ページ

2018年8月30日木曜日

アメナリーフ錠は粉砕できる?




アメナリーフの添付文書の適用上の注意には「本剤はコーティングを施しているので、錠剤をつぶすことなく服用させること。」の記載があります。

コーティングの目的は、黄色のフィルムコートで識別性を担保するためです。
(アメナリーフインタビューフォームより)

成分自体は光や湿度に対し安定(過酷試験:3ヶ月)です。
しかし、粉砕した製剤を用いた臨床試験は行われていませんので、粉砕により薬物動態が変化したり、味が強調されたり、副作用発現に差が出たりする可能性は否定できません。

カリメート経口液は胃ろうチューブから投与可能ですか?



カリメート経口液は粘性、とろみの付いた薬剤です。
添加物にキサンタンガム、ローカストビーンガム、メチルセルロース、還元麦芽糖水アメなど増粘多糖類を含んでいるためですね。
そのままチューブに流し込むと詰まる恐れがあります。
水には溶けませんが、懸濁させて粘性を落とせば投与は可能です。

目安:
1包あたり10~15mlの水に懸濁させて素早く投与します。
12Fr(4.0mm)チューブは通過したという試験データはあるそうです。

ちなみにカリメート散は経管投与には適しません。水に溶けず、懸濁しても分散性が悪く30秒後にはほぼ完全に沈殿が生じてしまいます。
ドライシロップは水に溶けませんが分散性が改善されているため懸濁投与は可能です。


医療薬学,39(1) 33―38 (2013)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjphcs/39/1/39_33/_pdf

ベタニスと抗コリン薬の併用




抗コリン薬であるソリフェナシンとβ3アゴニストであるミラベクロンの併用投与の有効性・安全性を検証した2つの臨床試験を紹介します。

1つは、海外で行われた第二相臨床試験です。
その試験ではソリフェナシン5mg単独投与に比べて、ソリフェナシン(5mgまたは10mg)とミラベクロン(25mgまたは50mg)の併用投与は、平均1回排尿量、1日あたりの排尿回数及び尿意切迫感回数を有意に改善させる相乗効果があることが示されました。一方、安全性に関しては、両薬剤の併用投与は、便秘の発生頻度が単独投与に比べてやや増加する傾向(ソリフェナシン10mg単独で5.1%、ソリフェナシン10mg+ミラベクロン50mgで9.9%)があった以外には、有害事象の頻度について単独投与と優位な差を認めず、心拍数、血圧、心電図所見に有意な影響を及ぼしませんでした。

Eur Urol. 2015 Mar;67(3):577-88.  


国内で行われた第4相試験では、ソリフェナシン(2.5mgまたは5mg投与で過活動膀胱症状が十分に改善しない患者を対象に、ミラベクロン(25mg、必要に応じて8週の時点で50mgに増量)を16週間追加併用する治療を行ったところ、重篤な有害事象はなく、過活動膀胱症状の有意な改善を認めました。

Yamaguchi O, Kakizaki H, Homma Y, Igawa Y, Takeda M, Nishizawa O, et al. Safety and efficacy of mirabegron as ‘add-on’ therapy in patients with overactive bladder treated with solifenacin: a post-marketing, open-label study in Japan (MILAI study) BJU Int. 2015;116:612–22.


参考:
メタアナリシス 過活動膀胱に対するミラベグロン/ソリフェナシン併用療法とソリフェナシン単剤療法での有効性・安全性の比較
Int Neurourol J. 2017 Sep; 21(3): 212–219.(PMID: 28954464)


2018年8月20日月曜日

ポリエチレングリコールとマクロゴールとマグコロールの違い




ポリエチレングリコール(PEG:Polyethylene glycol)


ポリエチレングリコールはエチレンオキシドと水との付加重合体で、HOCH2(CH2OCH2)nCH2OHで表されます。分子量によって液状、ペースト状、固形、粉末状などいろいろな形状を取る化合物です。毒性、刺激性がほとんどない、優れた潤滑性をもつ、水や多くの有機溶剤に溶解性および相溶性を持つ、といった特徴があります。

