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2020年10月14日水曜日

リリカOD後発品 プレガバリンOD錠の味の違い



 2020年8月ファイザーの疼痛治療薬「リリカ」の後発品が承認されました。リリカにはカプセルと口腔内崩壊錠(OD錠)の2つの剤形があります。もちろん、後発品にもカプセル、OD錠それぞれに後発品メーカーが参入してきました。そこで注目なのは、やはり後発品OD錠の味です。リリカOD錠は【ゆず風味】でしたが、後発品はどうなのでしょうか気になるところです。

そこで、添付文書およびインタビューフォームで調べたり、メーカーに聴取してみました。
結果は以下のとおりです。

空欄はメーカからの回答を得られなかったもの。表の塗りつぶしの色は添加物の組成及び錠剤のサイズ等から共同開発(OEM)である可能性が高いものです。

先発品とおなじ【ゆず風味】がやはり多いようです。「ZE」「ニプロ」「YD」「サンド」「JG」などが該当します。

そのほかに・・・

オレンジ味の「アメル」
メントール(ミント風味?)の「サワイ」
コーヒー味の「武田テバ」
ヨーグルト味の「トーワ」
イチゴ味の「日医工」
グレープフルーツ味の「DSEP」

など、オリジナルの味で特徴を出そうとしているものもあります。

また、香料不使用でただ甘いだけの「KN」など、差別化を図ろうとしているものもあります。
(「KMP」「オーハラ」「杏林」も添付文書に香料の記載はありません)


2020年10月8日木曜日

鉄注射剤投与後は低リン血症に注意



 2020年9月1日、含糖酸化鉄(フェジン)に次ぐ2剤目の静注鉄製剤の「カルボキシマルトース第二鉄(フェインジェクト静注 500mg)」が発売されました。フェインジェクトは鉄を1回の注射で500mg投与できるのが特徴です(週1回投与)。

フェインジェクトやフェジンなどの鉄注射剤は消化器症状で経口鉄を飲み続けられない人に便利な薬剤です。


しかし、鉄注射剤は低リン血症のリスクについて報告されているので、注意が必要です。特に漫然と投与した場合、長期の低リン血症から骨軟化症を引き起こすことがあります。

フェジンの低リン血症は2009年Bone誌に報告されています。

Bone. 2009 Oct;45(4):814-6.(PMID: 19555782

また、フェジンのインタビューフォームにも掲載され、メーカー側も注意喚起の文書を発出しています。

フェジン静注40mgを安全にご使用いただくために(2011年@日医工)

フェインジェクトでの低リン血症についてはRMPに潜在的な副作用として以下のように注意喚起されています。

国内臨床試験において、「血中リン減少」は本剤群の45/182 例 ( 24.7% ) 、含糖酸化鉄群の24/119 例 ( 20.2% ) で発現し、そのすべてが治験薬と因果関係ありと判断された。なお、本剤投与後、多くの症例で血中リンが低下したものの、何らかの臨床症状を認めた症例や、治験薬の休薬以外の対応が必要な症例はなかった。

フェインジェクトは日本で発売される前に、海外ではすでに使用されており、2008年にはすでにFDAが2.3%に低リン血症がみられると警告していました。

多くは軽症だと思われていたが、オーストリアの大学病院ではフェインジェクトを使用した患者さんの32%に1.86mg/dL未満の低リン血症がみられたとの報告もあります。

PLoS One. 2016 Dec 1;11(12).(PMID: 27907058)


鉄注射剤における低リン血症のメカニズム

鉄注射剤の投与が、線維芽細胞増殖因子23 ( FGF23 ) を増加させることが要因ではないかと考えられています。FGF23の増加により、腎尿細管リン再吸収と腸管リン吸収の抑制により一過性の血中リン濃度低下を起こす可能性があると示唆されています。

Neth J Med. 2014 Jan;72(1):49-53.(PMID: 24457442)

日内会誌 100:3649~3654,2011


更に良くないことにFGF23がふえると活性型ビタミンDが減ってしまいます。もともとビタミンD欠乏があったり、栄養状態が良くないと骨関連有害事象のリスクが高まります。


