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2020年4月28日火曜日

アビガンは薬局やドラッグストアにはありません



(2020年4月28日更新)
新型コロナウイルス感染症の治療に関する知見は現時点では限られているため、厚生労働科学研究費補助金等による研究班において、既存の抗ウイルス薬のCOVID-19に対する効果を検証しているところです。「アビガン錠」(一般名:ファビピラビル)は、研究班による観察研究に参加している医療機関に供給されています。


新型コロナウイルスに対して効果が期待されている抗ウイルス薬の「アビガン錠」(一般名:ファビピラビル)ですが、2020年4月時点では薬局やドラッグストアなどで一般の方が入手することはできません。

アビガンは薬として承認されるための条件として以下を満たす必要があるとされています。

2.本剤の使用実態下における有効性及び安全性について十分な検討が必要であることから、適切な製造販売後調査等を実施すること
4.製造販売する際には、通常のインフルエンザウイルス感染症に使用されることのないよう厳格な流通管理及び十分な安全対策を実施すること。
(添付文書より抜粋)


また、新型インフルエンザ等対策ガイドラインには
・発生後速やかに、安全性及び有効性の知見・情報を集積する体制(臨床試験等)を整備
・国が備蓄・管理したアビガンに関しては、国の指示に基づき指定された医療機関へ放出する
との記載がされています。

アビガンの流通に関してはすべて国が管理しているため、薬局が医薬品を仕入れる問屋にも在庫がなく、薬局は取り寄せることすらできませ


アビガンの流通体制

アビガンの流通について規定されているものは、平成30年に出された通知「新型インフルエンザ発生時の国が備蓄しているファビピラビルの放出方法について」(平成30年3月1日、健感発0313第1号、薬生薬審発0313第1号、薬生安発0313第1号)があります。

新型コロナウイルスにではなく新型インフルエンザ発生を想定して決められたものですが、2020年4月時点ではこれに従うものと考えられます。(今後変更される可能性はあります)

アビガンについては、胎児における催奇形性が懸念される薬剤であることから、厳格な流通管理がとられています。
さらに必要時には迅速に供給できるよう、国が備蓄・管理を行うとともに、速やかに、感染力、病原性、耐性・感受性に関する疫学情報、ウイルス学的情報、臨床医学的情報を収集し、総合的なリスク分析に努め、新型コロナウイルス感染症発生に対してアビガンを使用するか否か判断する必要があります。
国が備蓄・管理したアビガンに関しては、国の指示に基づき指定された医療機関へ放出することとし、詳細は別途定められる予定です。


参考までに、新型インフルエンザ発生時の流通体制について記載しておきます。

●アビガンは「安全性及び有効性の知見が限られていることを踏まえて、新型インフルエンザ発生初期は、感染症指定医療機関に入院した患者に限定する」とされていることから、国が備蓄・管理したアビガンは特定及び第1種感染症指定医療機関(※)に放出することとする。
安全性及び有効性の知見が得られ、患者の発生状況に応じて使用できる医療機関を拡大する。

●厳格に流通管理し、安全性、有効性の知見・情報を集積するため、アビガン使用に当たっては、厚生労働省が感染症指定医療機関からに供給依頼を受け、保管業者、富山化学に出庫、配送指示を出す。

●流通管理を厳格かつ迅速に行うため、アビガンの流通を行う医薬品等販売業者は都道府県幹事卸とし、富山化学は都道府県幹事卸に十分な情報提供を行う。



アビガンと新型コロナウイルス

アビガンは、国内では抗新型インフルエンザウイルス薬として製造販売承認を取得している薬剤です。ウイルスのRNAポリメラーゼを選択的に阻害することでウイルスの増殖を防ぐというメカニズムを有しています。インフルエンザウイルスと同種のRNAウイルスである新型コロナウイルスに対しても同様に効果があるかもしれないと期待されている薬剤です。

現在その有効性に関しては臨床試験中であり、通常の診療下では処方することはできません。

ただ、その使用方法について日本感染症学会の
に記載があります。

投与方法(用法用量):
1日目 3600 mg (1800 mg 1日2回)
2日目以降 1600 mg (800 mg 1日2回)
最長14日間投与。

1.ファビピラビルの有効性に関し、適切な重症度や投与開始のタイミングに関しては不明である。

2. 併用注意
1) ピラジナミド
2) レパグリニド
3) テオフィリン
4) ファムシクロビル
5) スリンダク

3. 簡易懸濁法による経鼻投与も可能。
被験者に経鼻胃管を挿入し,経鼻胃管が胃の中に入っていることを胸部 X 線検査で確認した後, ピストンを用いて懸濁液をゆっくりと注入する。
その後,5mLの水で経鼻胃管を洗浄する。

4.動物実験において、本剤は初期胚の致死及び催奇形性が確認されていることから、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。

5. 妊娠する可能性のある婦人に投与する場合は、投与開始前に妊娠検査を行い、陰性 であることを確認した上で、投与を開始すること。
また、その危険性について十分に説明した上で、投与期間中及び投与終了後7日間はパートナーと共に極めて有効な避妊法の実施を徹底するよう指導すること。
なお、本剤の投与期間中に妊娠が疑われる場合には、直ちに投与を中止し、医師等に連絡するよう患者を指導すること。

6. 本剤は精液中へ移行することから、男性患者に投与する際は、その危険性について十分に説明した上で、投与期間中及び投与終了後7日間まで、性交渉を行う場合 は極めて有効な避妊法の実施を徹底(男性は必ずコンドームを着用)するよう指導すること。また、この期間中は妊婦との性交渉を行わせないこと。

7. 治療開始に先立ち、患者又はその家族等に有効性及び危険性(胎児への曝露の危険性を含む)を十分に文書にて説明し、文書で同意を得てから投与を開始すること。

8. 本剤の投与にあたっては、本剤の必要性を慎重に検討すること。


アビガンはどこで投与されているのか

アビガンは新型コロナウイルスに関する有効性安全性を明らかにするため治験が行われています。
また、特定臨床研究や観察研究も行われています。

これら研究実施施設では入院されたコロナウイルス陽性患者さんを対象にアビガンが投与されることもあるようです。


コロナウイルス感染症に対するアビガンの使用については、医療機関が研究班による観察研究(※)に参加し、患者本人の同意があり、医師の判断によって使用が必要となった場合に限り可能となっています。
アビガンを利用するためには、この研究班に参加している必要があります。

※ 観察研究とは、医療機関内の倫理委員会等の手続を経て患者の同意を得た上で、本来の適応とは異なる投与等を行った治療について、治療結果等を集積し、分析する研究です。

研究班に参加するための要件
(1)患者の要件
患者の同意を取得した上で、医療機関の医師の医学的判断に基づき、アビガンを使用できます。
ただし、妊娠可能な女性、妊娠させる可能性のある男性への投与は、慎重な検討が必要となっています。
(参考) 一般社団法人日本感染症学会「COVID-19 に対する抗ウイルス薬による治療の考え方 第1版」   
  1. 概ね 50 歳以上の患者で、低酸素血症を呈し酸素投与が必要となった例 
  2. 糖尿病・心血管疾患・慢性肺疾患、喫煙による慢性閉塞性肺疾患、免疫抑制状態等のある患者で低酸素血症を呈し酸素投与が必要となった例 
  3. 年齢にかかわらず、酸素投与と対症療法だけでは呼吸不全が悪化傾向にある例

(2)医療機関の要件
  • アビガン投与をご希望される施設については、医師の管理下で、確実な服薬管理・残薬管理ができること。
  • 患者さんご本人の同意を取得した上で、実際に使用頂くこと。
  • 観察研究について、倫理審査委員会の承認を受けること。
  • 薬剤を適応外で使用することについて、医療機関として通常必要な手続きを実施すること。
  • アビガンの投与に至った症例について、必要な情報を、情報をとりまとめている窓口(藤田医科大学及び国立国際医療センター)に提供可能であること。

アビガン観察研究の問い合わせ先
投与の希望が生じた場合には、必要なアビガンが速やかに納入できるよう、富士フイルム富山化学株式会社、厚生労働省等関係者により、必要な体制が整備されています。
  • 研究に関すること
    藤田医科大研究事務局 
     covid-19(at) fujita-hu.ac.jp
    NCGM レジストリ研究事務局
     registry.covid(at) hosp.ncgm.go.jp
  • 副作用等の薬剤の情報に関すること 富士フイルム富山化学株式会社
     fftc-avigan(at) fujifilm.com
  • その他、薬剤の提供等に関すること 厚生労働省医政局研究開発振興課治験推進室
     chikensuishin(at) mhlw.go.jp
※ (at) は @ に置き換えて下さい.

