ヘパリン類似物質製剤ヒルドイドの泡状スプレー「ヒルドイドフォーム0.3%」が2018年9月13日に発売されました。
ヒルドイド(マルホ)
https://www.maruho.co.jp/medical/products/hirudoid/index.html
もともと、後発品にはスプレー(泡状スプレー)製剤がありました。先発品が後追いで剤形を追加した珍しいパターンです。
ヒルドイドフォーム0.3%は容器から泡状に噴出する外用スプレー剤です。
1本あたり薬液が92g含有されています。薬価単位は1gです。
処方箋の書き方の例は以下のとおりです。
ヒルドイドフォーム0.3% 92g 1日1回 就寝前 かかと
缶を開けて分注するなんてことはできませんから
投与総量は92の倍数でなければなりません。
後発品のスプレー剤は1本あたり100gなので注意が必要です。
ヒルドイドフォーム0.3%の後発品への変更調剤は可能ですか?
結論としては、
ルール上は可能、しかし現実的には無理。疑義照会が必要。
まずは、後発品への変更調剤についておさらいしてみましょう。
薬剤師法により、薬剤師は、処方箋に記載された通りに調剤しなければなりません。
そのため変更する場合には、原則、疑義照会により処方医に同意を得なければなりません。
【薬剤師法第23条2項】
薬剤師は、処方せんに記載された医薬品につき、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師の同意を得た場合を除くほか、これを変更して調剤してはならない。
しかし、一定の要件を満たしていれば処方箋に記載された医薬品を処方医に事前に確認することなく、後発品に変更して調剤することが認められています。薬剤師は、処方せんに記載された医薬品につき、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師の同意を得た場合を除くほか、これを変更して調剤してはならない。
処方せんに記載された医薬品の後発医薬品への変更について(保医発0305第12号,2012年3月5日)|厚生労働省
後発品への変更調剤というのは、後発品の使用促進の一環として、例外的に認められている制度なのです。
ヒルドイドのような外用薬の後発品への変更調剤の場合、剤形を変えることは認められていません。(内服の場合一定の範囲内で可能)
別規格の場合は外用薬でも変更調剤可能です。
ヒルドイドフォーム0.3%の変更調剤について考えてみましょう。
ヒルドイドフォーム0.3%の同一剤形後発品は以下のとおりです。
- ヘパリン類似物質外用スプレー0.3%「PP」
- ヘパリン類似物質外用スプレー0.3%「TCK」
- ヘパリン類似物質外用スプレー0.3%「サトウ」
- ヘパリン類似物質外用スプレー0.3%「日新」
- ヘパリン類似物質外用スプレー0.3%「ファイザー」
- ヘパリン類似物質外用スプレー0.3%「YD」
- ヘパリン類似物質外用スプレー0.3%「ニットー」
- ヘパリン類似物質外用スプレー0.3%「ニプロ」
- ヘパリン類似物質外用スプレー0.3%「日医工」
- ヘパリン類似物質外用スプレー0.3%「テイコク」
- ヘパリン類似物質外用泡状スプレー0.3%「PP」
- ヘパリン類似物質外用泡状スプレー0.3%「ニットー」
- ヘパリン類似物質外用泡状スプレー0.3%「日本臓器」
外用剤の同一剤形後発品への変更調剤は認められていますので、変更調剤は可能です。
しかし、処方箋には外用薬の場合、投与総量が記載されます。
ヒルドイドフォーム0.3% 92g 1日1回 就寝前 かかと
後発品の1本あたりの薬液量は100gです。8g多いのです。
そのため、現実的には変更調剤はできないのです。
まぁ、スプレーのノズルを開けて8g減らせばいいのではという考え方もないことはないのですが、減らして再度ノズルを戻したた後の含量、有効性、安全性の担保ができないですし、するべきではないでしょう。
以上より、ヒルドイドフォーム0.3%の処方箋で後発品を調剤したい場合、疑義照会が必要。という考え方となります。
ヒルドイドフォーム0.3%の一般名処方
次に一般名処方について考えてみましょう。
