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2020年4月10日金曜日

2020年4月1日からエフピーやビバンセを携帯して海外旅行が可能になりました




2020年4月1日に、覚醒剤原料に指定されている医薬品(医薬品覚醒剤原料)の病院・診療所や薬局での取扱い等を見直す改正覚醒剤取締法が施行されました。
法改正により医薬品覚醒剤原料の病院や薬局等における取扱い等が変更されます。

ポイント
●医薬品覚醒剤原料の携帯輸出入が可能に
●患者が死亡した場合、相続人等による医薬品である覚醒剤原料の所持が可能となりました
●患者、その相続人等から病院・薬局等への医薬品である覚醒剤原料の返却が可能になりました
●調剤済みの当該医薬品である覚醒剤原料は都道府県職員の立会いなしに廃棄可能
●覚醒剤原料取扱いに関する「帳簿」作成が義務化

改正の概要とQ&Aをまとめてみました。

2020年4月時点で医薬品覚醒剤原料として日本国内で承認されているものには、セレギリン塩酸塩錠(エフピーOD錠等)とリスデキサンフェンタミンメシル酸塩カプセル(ビバンセカプセル)の2成分が存在しています。




医薬品覚醒剤原料の携帯輸出入が可能に


覚醒剤取締法第30条の6第3項ただし書の規定により、自己の疾病治療のために医薬品である覚醒剤原料を服用している患者本人が海外旅行等で出国する場合には、あらかじめ厚生労働大臣の許可を受けて、当該医薬品である覚醒剤原料を携帯して持ち出す(携帯輸出する)ことができます。
ただし、この携帯輸出は、「自己の疾病治療の目的で携帯して輸出」する場合に限られているため、本人以外の者(本人と一緒に行動する付添人、介護人などを除く。)が携帯したり、渡航先へ郵送したりすることはできません。
また、当該医薬品である覚醒剤原料を、飲み残し等の理由により帰国時に持ち帰る予定がある場合には、「医薬品である覚醒剤原料携帯輸出許可」と同時に、あらかじめ「医薬品である覚醒剤原料携帯輸入許可」を受けておく必要があります。
申請に際しては、本人の住所地を管轄する地方厚生(支)局麻薬取締部に対し、医薬品である覚醒剤原料携帯輸入(輸出)許可申請書1部、医師の診断書1部の提出が必要です。
なお、申請手続、申請様式等の詳細については、管轄の地方厚生(支)局麻薬取締部に照会してください。
なお、日本からの持出し、日本への持込みとは別に、渡航先の国への持込み、渡航先の国からの持出しについて、その国による規制がある場合があるため、事前に渡航先の国の大使館や領事館等に照会してください。
【覚醒剤取締法第 30 条の6第1項、第3項】
【覚醒剤取締法施行規則第 12 条】

厚生労働省地方厚生局麻薬取締部のホームページ「【個人向け】麻薬・覚醒剤原料などを携帯して  日本を出入国する方へ」

Q. 医薬品である覚醒剤原料を、日本から郵送で海外へ送ることはできますか。
A. 個人が海外在住の家族等宛てに医薬品である覚醒剤原料を郵送することはできません。
個人が医薬品である覚醒剤原料を海外に持ち出すことができるのは、「本邦から出国する者が、厚生労働大臣の許可を受けて自己の疾病の治療の目的で医薬品である覚醒剤原料を携帯して輸出する場合」に限られています。
【覚醒剤取締法第 30 条の6第3項】

Q. 自己の疾病の治療の目的以外で医薬品である覚醒剤原料を携帯輸出入してもよいですか。
A. 患者本人以外の者(本人と一緒に行動する付添人、介護人などを除く。)が医薬品である覚醒剤原料を携帯して輸出(輸入)することはできません。
【覚醒剤取締法第 30 条の6第1項、第3項】

Q. 飼育している動物に治療として覚醒剤原料を使用している場合、覚醒剤原料を持って海外へ行くことはできますか?
A.覚醒剤原料輸出業者以外の者が、動物に使うために覚醒剤原料を輸出することはできません。
覚醒剤原料の輸出は、厚生労働大臣の指定を受けた「覚醒剤原料輸出業者」が厚生労働大臣の許可を受けて輸出する場合のほか、「本邦から出国する者が、厚生労働大臣の許可を受けて自己の疾病の治療の目的で医薬品である覚醒剤原料を携帯して輸出する場合」に限られています。
【覚醒剤取締法第 30 条の6第3項】