アビガン(ファビピラビル)観察研究に関する Q&A
「コロナウイルス感染症に対するアビガン(一般名:ファビピラビル)に係る観察研究の概要及び同研究に使用するための医薬品の提供について」(令和2年4月27日 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部)より抜粋
https://www.mhlw.go.jp/content/000625757.pdf

(問1) 観察研究への参加を審議するための倫理審査委員会が、医療機関にない場合はどのようにしたらよいですか。
観察研究を行う代表研究機関の倫理審査委員会による中央審査を採用してください。
詳細は、代表研究機関の国立国際医療研究センター、藤田医科大学にご相談ください。 
藤田医科大研究事務局
 covid-19(at)fujita-hu.ac.jp
NCGMレジストリ研究事務局
  egistry.covid(at)hosp.ncgm.go.jp
(問2) アビガンを投与する前に、実施しなければならない医療機関内の手続きを教えてください。
各医療機関において医療安全の観点から求められている、医薬品の適用外使用に係る手続き(通常実施しているもの)を実施してください。 
〔参考〕 医療法においては、未承認新規医薬品等を用いた医療の提供の実施の適否を確認する部門の設置等の措置を講ずることが定められています(特定機能病院及 び臨床研究中核病院については義務、それ以外の病院については努力義務。医療法施行規則第9条の20の2第1項第8号等)
(問3) アビガンの供給に関する希望を窓口に依頼する際、伝達しなければならない事項を教えてください。
患者への投与前までに、問2で示した医療機関内手続きが終了する見込みがあること、また、患者への同意が確実に得られる見込みがあることについて明記してください。 このほか、投与を予定する患者数についても、併せて伝達ください。
(問4) アビガンには、どのような副作用がありますか。
動物実験において、初期胚の致死及び催奇形性が確認されていますので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないようお願いします。 また、精液中に移行することも確認されており、妊娠させる可能性のある男性への投与についても慎重な検討が必要です。あわせて、医師の管理下で、確実な服薬管理・残薬管理をお願いします。
(なお、妊娠する可能性のある女性、妊娠させる可能性のある男性へ投与する際には、催奇形性に関する危険性について十分に説明した上で、投与期間中及び投与終了後7日間はパートナーとともに、極めて有効な避妊法の実施を徹底するよう指導してください。) 
また、これまでの観察研究において、アビガン投与と因果関係が疑われる有害事象は、肝機能障害、高尿酸血症、腎機能障害、嘔気、皮疹、発熱、高ビリルビン血症が報告されています。
(問5)アビガン使用に関する患者同意文書はどうすれば良いですか。
代表研究機関である国立国際医療研究センターの国際感染症センターのホームページでひな形を公開しています
 http://dcc.ncgm.go.jp/information/index.html
(問6) アビガン以外で、どのような薬剤で観察研究が行われていますか?
現在、アビガン以外には、主に、オルベスコ(一般名:シクレソニド)、フサン(一般名:ナファモスタット)の観察研究が行われています。 
オルベスコ: 吸入ステロイド薬で、抗炎症作用があり、気管支喘息が適応となっています。 基礎研究において、コロナウイルスに対する抗ウイルス活性が確認されています。 
フサン :プロテアーゼ阻害薬であり、急性膵炎等が適応となっています。 基礎研究において、ウイルスが細胞に接着する分子との結合を阻害し、ウイル スの増殖抑制効果が期待される可能性があるとの報告があります。
(問7) アビガン以外の観察研究に参加したいのですがどのようにしたらよいですか?
参加を希望される医療機関は、藤田医科大研究事務局 ( covid-19(at)fujitahu.ac.jp)へ連絡してください。
患者同意の取得や、使用にあたっての医療機関内手続き等については、基本的にアビガンの場合と同様です。
(問8) オルベスコ(一般名:シクレソニド)は、添付文書上、「有効な抗菌剤が存在し ない感染症」が禁忌となっていますが、使用してもよいのでしょうか。
オルベスコは、基礎研究において、コロナウイルス感染症に対する抗ウイルス作用が示唆された薬です。
一方で、ステロイドであるため、「有効な抗菌剤が存在しない感染症」が禁忌となっていますので、観察研究にあたっては、主治医が、期待される 効果と副作用とを勘案し、患者の同意を得て、慎重に投与すべきかを検討してください。
(問9) 介護老人保健施設(老健)、重症心身障害児施設、精神科単科の病院において(転院が困難な)患者さんに対してアビガンによる治療を行いたいのですがどのようにしたらよいですか。
転院が困難な症例は、医師の経過観察下で、各施設でのアビガン投与をお願いしております。患者要件は感染症学会ガイドラインを目安にしてください。 http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_antiviral_drug_200227.pdf 
また他の医療機関と同様にアビガン観察研究への参加をお願いしております。
 アビガン投与、観察研究に関する手続きは(問1)から(問5)を参照してください。
(問10) アビガンの投与を希望する場合、どこに問い合わせればよいですか。
■研究に関すること
 藤田医科大研究事務局
 covid-19(at)fujita-hu.ac.jp

 NCGMレジストリ研究事務局
registry.covid(at)hosp.ncgm.go.jp 
■副作用等の薬剤の情報に関すること
 富士フイルム富山化学株式会社
 fftc-avigan(at)fujifilm.com 
■その他、薬剤の提供等に関すること
 厚生労働省医政局研究開発振興課治験推進室
 chikensuishin(at)mhlw.go.jp

参考:
・抗インフルエンザウイルス備蓄薬の流通について
・【通知】新型インフルエンザ発生時の国が備蓄しているファビピラビルの放出方法について
(平成30年3月1日、健感発0313第1号、薬生薬審発0313第1号、薬生安発0313第1号)
・新型コロナウイルス感染症に対する厚生労働科学研究班への協力依頼について
・新型コロナウイルス感染症に対するファビピラビルに係る観察研究の概要及び同研究に使用するための医薬品の提供に関する周知依頼について
(令和2年4月27日 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部)
https://www.mhlw.go.jp/content/000625756.pdf

2020年4月23日木曜日

大うつ病治療薬 ボルチオキセチン



ボルチオキセチン(vortioxetin)はアメリカのLundbeck社が創製した大うつ病治療薬です。

大うつ病性障害治療薬として米国をはじめ77カ国で承認、60カ国以上で販売されています。
アメリカにおいてBrintellixという商品名で武田薬品が世界で初めて販売を開始しました。
Brintellix製品情報ページ(米国)http://us.brintellix.com/

日本ではトリンテリクスという商品名で2019年11月に発売されました。

ボルチオキセチンの特徴


ボルチオキセチンは神経伝達物質セロトニン(5-HT)の再取り込み阻害作用をもち、また、5-HT1A受容体刺激作用、5-HT1B受容体の部分的刺激作用をもちます。

ボルチオキセチンは5-HT3、5-HT7、5HT1-D受容体拮抗作用をもちます。

アメリカで承認された用量は1日5~20mgです。

Vortioxetine, a new serotonergic agent, has shown superiority over placebo in treating major depressive disorder in both adult and geriatric patients.

