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2020年9月30日水曜日

ロタウイルスワクチンは2020年10⽉1⽇から定期接種



  • ロタウイルスワクチンは2020年10⽉1⽇から定期接種化
  • 接種対象は2020年8⽉1⽇以降に⽣まれた赤ちゃん
  • ロタリックス、ロタテックともに使⽤が可能
  • 投与期間はロタリックス,ロタテックで違うけれど,どちらも基本的に初回接種は⽣後14週6⽇までには完了させること


ロタウイルスとワクチンの歴史

赤ちゃんの重症下痢の原因として最も多いのはロタウイルス感染によるものです。ほとんどのこどもが5歳までに感染します。感染機会は⽣後6カ⽉から2歳までが最も多いといわれています。⼀度感染しても再度感染することもありますが、通常は初めての感染が最も重症です。

ロタウイルスの感染⼒は⾮常に強く、衛⽣⽔準の向上だけでは感染は予防できません。発展途上国だけではなく先進国でも感染が起きるため、“democratic virus”と⾔われています。胃腸炎症状は1週間程度で⾃然に治ってくるのですが、痙攣、脳炎などの数々の合併症を引き起こし、死亡することもあります。

ロタウイルスは、1973年にオーストラリアのBishopにより発⾒されました。
1981年には日本の研究者である佐藤邦彦先生が初めてヒトロタウイルスの培養法を報告しています。その後、ワクチンの開発が試みられました。1998年にサル-ヒトロタウイルスのリアソータントワクチン(製品名:RotaShield)が開発され、アメリカで承認されました。1年間で100万ドース以上が投与されたのですが、投与後に副作用の腸重積症の発⽣が問題となってしまい使⽤が中⽌されました。

Murphy TV, et al:N Engl J Med. 2001;344(8):564-72.[PMID: 11207352]

同じ個体に2種類以上の異なるウイルスが同時に感染したとき、ウイルス同士の遺伝子の一部が入れ替わる場合があります。これをリアソートメント(Reassortment:遺伝子再集合)といいます。その結果生まれた新たなウイルスをリアソータントといいます。


世界標準のワクチン

2006年にNew England Journal of Medicineに1価経⼝弱毒⽣ヒトロタウイルスワクチン(製品名:ロタリックス)と5価経⼝弱毒⽣ロタウイルスワクチン(製品名:ロタテック)の臨床試験の成績が掲載されました。

Ruiz-Palacios GM, et al:N Engl J Med. 2006;354(1):11-22.[PMID:16394298]
Vesikari T, et al:N Engl J Med. 2006;354(1):23-33.


現在、世界中で主にこの2つのワクチンが接種されています。それらよって、有効性やワクチン開始後のロタウイルス感染症の減少が確認されています。2013年に世界保健機関(World Health Organization:WHO)はロタウイルスワクチンに関するポジションペーパーに「世界中のすべての国の予防接種プログラムに導⼊されるべきである」と記載しています。

日本では2011年にロタリックス、2012年にロタテックが発売されました。2017年の出荷数から推定される接種率は、任意接種にもかかわらず約70%とされています。お母さん達の子供を感染症から守ろうとする意識の高さをが伺えます。しかし、地域差があるようで、50%未満の⾃治体ある反⾯、80%を上回る⾃治体もあるようです。


ロタウイルスワクチン定期接種化

2012年5⽉の予防接種部会で,定期接種化に向けたロタウイルスワクチンの評価の必要性が確認されました。

定期接種化にあたっては、最終的に、

①腸重積症のベースラインデータの整理
②リスクベネフィット分析
③費⽤対効果の推計

が課題となり、議論がなされました。

これらの検討を受け、2019年9⽉の予防接種基本⽅針部会で、有効性、安全性が総合的に判断され、定期接種化を進めることとなりました。

2020年10⽉1⽇から開始されるロタウイルスワクチンの定期接種は、2020年8⽉以降に⽣まれた赤ちゃんが対象です。ロタリックスもロタテックも定期接種で使用可能です。

ロタリックスは⽣後6週から24週までに4週以上あけて2回投与します。

ロタテックは⽣後6週から32週までに4週あけて3回投与します。

どちらのワクチンも、最初に使用したワクチンで決められた接種回数を終了する。

初回投与は⽣後14週6⽇までに⾏うことが推奨されていますが、副反応として危惧されている腸重積症の合併を減らすためにもなるべく早い投与が推奨されています。





【参考】

厚⽣科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本⽅針部会ワクチン評価に関する⼩委員会:ロタウイルスワクチンの技術的な課題に関する議論のとりまとめ. 2019. 

2020年9月29日火曜日

異なるワクチンを接種する場合の接種間隔 [2020年10月改訂]



  •  2020年10⽉1⽇から「注射の⽣ワクチン同⼠の接種間隔を27⽇以上あける」以外のワクチンの接種間隔規定が撤廃されることになりました。
  • 『注射の⽣ワクチン』同⼠以外は、いかなる間隔で接種してもワクチンの効果に影響はありません。
  • 同一ワクチンの接種間隔に関して変更はありません。


2020年10月より前までは、予防接種実施要項により、異なるワクチンの接種間隔として『⽣ワクチン』接種後は27⽇以上、『不活化ワクチン・トキソイド』接種後は6⽇以上あけるように定められていました。

しかし、2020年10⽉1⽇以降、「注射⽣ワクチン同⼠の接種間隔を27⽇以上あける」こと以外のワクチンの接種間隔規定は撤廃されることになりました。



接種間隔の変更の理由

不活化ワクチンは、異なる種類の不活化ワクチンや⽣ワクチンと免疫反応が⼲渉することはありません。

つまり不活化ワクチンは、異なる種類の不活化ワクチンや⽣ワクチンとの同時接種も含め、どのような接種間隔でも接種することができるのです。


⼀⽅、異なる⽣ワクチンを短い間隔で投与した場合には、後から投与したワクチンの免疫反応が抑制されてしまいます。

これは、最初に投与した⽣ワクチンのウイルスによって産⽣されたインターフェロンが後から投与された⽣ワクチンのウイルスの複製を抑制するためと考えられています。

⽶国、WHOなど海外では、『注射の⽣ワクチン』の接種間隔は、同時接種しない場合には規定されていますが、不活化ワクチン、経⼝⽣ワクチン接種後には規定がありません。

そこで、日本においても、不活化ワクチン・経口生ワクチンについて、他のワクチンと干渉する可能性は低いことから、諸外国と同様に、他のワクチンとの接種間隔に対する制限は見直すよう小児科学会などから要望されていました。



ワクチンの種類と接種間隔

異なる種類のワクチンとの接種間隔について図にまとめてみました。

現在日本で承認されている注射の生ワクチンには麻しん、風しん、麻しん・風しん混合ワクチン、BCG、水痘・帯状疱疹ワクチン、おたふくかぜワクチンがあります。
これら注射の生ワクチン同士の接種は、過去に干渉の報告があること等から、引き続き27日以上間をおいて接種します。




【参考】

厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長通知.「異なるワクチンの接種間隔に係る添付文書の「使用上の注意」の改訂について」.薬生安発0228第5号、2020.02.28.

第15回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会資料. 2019.10.2. 

第36回厚⽣科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本⽅針部会:予防接種の接種間隔に関する検討. 2019.

第37回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会資料. 2020.1.27.

厚生労働省|ワクチンの接種間隔の規定変更に関するお知らせ