患者が死亡した場合、相続人等による医薬品である覚醒剤原料の所持が可能となりました


医師等から施用のため医薬品である覚醒剤原料の交付を受け、又は薬局開設者等から医師等の処方箋により薬剤師が調剤した医薬品である覚醒剤原料を譲り受けた者が死亡した場合において、その相続人又は相続人に代わって相続財産を管理する者が所持できるようになりました。
【覚醒剤取締法第 30 条の7第 13 項】


患者、その相続人等から病院・薬局等への医薬品である覚醒剤原料の返却が可能になりました


調剤済みまたは交付された医薬品覚醒剤原料が不要になった場合、病院、診療所、飼育動物診療施設及び薬局では、改正前は受け取り不可であったため患者等に対して自分で廃棄するよう指導していました。中には患者又はその家族等が行う廃棄を補助する名目で病院や薬局等で違法に受け取り廃棄していたところもあったようです。今回の改正により、病院・薬局等で受け取ったうえで廃棄を行うことができるようになりました。患者や相続人等に病院・薬局等への返却義務はありませんが、病院・薬局等で適切に廃棄することが望ましいため、麻薬同様、病院、薬局等で医薬品覚醒剤原料の交付や調剤をする際には、患者にその旨を周知することが望まれます。

医薬品である覚醒剤原料の交付を受けた者等は、どの薬局に対しても、不要になった医薬品である覚醒剤原料を譲渡することが可能です。病院から交付された医薬品である覚醒剤原料や、他薬局で調剤された医薬品である覚醒剤原料を譲渡することもできます。
【覚醒剤取締法第 30 条の9第1項第6号イ、ロ】

なお病院、診療所、又は飼育動物診療施設への不要になった医薬品である覚醒剤原料の譲渡は、当該医薬品である覚醒剤原料の交付を受けた医療機関に限られます。
これは、医薬品である覚醒剤原料の交付を受けた病院等でないと患者等から 不要となった医薬品である覚醒剤原料を譲り受けた際、その覚醒剤原料を保管することができない場合があるためです。
 【覚醒剤取締法第 30 条の9第1項第6号イ、ロ】
 【覚醒剤取締法第 30 条の 12 第2項】 


Q. 亡くなった父が生前に服用していた医薬品である覚醒剤原料の飲み残しはどのように処分すればよいですか。
薬局又は当該医薬品である覚醒剤原料の交付を受けた病院若しくは診療所に返却してください。発見した医薬品である覚醒剤原料がどの医療機関で交付されたものか分からない場合は、薬局に譲渡してください。
【覚醒剤取締法第 30 条の9第1項第6号ロ】

Q. 入院患者において、他の病院(薬局)で交付された持参薬の覚醒剤原料が不要になった場合、譲り受けてもよいですか。
A.他の病院(薬局)で交付された医薬品である覚醒剤原料を譲り受けることはできません。
患者から医薬品である覚醒剤原料を譲り受けることができる病院は、当該医薬品である覚醒剤原料を患者に譲り渡した病院に限られます。
なお、当該医薬品である覚醒剤原料を廃棄する場合には、患者に廃棄させることとしてください。放流するために粉砕するなど技術的に廃棄の補助を行うことは差し支えありませんが、廃棄の主体はあくまで患者です。
【覚醒剤取締法第 30 条の9第1項第6号イ】

Q. 病院又は薬局で取り扱っている医薬品である覚醒剤原料を、覚醒剤原料製造業者等に譲渡することはできますか。 
A. 通常はできません。
病院又は薬局で取り扱っている医薬品である覚醒剤原料は、不潔な物質等から成っているもの、異物が混入等しているもの、容器等が破損しているもの等に限り、厚生労働大臣の許可を受けて、覚醒剤原料製造業者等に譲り渡すことができます。また、厚生労働大臣の許可を受けて、患者の試験検査のために覚醒剤原料研究者等に譲り渡すことも可能です。 
【覚醒剤取締法第 30 条の9第1項第7号】 
【覚醒剤取締法施行規則第 14 条第2項】