The multimodal pharmacologic activity of vortioxetine may convey benefit in cognitive function.

Vortioxetine’s safety profile is similar to that of other selective serotonin reuptake inhibitors.

Vortioxetine’s favorable tolerability profile may have meaningful advantages with regard to weight gain and low sexual dysfunction that may benefit patients.


作用機序は完全に解明されていませんが、うつ病に対する新しい治療薬として、神経伝達物質セロトニン(5-HT)の再取り込みを阻害し、また、5-HT1A受容体作動作用、5-HT1B受容体の部分的作動作用、5-HT3、5-HT1D、5-HT7の各受容体拮抗作用など複数のセロトニン受容体に作用すると考えられています。


SSRIの副作用に性機能障害があります。
ボルチオキセチンに切り替えることによってSSRIによって起こる性機能障害が改善したというデータが示されています。
最も有効性と忍容性の高い抗うつ薬としてしられるエスシタロプラムと比べても性機能改善は優位を示しています。
Jacobsen PL, Mahableshwarkar AR, Chen Y, Chrones L, Clayton AH. J Sex Med. 2015;12(10):2036-2048. (PMID:26331383)


◉適応

うつ病,うつ状態。

◉禁忌

本薬剤の成分に対する過敏症の既往歴、MAO-I投与中あるいは中止2週間以内。



◉相互作用

ボルチオキセチンは主に肝代謝酵素CYP2D6、CYP3A4/5、CYP2C19、CYP2C9、CYP2A6、CYP2C8及びCYP2B6で代謝されます。
CYP2D6の阻害作用を有する薬剤を投与中の患者又は遺伝的にCYP2D6の活性が欠損している(Poor Metabolizer)ことが判明している患者では、本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるため、10mgを上限とすることが望ましいとされています。
また、強力なCYP誘導剤の併用投与では増量するなどの用量調整が必要だと考えられます。



◉見逃してはいけない副作用

国内臨床試験においては,主な副作用は悪心(19.0%)、傾眠(6.0%)及び頭痛(5.7%)でした。
海外の臨床試験において悪心の頻度は用量に依存していました。悪心の強度は軽度から中等度で無処置で消失しています。
悪心の起きる時期は治療の最初の週がほとんどで、投与の1〜2日後に患者の15%〜20%が吐き気を経験しました。

悪心や吐き気は導入の際にうまくいかない副作用の1つです。モサプリドなどの併用を考慮するなどの対応が必要です。2週間程度は様子を見ておくのが良いでしょう。




ペルサンチン-Lカプセル150mg 販売中止



(2020年6月更新)
ペルサンチン-Lカプセル150mgが販売中止(2020年9月予定)となるようです。

http://www.bij-kusuri.jp/information/attach/pdf/pe_lcap_info_202006.pdf

経過措置期間は2021年3月末予定です。
※ペルサンチン錠は販売継続です。

中止理由は、製造していたドイツの工場が閉鎖されたためです。
日本への技術移管も努力していたようですが、国内製造の目処が立たず、やむなく販売中止となったようです。


ペルサンチンの成分はジピリダモールです。

ジピリダモールは 1951年に F. G. Fischer 及び J. Roch によって開発されたピリミド-ピリミジン誘導体で、冠状動脈疾患治療薬として1959年にベーリンガーインゲルハイムの前身であるドイツのDr.カール・トーメ社により発売されました。
1965 年に P. R. Emmons らによって抗血小板作用を有することが報告されて以来、ドイツ、イギリス、日本を含め各国で抗血小板作用に基づく心臓弁置換術後の血栓・塞栓の抑制あるいは,糸球体腎炎,ネフローゼ症候群等の治療薬として今日広く使用されています。
日本では、冠状動脈疾患治療薬剤としてペルサンチン錠12.5が1960年に発売されました。

ペルサンチン-Lカプセルは、長期にわたる治療が必要な抗血小板療法において、服用回数を減らし、有効血中濃度を長時間持続させる徐放性製剤の開発が求められたことから開発が行われ、1994年に承認されました。


ペルサンチン-Lカプセル150mgの代替品


ペルサンチン錠が代替品となります。
徐放製剤ではないので用法用量が異なるので注意です。
規格によっては適応も異なります。

ペルサンチンカプセルがよく使われている病態に、糖尿病性腎症によるネフローゼやIgA腎症があります。
これら病態ではジピリダモールの他にジラゼプ塩酸塩(コメリアン)が使用されることがあります。







ペルサンチン静注10mg 販売中止(経過措置期限2020年3月末)



ペルサンチン静注10mgは販売中止されており、経過措置期間も2020年3月31日に終了したようです。

※ペルサンチン錠は販売継続中です。


ペルサンチンの成分はジピリダモールです。

ジピリダモールは 1951年に F. G. Fischer 及び J. Roch によって開発されたピリミド-ピリミジン誘導体で、冠状動脈疾患治療薬として1959年にベーリンガーインゲルハイムの前身であるドイツのDr.カール・トーメ社により発売されました。
1965 年に P. R. Emmons らによって抗血小板作用を有することが報告されて以来、ドイツ、イギリス、日本を含め各国で抗血小板作用に基づく心臓弁置換術後の血栓・塞栓の抑制あるいは,糸球体腎炎,ネフローゼ症候群等の治療薬として今日広く使用されていました。
日本では、冠状動脈疾患治療薬剤として 1960年に発売されました。


ジピリダモール負荷試験


ペルサンチン静注の効能効果は狭心症、心筋梗塞、その他の虚血性心疾患、うっ血性心不全でした。
そのほか、心機能評価のための薬剤負荷試験でも使用されていました。

ジピリダモールを投与すると、正常心筋部の血流が増加するのに対して病変部は増加しないので、血流不均衡が生じ、心機能を評価する検査の一つの心筋血流シンチグラフィでは、血流を評価できる201Tlや99mTc標識放射性医薬品を投与すると負荷時の病変部の低下として描画されます。
ジピリダモール負荷は運動負荷と同等の虚血の診断成績が得られるので、高齢者や下肢動脈の閉塞など運動負荷が難しい患者にも有効として汎用されていました。


ペルサンチン静注10mgの代替品


後発品が存在します。(2020年4月時点)

・ジピリダモール静注液10mg「日医工」

心筋負荷用の薬剤としては、アデノシンが代替として使用可能です。
ただし、作用の持続時間がジピリダモールでは静注後2~4分でピークに達し約30分間持続するのに対し、アデノシンでは静注後約10秒から約2分間と比較的短時間であることに注意が必要です。

・アデノシン負荷用静注60mgシリンジ「FRI」



参考:
川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドライン(2013年改訂版)

2020年4月21日火曜日

「0410事務連絡」薬局の対応は・・・ 新型コロナウイルス感染防止におけるオンライン診療



(2020年4月25日Q&A更新)

2020年4月10日の厚生労働省の事務連絡、いわゆる「0410事務連絡」をうけて、新型コロナウイルス感染拡大防止措置として初診からの電話や情報通信機器を用いた診療の実施が可能になりました。



新型コロナウイルス感染防止におけるオンライン診療について、まとめてみました。


【薬局】電話や情報通信機器(ビデオ通話など)を用いた服薬指導について


全ての薬局において、薬剤師が患者・服薬状況等に関する情報を得た上で、電話や情報通信機器を用いて服薬指導等を適切に行うことが可能と判断した場合にオンライン服薬指導を行うことができます。