マクロゴール


マクロゴールは、日本薬局方(局方)または医薬品添加物規格(薬添規)に収載された規格を満たすポリエチレングリコールのことです。医療に供するポリエチレングリコールと考えて良いでしょう。医療用添加物として軟膏基剤、坐薬基剤、錠剤のコーティング剤として使用されています。また、医薬品としては経口腸管洗浄剤の成分として配合されています。なお、海外ではポピュラーな下剤として汎用されており、日本でも開発中です。日本では『モビコール配合内用剤』という商品名で流通しています。

MOVICOL SACHETS
https://www.drugs.com/uk/movicol-sachets-leaflet.html
未承認薬・適応外薬の要望に対する企業見解
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/kigyou69.pdf

なお、日本で最初にマクロゴールを製品化したのは三洋化成工業(4471)です。


マグコロール

マグコロールは堀井薬品工業株式会社が製造販売する大腸検査・腹部外科手術前処置用下剤の商品名です。名前が似ているためややこしいですがポリエチレングリコールとはなんの関係もありません。マグコロールはクエン酸マグネシウムを有効成分とする高張性の塩類下剤で、検査前にそのまま投与できる液状タイプと溶かして使う粉末タイプがあります。粉末タイプは「マグコロールP」といいます。Pは粉末、パウダーのPです。

2018年10月1日から生活保護受給者に対する後発医薬品の使用の原則化



※2018.10.01パブリックコメント回答を追記

2018年10月1日から生活保護受給者に対する後発医薬品の使用の原則化が始まります。
これは、生活保護法改正により、後発医薬品の使用の原則化が法律に規定されたためです。(生活保護法第34条第3項の改正
医師等が医学的知見等に基づいて、後発医薬品を使用することができると認めたものについては、原則として、後発医薬品による給付が行われます。

【参考】「生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律」の公布について(厚生労働省子ども家庭局長通知平成30年6月8日子発0608第1号)


現行の生活保護法では努力義務で、通知(2013年5月16日付)により「後発医薬品を原則として使用する」こととされてきました。しかし、生活保護について管理している自治体の足並みは揃わず、後発品の使用率の伸びが鈍化してきている自治体もでてきていました。県別の後発品使用率の差が出ている一つの要因になっており、また、医師が一般名処方をしたにもかかわらず、薬局において後発医薬品が調剤されなかった理由として、「患者の意向」の割合が6割以上という調査結果があり、自治体からも、使用率増に向けて、さらに取組を進めるためには、後発医薬品の原則化が必要との意見があがっていました。

【参考】社会保障審議会生困窮者自立支援及び生活保護部会報告書(2017年12月15日)

https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/196-06.pdf


しかし、法律で原則化したとしても、後発品の使用率の大幅な増加はなかなか見込めないかもしれません。理由は2つ。一つは生活保護法の34条不遵守に対する罰則規定が設けられていないからです。これまでも厚労省通知により原則化されていたものが、法律になったとしてもなんらかのペナルティがなければ、変わるとは思えません。
2つ目は後発医薬品調剤体制加算の適用区分の計算にあたり、生活保護に係る処方せん(公費単独)については、除外して計算するものとされているためです。国の医療保険財政の改善に資するとはいえ、処方する側や調剤する側にインセンティブやペナルティがなければ変わらないでしょう。

【参考】日本薬剤師会 平成22年度調剤報酬改定に関するQ&A

参考:
厚生労働省 生活保護関係全国係長会議資料(2018年9月4日)
医療扶助・健康管理支援等について抜粋
1 後発医薬品の使用原則化について
生活保護制度における後発医薬品の使用促進については、医療扶助における後発医薬品の使用割合の目標として、2017 年央までに 75%、2018 年度までに 80%を掲げている。
生活保護制度では、着実にその使用割合は増加しているところであり、平成 29 年6月時点で、医療全体よりも使用割合が高くなっている。しかしながら、さらに取組を進めるためには、運用ではなく制度的対応として、後発医薬品の原則化が必要との要望が出されていた。
こういった状況を踏まえ、今般、生活保護法第 34 条第3項を改正し、生活保護制度においては、医師又は歯科医師(以下「医師等」という。)が医学的知見に基づき使用を認めている場合に限り、後発医薬品の使用を原則化することとしたものである。
後発医薬品の使用原則化については、平成 30 年 10 月1日に施行されるが、これに併せ、
①「指定医療機関医療担当規程」(昭和 25 年厚生省告示第 222 号)
②「生活保護法による医療扶助運営要領について」(昭和 36 年9月 30 日社発第 727 号厚生省社会局長通知)及び
③「生活保護法による医療扶助運営要領に関する疑義について」(昭和48 年5月1日社保発第 87 号厚生省社会局保護課長通知)
を改正し、また、
④「生活保護の医療扶助における後発医薬品に関する取扱いについて」(平成 25 年5月 16 日社援保発 0516 第1号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)
を廃止し、新たな通知を発出することとしている。それぞれの概要は下記の通りである。

