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2018年12月22日土曜日

エンシュアのコーヒー味にカフェインは含まれていますか?




エンシュアリキッド、エンシュアHのコーヒー味にはカフェインは含まれていません。
香料のみで味付けしているそうです。

医薬品の経腸栄養剤は窒素源の形態によりエレンタールなどおの成分栄養剤、ツインラインNFなどの消化態栄養剤、エンシュア・リキッド,ラコールNFなどの半消化態栄養剤の3群に分けることができます。
経腸栄養法において消化吸収機能が保たれている場合は半消化態栄養剤が第1選択となります。少量より開始し標準量へ増やしていきます。肝疾患や腎不全など病態別経腸栄養剤もあります。

これら経腸栄養剤の中には複数の味やフレーバーを提供しているものがあります。

中でも、コーヒー味は人気があるように感じます。患者さんいわく「薬の甘ったるさをコーヒーの苦味がマスクしてくれる」そうです。

そんなコーヒー味ですがよくある問い合わせの一つに
カフェインは含まれるのか?
というものがあります。

各種経腸栄養剤のコーヒー味(フレーバー)のカフェイン含量についてメーカーに確認しました。
以下にまとめています。

●エンシュア・リキッド エンシュアH
カフェインは含まれていない。
香料のみでコーヒー風味または抹茶風味にしている。

●アミノレバンEN
カフェインは含まれていない。
コーヒーに由来するものは使用していない。

●エレンタール、へパンED用フレーバー
原料にコーヒーエキスパウダーを使用している。
1包あたり83mgのカフェインを含んでいる。
これは、インスタントコーヒー1杯分に相当。

●ラコールNF
コーヒー味には製剤200mLあたり0.2mg含有している。
抹茶味には製剤200mLあたり0.7mg含有している。




2018年12月18日火曜日

メサフィリン配合散/配合錠 販売中止と代替品



胃・十二指腸潰瘍、胃炎治療剤のメサフィリン配合散/配合錠が販売中止となるようです。

2019年4月販売中止
経過措置期間2020年3月末まで(予定)

メサフィリン配合散は1953年、メサフィリン配合錠は1954年に販売を開始し、
2019年をもって需要低下に伴いやむなく販売中止となります。
緑の錠剤や粉薬は珍しく非常に特徴的な外見の薬でした。
在宅訪問すると、飲まれずに余っている代表選手です。緑で目立ちますし印象に残っています。

メサフィリンは銅クロロフィリンナトリウム、プロパンテリン臭化物、ケイ酸マグネシウムの3成分が配合された製剤です。葉緑素から作られた緑の成分の銅クロロフィリンナトリウムが荒れた胃粘膜を修復・保護し、ケイ酸マグネシウムが出過ぎた胃酸を中和、プロパンテリン臭化物が胃酸分泌を抑制します。

メサフィリンの名称の由来は
プロパンテリン臭化物の別名のプロメサンテリンブロマイドの「メサ」と銅クロロフィリンナトリウムの「フィリン」です。


メサフィリン配合散/配合錠の代替品


メサフィリンの適応は「胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃炎における自覚症状及び他覚所見の改善」です。
胃潰瘍に対する非除菌治療の維持療法にはH2ブロッカースクラルファートが推奨されています。また、十二指腸潰瘍のそれでは、上記薬剤にPPIが追加され推奨されています。



メサフィリンと同一の適応症をもつ、配合剤は以下のとおりです。

●キャベジンUコーワ配合散
 【成分】
  メチルメチオニンスルホニウムクロリド
  メタケイ酸アルミン酸マグネシウム
  沈降炭酸カルシウム
  炭酸マグネシウム
 ※甲状腺機能亢進症、透析患者には禁忌

●コランチル配合顆粒
 【成分】
  ジサイクロミン塩酸塩
  乾燥水酸化アルミニウムゲル
  酸化マグネシウム
 ※甲状腺機能亢進症、前立腺肥大による排尿障害、麻痺性イレウス、重篤な心不全、透析患者には禁忌