鉄注射剤投与ではリンの値に注意

フェインジェクトの治験では、臨床症状を認めた症例はなかったようですが、市場にでまわり多くの人に使われることとなり、潜在的にビタミンDが足りないなど副作用がでやすい人にも投与されるようになると報告も増えてくると思われます。フェジン、フェインジェクトではリンの値に注意深い観察が必要です。


フェジンとフェインジェクトの比較


鉄注射剤はKounis症候群にも注意

EMAでは、2019年11月、臨床試験および市販後使用からのデータ,ならびに文献から得られたエビデンスを検討した結果,鉄注射剤の使用とKounis症候群との間に十分な因果関係が存在するとしてすべての鉄注射剤に対してKounis症候群(心筋梗塞を引き起こすことのある急性アレルギー性冠動脈攣縮)の注意喚起を記載するよう添付文書改訂を行いました。

https://www.ema.europa.eu/en/documents/prac-recommendation/prac-recommendations-signals-adopted-28-31-october-2019-prac-meeting_en.pdf

2020年10月6日火曜日

ポステリザンF 坐薬 販売中止と代替品



ポステリザンF 坐薬 が販売中止となるようです。

https://www.maruho.co.jp/medical/pdf/products/posterisanf/news/2007posterisanf_an.pdf


2020年12月末出荷停止予定。

経過措置期間は2021年3月31日まで(予定)


ポステリザンF坐薬は、大腸菌死菌浮遊液とヒドロコルチゾンの配合剤です。

抗炎症作用に加え、創傷治癒促進作用、局所感染防御作用があり、痔核、裂肛等に有用とされていました。


大腸菌死菌浮遊液は白血球遊走能を高めることにより局所感染防御作用を示し、また肉芽形成促進作用による創傷治癒促進作用を示すことから、急性・慢性痔疾の治療と予防に有効であることが証明されています。


ドイツのドクトル・カーデ製薬会社が創製し、1922年ポステリザン軟膏及びポステリザン坐薬を発売しました。

日本ではマルホ株式会社が 1953年8月(昭和28年8月)にポステリザン軟膏の販売を開始し、次いで 1965年11月にはこのポステリザン軟膏に抗炎症作用を有するヒドロコルチゾンを配合した強力ポステリザン軟膏の販売を開始しました。

1996年9月に強力ポステリザン軟膏と同じ処方を坐薬にしたポステリザンF坐薬が販売を開始しました。そして、2020年販売を終了するに至りました。


痔核の薬物療法

薬物療法は腫れ、脱出、痛み、出血などの症状を和らげる効果はあるのですが、慢性の痔核自体を完治させることはできません。痔核の治療に用いる外用薬には坐薬と軟膏があります。

坐薬は肛門の歯状線よりも口側の病変に、

軟膏は歯状線よりも肛門側の病変に有用と考えられています。

ステロイドを含む薬は腫れ、痛み、出血の強い急性炎症の時期に効果が期待できます。

しかし、まれにステロイド性皮膚炎や肛門周囲白癬症を生じることがあるので長期にわたる連用は避けたほうがよいです。トリベノシドを含有するものは炎症性浮腫の緩和、局所麻酔薬が配合されているものは痛みの緩和、大腸菌死菌浮遊液は創傷治癒に、ビスマス系のものは出血症状の緩和に有効です。


ポステリザンF 坐薬の代替品

同一成分の坐薬はありません。

同一成分の軟膏剤に『強力ポステリザン』があります。

軟膏の場合、歯状線より下の患部しか適応になりませんが、
注入軟膏タイプもあるので歯状線より下のきれ痔(裂肛)やいぼ痔(外痔核)だけでなく、歯状線より少し上にできやすい肛門内側のいぼ痔(内痔核)まで薬剤を届けることできます。


ポステリザンF坐薬は、抗炎症作用に加え、創傷治癒促進作用、局所感染防御作用をもつ薬剤です。同様の作用が期待できる坐薬には 抗炎症作用にヒドロコルチゾン、局所感染防御作用にフラジオマイシンを配合した『プロクトセディル』があります。


2020年10月2日金曜日

カリウム製剤等価換算の注意点




アスパラカリウムを見たら、一呼吸。
添付文書の用法用量をチェックしよう!