①について
指定医療機関の医師等、また、指定医療機関である薬局の薬剤師について、医師等が後発医薬品を使用することができると認めた場合について、原則として、後発医薬品により医療の給付を行うことと定める。
 ②について
次の事項について地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の9第1項及び第3項の規定に基づく処理基準として定める。
ア 一般名処方又は銘柄名処方であって後発医薬品の使用を可能とする処方がなされた場合は、下記の通りの取扱いとなるので、指定医療機関及び被保護者に対して周知すること。

  • 原則として後発医薬品が使用されることとなること
  • 指定医療機関に在庫がない場合や、後発医薬品が先発医薬品よりも高価な場合は、先発医薬品を使用することもあり得るものであること(その場合、以降は後発医薬品を使用できるよう体制整備に努めること)
  •  医師等が後発医薬品の使用を可能と判断しているにもかかわらず、先発医薬品の使用を希望する患者に対しては、指定医療機関において説明を行い、理解を求めること

 イ 上記アの指定医療機関による説明を受けてもなお先発医薬品の給付を希望する患者に対しては、福祉事務所においても、制度について改めて説明を行い、理解を求めること。
③について
取扱の細則について地方自治法第 245 条の9第1項及び第3項の規定に基づく処理基準として定める予定であること。
④について
「生活保護の医療扶助における後発医薬品に関する取扱いについて(課長通知)」は廃止されるが、当該通知で策定を依頼している「後発医薬品使用促進計画」については、記載事項を変更して引き続き策定すべきことを新たな通知の中でお示しする予定である。今後は、医師等が後発医薬品の使用が可能と判断した場合は原則として後発医薬品が使用されることになることから、患者に対する使用促進指導は不要となるが、指定医療機関における在庫状況によって後発医薬品の使用状況に差が生じる可能性があることから、実態把握をした上で取組を進める観点から、計画の策定を求めることになる予定である。
また、指定医療機関及び被保護者に対する制度周知の方法に関しては、既に保護課医療係より発出している事務連絡の通りであるので、添付している様式を参考に作成したリーフレットを使用する等により、適切に実施されたい 

パブリックコメント回答

2018年8月17日から生活保護受給者に対する後発医薬品の使用原則化についてのパブリックコメントが募集されていました。その回答が2018年9月28日に公表されました。

指定医療機関医療担当規程の一部を改正する件(告示)に係る意見募集に対して寄せられた御意見について 平成30年9月28日 厚生労働省社会・援護局
後発医薬品の使用の原則化の例外の範囲について、現行の一般名処方を先発品として調剤する際に認められている「患者の希望」は認められるべきではない。

患者が先発医薬品での調剤を強く希望した場合は、後発医薬品使用の原則の例外に当たり、先発医薬品を調剤してもらえるのか。

後発医薬品の普及を促進するためには、後発医薬品を選ぶことによるメリットやデメリットがなければ難しいのではないか。
生活保護受給者にとって、後発医薬品を選ぶことによる、何らかのメリットやデメリットがあるのか。

従来の、薬局が後発医薬品を給付して良いか生活保護受給者に意向を確認する方法だと、後発医薬品の使用の原則化が徹底できないのではないか。
【御意見等に対する考え方】
後発医薬品の使用の可否に係る判断ついては、医師や歯科医師が医学的な知見に基づき、判断するものです。そのため、患者の希望のみをもって処方が変更されるものではありません。

医師の判断で後発医薬品を使わない方が適切という場合とはどのような場合を想定しているのか。

後発医薬品と先発医薬品の同等性について、国が審査を行ったもののみが販売されているため、使用できない理由が発生することは本来あり得ない。そのため、後発医薬品の使用に適さない薬品について、例示するべきではないか。
【御意見等に対する考え方】
後発医薬品の使用の可否に係る判断ついては、医師や歯科医師が医学的な知見に基づき、個別具体的に判断するものであり、具体的事例を例示することは困難です。