●マーズレンS配合顆粒・配合錠
 【成分】
  アズレンスルホン酸ナトリウム水和物
  L-グルタミン

緑の胃薬サクロン♪

「緑の胃薬 サクロン」のCMでおなじみの一般用医薬品のサクロンは、メサフィリンの成分である銅クロロフィリンナトリウムを配合したものです。
胃酸の中和や分泌を抑える成分はメサフィリンとは異なります。

メサフィリンも劇的に効く薬ではないですし、一般用医薬品で代替可能です。




鉄剤とビタミンCを一緒に摂取してもあまり意味はない



鉄剤とビタミンCを一緒に摂取してもあまり意味はありません


小腸にある鉄を細胞内に吸収するトランスポーターは還元型の鉄(Fe2+)しか輸送できないため、鉄を還元状態に保つことが鉄剤の吸収効率を上げると考えて、医薬品である鉄製剤とビタミンCの同時投与が、かつては行われていました。
しかし明らかなエビデンスがないため、現在は行われていません。

では、ビタミンCが鉄の吸収を助けるというのは嘘なのか?というと、そうではありません。あくまで、薬としての鉄剤との併用メリットの確証がないだけで、食事から摂取される鉄の吸収にはビタミンCは多いに関与しています。

2018年8月理研と兵庫県立大学によって、ビタミンCが鉄分の吸収を促進するメカニズムを原子レベルで解明されました。
http://www.u-hyogo.ac.jp/outline/media/press/2018/monthly/pdf/20180820.pdf

ビタミンCだけでなく食物に含まれる有機酸もFe3+の還元反応を促進する補助に関与していることがわかりました。

食べ物からの鉄は非還元型のFe3+で存在しているため、ビタミンCや有機酸が吸収に大いに寄与しますが、還元型の鉄Fe2+として体内に供給可能な硫酸鉄徐放剤や、フェロミアやフェルムなどの有機酸鉄であるため、ビタミンC併用による吸収効率増加の寄与は大きくないと考えられます。

出典:兵庫県立大学プレスリリースより


鉄剤は食後に服用してはいけないの?


低いpHで鉄吸収の効率がよいと考えられていたことから、かつては空腹時の投与が望ましいと考えられていました。
しかし、空腹時に投与しても吐き気などの胃腸症状が頻発するだけで、食後投与と対して効果も変わりません。
そのため、胃腸症状の発現を抑える目的で、現在は食後に投与するのが一般的です。


鉄剤とお茶は一緒に飲んでもいいの?


大量でないのであれば、お茶を飲んでも問題ありません。

茶類が含むタンニン酸が鉄イオンと結合するため吸収効率が低下すると考えられていたことから、鉄剤服用前後にお茶類を飲むことを制限していた歴史があります。
確かに健常男子において、鉄剤服用後3時間までお茶により吸収に影響があることは報告されています。しかし女性や貧血患者などの場合には、鉄吸収能が健常男子に比較して亢進しているので鉄剤の吸収への影響は小さくなると考えられています。
鉄欠乏性貧血の治療において、臨床上の支障をきたすほどの影響があるとは考えにくいことから現在は多量の茶類摂取でなければ問題はないと考えられています。

 鉄剤服用患者にお茶を飲むなということは、日常生活上の不自由を強制することになります。お茶を飲むことが鉄欠乏性貧血の治療に障害を与えるほどの影響がないなら、鉄剤服用患者に対してノンコンプライアンスを避ける意味でもお茶を控えるということは見直す必要があります。


鉄剤はいつまで飲むの?

体に鉄を貯めるために最低でも4週間以上。

鉄剤を投与開始して4週間後には、検査を実施してヘモグロビン値の上昇を確認します。
投与開始後2週間後の網赤血球数を測定して、赤血球造血の亢進を確認することもあります。
投与4週間後のヘモグロビン値が上昇して基準値内に入った場合、
それでもすぐに鉄剤の投与を中止しません。
血清フェリチン値をモニターしながら、十分に貯蔵鉄が蓄積したのを確認してから治療を終了します。
血清フェリチンの基準値は幅が広いので、少なくとも100ng/mL以上に達するまで継続されます。

