骨粗鬆症治療剤『オステン錠 200mg』が販売終了となるようです。
骨粗鬆症治療剤『オステン錠 200mg』販売終了のお知らせ(武田テバ)
販売終了時期:2021 年 8 月頃
経過措置終了期日: 2022 年 3 月末日(予定)
オステン錠はイプリフラボンを成分とする骨粗鬆症治療剤です。
武田薬品工業株式会社が、1980年にハンガリーのキノイン(Chinoin)社からイプリフラボンを導入し、開発に着手しました。イプリフラボンは薬効薬理試験により、骨に直接作用して骨吸収を抑制するとともに、女性ホルモンによるカルシトニン分泌を促進して骨吸収を抑制することが認められました。
また、二重盲検比較対照試験を含む各種臨床試験により、骨粗鬆症における骨量減少の改善が確認され、1988年9月に承認されました。
その後、骨形成促進作用を有することも認められ、製造販売後の調査・試験の成績をもとに再審査を受け、1998年にその有用性が確認されました。
役目が終わった薬
イプリフラボンは合成フラボノイド系化合物で、骨吸収抑制および骨形成促進の両面に作用して、骨量増加をもたらすとされていますが、骨折予防に関するエビデンスに乏しいというのが現状です。
明快な作用機序と骨折予防に関する豊富なエビデンスをもつ薬剤が増加してきた現時点では投与する積極的な理由がなく、役目の終わった薬といえます。
オステン錠の代替品
後発品が存在します(2021年3月時点)。
- イプリフラボン錠200mg「YD」
- イプリフラボン錠200mg「日医工」
- イプリフラボン錠200mg「サワイ」
- イプリフラボン錠200mg「ツルハラ」
骨粗鬆症の薬物治療の考え方
日本骨粗鬆症学会より「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」が発表され、骨粗鬆症治療の基本的な考え方が示されています。
ガイドラインでは、骨粗鬆症薬物治療の目的は『骨粗鬆症性骨折を予防し、QOLの維持・向上を目指すこと』とされています。さまざまな疫学調査の結果をもとに、原発性骨粗鬆症の薬物治療開始基準が設定されました。
この開始基準によると、大腿骨近位部あるいは椎体の脆弱性骨折があれば、骨密度によらず薬物治療の対象となります。また、橈骨遠位端・上腕骨近位端・骨盤・下腿・肋骨の脆弱性骨折の場合、骨密度が若年成人平均値(YAM)の80%未満の場合に薬物治療の対象となります。
また脆弱性骨折がなくても,骨密度がYAMの70%以下または-2.5SD以下で骨粗鬆症と診断される場合も当然ながら薬物治療の対象であるほか,骨密度がYAMの70~80%の骨量減少症でも,大腿骨近位部骨折の家族歴がある場合とFRAXによる10年間の主要骨折確率が15%以上の場合に薬物治療の対象となる。
既存骨折例,著明低骨密度,FRAXでの高リスクなどの骨折リスクの高い症例
アレンドロン酸、リセドロン酸、ミノドロン酸などの側鎖に窒素を含有する第2世代以後のビスホスホネート(N-BP)経口製剤を用います。
これらが内服不可能な場合はN-BP(点滴)静注製剤か抗RANKLの抗体デノスマブを用います。
特に骨折リスクが高い場合には副甲状腺ホルモン(PTH)製剤が考慮されますが、いずれも高価な製剤です。投与期間が24カ月、72週、あるいは12カ月と限定されています。投与終了後は他薬で治療を継続する必要があります。
リスクがそれほど高くない場合
個々の症例に応じて活性型ビタミンD3製剤、メナテトレノン、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、BP製剤から1剤を選択します。
SERMには骨質改善作用が期待され、生活習慣病に伴う骨粗鬆症には有用な可能性があるとされています。