「患者・服薬状況等に関する情報」 とは、どのようなことなのでしょうか。
以下の6つが考えられます。
(1)患者のかかりつけ薬剤師・薬局として有している情報
(2)当該薬局で過去に服薬指導等を行った際の情報
(3)患者が保有するお薬手帳に基づく情報
(4)患者の同意の下で、患者が利用した他の薬局から情報提供を受けて得られる情報
(5)処方箋を発行した医師の診療情報
(6)患者から電話等を通じて聴取した情報

処方箋の取り扱いについては、医療機関から備考欄に「0410 対応」と記載した処方箋がFAX等で送られてくるので、それをもとに調剤を行い、処方箋原本については可能な時期に入手し、FAX等で送付された処方箋情報と共に保管することが求められています。

薬局が守る必要のある条件

新型コロナウイルス感染拡大防止措置におけるオンライン服薬指導での薬局における実施要件としては、薬剤の配送に関わる事項を含む生じうる不利益等・配送及び服薬状況の把握等の手順について薬剤師から患者に対して十分な情報を説明し、説明を行ったことを記録することが求められています。
さらに、患者に初めて調剤した薬剤については、患者の状態等を踏まえ、「患者の服薬アドヒアランスの低下などを回避のための対応」をすることとされています。

「患者の服薬アドヒアランスの低下などを回避のための対応」
必要に応じ、事前に薬剤情報提供文書等を患者にファクシミリ等により送付してから服薬指導等を実施する
必要に応じ、薬剤の交付時に(配送した場合は薬剤が患者の手元に到着後、速やかに)、電話等による方法も含め、再度服薬指導等を行う
薬剤交付後の服用期間中に、電話等を用いて服薬状況の把握や副作用の確認などを実施する
上記で得られた患者の服薬状況等の必要な情報を処方した医師にフィードバックする

そして、対面による服薬指導等が必要と判断される場合は、速やかに切り替えます。
薬剤師は被保険者証で患者さん本人であることの確認、患者は薬剤師を顔写真付きの身分証明書で互いに確認し合います。


薬剤の配送等について

薬剤の品質の保持や確実な授与等がなされる方法(書留郵便等)で患者へ渡します。
薬剤が確実に患者に授与されたことを電話等により確認します。
インスリンなどの冷所品など品質の保持に特別の注意を要したり早急に授与する必要のある薬剤は、クール便を使うなどの適切な配送方法を利用する必要があります。薬局スタッフが届けたり、患者又はその家族等に来局を求めたりする等の工夫をしましょう。
患者が支払う配送料及び薬剤費等は、代金引換や銀行振込、クレジットカード決済、その他電子決済等の方法でも可能です。

送料は高いですがレターパックプラスは追跡機能もあり安心です。ヤマト運輸の宅急便コンパクトも少量であればコストが抑えられて良いと思います。


その他の留意点

患者の状況等によっては、対面での服薬指導等が適切な場合や、次回以降の調剤時に対面での服薬指導等を行う必要性が出てくることを考えると、オンライン服薬指導を行うのはかかりつけ薬剤師及び薬局や、患者の居住地域内にある薬局が望ましいとされています。

また、薬局内やホームページで事前に医療機関関係者や患者等に以下を周知することが求められます。

①服薬指導等で使用する機器(電話・情報通信機器等)
②処方箋の受付方法(FAX・メール・アプリ等)
③薬剤の配送方法
④支払方法(代金引換サービス・クレジットカード決済等)
⑤服薬期間中の服薬状況の把握に使用する機器(電話・情報通信機器等)

算定できる点数は

調剤技術料、薬剤料及び特定保険医療材料料を算定することができます。
また、要件を満たせば、薬剤服用歴管理指導料等を算定することができます。
ただし、薬剤服用歴管理指導料の加算を算定できるかどうかは明言されていません。
2020年9月開始の正規のオンライン服薬指導では薬剤服用歴管理指導料の加算は算定できないので、明確な通知が出るまではそれに準ずるのが良いかと思います。



【病院等】初診から電話や情報通信機器(ビデオ通話など)を用いた診療を実施する場合


医師の責任の下で、電話や情報通信機器を用いた診療による診断や処方が医学的に可能であると判断する範囲において、初診から電話や情報通信機器を用いた診療により診断や処方を行うことができます。

なお、診療録等により当該患者の基礎疾患の情報が把握できない場合は、処方日数は7日間を上限とします。
また、診療録等により当該患者の基礎疾患の情報が把握できない場合は、麻薬及び向精神薬に加え、診療報酬における薬剤管理指導料の「1」の対象となる薬剤(いわゆるハイリスク薬)の処方することはできません。

主な要件

できる限り、過去の診療録・診療情報提供書・地域医療情報連携ネットワーク・健康診断の結果等で患者の基礎疾患の情報を把握・確認する必要があります。
生じるおそれのある不利益・急病急変時の対応方針等について、医師から説明した上でカルテに記載します。
対面による診療が必要と判断される場合は速やかに移行します。
患者は顔写真付きの身分証明書で医師であることを確認し、医師は被保険者証等で患者本人確認を互いに行います。
支払方法は、銀行振込・クレジットカード決済・その他電子決済等も可能です。


【病院等】定期受診を電話や情報通信機器(ビデオ通話など)を用いて実施する場合

既に対面で診断され治療中の疾患を抱える患者について、電話や情報通信機器を用いた診療により、当該患者に対して、これまでも処方されていた医薬品を処方することは事前に診療計画が作成されていない場合であっても行うことができます。

また、患者の疾患により発症が容易に予測される症状の変化に対して、これまで処方されていない医薬品を処方することもできます。

主な要件

①既に定期的なオンライン診療を行っている場合
発症が容易に予測される症状の変化を診療計画に追記し、診療計画の変更について患者の同意を得ておきます。

②これまで定期的なオンライン診療を行っていない場合
生じるおそれのある不利益・発症が容易に予測される症状の変化・処方する医薬品等について患者に説明して同意を得ておきます。
その説明内容をカルテに記載します。


処方箋の取扱いについて

患者が薬局での電話や情報通信機器による服薬指導を希望する場合は、処方箋の備考欄に「0410 対応」と記載し、患者の同意を得て、医療機関から患者が希望する薬局にFAX等で送付します。
カルテには薬局名を記録しておきます。
後日、FAX等で処方箋情報を送付した薬局に処方箋原本を送付します。

FAXが届いているか電話で確認するなどの配慮が必要です。

実施状況の報告について

医療機関から所定の様式で所在地の都道府県に毎月報告します。
各都道府県は管下の医療機関の実施状況を厚生労働省に毎月報告します。

薬剤の配送等について

院内調剤の場合には薬剤の品質の保持や確実な授与等がなされる方法(書留郵便等)で患者へ渡します。
薬剤が確実に患者に授与されたことを電話等により確認します。
患者が支払う配送料及び薬剤費等は、代金引換や銀行振込、クレジットカード決済、その他電子決済等の方法でも可能です。

診療報酬について

初診の場合、電話等を用いた初診料214点を特例的に算定できます。
再診の場合、電話等再診料73点を算定します。管理料については、従来から「オンライン診療料」の対象になる医学管理料(特定疾患療養管理料、在宅時医学総合管理料など)を算定していた慢性疾患患者に対して、電話等で医学管理を行った場合は、147点を算定可能です。
医薬品を処方した場合は、「処方料」や「処方箋料」も算定できます。



初診 再診
点数 院内処方 院外処方 院内処方 院外処方
基本診療料 初診料 214点 電話等再診料 73点
管理料 - 147点 (B000 2)
処方料 - -
処方箋料 - -
調剤料 - -
調剤基本料 - -
薬剤料 - -

新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その14)