一般名処方とは、一般的名称に剤形及び含量を付加した形で処方箋に記載がなされたもので、単に医師が先発医薬品か後発医薬品かといった個別の銘柄にこだわらずに処方を行っているものです。原則として後発品を調剤することになっています。
患者に対し後発品の有効性、安全性や品質について適切に説明した上で、後発品を調剤しなかった場合は、その理由を調剤報酬明細書の摘要欄に記載しなければなりません。
後発品を調剤しなかった理由は、「患者の意向」「保険薬局の備蓄」「後発医薬品なし」「その他」から最も当てはまる理由をひとつ記載します。
「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正について(厚生労働省保険局医療課長通知 保医発0326第5号 2018.3.26)
診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(厚生労働省保険局医療課長通知 保医発0305第1号 2018.3.5)
ヒルドイドフォーム0.3%の一般名は
【般】ヘパリン類似物質スプレー0.3%です。
※一般名の対応の確認は、一般名コードと薬価基準医薬品収載コードを見ればわかります。対応する者同士、コードの頭9桁が同じになります。
パターン1処方箋
【般】ヘパリン類似物質スプレー0.3% 100g 1日1回 就寝前 かかと
原則、後発品を調剤することになっているので、後発品の「ヘパリン類似物質外用スプレー0.3%」または「ヘパリン類似物質外用泡状スプレー0.3%」のどちらかを薬剤師が選ぶことができます。しかし、患者さんへ使用感の違いを説明をすることは必要です。さらに、スプレーと泡状スプレーでは使用感が全く異なるので、初回受付時には処方元へ確認したほうが良いでしょう。備蓄の理由などで、先発品を調剤をせざるを得ない場合は疑義照会を行い、投与総量を変更してもらう必要があります。
パターン2処方箋
【般】ヘパリン類似物質スプレー0.3% 184g 1日1回 就寝前 かかと
原則、後発品を調剤することになっているのですが、後発品のスプレーは1本が100gです。100g単位での調剤しかできないため、後発品を調剤する場合は疑義照会が必要です。ただ、この処方の場合、わざわざ92gの倍数にしていることから処方元の意向としてヒルドイドフォーム0.3%を調剤してほしいのかなぁと忖度できますね。
湿布の温感、非温感のように一般名コードが分かれてくれればいいのですけどね。現場から声をあげれば変わるかもしれません。
参考:
「後発医薬品への変更ルール」2018年版(日医工Stu-GE)
使用感の異なる外用剤のジェネリック変更について(日医工Stu-GE)
ヒルドイドフォーム0.3% Q&A
(メーカーホームページより引用)ヒルドイド®フォーム0.3%の内容量の表示を「原液:92g」とした理由を教えてください。
ヒルドイド®フォーム0.3%の容器には、原液とLPG(液化石油ガス)が充填されています。「適切な泡質を得るため」に処方設計するにあたり、原液およびLPGの適切な配合量と比率を考慮した結果、原液は92gになりました。また、ヒルドイド®フォーム0.3%は「g」の規格単位で承認されています。そのため、「原液:92g」と表示しました。
フォーム製剤を製造販売した理由を教えてください。
ヒルドイド®3製剤(クリーム、ソフト軟膏、ローション)は多くの乾燥性皮膚疾患に汎用されていますが、乾燥性皮膚疾患は広範囲に病変部位が及ぶことが多いため、広範囲への塗布が容易で液だれを起こしにくい剤形が望まれていました。また、特に夏場ではてかりやべとつく製剤は敬遠されがちであり、さっぱりとした使用感の製剤が望まれていたためです。これらの臨床現場における要望をうけ、展延性に優れ、広範囲に塗り広げやすく、垂れにくい、また、さっぱりとした使用感がある製剤として開発しました。
ヒルドイド®フォーム0.3%の処方量(調剤量)について教えてください。原液の92gで計算すればよいですか。
ヒルドイド®フォーム0.3%は「g」の規格単位で承認されています。薬価算定は「g」単位となり、1缶の原液量(92g)で計算していただくこととなります。
ヒルドイド®シリーズ(ヒルドイド®クリーム0.3%、ヒルドイド®ソフト軟膏0.3%、ヒルドイド®ローション0.3%、ヒルドイド®フォーム0.3%)の剤形による違いと使い分けについて教えてください。