投与4週間後のヘモグロビン値が投与開始前の値から上昇が認められない場合は、
鉄吸収障害やほかの病因による貧血の合併などを考慮します。
子宮筋腫など明らかな出血源が確認されている場合には、鉄剤の中止により再度鉄欠乏状態に陥ることがあるので、3〜6か月ごとに血算と血清フェリチン値を測定しながら、注意深く投薬を続ける必要があります。貯蔵鉄を保つ意味で50mg/日程度の鉄剤を隔日投与することもあります。


2018年12月17日月曜日

テツクール 販売中止と代替品



テツクール徐放錠100mgが販売中止となるそうです。

2018年11月:経過措置期間のお知らせ(あすか製薬)
https://www.aska-pharma.co.jp/iryouiyaku/upload/save_file/info_stop_12products_201811%20_1.pdf

経過措置満了:2019年3月31日
(2019年4月1日以降は薬価削除され、保険請求できなくなります。)

テツクール徐放錠 100mgは、帝国臓器製薬(現 あすか製薬)が、乾燥硫酸鉄を用いた徐放性鉄剤である「テツクールS」として1976 年 11 月から販売している鉄欠乏性貧血治療剤です。
テツクール徐放錠は既に発売中止しているフェーマス錠(岩城製薬)の後発品です。


テツクール徐放錠の代替品


内服の鉄剤には吸収されやすい二価鉄(Fe2+)が製剤化されています。
テツクールのような還元鉄剤の硫酸鉄、有機酸鉄剤にはフマル酸第一鉄、クエン酸第一テウナトリウム、ピロリン酸第二鉄があります。

テツクールとおなじ硫酸鉄製剤には
フェロ・グラデュメットがあります。
1錠あたりの鉄量が異なりますが、使用方法はテツクールと同じです。



経口鉄剤の投与量はどの薬剤も、鉄100〜200mg/日ですがその理由は、血を作るのに必要な鉄の量が1日100mg程度であり、200mgを超える用量では胃腸障害による悪心の出現頻度が多くなるからです。



2018年12月15日土曜日

「後発医薬品がある先発医薬品」に変わるタイミング 2018年12月収載後発品




2018年12月14日に後発品の薬価収載がありました
各先発医薬品の後発医薬品の有無に関する情報が更新され、後発医薬品の数量シェア(置換え率)に影響があります。

「後発医薬品がない先発医薬品」が後発品の登場により「後発医薬品がある先発医薬品」に変わるタイミングは、商品によって違ってきます。
(基本的には発売月の翌月1日から)

切り替わるタイミングに関しては、厚生労働省の

「薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報」
5.その他(各先発医薬品の後発医薬品の有無に関する情報)の備考欄に記載されています。
https://www.mhlw.go.jp/topics/2018/04/tp20180401-01.html


2019年1月1日から「後発医薬品がある先発医薬品」に変更

プレセデックス静注液200μg「マルイシ」
プレセデックス静注液200μg/50mLシリンジ「マルイシ」
プレセデックス静注液200μg「ファイザー」
プレセデックス静注液200μg/50mLシリンジ「ファイザー」

ロルカム錠2mg
ロルカム錠4mg

トラムセット配合錠


ストラテラカプセル5mg
ストラテラカプセル10mg
ストラテラカプセル25mg
ストラテラカプセル40mg
ストラテラ内用液0.4%

リフレックス錠15mg
リフレックス錠30mg
レメロン錠15mg
レメロン錠30mg

ルミガン点眼液0.03%
レルパックス錠20mg
ルナベル配合錠ULD

バイナス錠50mg
バイナス錠75mg

2019年4月1日から「後発医薬品がある先発医薬品」に変更

ユリーフ錠2mg
ユリーフ錠4mg
ユリーフOD錠2mg
ユリーフOD錠4mg

ゼローダ錠300

イレッサ錠250

ブイフェンド200mg静注用








2018年12月13日木曜日

アルミニウムを含む医薬品一覧





アルミニウムの排泄路が腎であることから、腎の機能が障害されている人では、アルミニウムが体内に蓄積してしまい、全身性の中毒をきたす可能性があります。

透析療法を受けている人でアルミニウムを含有する胃腸薬を長期服用した場合に、アルミニウム脳症及びアルミニウム骨症を発症したとの報告があります。

成分に『アルミニウム』と明記してあればよいのですが、化学構造中にアルミニウムを含むものであっったり慣用名で表示されるものにはアルミニウムが含まれているのかひと目でわからないものがあります。