参考通知



Q. 事務連絡の「1」にあるように、慢性疾患等を有する定期受診患者等について、医師が電話や情報通信機器を用いて診療し医薬品の処方を行い、ファクシミリ等で処方箋情報が送付される場合、保険医療機関は、電話等再診料、処方箋料を算定できるか。
A. 算定できる。
Q. 上記について、電話や情報通信機器を用いて診療を行った場合は、電話等再診料とオンライン診療料のいずれを算定するのか。
A. 上の場合については、電話等再診料を算定すること。
Q. ファクシミリ等により処方箋情報を受け付けた保険薬局において、当該処方箋情報に基づく調剤を行った場合、調剤技術料及び薬剤料は算定できるのか。
また、事務連絡の「3」にあるように、患者に薬剤を渡し、電話や情報通信機器を用いて服薬指導を行った場合、薬剤服用歴管理指導料等の薬剤師からの説明が要件となっている点数は算定できるのか。
A. 調剤技術料及び薬剤料は算定できる。薬剤服用歴管理指導料等は、電話や情報通信機器を用いて適切な指導を行っており、その他の要件を満たしていれば算定できる。




Q. 事務連絡の「1」にあるように、慢性疾患等を有する定期受診患者等について、医師が電話や情報通信機器を用いて診療し医薬品の処方を行った場合、保険医療機関は、電話等再診料、調剤料、処方料、調剤技術基本料を算定できるか。
A. 算定できる。
Q. 事務連絡の「1」の場合であって、過去3月以内に在宅療養指導管理料を算定した慢性疾患等を有する定期受診患者等について、医師が電話や情報通信機器を用いて診療し、患者又は患者の看護に当たる者(以下、「患者等」という。)に対して、療養上必要な事項について適正な注意及び指導を行い、併せて必要かつ十分な量の衛生材料又は保険医療材料を支給した場合に、在宅療養指導管理料及び在宅療養指導管理材料加算を算定できるか。
A. 衛生材料又は保険医療材料を支給した場合に限り、在宅療養指導管理料及び在宅療養指導管理材料加算を算定できる。 この場合、在宅療養の方法、注意点、緊急時の措置に関す る指導等の内容、患者等から聴取した療養の状況及び支給した衛生材料等の量等を診療録 に記載すること。また、衛生材料又は保険医療材料の支給に当たっては、患者等に直接支 給すること。ただし、患者の看護に当たる者がいない等の理由により患者等に直接支給できない場合には、当該理由を診療録に記載するとともに、衛生材料又は保険医療材料を患者に送付することとして差し支えない。この場合において、当該患者が受領したことを確認し、その旨を診療録に記載すること。


Q. オンライン診療料の留意事項では、「診療計画に基づかない他の傷病に対する診療は、 対面診療で行うことが原則」とされているが、令和2年3月19日事務連絡の「1(2) ①」にあるように、慢性疾患等を有する定期受診患者等に対する診療等について、既に当該患者に対して定期的なオンライン診療を行っている場合であって、発症が容易に予測される症状の変化に対する処方を行うとき、診療報酬の算定に当たっては、どのようにすればよいか。
A. 通常のオンライン診療料と同様の取扱いとして差し支えない。
Q. 令和2年3月19日事務連絡の「1(2)②」にあるように、慢性疾患等を有する定 期受診患者等に対する診療等について、これまで当該患者に対して定期的なオンライン診療を行っていない場合であって、発症が容易に予測される症状の変化に対する処方を行うとき、診療報酬の算定に当たっては、どのようにすればよいか。
A. 「新型コロナウイルス感染症患者の増加に際しての電話や情報通信機器を用いた診療や処方箋の取扱いについて」(令和2年2月28日厚生労働省医政局医事課、医薬・生活衛 生局総務課事務連絡。以下「令和2年2月 28 日事務連絡」という。)に関連する臨時的な診療報酬の取扱いと同様の取扱いとして差し支えない。
Q. 令和2年3月 19 日事務連絡の「1(2)」の場合について、ファクシミリ等により処 方箋情報を受け付けた保険薬局において、当該処方箋情報に基づく調剤を行った場合、調剤報酬の算定に当たっては、どのようにすればよいか。
A. 令和2年2月28日事務連絡に関連する臨時的な診療報酬の取扱いと同様の取扱いとして差し支えない。

Q. 令和2年3月 19 日事務連絡の「2(3)」の場合について、新型コロナウイルス感染 症の診断や治療が直接の対面診療により行われた患者に対して、在宅での安静・療養が必要な期間中に、在宅での経過観察結果を受けて、当該患者の診断を行った医師又は、かか りつけ医等からの紹介に基づき新型コロナウイルス感染症の診断や治療を行った医師から情報提供を受けた当該かかりつけ医が、患者の求めに応じて、電話や情報通信機器を用いて、それぞれの疾患について発症が容易に予測される症状の変化に対して必要な薬剤を 処方した場合に、診療報酬等の算定に当たっては、どのようにすればよいか。
A. 令和2年2月 28 日事務連絡に関連する臨時的な診療報酬の取扱いと同様の取扱いとして差し支えない。


Q. 事務連絡により、慢性疾患を有する定期受診患者に対して、電話や情報通信機器を用いた診療及び処方を行うことが可能とされた。この場合であって、当該患者に対し、電話 や情報通信機器を用いた診療を行う以前より、対面診療において診療計画等に基づき療養 上の管理を行っており、電話や情報通信機器を用いた診療においても当該計画等に基づく 管理を行った場合、どのような取扱いとなるか。
廃問(0410事務連絡に代える)
A. 電話や情報通信機器を用いた診療を行う以前より、対面診療において診療計画等に基づ き療養上の管理を行い、「情報通信機器を用いた場合」が注に規定されている管理料等を 算定していた患者に対して、電話や情報通信機器を用いた診療においても当該計画等に基 づく管理を行う場合は、当該管理料等の注に規定する「情報通信機器を用いた場合」の点 数を算定できる。 なお、当該管理を行う場合、対面診療の際の診療計画等については、必要な見直しを行うこと。
Q. 上の問における「管理料等」とは、何を指すのか。
廃問(0410事務連絡に代える)
A. 特定疾患療養管理料、小児科療養指導料、てんかん指導料、難病外来指導管理料、糖尿 病透析予防指導管理料、地域包括診療料、認知症地域包括診療料及び生活習慣病管理料を指す。
Q. 保険医療機関の所在地と患家の所在地との距離が 16 キロメートルを超える往診又は 訪問診療(以下、「往診等」という。)については、当該保険医療機関からの往診等を必 要とする絶対的な理由がある場合には認められることとされており(「診療報酬の算定方 法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和2年3月5日保医発 0305 第1 号))、具体的には、①患家の所在地から半径 16 キロメートル以内に患家の求める診療 に専門的に対応できる保険医療機関が存在しない場合、②患者の求める診療に専門的に対 応できる保険医療機関が存在していても当該保険医療機関が往診等を行っていない場合などが考えられる(「疑義解釈資料の送付について(その7)」(平成 19 年4月 20 日付 医療課事務連絡))とされている。例えば、自宅で療養する新型コロナウイルス感染症患 者に往診等が必要な場合であって、対応可能な医療機関が近隣に存在しない場合や対応可 能な医療機関が近隣に存在していても往診等を行っていない場合は、「16 キロメートル を超える往診等を必要とする絶対的な理由」に含まれるか。
A. ご指摘の事例は、「絶対的な理由」に含まれる。




