- ロタウイルスワクチンは2020年10⽉1⽇から定期接種化
- 接種対象は2020年8⽉1⽇以降に⽣まれた赤ちゃん
- ロタリックス、ロタテックともに使⽤が可能
- 投与期間はロタリックス,ロタテックで違うけれど,どちらも基本的に初回接種は⽣後14週6⽇までには完了させること
ロタウイルスとワクチンの歴史
赤ちゃんの重症下痢の原因として最も多いのはロタウイルス感染によるものです。ほとんどのこどもが5歳までに感染します。感染機会は⽣後6カ⽉から2歳までが最も多いといわれています。⼀度感染しても再度感染することもありますが、通常は初めての感染が最も重症です。
ロタウイルスの感染⼒は⾮常に強く、衛⽣⽔準の向上だけでは感染は予防できません。発展途上国だけではなく先進国でも感染が起きるため、“democratic virus”と⾔われています。胃腸炎症状は1週間程度で⾃然に治ってくるのですが、痙攣、脳炎などの数々の合併症を引き起こし、死亡することもあります。
ロタウイルスは、1973年にオーストラリアのBishopにより発⾒されました。
1981年には日本の研究者である佐藤邦彦先生が初めてヒトロタウイルスの培養法を報告しています。その後、ワクチンの開発が試みられました。1998年にサル-ヒトロタウイルスのリアソータントワクチン(製品名:RotaShield)が開発され、アメリカで承認されました。1年間で100万ドース以上が投与されたのですが、投与後に副作用の腸重積症の発⽣が問題となってしまい使⽤が中⽌されました。
Murphy TV, et al:N Engl J Med. 2001;344(8):564-72.[PMID: 11207352]
同じ個体に2種類以上の異なるウイルスが同時に感染したとき、ウイルス同士の遺伝子の一部が入れ替わる場合があります。これをリアソートメント(Reassortment:遺伝子再集合)といいます。その結果生まれた新たなウイルスをリアソータントといいます。
世界標準のワクチン
2006年にNew England Journal of Medicineに1価経⼝弱毒⽣ヒトロタウイルスワクチン(製品名:ロタリックス)と5価経⼝弱毒⽣ロタウイルスワクチン(製品名:ロタテック)の臨床試験の成績が掲載されました。
Ruiz-Palacios GM, et al:N Engl J Med. 2006;354(1):11-22.[PMID:16394298]
Vesikari T, et al:N Engl J Med. 2006;354(1):23-33.
現在、世界中で主にこの2つのワクチンが接種されています。それらよって、有効性やワクチン開始後のロタウイルス感染症の減少が確認されています。2013年に世界保健機関(World Health Organization:WHO)はロタウイルスワクチンに関するポジションペーパーに「世界中のすべての国の予防接種プログラムに導⼊されるべきである」と記載しています。
日本では2011年にロタリックス、2012年にロタテックが発売されました。2017年の出荷数から推定される接種率は、任意接種にもかかわらず約70%とされています。お母さん達の子供を感染症から守ろうとする意識の高さをが伺えます。しかし、地域差があるようで、50%未満の⾃治体ある反⾯、80%を上回る⾃治体もあるようです。
ロタウイルスワクチン定期接種化
2012年5⽉の予防接種部会で,定期接種化に向けたロタウイルスワクチンの評価の必要性が確認されました。
定期接種化にあたっては、最終的に、
①腸重積症のベースラインデータの整理
②リスクベネフィット分析
③費⽤対効果の推計
が課題となり、議論がなされました。
これらの検討を受け、2019年9⽉の予防接種基本⽅針部会で、有効性、安全性が総合的に判断され、定期接種化を進めることとなりました。
2020年10⽉1⽇から開始されるロタウイルスワクチンの定期接種は、2020年8⽉以降に⽣まれた赤ちゃんが対象です。ロタリックスもロタテックも定期接種で使用可能です。
ロタリックスは⽣後6週から24週までに4週以上あけて2回投与します。
ロタテックは⽣後6週から32週までに4週あけて3回投与します。
どちらのワクチンも、最初に使用したワクチンで決められた接種回数を終了する。
初回投与は⽣後14週6⽇までに⾏うことが推奨されていますが、副反応として危惧されている腸重積症の合併を減らすためにもなるべく早い投与が推奨されています。
【参考】
厚⽣科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本⽅針部会ワクチン評価に関する⼩委員会:ロタウイルスワクチンの技術的な課題に関する議論のとりまとめ. 2019.