そこで、有効成分にアルミニウムを含む医薬品の一覧表を作成してみました。

ここに記載されている薬は、透析患者には禁忌です。また、腎機能が低下している方が長期に服用するとアルミニウム脳症やアルミニウム骨症のリスクが高まるので注意が必要です。




商品名

アルミニウム含有成分

アルキサ錠100mg

アルジオキサ
アルジオキサ錠100mg「あすか」
アルジオキサ顆粒25%「あすか」
アルジオキサ顆粒50%「あすか」
アルジオキサ
アルジオキサ錠100mg「イセイ」 アルジオキサ
アルジオキサ錠100mg「トーワ」
アルジオキサ顆粒10%「トーワ」
アルジオキサ
アルジオキサ顆粒20%「日医工」 アルジオキサ
アルジオキサ顆粒50%「YD」 アルジオキサ
アルジオキサ顆粒50%「ツルハラ」
アルジオキサ顆粒25%「ツルハラ」
アルジオキサ錠100mg「ツルハラ」
アルジオキサ
イサロン錠100mg
イサロン顆粒25%
イサロン顆粒50%
アルジオキサ
M・M配合散 サナルミン
YM散「イセイ」 サナルミン
合成ケイ酸アルミニウム
スクラルファート内用液10%「タイヨー」 スクラルファート
スクラルファート細粒90%「ツルハラ」 スクラルファート
スクラルファート顆粒90%「トーワ」 スクラルファート
スクラルファート顆粒90%「日医工」 スクラルファート
アルサルミン内用液10% スクラルファート水和物
アルサルミン細粒90% スクラルファート水和物
スクラルファート内用液10%「日医工」 スクラルファート水和物
FK配合散 メタケイ酸アルミン酸マグネシウム
HM散 メタケイ酸アルミン酸マグネシウム
KM散 メタケイ酸アルミン酸マグネシウム
NIM配合散 メタケイ酸アルミン酸マグネシウム
S・M配合散 メタケイ酸アルミン酸マグネシウム
キャベジンUコーワ配合散 メタケイ酸アルミン酸マグネシウム
マナミンTM散 メタケイ酸アルミン酸マグネシウム
つくしA・M配合散 乾燥水酸化アルミニウムゲル
アイスフラット懸濁用配合顆粒 乾燥水酸化アルミニウムゲル
アルミゲル細粒99% 乾燥水酸化アルミニウムゲル
エヌ・エス配合散 乾燥水酸化アルミニウムゲル
コランチル配合顆粒 乾燥水酸化アルミニウムゲル
ディクアノン懸濁用配合顆粒 乾燥水酸化アルミニウムゲル
マーレッジ懸濁用配合DS 乾燥水酸化アルミニウムゲル
マーロックス懸濁用配合顆粒 乾燥水酸化アルミニウムゲル
リタロクス懸濁用配合顆粒 乾燥水酸化アルミニウムゲル
レスポリックス配合顆粒 乾燥水酸化アルミニウムゲル
乾燥水酸化アルミニウムゲル「ニッコー」 乾燥水酸化アルミニウムゲル
乾燥水酸化アルミニウムゲル「ファイザー」原末 乾燥水酸化アルミニウムゲル
乾燥水酸化アルミニウムゲル原末「マルイシ」 乾燥水酸化アルミニウムゲル
乾燥水酸化アルミニウムゲル原末「マルイシ」 乾燥水酸化アルミニウムゲル
乾燥水酸化アルミニウムゲル細粒「ケンエー」 乾燥水酸化アルミニウムゲル
乾燥水酸化アルミニウムゲル細粒「三恵」 乾燥水酸化アルミニウムゲル
ピーマーゲン配合散 合成ケイ酸アルミニウム
合成ケイ酸アルミ「ヨシダ」 合成ケイ酸アルミニウム
合成ケイ酸アルミニウム 合成ケイ酸アルミニウム
合成ケイ酸アルミニウム「コザカイ・M」 合成ケイ酸アルミニウム
合成ケイ酸アルミニウム「ニッコー」 合成ケイ酸アルミニウム
合成ケイ酸アルミニウム「ファイザー」原末 合成ケイ酸アルミニウム
合成ケイ酸アルミニウム「ヤマゼン」M 合成ケイ酸アルミニウム
合成ケイ酸アルミニウム「三恵」 合成ケイ酸アルミニウム
合成ケイ酸アルミニウム「東海」 合成ケイ酸アルミニウム
合成ケイ酸アルミニウム原末「マルイシ」 合成ケイ酸アルミニウム
マックメット懸濁用配合DS 水酸化アルミニウムゲル
アシドレス配合内服液 水酸化アルミニウムゲル
タイメック配合内用液 水酸化アルミニウムゲル
ディクアノン配合内用液 水酸化アルミニウムゲル
ディクアノン配合内用液 水酸化アルミニウムゲル
マグテクト配合内服液 水酸化アルミニウムゲル
マルファ懸濁用配合顆粒 水酸化アルミニウムゲル
マルファ配合内服液 水酸化アルミニウムゲル
アドソルビン原末 天然ケイ酸アルミニウム
ジオン注無痛化剤付 硫酸アルミニウムカリウム水和物・タンニン酸
ジオン注生食液付 硫酸アルミニウムカリウム水和物・タンニン酸