Q. 新型コロナウイルスの感染が拡大している間、これまでオンライン診療料の届出を行 っていない医療機関において新規にオンライン診療料を算定する場合、オンライン診療料の施設基準に係る届出は必要か。
A. 必要。 ただし、新型コロナウイルスの感染が拡大している間、基本診療料の施設基準 等第三の八の二(1)ロに規定する施設基準のうち、1 月当たりの再診料等の算定回数の合計に占めるオンライン診療料の算定回数の割合が1割以下であることとする要件については、適用しないこととすること。
Q. 新型コロナウイルス感染が拡大している間、既にオンライン診療料の届出を行ってい る医療機関において、基本診療料の施設基準等第三の八の二(1)ロに規定する 1 月当たりの再診料等の算定回数の合計に占めるオンライン診療料の算定回数の割合が1割以下であることとする要件を満たさなくなった場合、オンライン診療料の変更の届出は必要か。
A. 不要。 ただし、当該要件以外の要件を満たさなくなった場合は、速やかに届出を取り下げること。



Q. 対面診療において、精神科を担当する医師が一定の治療計画のもとに精神療法を継続的に行い、通院・在宅精神療法を算定していた患者に対して、電話や情報通信機器を用いた診療においても、当該計画に基づく精神療法を行う場合は、どのような取扱いとな るか。
A. 新型コロナウイルスの感染拡大を防止する観点から、精神疾患を有する定期受診患者に対して、電話や情報通信機器を用いた診療及び処方を行う場合であって、電話や情報通信機器を用いた診療を行う以前より、対面診療において精神科を担当する医師が一定 の治療計画のもとに精神療法を継続的に行い、通院・在宅精神療法を算定していた患者に対して、電話や情報通信機器を用いた診療においても、当該計画に基づく精神療法を行う場合は、「診療報酬の算定方法」(平成 20 年厚生労働省告示第 59 号)B000 の2に規定する「許可病床数が 100 床未満の病院の場合」の 147 点を月1回に限り算定でき ることとする。

Q. 小児科外来診療料及び小児かかりつけ診療料の施設基準の届出を行っている保険医療機関において、6歳未満の乳幼児又は未就学児に対して、初診から電話や情報通信機器を用いた診療により診断や処方をする場合について、どのように考えればよいか。
A. 初診料の注2に規定する 214 点を算定すること。 なお、この場合において、診断や処方をする際は、「新型コロナウイルスの感染拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」(令和2年4月10日厚生労働省医政局医事課、医薬・生活衛生局総務課事務連絡。)や別紙における留意点等を踏まえ、適切に診療を行うこと。また、その際、医薬品の処方を行い、又はファクシミリ等で処方箋情報を送付する場合は、調剤料、処方料、処方箋料、調剤技術基本料 、又は薬剤料を算定することができる。
Q. 保険医療機関において検査等を実施し、後日、電話や情報通信機器を用いて、検査結果等の説明に加えて、療養上必要な指導や、今後の診療方針の説明等を行った場合、電話等再診料を算定できるか。
A. 不要。 ただし、当該要件以外の要件を満たさなくなった場合は、速やかに届出を取り下げること。
Q. 新型コロナウイルスの感染症患者(新型コロナウイルス感染症であることが疑われる患者を含む。)に対して、往診等を実施する場合にも、必要な感染予防策を講じた上で当該患者の診療を行った場合には、院内トリアージ実施料を算定できるか。
A. 算定できる。 なお、必要な感染予防策については、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第1版」に従い、院内感染防止等に留意した対応を行うこと。特に、「5 院内感染防止」及び参考資料「新型コロナウイルス感染症に対する感染管理(国立感染症研究所)」の内容を参考とすること。
Q. 前月に「月2回以上訪問診療を行っている場合」の在宅時医学総合管理料又は施設入居時等医学総合管理料(以下「在医総管等」という。)を算定していた患者に対して、 当月も診療計画に基づいた定期的な訪問診療を予定していたが、新型コロナウイルスへの感染を懸念した患者等からの要望等により、訪問診療を1回実施し、加えて電話等を用いた診療を実施した場合について、どのように考えればよいか。
A. 当月に限り、患者等に十分に説明し同意を得た上で、診療計画に基づき「月2回以上訪問診療を行っている場合」の在医総管等を算定しても差し支えない。 なお、次月以降、訪問診療を月1回実施し、加えて電話等を用いた診療を実施する場合については、診療計画を変更し、「月1回訪問診療を行っている場合」の在医総管等を算定すること。ただし、電話等のみの場合は算定できない。 また、令和2年3月に「月1回訪問診療を行っている場合」を算定していた患者に対して、令和2年4月に電話等を用いた診療を複数回実施した場合は、「月1回訪問診療を行っている場合」を算定すること。 なお、令和2年4月については、緊急事態宣言が発令された等の状況に鑑み、患者等に十分に説明し同意を得た上で、訪問診療を行えず、電話等による診療のみの場合であっても、在医総管等を算定して差し支えない。
Q. 4月10日事務連絡により、電話や情報通信機器を用いた服薬指導等を実施した場合、その他の要件を満たせば薬剤服用歴管理指導料等を算定することが可能とされた。在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定していた患者に対して、薬学的管理指導計画に基づいた定期的な訪問薬剤管理指導を予定していたが、新型コロナウイルスへの感染を懸念した患者等からの要望等により、訪問の代わりに電話等により必要な薬学的管理指導を実施した場合について、どのように考えればよいのか。


A. 患者又はその家族等に十分に説明し同意を得た上で、薬剤服用歴管理指導料の「1」に掲げる点数を算定できることとする。 ただし、当月又はその前月に、当該患者に対し、在宅患者訪問薬剤管理指導料を1回以上算定している必要がある。 なお、この場合、「薬剤服用歴管理指導料」の点数については、在宅患者訪問薬剤管理指導料と合わせて月4回(末期の悪性腫瘍の患者及び中心静脈栄養法の対象患者にあっては、週2回かつ月8回)まで算定できることとする。


Q. 居宅療養管理指導費又は介護予防居宅療養管理指導費を算定している患者について、 当月において、新型コロナウイルスへの感染を懸念した患者等からの要望等により、患者又はその家族等に十分に説明し同意を得た上で、必要な薬学的管理指導を電話等により行った場合は薬剤服用歴管理指導料の点数を算定できるのか。


A. 同一月内において一度も居宅療養管理指導費又は介護予防居宅療養管理指導費を算定しなかった場合は、算定できる。
ただし、前月に、当該患者に対し、居宅療養管理指 導費又は介護予防居宅療養管理指導費を1回以上算定している必要がある。
なお、この場合、「薬剤服用歴管理指導料」の点数については、月4回(末期の悪 性腫瘍の患者及び中心静脈栄養法の対象患者にあっては、週2回かつ月8回)まで算定できることとする。

2020年4月10日金曜日

2020年4月1日からエフピーやビバンセを携帯して海外旅行が可能になりました




2020年4月1日に、覚醒剤原料に指定されている医薬品(医薬品覚醒剤原料)の病院・診療所や薬局での取扱い等を見直す改正覚醒剤取締法が施行されました。
法改正により医薬品覚醒剤原料の病院や薬局等における取扱い等が変更されます。

ポイント
●医薬品覚醒剤原料の携帯輸出入が可能に
●患者が死亡した場合、相続人等による医薬品である覚醒剤原料の所持が可能となりました
●患者、その相続人等から病院・薬局等への医薬品である覚醒剤原料の返却が可能になりました
●調剤済みの当該医薬品である覚醒剤原料は都道府県職員の立会いなしに廃棄可能
●覚醒剤原料取扱いに関する「帳簿」作成が義務化

改正の概要とQ&Aをまとめてみました。

2020年4月時点で医薬品覚醒剤原料として日本国内で承認されているものには、セレギリン塩酸塩錠(エフピーOD錠等)とリスデキサンフェンタミンメシル酸塩カプセル(ビバンセカプセル)の2成分が存在しています。




