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2021年1月5日火曜日

ルネトロン錠・静注 販売中止と代替品



 ルネトロンが販売中止となるようです。

https://www.medicallibrary-dsc.info/announce/other/pdf-data/2020/2003stop_eft_t20_etc4.pdf


経過措置満了期間は2021年3月末までです。


ルネトロンはブメタニドを成分とするループ利尿剤です。

ループ利尿剤はその作用部位が、主としてヘンレループ上行脚であって、ナトリウムの再吸収を抑制して利尿を促し、電解質の排泄パターンも、サイアザイド系と異なり、カリウム喪失が少ないという特徴を持ちます。


ブメタニドは1971年、デンマークのレオ社によって数多くのアミノ安息香酸誘導体が合成されその中から強力な利尿作用を有する物質として見出されました。


日本では1972年に三共株式会社(現:第一三共株式会社)がレオ社との提携の下に、ルネトロンの開発を開始しています。1976年4月には承認を得ました。


発売当時はフロセミドの40倍の作用を有する点や、腎機能低下時でも利尿作用を有するという点が宣伝文句になっていたようです。



ルネトロンの代替品

静注はフロセミド

経口剤はフロセミドトラセミドアゾセミド


【参考】
各種ループ利尿薬のちがいと等価換算
https://www.ygken.com/2016/06/blog-post_9.html

Jinzou.net :各種利尿薬の特徴と投与法
https://www.jinzou.net/01/pro/sentan/vol_32/ch02.html



ブメタニドは精神神経疾患で臨床試験中


ブメタニドはNa/K/Cl共輸送体(NKCC)を阻害する薬です。NKCCにはNKCC1とNKCC2というサブタイプが存在しています。

ループ利尿薬はヘンレループ上行脚にあるNKCC2を阻害することで利尿作用を示すのですが、ブメタニドはNKCC1も阻害するようです。

ダウン症や自閉症とNKCC1の関連性が報告されています。

この、NKCC1に特異的に阻害する作用が注目され様々な精神神経疾患での応用が期待されています。


自閉症やParkinson病、ダウン症で臨床研究が行われています。


Roman Tyzio,et.al.,: Oxytocin-mediated GABA inhibition during delivery attenuates autism pathogenesis in rodent offspring. Science. 2014 Feb 7;343(6171):675-9. PMID: 24503856

Lemonnier E, et,al., Effects of bumetanide on neurobehavioral function in children and adolescents with autism spectrum disorders. Transl Psychiatry. 2017 Mar 14;7(3):e1056. doi: 10.1038/tp.2017.10. PMID: 28291262

タラモナール静注 販売中止と代替品



 タラモナール静注が販売中止となるようです。

https://www.medicallibrary-dsc.info/announce/other/pdf-data/2020/2003stop_tlm.pdf


■販売中止時期:2020年9月末日

■経過措置満了時期(予定):2021年3月末日


タラモナール静注はドロペリドールとフェンタニルとを 50:1 の割合で混合した製剤です。

Neuroleptanalgesia(NLA:ニューロレプト無痛法)という麻酔法に使用します。


NLAはベルギーDe Castro と Mundeleer によって 1959 年に名付けられた麻酔法です。

鎮痛剤、神経遮断剤を組み合わせて、それまでの全身麻酔剤とは様相を異にした新しい麻酔状態を作り出そうとの考えから提唱されました。

mineralization(睡眠状態でもなく覚醒状態でもなく鉱物のように情動表出のなくなった状態)という状態をもたらす麻酔法です。


NLAは当初は神経遮断剤としてハロペリドールを、鎮痛剤としてフェノペリジンを用いこれらによる併用が試みられていました。

その後ハロペリドールと同じ系統で、かつ副作用の少ないドロペリドールが開発され、フェノペリジンよりも一層強力な鎮痛作用を有し、しかも作用の持続性が短く調節性に富んだフェンタニルが開発されました。

そうすると、NLAとしてドロペリドールとフェンタニルとを 50:1 の割合で混合した製剤(タラモナール)が用いられるようになりました。


そのころ、NLAに注目していた三共株式会社(現:第一三共株式会社)が 1965 年より研究開発に着手し、日本でもその基礎的並びに臨床的研究が開始されました。


タラモナールは循環機能に対して安定であると共に調節性に富み、意識の消失なしに鎮静、鎮痛効果が得られるほか、覚醒時の状態も良好であり、他種麻酔剤との併用が容易である等、それまでの麻酔剤とは異なった特異な効果が治験で明らかにされました。

そして1971 年製造販売承認取得に至っています。


タラモナール代替品


タラモナールはドロペリドールとフェンタニルの配合剤ですので、単剤同士を組み合わせて使用することで代替可能です。

・ドロペリドール(ドロレプタン注射液25mg)

・フェンタニル(各社)


補足:

フェンタニルが麻薬なので、使用の繁雑さから、ペンタゾシンとジアゼパムを使用するNLA変法というものも行われています。