Q. 家の近くに薬局や病院がありません。不要になった医薬品である覚醒剤原料を薬局等に返却する際、郵便等で送ってもよいですか。
A. 原則として、薬局や当該医薬品である覚醒剤原料を譲り受けた病院等に、直接持参してください。
薬局や当該医薬品である覚醒剤原料を譲り受けた病院等が遠隔地にあるなど、医薬品である覚醒剤原料を持参することが困難な場合には、書留郵便等を利用して返却しても差し支えありませんが、返却先の薬局等と相談の上で送付してください。
【覚醒剤取締法第 30 条の9第1項第6号イ】


調剤済みの当該医薬品である覚醒剤原料は都道府県職員の立会いなしに廃棄可能


医療用麻薬と同様に、薬剤師が調剤した医薬品である覚醒剤原料については、都道府県職員の立会いなしに廃棄可能になりました。
廃棄後30日以内に「交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料廃棄届出書」を、所在地の都道府県知事に届け出る必要があります。

患者等から不要になった医薬品である覚醒剤原料を譲り受けた場合は、速やかに「交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料譲受届出書」を所在地の都道府県知事に届け出た上で、廃棄します。また、廃棄後30日以内に「交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料廃棄届出書」を所在地の都道府県知事に届け出ます。
【覚醒剤取締法第 30 条の 14 第2項、第3項】
【覚醒剤取締法施行規則第 19 条第2項、第3項】

医薬品である覚醒剤原料の取扱いについて、麻薬の取扱いと異なり、薬局や医療機関に免許や年間報告を求めていないことから、所持するに至った医薬品である覚醒剤原料を把握するため「交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料譲受届出書」と「交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料廃棄届出書」の両方を届け出る必要があります。医療用麻薬に比べて届出が一つ多くなっています。

なお、「交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料譲受届出書」と「交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料廃棄届出書」を同日に提出することはできます。ただし、「交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料譲受届出書」は医薬品である覚醒剤原料を譲受した後、速やかに提出する必要があり、「交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料廃棄届出書」は医薬品である覚醒剤原料の廃棄後 30 日以内に提出する必要があります。2つの届出書の提出期間は異なるため、注意が必要です。

特段の理由がなければ、医薬品である覚醒剤原料の譲受後1週間以内を目処に届出を行い、届出後1週間以内を目処に廃棄することが望ましいでしょう。 


覚醒剤原料取扱いに関する「帳簿」作成が義務化


覚醒剤原料の受払の帳簿に関しては、通知(厚生省医薬安全局麻薬課長通知 医薬麻第1793号)において帳簿の記録が「望ましい」とされているだけで、法的には義務化されていませんでした。今回の法改正で医薬品覚醒剤原料の移動や所在を明確にし、管理の徹底を図るため、「帳簿」の作成が義務化されました。病院、薬局等の施設ごとに必ず帳簿を備え、取扱いに関して記載することが必要となります。
患者又はその相続人等から医薬品覚醒剤原料を返却された場合の、譲り受けや廃棄についての記録は、帳簿とは別に「廃棄簿」での管理可能とされています。

病院、診療所、飼育動物診療施設又は薬局の帳簿には、譲り渡し、譲り受け、施用し、施用のために交付し又は廃棄した医薬品である覚醒剤原料の品名及び数量並びにその年月日、覚醒剤取締法第 30 条の 14 第1項から第3項までの規定により届出をした医薬品である覚醒剤原料の品名及び数量を記載する必要があります。