医薬品覚醒剤原料の携帯輸出入が可能に


覚醒剤取締法第30条の6第3項ただし書の規定により、自己の疾病治療のために医薬品である覚醒剤原料を服用している患者本人が海外旅行等で出国する場合には、あらかじめ厚生労働大臣の許可を受けて、当該医薬品である覚醒剤原料を携帯して持ち出す(携帯輸出する)ことができます。
ただし、この携帯輸出は、「自己の疾病治療の目的で携帯して輸出」する場合に限られているため、本人以外の者(本人と一緒に行動する付添人、介護人などを除く。)が携帯したり、渡航先へ郵送したりすることはできません。
また、当該医薬品である覚醒剤原料を、飲み残し等の理由により帰国時に持ち帰る予定がある場合には、「医薬品である覚醒剤原料携帯輸出許可」と同時に、あらかじめ「医薬品である覚醒剤原料携帯輸入許可」を受けておく必要があります。
申請に際しては、本人の住所地を管轄する地方厚生(支)局麻薬取締部に対し、医薬品である覚醒剤原料携帯輸入(輸出)許可申請書1部、医師の診断書1部の提出が必要です。
なお、申請手続、申請様式等の詳細については、管轄の地方厚生(支)局麻薬取締部に照会してください。
なお、日本からの持出し、日本への持込みとは別に、渡航先の国への持込み、渡航先の国からの持出しについて、その国による規制がある場合があるため、事前に渡航先の国の大使館や領事館等に照会してください。
【覚醒剤取締法第 30 条の6第1項、第3項】
【覚醒剤取締法施行規則第 12 条】

厚生労働省地方厚生局麻薬取締部のホームページ「【個人向け】麻薬・覚醒剤原料などを携帯して  日本を出入国する方へ」

Q. 医薬品である覚醒剤原料を、日本から郵送で海外へ送ることはできますか。
A. 個人が海外在住の家族等宛てに医薬品である覚醒剤原料を郵送することはできません。
個人が医薬品である覚醒剤原料を海外に持ち出すことができるのは、「本邦から出国する者が、厚生労働大臣の許可を受けて自己の疾病の治療の目的で医薬品である覚醒剤原料を携帯して輸出する場合」に限られています。
【覚醒剤取締法第 30 条の6第3項】

Q. 自己の疾病の治療の目的以外で医薬品である覚醒剤原料を携帯輸出入してもよいですか。
A. 患者本人以外の者(本人と一緒に行動する付添人、介護人などを除く。)が医薬品である覚醒剤原料を携帯して輸出(輸入)することはできません。
【覚醒剤取締法第 30 条の6第1項、第3項】

Q. 飼育している動物に治療として覚醒剤原料を使用している場合、覚醒剤原料を持って海外へ行くことはできますか?
A.覚醒剤原料輸出業者以外の者が、動物に使うために覚醒剤原料を輸出することはできません。
覚醒剤原料の輸出は、厚生労働大臣の指定を受けた「覚醒剤原料輸出業者」が厚生労働大臣の許可を受けて輸出する場合のほか、「本邦から出国する者が、厚生労働大臣の許可を受けて自己の疾病の治療の目的で医薬品である覚醒剤原料を携帯して輸出する場合」に限られています。
【覚醒剤取締法第 30 条の6第3項】


患者が死亡した場合、相続人等による医薬品である覚醒剤原料の所持が可能となりました


医師等から施用のため医薬品である覚醒剤原料の交付を受け、又は薬局開設者等から医師等の処方箋により薬剤師が調剤した医薬品である覚醒剤原料を譲り受けた者が死亡した場合において、その相続人又は相続人に代わって相続財産を管理する者が所持できるようになりました。
【覚醒剤取締法第 30 条の7第 13 項】


患者、その相続人等から病院・薬局等への医薬品である覚醒剤原料の返却が可能になりました


調剤済みまたは交付された医薬品覚醒剤原料が不要になった場合、病院、診療所、飼育動物診療施設及び薬局では、改正前は受け取り不可であったため患者等に対して自分で廃棄するよう指導していました。中には患者又はその家族等が行う廃棄を補助する名目で病院や薬局等で違法に受け取り廃棄していたところもあったようです。今回の改正により、病院・薬局等で受け取ったうえで廃棄を行うことができるようになりました。患者や相続人等に病院・薬局等への返却義務はありませんが、病院・薬局等で適切に廃棄することが望ましいため、麻薬同様、病院、薬局等で医薬品覚醒剤原料の交付や調剤をする際には、患者にその旨を周知することが望まれます。

医薬品である覚醒剤原料の交付を受けた者等は、どの薬局に対しても、不要になった医薬品である覚醒剤原料を譲渡することが可能です。病院から交付された医薬品である覚醒剤原料や、他薬局で調剤された医薬品である覚醒剤原料を譲渡することもできます。
【覚醒剤取締法第 30 条の9第1項第6号イ、ロ】

なお病院、診療所、又は飼育動物診療施設への不要になった医薬品である覚醒剤原料の譲渡は、当該医薬品である覚醒剤原料の交付を受けた医療機関に限られます。
これは、医薬品である覚醒剤原料の交付を受けた病院等でないと患者等から 不要となった医薬品である覚醒剤原料を譲り受けた際、その覚醒剤原料を保管することができない場合があるためです。
 【覚醒剤取締法第 30 条の9第1項第6号イ、ロ】
 【覚醒剤取締法第 30 条の 12 第2項】 


Q. 亡くなった父が生前に服用していた医薬品である覚醒剤原料の飲み残しはどのように処分すればよいですか。
薬局又は当該医薬品である覚醒剤原料の交付を受けた病院若しくは診療所に返却してください。発見した医薬品である覚醒剤原料がどの医療機関で交付されたものか分からない場合は、薬局に譲渡してください。
【覚醒剤取締法第 30 条の9第1項第6号ロ】

Q. 入院患者において、他の病院(薬局)で交付された持参薬の覚醒剤原料が不要になった場合、譲り受けてもよいですか。
A.他の病院(薬局)で交付された医薬品である覚醒剤原料を譲り受けることはできません。
患者から医薬品である覚醒剤原料を譲り受けることができる病院は、当該医薬品である覚醒剤原料を患者に譲り渡した病院に限られます。
なお、当該医薬品である覚醒剤原料を廃棄する場合には、患者に廃棄させることとしてください。放流するために粉砕するなど技術的に廃棄の補助を行うことは差し支えありませんが、廃棄の主体はあくまで患者です。
【覚醒剤取締法第 30 条の9第1項第6号イ】

Q. 病院又は薬局で取り扱っている医薬品である覚醒剤原料を、覚醒剤原料製造業者等に譲渡することはできますか。 
A. 通常はできません。
病院又は薬局で取り扱っている医薬品である覚醒剤原料は、不潔な物質等から成っているもの、異物が混入等しているもの、容器等が破損しているもの等に限り、厚生労働大臣の許可を受けて、覚醒剤原料製造業者等に譲り渡すことができます。また、厚生労働大臣の許可を受けて、患者の試験検査のために覚醒剤原料研究者等に譲り渡すことも可能です。 
【覚醒剤取締法第 30 条の9第1項第7号】 
【覚醒剤取締法施行規則第 14 条第2項】

Q. 家の近くに薬局や病院がありません。不要になった医薬品である覚醒剤原料を薬局等に返却する際、郵便等で送ってもよいですか。
A. 原則として、薬局や当該医薬品である覚醒剤原料を譲り受けた病院等に、直接持参してください。
薬局や当該医薬品である覚醒剤原料を譲り受けた病院等が遠隔地にあるなど、医薬品である覚醒剤原料を持参することが困難な場合には、書留郵便等を利用して返却しても差し支えありませんが、返却先の薬局等と相談の上で送付してください。
【覚醒剤取締法第 30 条の9第1項第6号イ】


