科診療報酬点数表の区分番号C002 に掲げる在宅時医学総合管理料に規定する訪問診療の実施により処方箋が交付された利用者であって、居宅療養管理指導費が月1回算定されているものに対して、情報通信機器を用いた服薬指導(居宅療養管理指導と同日に行う場合を除く。)を行った場合に、ハ注1の規定にかかわらず、月1回に限り算定する。この場合において、ハの注3、注4、注5及び注6に規定する加算は算定できない。

イ 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和 36 年厚生省令第1号)及び関連通知に沿って実施すること。

ウ 情報通信機器を用いた服薬指導は、当該薬局内において行うこと。エ  利用者の同意を得た上で、対面による服薬指導と情報通信機器を用いた服薬指導を組み合わせた服薬指導計画を作成し、当該計画に基づき情報通信機器を用いた服薬指導を実施すること。

オ 情報通信機器を用いた服薬指導を行う薬剤師は、原則として同一の者であること。ただし、次のa及びbをいずれも満たしている場合に限り、やむを得ない事由により同一の薬剤師が対応できないときに当該薬局に勤務する他の薬剤師が情報通信機器を用いた服薬指導を行っても差し支えない。
 a 当該薬局に勤務する他の薬剤師(あらかじめ対面による服薬指導を実施したことがある2名までの薬剤師に限る。)の氏名を服薬指導計画に記載していること。
 b 当該他の薬剤師が情報通信機器を用いた服薬指導を行うことについて、あらかじめ利用者の同意を得ていること。

カ 当該居宅療養管理指導の指示を行った医師に対して、情報通信機器を用いた服薬指導の結果について必要な情報提供を文書で行うこと。キ 利用者の薬剤服用歴を経時的に把握するため、原則として、手帳により薬剤服用歴及び服用中の医薬品等について確認すること。また、利用者 が服用中の医薬品等について、利用者を含めた関係者が一元的、継続 的に確認できるよう必要な情報を手帳に添付又は記載すること。

ク 薬剤を利用者宅に配送する場合は、その受領の確認を行うこと。

ケ 当該服薬指導を行う際の情報通信機器の運用に要する費用及び医薬品等を利用者に配送する際に要する費用は、療養の給付と直接関係ないサービス等の費用として、社会通念上妥当な額の実費を別途徴収できる。


参考:令和3年度介護報酬改定について(厚生労働省)