帳簿は、最終の記入をした日から2年間保存しなければなりません。 
【覚醒剤取締法第 30 条の 17 第4項】



帳簿と覚醒剤原料を同じ保管庫内に保管することは、法律で禁じられてはいませんが、盗難等があった場合に被害数量が分からなくなるおそれがあることから、別の場所に保管することが望ましいと考えます。
なお、鍵をかけた場所とは、施錠設備のある倉庫・薬品庫のほかロッカー・金庫等の保管設備のことを指します。麻薬保管庫には保管できません。
ロッカー・金庫等を保管設備として使用する場合は、
①保管庫は容易に破られない材質のものであり、かつ堅固な鍵が付いていること
②保管庫が容易に持ち運びできる場合にあっては床にボルト等により固定すること
③覚醒剤原料専用の保管庫又は他のものと完全に分離する形態で保管することが望ましいこと
④保管庫はできるだけ人目につかない場所であって、施錠設備のある室内に設置すること
⑤保管庫を設置する室に非常ベル等の防犯装置を設置することが望ましい
ことにより、また建物の一部又は全部を保管設備として用いる場合は、
①保管場所の扉は金属製とし、堅固な鍵を設け、壁、天井、床については容易に破られない材質のものであること
②保管場所に窓、換気口がある場合には、鉄格子を入れること
③覚醒剤原料専用の保管場所又は他のものと完全に分離できる場所であることが望ましいこと
④保管場所の位置は、立地条件に応じ容易に侵入できないところに設置すること
⑤当該保管場所に非常ベル装置又は赤外線警報装置等の防犯装置を設置することが望ましいこと
によってください。
【覚醒剤取締法第 30 条の 12 第2項】
【令和2年3月 11 日付薬生監麻発 0311 第2号監視指導・麻薬対策課長通知】


Q. 特別養護老人ホームに入所する者が、医療機関において処方された医薬品である覚醒剤原料を持ち込んだ場合、施設として帳簿等を作成する必要はありますか。
A. 帳簿の備え付けや記録をしなければいけないのは、病院若しくは診療所 (病院等)の開設者です。特別養護老人ホームは病院等でないため、帳簿の備え付けや記録は不要です。 なお、医薬品である覚醒剤原料の保管・管理は入所者自身又は入所者を介護 している家族等が行うことが原則ですが、入所者自身が管理を行えない状況に あるときは、入居者の同意を得て、施設内において入所者の介護にあたる職員が保管・管理しても差し支えありません。
 【覚醒剤取締法第 30 条の 17 第3項】


その他


入院患者に交付する予定で払い出した医薬品である覚醒剤原料が、患者に交付する前に処方変更となった場合の対応、また医薬品である覚醒剤原料を服用している入院患者が死亡した場合、病棟で保管している残余薬の処理について。

患者に交付されていない(所有権が移転していない)のであれば、医薬品 としての品質に問題がない場合、交付・調剤前のものとして帳簿に戻して再利用することができます。患者に交付された後、患者による管理が難しい等の理由から病棟管理をしている場合については、当該医薬品である覚醒剤原料を患者の家族等から譲り受 けた後、速やかに「交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料譲受届出書」を 保管場所の所在地の都道府県知事に届け出た上で、廃棄してください。また、廃 棄後30日以内に「交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料廃棄届出書」を、 保管場所の所在地の都道府県知事に届け出てください。 
【覚醒剤取締法第 30 条の9第2項、同法第 30 条の 14 第2項、第3項】 
【覚醒剤取締法施行規則第 19 条第2項、第3項】 


介護医療院で交付された医薬品である覚醒剤原料を服用していた入所者が亡くなった場合の残薬の処理。

介護医療院については、介護保険法第 115 条に「医療法及びこれに基づく命令以外の法令の規定において「病院」又は「診療所」とあるのは、介護医療院を含むものとする。」と規定されていることから、覚醒剤取締法においても、病院又は診療所として取り扱われます。


調剤前の不良品の覚醒剤原料の対応。 

不良品の医薬品である覚醒剤原料は、厚生労働大臣の許可を受け、覚醒剤原料製造業者等に譲り渡すことができます。 
また、廃棄する場合は、当該覚醒剤原料の保管場所の所在地の都道府県知事に届け出て、都道府県等の職員の立会いの下で廃棄する必要があります。 譲渡するにせよ廃棄するにせよ、まずは、当該覚醒剤原料を譲り受けた覚醒剤原料製造業者等に相談してください。 
【覚醒剤取締法第 30 条の9第1項第7号、同法第 30 条の 13】 
【覚醒剤取締法施行規則第 14 条第2項】


医薬品である覚醒剤原料を患者から譲り受けた後、紛失した場合の対応。

「覚醒剤原料事故届出書」の届出が必要です。
【覚醒剤取締法第 30 条の 14 第1項】


参考:
覚醒剤原料の取扱いに係る質疑応答について(2020年3月24日 厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課)