経口カリウム製剤には

  • 塩化カリウム 
  • グルコン酸カリウム 
  • Lアスパラギン酸カリウム 
の3種類があります。

それぞれ、換算する際にはカリウム含有量をあわせる必要があります。

塩化カリウム「日医工」    1g  あたり13.4 mEq

K.C.Lエリキシル         1mLあたり 1.34mEq

スローケー600mg        1錠あたり 8 mEq
※販売中止:経過措置2020 年 3 月末日予定 

塩化カリウム徐放錠600mg「St」 1錠あたり 8 mEq

グルコンサンK細粒4mEq/g 1g あたり 4 mEq

グルコンサンK錠2.5mEq   1錠あたり 2.5 mEq

グルコンサンK錠5mEq    1錠あたり 5 mEq

アスパラカリウム散50%     1g あたり 2.9 mEq

アスパラカリウム錠300mg  1錠あたり 1.8 mEq


よくあるミスは成分量(mg)を合わせてしまうことです。


そのようなミスをおこさないために

グルコンサンKの製品名はmEqが表示されています。


塩化カリウム徐放錠600mg「St」からグルコンサンKへ変更


塩化カリウム徐放錠600mg「St」を1日4錠服用している患者さんがいます。

錠剤が大きく飲みづらいので、グルコンサンK細粒4mEq/gに変更しようと思います。

グルコン酸K細粒4mEq/gにした場合、1日何g服用すれば良いのでしょうか?


塩化カリウム徐放錠600mg「St」1錠のカリウム含有量は8mEqです。

1日4錠服用しているので、1日量は8mEq×4錠=32mEq です。

「グルコンサンK細粒4mEq/g」 1gにはカリウムが4mEq含まれていますので、

32mEq÷4mEq/g=8g

です。


グルコンサンKの添付文書を見てみると、用法用量は「1回カリウム10mEq相当量を1日3~4回経口投与」となっています。

製剤として1回2.5gが常用量になっているようですので、2.5の倍数が都合がいいようです。

そのあたりは、患者さんの様子を考慮しながら適宜調節する必要があります。


塩化カリウム徐放錠600mg「St」からアスパラカリウムへ変更


塩化カリウム徐放錠600mg「St」を1日4錠服用している患者さんがいます。

錠剤が大きく飲みづらいので、アスパラカリウム散50%に変更しようと思います。

アスパラカリウム散にした場合、1日何g服用すれば良いのでしょうか?


塩化カリウム徐放錠600mg「St」1錠のカリウム含有量は8mEqです。

1日4錠服用しているので、1日量は8mEq×4錠=32mEq です。

アスパラカリウム散50% 1gにはカリウムが2.9mEq含まれていますので、

32mEq÷2.9mEq/g=11.0g 

・・・



これは、間違いです。



添付文書の用法用量をみてください。

アスパラカリウムの添付文書の用法用量には


1日 0.9 ~ 2.7g(錠 300mg:3 ~ 9錠,散 50%:1.8 ~ 5.4g)を 3 回に分割経口投与する。


と、記載があります。

1日の上限は5.4gです。11.0gでは過量投与です。



塩化カリウムとLアスパラギン酸カリウムは単純換算できません!

