ページ

2020年3月13日金曜日

2020年度診療報酬改定 退院時薬剤情報連携加算【退院時薬剤情報管理指導料】



2020年度診療報酬改定において、ポリファーマシーに対する方策として退院時薬剤情報管理指導料に退院時薬剤情報連携加算が新設されました。



薬を何種類も服用しなくてはならない状態の中で、害をなすものを特にポリファーマシーと呼びます。ポリファーマシーは、単に服用する薬剤数が多いことではなく、それに関連した薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態のことです。

ポリファーマシー解消のために病院では入院時に服用薬剤の中止や変更を行っています。退院時薬剤情報連携加算は、入院時に行ったポリファーマシー解消のための減薬の情報を退院時に調剤薬局へ文書で提供した際に算定できるものです。

退院時薬剤情報連携加算を算定するには、入院前の処方の内容に変更又は中止の見直しが必要です。そして患者又はその家族等の同意を得て、退院時に見直しの理由や見直し後の患者の状態等を保険薬局に対して文書で情報提供を行った場合に、退院の日に1回に限り60点を算定できます。
なお、患者1人につき複数の保険薬局に対し情報提供を行った場合においても、1回のみの算定です。
情報提供する調剤薬局は患者又はその家族に選んでもらいます。
文書は患者もしくはその家族等又は保険薬局に交付します。交付した文書の写しを診療録等に添付する必要があります。
作成する文書は日本病院薬剤師会作成の「薬剤管理サマリー」を参考にすると良いでしょう。

本来であれば処方をする退院後のかかりつけ医への情報提供が評価されてもよいのですが、そうではなく、調剤薬局への情報提供が評価されているのは病院と診療所の橋渡しを行い、調剤薬局の薬剤師が地域における継続的な薬学的管理指導を発揮することを期待されているのかもしれません。

2020.07追記
地域医療連携のためのツールとして、お薬手帳や施設間情報連絡書(薬剤管理サマリー)、服薬情報提供文書(トレーシングレポート)を活用する方法は2020年4月23日に病院薬剤師会が公表した、「地域医療連携の手引き(Ver.1)」が参考になります。
「地域医療連携の手引き(Ver.1)」は医療機関の薬剤師が、薬局薬剤師や他施設の医療従事者との情報共有を図ることを主な目的とした手引です。


[医科点数表]
B014 退院時薬剤情報管理指導料
注1
保険医療機関が、患者の入院時に当該患者が服薬中の医薬品等について確認するとともに、当該患者に対して入院中に使用した主な薬剤の名称(副作用が発現した場合については、当該副作用の概要、講じた措置等を含む。)に関して当該患者の手帳に記載した上で、退院に際して当該患者又はその家族等に対して、退院後の薬剤の服用等に関する必要な指導を行った場合に、退院の日に1回に限り算定する。この場合において、同一日に、区分番号B005に掲げる退院時共同指導料2(注1の規定により、入院中の保険医療機関の薬剤師が指導等を行った場合に限る。)は、別に算定できない。

(退院時薬剤情報連携加算)
注2
保険医療機関が、入院前の内服薬の変更をした患者又は服用を中止した患者について、保険薬局に対して、当該患者又はその家族等の同意を得て、その理由や変更又は中止後の当該患者の状況を文書により提供した場合に、退院時薬剤情報連携加算として、60点を所定点数に加算する。