2018年12月12日水曜日

イサロパン外用散 販売中止と代替品



イサロパン外用散が販売中止となるようです。

2018年11月:経過措置期間のお知らせ(あすか製薬)
https://www.aska-pharma.co.jp/iryouiyaku/upload/save_file/info_stop_12products_201811%20_3.pdf 

経過措置満了日:2019 年 3 月 31 日(2019 年 4 月 1 日以降は薬価削除され、保険請求できなくなります。)

第一次世界大戦中、戦傷の治療に蛆がよく用いられてましたが、その有効成分が蛆の分泌物中に含まれるアラントインであることが後の発見で明らかになりました。
皮膚の創傷や潰瘍の治療に対し中世ヨーロッパの農民は民間療法としてヒレハリ草(Symphytumofficinale)の地下茎滲出液を用いていました。このヒレハリ草の有効成分を抽出したものにもアラントインが含まれていることがわかりました。

現在、アラントインは水酸化アルミニウム結合体(アルジオキサ)として消化性潰瘍の治療に用いられ、その効果の優秀性が広く認められています。

イサロパン外用散は、アラントイン化合物の一つ、アルクロキサを主成分として、皮膚創傷部の乾燥化を図るためにパウダー状にした外用製剤として1984年3月から日本では発売されていました。

イサロパンが登場した1980年台の創傷治療の常識は「傷は乾かす」という、今では考えられないものでした。傷を乾かすことは、傷の治りを遅らせることになるというのが一般に知られるようになったのは2000年に入ってからのことです。

傷を乾かして治す時代の薬が使われることが少なくなり、時代に合わないということで販売中止に至ったのだと思われます。


イサロパン外用散の代替品


代替品を使ってまで、傷を乾かす治療を行う必要があるのか考える必要があります。
褥瘡における浸出液コントロールを目的とするのであれば『カデックス軟膏0.9%』や『ユーパスタコーワ軟膏』が候補となります。

また、成分のアルクロキサには、肉芽形成促進、表皮形成促進作用があります。
肉芽形成促進、表皮形成促進作用を目的とするのであれば、同一成分の軟膏である『アルキサ軟膏』が代替として候補となるでしょう。



2018年12月7日金曜日

デパケンRとセレニカRの違いと一般名処方





「デパケンR錠200mg」と「セレニカR錠200mg」はバルプロ酸の徐放製剤です。
どちらも先発品です。
違いは、体内動態です。
デパケンRは9時間で80%が溶出し、セレニカRは14時間で80%が溶出します。
デパケンRは服用6時間後、セレニカRは12時間後に血中濃度のピークが現れます。
これら動態の違いから服用回数が異なります。デパケンRは1日1~2回分服、セレニカRは1日1回分服です。