気をつけてください。


なぜ、できないのかというと


ウサギの赤血球を用いた実験で、赤血球内へのカリウム移行量は、
L-アスパラギン酸カリウムの方が塩化カリウムよりも多かった(in vitro、in vivo)。
(檜垣 鴻 他:薬学研究 1963;35(6):209-225)

カリウムの細胞内取り込みの指標として赤血球(ウサギ,ヒト)内への移行をみると、
L-アスパラギン酸カリウムは塩化カリウムより良好だった。
(高安久雄 他:泌尿器科領域アスパラギン酸塩研究会研究報告集 1965;23-25)

L-アスパラギン酸カリウムを K として 1mEq/kg/hr を 2 時間静脈内持続投与において、3 時間後の体内保有率は約 70%でした。一方、塩化カリウムは約30%でした。
(檜垣 鴻 他:臨床と研究 1970;47(10):2389-2396


という報告があるように、

塩化カリウムとLアスパラギン酸カリウムは吸収や細胞内移行が大きく異なるからです。



Lアスパラギン酸カリウムは塩化カリウムに比べ2倍以上組織移行、保持能力が良いとされているのでアスパラカリウムの常用量は塩化カリウム製剤の常用量に比べ少ないのです。


塩化カリウム徐放錠600mg「St」1日4錠からアスパラカリウム散50%へ切り替える際には、1日1.8 ~ 5.4gの中で、血中カリウム濃度を確認するなど患者さんの様子をみて加減する必要があります。


塩化カリウム徐放錠600mg「St」1日4錠からアスパラカリウム錠300mgへの切り替えのときも・・・

塩化カリウム徐放錠600mg「St」は1錠中にカリウムとして 8mEq、アスパラカリウムは1錠中にカリウムとして1.8 mEqだから、これを元に計算すると・・・

塩化カリウム徐放錠600mg「St」1錠はアスパラカリウム錠 約4.5錠と同じカリウムを含んでるわ。

塩化カリウム徐放錠600mg「St」1錠をアスパラカリウム錠4.5錠に切り替えるから、1日量は18錠ね。


なんてことはしないように!



2020年10月1日木曜日

エアーサロンパス(医療用医薬品) 販売中止と代替品



 外皮用薬〈エアゾール式消炎鎮痛剤〉『エアーサロンパス』が販売中止となるようです。


販売中止時期は在庫消尽までで、2020年の12月を予定されています。

経過措置期間は未定です。


販売中止の理由は「諸般の事情」です。

医療用のエアーサロンパスを処方箋で見かけることはめったに無いので、需要がないことから、製薬会社としてもリソース配分の最適化を図ったものと考えらられます。


ドラッグストアなどでおなじみの一般用医薬品の『エアーサロンパス』シリーズですがその歴史は古く昭和の中頃までさかのぼります。その時代の消炎鎮痛外用剤には貼付剤、軟膏剤など様々な剤形の製剤はすでに存在していましたが、手を汚すことなく迅速かつ容易に薬剤を塗布できる製剤の登場が期待されていました。東京オリンピックを翌年に控えた昭和38年(1963年)にエアゾール剤であるエアーサロンパスが誕生しました。

医療用の「エアーサロンパス」は一般用医薬品に遅れること1年、昭和39年(1964年)の11月に製造承認を得ました。


「エアーサロンパス」の特徴及び有用性

  1. 迅速に、容易に患部に直接噴霧出来る。
  2. 貼付剤と異なり、有毛部や間擦部に適用できる
  3. 内容物は密封されており、空気や湿度の影響を受けず、汚染もない。
  4. エアゾールによる冷却効果が期待できる。

エアーサロンパスの代替品

医療用エアーサロンパスはサリチル酸メチル, l-メントール, dl-カンフル, グリチルレチン酸を配合したエアゾール式消炎鎮痛剤です。
医療用のエアゾール式消炎鎮痛剤はエアーサロンパス以外には存在しません。

同一成分では、外用鎮痛・消炎固形軟膏の 『スチックゼノール A』 (製造販売元:三笠製薬株式会社)が代替候補になります。


どうしても、エアゾール式消炎鎮痛剤がよいのであれば、病院で処方されるものではなく、ドラッグストアや薬局の店頭で購入する一般用医薬品の「エアーサロンパス」シリーズから選択することになります。

エアーサロンパスのラインナップは以下のとおりです。


成分が医療用のエアーサロンパスと同じ配合の一般用医薬品のエアーサロンパスは存在しません。より似ているものとしては『エアーサロンパスEX』が該当していましたが、こちらも販売終了してしまったようです。

【参考】