アダラートL錠10mg/20mgが販売中止となるようです。
2021年5月頃から出荷が終了されるようです。
https://pharma-navi.bayer.jp/static/media/pdf/products/ADL_PNS_202012070.pdf
経過措置満了期間は2022年3月末を予定されています。
アダラートL錠の成分であるニフェジピンは、1948 年ドイツ・バイエル社の化学者 Bossertが始めたセリ科の薬草 Ammi visnagaの果実の有効成分であるケリンの研究がはじまりまです
1966 年薬理学者 Vater の協力を得て,ケリンからキノリン類,さらにキノリン類を開環した構造で,強力な冠血管拡張作用を示す1,4-ジヒドロピリジン誘導体ニフェジピンの合成に成功しました。ニフェジピンの誕生です。
その後、1976 年には日本で軟カプセル剤「アダラート」(2019年販売中止)が発売され、以来,狭心症治療剤として広く使用されていました。
しかしながら、アダラートカプセルは速やか、かつ高い血中濃度が得られ、迅速、かつ確実な効果を発現する反面、作用持続時間が短く、さらに高血圧症への臨床応用に伴い、服薬コンプライアンスの改善の点でも、より作用持続性のある製剤が求められるようになりました。このような背景があって、Ca 拮抗薬では初めての持続性製剤として 1 日 2 回投与が可能な「アダラート L 錠」が開発されました。
日本においては 1985 年高血圧症・狭心症治療薬として発売されました。
そして、高血圧治療薬はさらなるコンプライアンス改善を目標に1日1回製剤が登場してくることとなり、アダラートL錠が処方される頻度は減ってきました。そして、2020年に販売中止となり発売から35年の歴史に終わりを迎えることとなります。
アダラートLは通常の高血圧治療では使われる頻度は減っていたもののニッチな場では活躍しています。例えば、妊娠高血圧症や高山病での高知肺水腫の治療です。
妊娠高血圧症候群とアダラートL
妊娠高血圧症候群(HDP)とは、妊娠20週以降、分娩12週まで高血圧がみられる場合、または高血圧に蛋白尿を伴う場合のいずれかか、さらにこれらの症状が単なる妊娠の偶発合併症でないものをいいます。妊娠前からあったものも含めます。妊婦さんが血圧を測ったり尿検査をするのはこのためなんですね。
収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上の場合を高血圧と診断します。
降圧目標は平均動脈圧で15%程度さげるか、重症域から脱するところまで下げます。同時に、血圧を安定させます。
血圧を下げる、安定させるためにアダラートL錠やアルドメット錠(一般名:メチルドパ錠) 、トランデート錠(一般名:ラベタロール塩酸塩錠)が使用されます。
第70回日本産科婦人科学会学術講演会専攻医教育プログラム3
「妊娠高血圧腎症の診断と管理」
http://jsog.umin.ac.jp/70/jsog70/3-1_Dr.Naruse.pdf
高地肺水腫とアダラートL
高地肺水腫は高山病のいとつで、呼吸困難、重度疲労感、せき(最初は乾いた咳で後にしめっぽい)が生じます。通常、2500mを超える高度に急速に達した後24~96時間で発生し、高山病による死亡の大部分を占めるといわれています。
高地肺水腫には下山が最も効果的ですが、救急対応として肺動脈圧を低下させる目的でアダラートL錠が使用されることがあります。またアダラートL錠の代わりに,ホスホジエステラーゼ阻害薬,例えばシルデナフィル(50mg,経口,12時間毎)またはタダラフィル(10mg,経口,12時間毎)などが用いられることもああります。
アダラートLの代替品
アダラートLには後発品があります。適応も同じものなので、代替品の第一候補となりえます。
妊娠高血圧症候群や高地肺水腫では、アダラートL以外にも使用される薬剤がありますので、病態に応じて代替薬の候補を検討してみましょう。