調剤済みの当該医薬品である覚醒剤原料は都道府県職員の立会いなしに廃棄可能


医療用麻薬と同様に、薬剤師が調剤した医薬品である覚醒剤原料については、都道府県職員の立会いなしに廃棄可能になりました。
廃棄後30日以内に「交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料廃棄届出書」を、所在地の都道府県知事に届け出る必要があります。

患者等から不要になった医薬品である覚醒剤原料を譲り受けた場合は、速やかに「交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料譲受届出書」を所在地の都道府県知事に届け出た上で、廃棄します。また、廃棄後30日以内に「交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料廃棄届出書」を所在地の都道府県知事に届け出ます。
【覚醒剤取締法第 30 条の 14 第2項、第3項】
【覚醒剤取締法施行規則第 19 条第2項、第3項】

医薬品である覚醒剤原料の取扱いについて、麻薬の取扱いと異なり、薬局や医療機関に免許や年間報告を求めていないことから、所持するに至った医薬品である覚醒剤原料を把握するため「交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料譲受届出書」と「交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料廃棄届出書」の両方を届け出る必要があります。医療用麻薬に比べて届出が一つ多くなっています。

なお、「交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料譲受届出書」と「交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料廃棄届出書」を同日に提出することはできます。ただし、「交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料譲受届出書」は医薬品である覚醒剤原料を譲受した後、速やかに提出する必要があり、「交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料廃棄届出書」は医薬品である覚醒剤原料の廃棄後 30 日以内に提出する必要があります。2つの届出書の提出期間は異なるため、注意が必要です。

特段の理由がなければ、医薬品である覚醒剤原料の譲受後1週間以内を目処に届出を行い、届出後1週間以内を目処に廃棄することが望ましいでしょう。 


覚醒剤原料取扱いに関する「帳簿」作成が義務化


覚醒剤原料の受払の帳簿に関しては、通知(厚生省医薬安全局麻薬課長通知 医薬麻第1793号)において帳簿の記録が「望ましい」とされているだけで、法的には義務化されていませんでした。今回の法改正で医薬品覚醒剤原料の移動や所在を明確にし、管理の徹底を図るため、「帳簿」の作成が義務化されました。病院、薬局等の施設ごとに必ず帳簿を備え、取扱いに関して記載することが必要となります。
患者又はその相続人等から医薬品覚醒剤原料を返却された場合の、譲り受けや廃棄についての記録は、帳簿とは別に「廃棄簿」での管理可能とされています。

病院、診療所、飼育動物診療施設又は薬局の帳簿には、譲り渡し、譲り受け、施用し、施用のために交付し又は廃棄した医薬品である覚醒剤原料の品名及び数量並びにその年月日、覚醒剤取締法第 30 条の 14 第1項から第3項までの規定により届出をした医薬品である覚醒剤原料の品名及び数量を記載する必要があります。

帳簿は、最終の記入をした日から2年間保存しなければなりません。 
【覚醒剤取締法第 30 条の 17 第4項】



帳簿と覚醒剤原料を同じ保管庫内に保管することは、法律で禁じられてはいませんが、盗難等があった場合に被害数量が分からなくなるおそれがあることから、別の場所に保管することが望ましいと考えます。
なお、鍵をかけた場所とは、施錠設備のある倉庫・薬品庫のほかロッカー・金庫等の保管設備のことを指します。麻薬保管庫には保管できません。
ロッカー・金庫等を保管設備として使用する場合は、
①保管庫は容易に破られない材質のものであり、かつ堅固な鍵が付いていること
②保管庫が容易に持ち運びできる場合にあっては床にボルト等により固定すること
③覚醒剤原料専用の保管庫又は他のものと完全に分離する形態で保管することが望ましいこと
④保管庫はできるだけ人目につかない場所であって、施錠設備のある室内に設置すること
⑤保管庫を設置する室に非常ベル等の防犯装置を設置することが望ましい
ことにより、また建物の一部又は全部を保管設備として用いる場合は、
①保管場所の扉は金属製とし、堅固な鍵を設け、壁、天井、床については容易に破られない材質のものであること
②保管場所に窓、換気口がある場合には、鉄格子を入れること
③覚醒剤原料専用の保管場所又は他のものと完全に分離できる場所であることが望ましいこと
④保管場所の位置は、立地条件に応じ容易に侵入できないところに設置すること
⑤当該保管場所に非常ベル装置又は赤外線警報装置等の防犯装置を設置することが望ましいこと
によってください。
【覚醒剤取締法第 30 条の 12 第2項】
【令和2年3月 11 日付薬生監麻発 0311 第2号監視指導・麻薬対策課長通知】


Q. 特別養護老人ホームに入所する者が、医療機関において処方された医薬品である覚醒剤原料を持ち込んだ場合、施設として帳簿等を作成する必要はありますか。
A. 帳簿の備え付けや記録をしなければいけないのは、病院若しくは診療所 (病院等)の開設者です。特別養護老人ホームは病院等でないため、帳簿の備え付けや記録は不要です。 なお、医薬品である覚醒剤原料の保管・管理は入所者自身又は入所者を介護 している家族等が行うことが原則ですが、入所者自身が管理を行えない状況に あるときは、入居者の同意を得て、施設内において入所者の介護にあたる職員が保管・管理しても差し支えありません。
 【覚醒剤取締法第 30 条の 17 第3項】


その他


入院患者に交付する予定で払い出した医薬品である覚醒剤原料が、患者に交付する前に処方変更となった場合の対応、また医薬品である覚醒剤原料を服用している入院患者が死亡した場合、病棟で保管している残余薬の処理について。

患者に交付されていない(所有権が移転していない)のであれば、医薬品 としての品質に問題がない場合、交付・調剤前のものとして帳簿に戻して再利用することができます。患者に交付された後、患者による管理が難しい等の理由から病棟管理をしている場合については、当該医薬品である覚醒剤原料を患者の家族等から譲り受 けた後、速やかに「交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料譲受届出書」を 保管場所の所在地の都道府県知事に届け出た上で、廃棄してください。また、廃 棄後30日以内に「交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料廃棄届出書」を、 保管場所の所在地の都道府県知事に届け出てください。 
【覚醒剤取締法第 30 条の9第2項、同法第 30 条の 14 第2項、第3項】 
【覚醒剤取締法施行規則第 19 条第2項、第3項】 


介護医療院で交付された医薬品である覚醒剤原料を服用していた入所者が亡くなった場合の残薬の処理。

介護医療院については、介護保険法第 115 条に「医療法及びこれに基づく命令以外の法令の規定において「病院」又は「診療所」とあるのは、介護医療院を含むものとする。」と規定されていることから、覚醒剤取締法においても、病院又は診療所として取り扱われます。


調剤前の不良品の覚醒剤原料の対応。 

不良品の医薬品である覚醒剤原料は、厚生労働大臣の許可を受け、覚醒剤原料製造業者等に譲り渡すことができます。 
また、廃棄する場合は、当該覚醒剤原料の保管場所の所在地の都道府県知事に届け出て、都道府県等の職員の立会いの下で廃棄する必要があります。 譲渡するにせよ廃棄するにせよ、まずは、当該覚醒剤原料を譲り受けた覚醒剤原料製造業者等に相談してください。 
【覚醒剤取締法第 30 条の9第1項第7号、同法第 30 条の 13】 
【覚醒剤取締法施行規則第 14 条第2項】


医薬品である覚醒剤原料を患者から譲り受けた後、紛失した場合の対応。

「覚醒剤原料事故届出書」の届出が必要です。
【覚醒剤取締法第 30 条の 14 第1項】


参考:
覚醒剤原料の取扱いに係る質疑応答について(2020年3月24日 厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課)