[留意事項 保医発0305第1号]
B014 退院時薬剤情報管理指導料
(1) 退院時薬剤情報管理指導料は、医薬品の副作用や相互作用、重複投薬を防止するため、患者の入院時に、必要に応じ保険薬局に照会するなどして薬剤服用歴や患者が持参した医薬品等(医薬部外品及びいわゆる健康食品等を含む。)を確認するとともに、入院中に使用した主な薬剤の名称等について、患者の薬剤服用歴が経時的に管理できる手帳(区分番号「B011-3」薬剤情報提供料の(2)に掲げる手帳をいう。以下同じ。)に記載した上で、患者の退院に際して当該患者又はその家族等に対して、退院後の薬剤の服用等に関する必要な指導を行った場合に、退院の日に1回に限り算定する。
なお、ここでいう退院とは、第1章第2部通則5に規定する入院期間が通算される入院における退院のことをいい、入院期間が通算される再入院に係る退院日には算定できない。
(2) 入院時に、医薬品の服用状況及び薬剤服用歴を手帳等により確認するとともに、患者が、医薬品等を持参している場合には、当該医薬品等について実際に確認し、その名称等及び確認した結果の要点を診療録等に記載する。
(3) 入院中に使用した薬剤のうち、どの薬剤について手帳に記載するかは、患者の病態や使用する薬剤の種類によるが、少なくとも、退院直前(概ね退院前1週間以内)に使用した薬剤及び入院中に副作用が発現した薬剤については記載する。副作用が発現した薬剤については、投与量、当該副作用の概要、投与継続の有無を含む講じた措置、転帰等について記載する。
(4) 患者の退院に際して、当該患者又はその家族等に、退院後の薬剤の服用等に関する必要な指導(保険医療機関を受診する際や保険薬局に処方箋を提出する際に、手帳を提示する旨の指導を含む。)を行うとともに、退院後の療養を担う保険医療機関での投薬又は保険薬局での調剤に必要な服薬の状況及び投薬上の工夫に関する情報について、手帳に記載すること。
なお、指導の要点についても、分かりやすく手帳に記載し、必要に応じて退院時の処方に係る薬剤の情報を文書で提供すること。
なお、退院後、在宅療養を必要とする患者であって、手帳にかかりつけ薬剤師の氏名が記載されている場合は、退院後の薬学的管理及び指導に関しかかりつけ薬剤師への相談を促すよう努めること。
また、入院時に当該患者が持参した医薬品の服用状況等について保険薬局から提供を受けた場合には、患者の退院に際して、患者の同意を得たうえで、当該保険薬局に対して当該患者の入院中の使用薬剤や服薬の状況等について情報提供すること。
(5) 手帳を所有している患者については、原則として、退院時までに家族等に持参してもらうこととするが、持参できない場合には、必要な情報が記載された簡潔な文書(シール等)を交付し、所有している手帳に添付するよう、患者に対して指導を行った場合又は新たに手帳を発行した場合でも算定できる。
(6) 退院時薬剤情報管理指導料を算定した場合は、薬剤情報を提供した旨及び提供した情報並びに指導した内容の要点を診療録等に記載する。
なお、区分番号「B008」薬剤管理指導料を算定している患者の場合にあっては、薬剤管理指導記録に記載することで差し支えない。
(7) 「注2」に規定する退院時薬剤情報連携加算は、地域における継続的な薬学的管理指導を支援するため、保険医療機関から保険薬局に対して、患者の入院前の処方薬の変更又は中止に関する情報や変更又は中止後の患者の状態等に関する情報を提供することを評価するものである。
(8) 「注2」に規定する退院時薬剤情報連携加算は、退院時薬剤情報管理指導料の算定対象となる患者であって、入院前の処方の内容に変更又は中止の見直しがあったものに対して、患者又はその家族等の同意を得て、退院時に見直しの理由や見直し後の患者の状態等を、患者又はその家族等の選択する保険薬局に対して、文書で情報提供を行った場合に、退院の日に1回に限り算定する。なお、患者1人につき複数の保険薬局に対し情報提供を行った場合においても、1回のみの算定とする。
(9) 保険薬局への情報提供に当たっては、「薬剤管理サマリー」(日本病院薬剤師会)等の様式を参照して情報提供文書を作成し、当該文書を患者若しくはその家族等又は保険薬局に交付する。この場合において交付した文書の写しを診療録等に添付する。
(10) 死亡退院の場合は算定できない。