剤形の違いとして、ヒルドイド®クリーム0.3%は水中油型(O/W型)のクリーム剤、ヒルドイド®ソフト軟膏0.3%は油中水型(W/O型)のクリーム剤、ヒルドイド®ローション0.3%は水中油型(O/W型)のローション剤、ヒルドイド®フォーム0.3%はフォーム剤です。
使い分けの例として、ヒルドイド®クリーム0.3%は被覆性・使用感のバランスが取れており、季節を問わず使用しやすい剤形です。ヒルドイド®ソフト軟膏0.3%は基剤中に油分が多く被覆性に優れることから、重症例や冬によく用いられています。ヒルドイド®ローション0.3%は展延性が良いことから、広範囲の使用、有毛部への使用に優れます。また、さらっとした使用感が得られることから春・夏・秋に好まれます。ヒルドイド®フォーム0.3%は油分を含まないさっぱりとした使用感であり、展延性が高いため、広い患部に素早く塗布できます。有毛部位にも有用です。短時間で塗れるため朝などの忙しい時間帯にも適しています。使用感が良くべたつきが少ないことから年間を通じてお使いいただける剤形となり、特に春の中頃から秋の中頃までの気温の高い季節に使用しやすい剤形です。
使い分けの例として、ヒルドイド®クリーム0.3%は被覆性・使用感のバランスが取れており、季節を問わず使用しやすい剤形です。ヒルドイド®ソフト軟膏0.3%は基剤中に油分が多く被覆性に優れることから、重症例や冬によく用いられています。ヒルドイド®ローション0.3%は展延性が良いことから、広範囲の使用、有毛部への使用に優れます。また、さらっとした使用感が得られることから春・夏・秋に好まれます。ヒルドイド®フォーム0.3%は油分を含まないさっぱりとした使用感であり、展延性が高いため、広い患部に素早く塗布できます。有毛部位にも有用です。短時間で塗れるため朝などの忙しい時間帯にも適しています。使用感が良くべたつきが少ないことから年間を通じてお使いいただける剤形となり、特に春の中頃から秋の中頃までの気温の高い季節に使用しやすい剤形です。
ヒルドイド®フォーム0.3%の取扱い上の注意、廃棄方法について教えてください。
よく振ってから、使用してください。横向きや逆さまで使用しないでください。高圧ガス(LPG)を使用した可燃性の製品であり、危険なため下記の注意を守ってください。
- 炎や火気の近くで使用しないこと。
- 火気を使用している室内で大量に使用しないこと。
- 高温にすると破裂の危険があるため、直射日光の当たる所や火気等の近くなど温度が40°C以上となる所に置かないこと。
- 火の中に入れないこと。
- 使い切って捨てること。
中身を使い切ったうえで廃棄してください。また、必ず火気のない通気性の良い戸外で、容器内に残っているガスを出し切ってください。ガス抜き後、お住いの市町村等で決められた方法により廃棄してください。ガス抜きの際は、身体に向けて噴出しないでください。スプレーボタンとその土台部分(プラスチック)は、はずして分別できます。容器の金属はアルミです。
(おまけ)
ヒルドイドフォームが92gなのは先発メーカーの後発品つぶし説。おもしろい。
ヒルドイドの新剤型泡タイプが、92g/本でもにょる。— simbelmynë (@simbelmyn) 2018年9月11日
ジェネリックは既に泡の製剤がでていて、そちらは100g/本。これらはg単位の処方になる。
つまり、「こちらから一般名で処方して、薬局在庫に合わせて先発品ヒルドイドか、ジェネリック製剤かを選んでもらう」ことができない。
ヒルドイドの泡剤型は、ガスポンプ式にしたために、ちょうど100gに出来なかった、というメーカーの話だけど、ホントか?— simbelmynë (@simbelmyn) 2018年9月11日
ジェネリック排斥のために、わざと異なるグラム数で製品化したんじゃないの??
薬局に要らん在庫負担を掛けるのが気に入らん。— simbelmynë (@simbelmyn) 2018年9月11日
それに、いくら一般名処方しても、実質先発品指定が要求されるわけで、患者さんが薬局窓口でジェネリックを希望することが許されないことになる。
うーん、これはやっぱりわざとなんじゃないの?