また、1日の中での血中濃度の推移にも違いが見られ、セレニカRのほうが安定していたという報告もあります。

Different serum concentrations of steady‐state valproic acid in two sustained‐release formulations, Volume: 61, Issue: 3, Pages: 308-312, First published: 28 April 2007


一般名処方では、どちらも『バルプロ酸Na徐放錠200mg』と記載されます。
てんかん発作治療における抗てんかん薬は治療域が狭く、少量の変化で発作の再発や副
作用が懸念されるため、注意が必要です。
同一の用法用量の後発品が存在するのはデパケンR錠です。セレニカRには後発品は存在しません。

その他の違いは、一包化の可否です。
デパケンR錠はフィルムコートに防湿効果があるので通常の一包化が可能です。
セレニカR錠は吸湿性があるので一包化はできません。添付文書にも、「本剤は徐放性製剤であり、製剤の吸湿により溶出が加速されることがあるので、吸湿しないように保存させること」との記載があります。



2018年12月6日木曜日

セルテクト 販売中止と代替品



アレルギー性疾患治療剤「セルテクト錠 30」及び「セルテクトドライシロップ 2%」が諸般の事情により販売中止となるようです。

経過措置期間は2019年3月末までです。

「セルテクト錠 30」「セルテクトドライシロップ 2%」販売中止についてのご案内(協和キリン)


セルテクトの成分はオキサトミドです。第2世代の抗ヒスタミン薬に分類されます。
オキサトミドは1975年にヤンセン社が合成に成功したベンズイミダゾロン系の化合物です。
1970年代に、ヤンセン社が行った動物実験において、オキサトミドのヒスタミンを主とした化学伝達物質の遊離抑制作用、拮抗作用が確認されました。
1977年から日本でのセルテクト開発が開始され、開発はヤンセン社から導入した協和キリンが行いました。1978年6月から8月にかけ第I相試験が実施され、臨床試験の後、1987年3月31日に承認されています。

成人では蕁麻疹、皮膚瘙痒症、湿疹・皮膚炎、痒疹、アレルギー性鼻炎について、小児では気管支喘息、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、痒疹について、保険適応されていました。

オキサトミドは抗ヒスタミン作用以外にも抗SRS-A(Slow Reacting Substance of Anaphylaxis)作用、抗セロトニン作用、抗コリン作用等化学伝達物質に対する拮抗作用を併せ持つことが特徴です。
しかし、これら種々の神経伝達物質の拮抗作用は有効性だけではなく、口渇や錐体外路症状、眠気など副作用の要因にもなりえます。
近年、登場したフェキソフェナジンを代表とする、血液脳関門を通過せず、より鎮静の少ない抗ヒスタミン薬の登場により活躍の場は減ってきました。

セルテクトが得意とするのは皮膚科領域と小児科領域です。
第1世代の抗ヒスタミン剤と比較して早期に止痒効果が期待できるため、皮膚アレルギー疾患の症状及び所見を速やかに消退させることが期待されていました。
小児喘息に対しては、寛解期の維持及びその合併症を良好にコントロールできるという報告があります。


セルテクトの代替品


後発品があります。
オキサトミド錠30mg(各社)
オキサトミドドライシロップ小児用2%(各社)
オキサトミドシロップ小児用0.2%「ファイザー」(マイラン)

同効薬には以下があります。
【ピペリジン・ピペラジン系】

  • エバスチン
  • フェキソフェナジン塩酸塩
  • ベポタスチンベシル酸塩
  • セチリジン塩酸塩
  • レボセチリジン塩酸塩
  • ビラスチン


【三環系】

  • アゼラスチン塩酸塩
  • エピナスチン塩酸塩
  • オロパタジン塩酸塩
  • ケトチフェンフマル酸塩
  • ロラタジン
  • デスロラタジン


小児の気管支喘息に適応を持つ抗ヒスタミン薬

  • ザジテンDS
  • ゼスラン細粒・シロップ


輸液を温めてもいいですか?



