ページ

2019年3月6日水曜日

テルロン錠0.5 販売中止と代替品




選択的ドパミン作動薬のテルロン錠が販売中止となるようです。

販売中止のお知らせ|バイエル薬品(2019年2月)
https://pharma-navi.bayer.jp/static/media/pdf/products/information/TLN_PNS_201902220.pdf

経過措置期間満了日:2020年3月末予定


テルロン錠は、バイエル社が開発した麦角アルカロイドであるエルゴリン誘導体のテルグリドを主成分として含有する製剤です。

1994年10月に承認され、1995年3月に発売され約25年間、高プロラクチン血性排卵障害や高プロラクチン血性下垂体腺腫、乳汁漏出症の治療、そして産褥性乳汁分泌抑制と女性のために頑張ってきた薬です。

テルグリドは、内分泌系においては下垂体前葉のドパミンD2受容体に作動薬として作用することでプロラクチン分泌を持続的に抑制します。また、中枢神経系ではドパミンD2受容体に対し部分作動薬として作用することから他の高プロラクチン血症に使用するドパミン作動薬に比べ嘔吐等の中枢性副作用が少ないことが特徴です。


テルロン錠0.5の代替品


高プロラクチン血症の治療薬としてはテルロン錠の他に、パーロデル(ブロモクリプチン)、カバサール(カベルゴリン)があります。

パーロデル
初期量として2.5mgを夕食後より投与し増量していき、プロラクチン正常化で維持量とします。通常食直後投与ですが、嘔気嘔吐などの消化器症状が起きやすいため、消化器症状緩和を目的とし寝る前に投与することもあります。


カバサール
週1回0.25mgより開始します。2週以上の間隔で増量し、維持量を決めます。心臓弁膜症患者には使用できないので注意が必要です。さらに長期投与において心臓弁膜症が現れることがあるので、投与前・投与中に聴診等の身体所見の観察、心エコー検査により確認が必要です。
この薬は、光りと湿気に弱いので乾燥剤入りの専用遮光袋に入れて保存します。
いろいろ気を使う薬です。


なお、テルロン錠には後発品が存在します。


2019年3月5日火曜日

空腹時投与から食後投与へ 珍しい用法用量変更 ジカディアカプセル




2019年2月21日、肺がん治療薬のジカディアカプセル150mgの新しい用法用量が承認されました。

今まで用法用量は「750mgの1日1回空腹時投与」となっていました。
今回、用法用量が「450mgの1日1回食後投与」に変更されました。

1日用量が減り、服用タイミングも空腹時から食後という、大幅な変更です。
かなり珍しいケースです。

この変更に伴い、
「食事の影響を避けるため、食事の前1時間および食事の後2時間以内を避けて服用してください。必ず指示された服用方法に従ってください。」
という注意事項も削除されています。

患者さんが古いくすりのしおりを見て混乱しないように注意しなくてはいけません。


用法用量変更の経緯

「750mgの1日1回空腹時投与」は、未治療の進行ALK融合遺伝子陽性非小細がん(NSCLC)に優れた効果を示すものの、服薬継続ができなくなるほどの下痢、悪心嘔吐などの消化器症状が発現することが課題となっていました。

こうした患者の負担を軽減するために、有効性を保ちながら、消化器症状の発現の軽減により安全性プロファイルを改善できる用法及び用量を検討するための治験(CLDK378A2112試験)を実施。

「450mgの1日1回食後投与」においても有効性維持と毒性低減を両立できたことから今回の変更に至っています。


【参考】
ASCND-8(Clinical Trials.gov)
ALK陽性NSCLCに対し、セリチニブ450または600mgを低脂肪食と服用した群と、750mgの空腹時服用を比較した無作為化オープンラベル試験。

カリクレイン錠 販売中止と代替品




循環系作用酵素製剤のカリクレイン錠10単位が販売中止となるようです。

販売中止のお知らせ|バイエル薬品 2019年1月
https://pharma-navi.bayer.jp/omr/online/notice_info/KAL_PNS_201901070_1545022917.pdf

経過措置期間:未定


カリクレイン錠は新鮮な豚の膵臓から抽出生成された糖タンパク質からなる酵素であるカリジノゲナーゼを主成分とする薬剤です。
カリジノゲナーゼは1925年にヒトの尿中に存在する血圧を下げる物質として、ミュンヘン大学のFreyの研究グループによって発見されました。その後、バイエル社が降圧薬として研究・開発に着手し1930年代に製剤化に成功しました。
日本では、1951年当時の吉富製薬がドイツのバイエル社から輸入を取扱い国内の流通が開始されました。

2019年の販売中止まで約70年間医療現場で活躍した薬です。
カリクレインはカリクレイン・キニン系に作用する唯一の薬剤で、発売当初はレセルピンとともに高血圧や末梢循環改善の治療に使用されてきました。最近は降圧剤としての使用よりは、高血圧に伴う肩こり、頭痛症例に対して使われることが多いです。また基礎的な検討において蝸牛血流の増加が報告されていることから耳鼻科領域でめまい患者にも処方されています。


カリクレイン錠10単位の代替品


カリクレインの代替品として同じカリジノゲナーゼ製剤であるカルナクリンやサークレチンS及びその後発品があげられます。

効能効果はカリクレインもカルナクリンも同じです。
違いは、1錠あたりのカリジノゲナーゼの量です。
カリクレインが1錠あたり10単位なのに対し、カルナクリンは25単位と50単位配合されています。
また用法用量はカリクレインは1日量が30~60単位 分3なのに対しカルナクリンは30~150単位 分3と異なっています。

カルナクリン50単位はカリクレインの2倍程度の薬価しか差がないですがカリジノゲナーゼの量は5倍です。そのお得感もあってかはわかりませんが、処方量もカリジノゲナーゼ製剤の中では1位(第3回NDBデータ)となっています。2位はカルナクリンの後発品、カリジノゲナーゼ錠50単位「日医工」です。


カリクレイン錠から切り替えるとしたら、薬効的にはどのカリジノゲナーゼ製剤でも大差はないでしょう。そこで、錠剤のサイズに着目してみたいと思います。

カリクレインの錠剤の大きさは以下のとおりです。
直径(mm)6.2
厚さ(mm)2.6~3.1
色 白色

直径の長さが近いカリジノゲナーゼ製剤は次の通り。

  • カリジノゲナーゼ錠25単位「アメル」 
    6.3 mm 白色〜微黄白色
  • カリジノゲナーゼ錠25単位「サワイ」 
    6.2 mm 淡橙色
  • カリジノゲナーゼ錠25単位「日新」  
    6.3 mm 白色〜微黄白色
  • カリジノゲナーゼ錠50単位「日医工」 
    6.3 mm だいだい色
  • サークレチンS錠25
    6.6 mm 白色


「日医工」は25単位の間違いではありません。50単位のほうがサイズが小さく設計されているようです。


カリジノゲナーゼの作用機序


カリジノゲナーゼ(kallidinogenase)は血漿中のキニノーゲンからキニンを遊離させ、このキニンが直接血管平滑筋に作用して血管を拡張させます。さらにキニンはプロスタグランジン(PG)や一酸化窒素(NO)の産生を介して微小循環障害を改善すると考えられています。
適応疾患
1)以下の疾患における末梢循環障害の改善:高血圧症、メニエール症候群、閉塞性血栓血管炎(ビュルガー病)
2)以下の症状の改善:更年期障害、網脈絡膜の循環障害