輸液は、気温の下がる冬など寒冷期には、体温程度に温めて使用することが可能です。添付文書にも「体温程度に温めて使用する」旨記載があります。

血液・輸液の加温は、それだけでは体温を上昇させることはできませんが、冷たい輸血・輸液によって体温が低下するのを防ぐ補助的な対策になります。

温める方法には、いくつかあります。
ひとつは恒温槽を使った湯煎により温めます。
もう一つは、医療機器として認可された加温器を使う方法です。

アニメック輸血・輸液加温器
https://www.muranaka.co.jp/online/products/detail.php?product_id=14071


Q.輸液を電子レンジを使って温めてもいいですか?

電子レンジで温めている施設があるというのを学会できいたことがありますが、薦められたものではありません。医薬品をなんだと思っているのでしょうか。
まず安全性を担保したデータがありません。また、電子レンジの性質上、加温にばらつきがでます。さらに袋が破裂する恐れがあるため推奨できません。


Q.繰り返し温めても良いですか?

繰り返しの加温についてのデータは見つけられませんでした。


Q.温めたままで保管してもよいですか?

製品によりますが、条件により可能なものもあります。
例えば、ラクテック注の場合、40℃以下であれば6ヶ月間、成分が安定であったというデータがあります。


【参考】
輸液製剤協議会|よくある質問
https://www.yueki.com/faq/



2018年12月5日水曜日

ロキシーン錠 販売中止と代替品



ロキシーン錠4mg(一般名:プリジノールメシル酸塩錠)が販売中止となるようです。

取扱い中止のご案内 ロキシーン®錠4mg(日医工)
https://www.nichiiko.co.jp/medicine/file/45690/transitional_measure/o-loxeen_t4-20180305aI2.pdf
「ロキシーン®錠4mg」製造販売中止のお知らせ(東菱薬品工業)
https://tobishipharm.com/medex/info/loxeen-201807.pdf

経過措置期間は2019年3月末までです。

ロキシーン錠は、メシル酸プリジノールを成分とする製剤で、中枢および末梢神経に対してアトロピン類似の筋弛緩作用を示し、運動器疾患による有痛性痙縮を緩解する薬として活躍していました。

1950年代にピペラジンアルコールの誘導体に鎮痙作用があることが明らかになり、ピペラジンアルコールの誘導体に注目が集まりました。1959年にピペラジンアルコールの誘導体の一つであるプリジノールメシル酸塩の合成に成功し、ロキシーン錠として販売されました。


ロキシーン錠の代替品

ロキシーン錠の承認されている適応は「運動器疾患に伴う有痛性痙縮(腰背痛症、頸肩腕症候群、肩関節周囲炎、変形性脊椎症など)」であり、筋肉の緊張状態が続くことによって生じる肩こり、腰痛、頭痛などの痛みを緩和する目的で投与されます。

ロキシーン錠と同じく骨格筋痙攣弛緩剤として使用される薬剤には『リンラキサー』や『ロバキシン』があります。


他には、『ミオナール』や『テルネリン』などもありますが、保険上の適応がロキシーンとは若干異なります。


薄さが異なるモーラステープの後発品



モーラステープの後発品はメーカーによって薄さが異なります。

先発のモーラステープの薄さと同じメーカーもあれば、より薄いものもあります。

直接、肌に触れるものなので、先発品に慣れていれば薄い後発品へ変更すると、すぐに気づかれる場合があります。

より薄いものが貼り心地が良いという人もいれば、先発と同じ位の薄さがいいという人もいて好みは千差万別です。一般名処方の場合は、患者さんの好みに応じて選んでもらっています。

先発と同じ薄さの後発品
「パテル」
「東光」「ラクール」

先発より薄い後発品
「テイコク」
「BMD」「SN」「トーワ」「三和」「日医工」「杏林」



薄さの違いは何かと言うと、有効成分と基剤の混合物である膏体の量の違いです。
テープ剤は支持体に膏体を薄く延ばして製剤化しています。いずれの後発品も製剤自体の大きさは先発品と同じ7×10cmなので、膏体の量が少なければ、製品の厚みは薄くなります。