医師に後発医薬品の使用の有無について判断を委任しては、医師の主観や患者からの強い要望により先発医薬品が処方されるのではないか。

後発医薬品の使用について、例外なく、後発医薬品を使用させるべき。
【御意見等に対する考え方】
必要な医療を確保しつつ、後発医薬品の使用促進をさらに進めるため、医師や歯科医師が医学的知見に基づき、後発医薬品の使用が可能と判断する場合は、後発医薬品の使用を原則化しています。

生活扶助の認定の一つの要件に後発医薬品の使用を追加するべき。
【御意見等に対する考え方】
生活扶助は生活保護受給者の衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なものなどのために給付されるもののため、医療の提供を目的とした給付ではありません。

過去に後発医薬品の使用により、副作用が発生したことがある場合は、処方せんに一般名処方がなされていたとしても後発医薬品使用の原則の例外に当たり、先発医薬品を調剤してもらえるのか。

医療機関や薬局等の説明では納得しない場合が多いため、先発医薬品の利用について、役所の許可を必要としてはどうか。

本告示の規定に、患者本人の納得が得られない場合、医師・歯科医師は後発医薬品の使用を強制することのないようにすることと盛り込むべき。

生活保護受給者に対する差別を防ぐため、本告示の規定に、指定医療機関の医師、歯科医師又は、薬局の薬剤師は、後発医薬品による投薬や調剤を行うに当たっては、生活保護受給者に対して、後発医薬品の使用について丁寧に説明し、本人の了解を得ることと盛り込むべき。

先発医薬品から後発医薬品への切り替えについては、生活保護受給者の健康状態等を踏まえ、慎重に行うべきである。

後発医薬品の使用の原則化については、認知症などの個々の状況に柔軟に対応できるような運用を行うべきである。

後発医薬品だと湿布かぶれが起こる、後発医薬品だと薬が大きすぎて飲めないなど、薬学的見地から後発医薬品が使用できないと判断される場合はどのような対応を行えば良いか。

後発医薬品の使用促進のため、患者が後発医薬品を使用することが可能か、薬剤師による薬学的見地からも判断できるような仕組みにするべき。

本告示の規定に、患者からの申し出を受けて後発医薬品の使用について判断し救済するための第三者機関を設置することと盛り込むべき。

後発医薬品の効き目が悪いことを理由に後発医薬品の使用を拒むことができないようにするべき。
【御意見等に対する考え方】
後発医薬品の使用の可否に係る判断ついては、医師や歯科医師が医学的な知見に基づき、判断するものです。
なお、医師や歯科医師が後発医薬品の使用を可能とする処方を行った場合であっても、薬剤師の専門的な知見から先発医薬品を調剤する必要性があると考えられた場合には、薬剤師から処方医に処方内容に係る疑義照会をすることとなります。このほか、指定医療機関による再度の説明を受けてもなお、先発医薬品の使用を希望する生活保護受給者に対しては、福祉事務所からも制度について説明し、理解を求めることとしています。

後発医薬品が先発医薬品と比べて薬価に差がない場合であっても後発医薬品を使用しなければならないのか。
【御意見等に対する考え方】
後発医薬品の薬価が先発医薬品の薬価よりも高くなっている又は先発医薬品の薬価と同額となっている場合は、後発医薬品の使用の原則化の例外として扱うこととします。

後発医薬品の入手が困難な場合は先発医薬品での調剤を認めること。

病院では採用医薬品が定められており,同一成分同一規格の後発医薬品と先発医薬品を同時に取り扱うことは財務の健全性の観点から現実性を欠く。そして、後発医薬品への切り替えが困難な症例が一定程度想定される品目は後発医薬品の取扱いそのものがない。
このような品目で,生活保護受給者に後発医薬品を給付するために後発医薬品を用意することは,経営上過剰な負担であり、配慮を求めたい。
【御意見等に対する考え方】
後発医薬品の在庫がない場合は、後発医薬品の使用の原則化の例外として扱うこととします。

処方せんに一般名処方又は後発医薬品への変更を不可としていない銘柄名処方がなされている場合、医師が医学的な知見に基づき後発医薬品を使用できると認めたと考え、原則として、後発医薬品を調剤しなければならないと受け取ってもよいか。
【御意見等に対する考え方】
そのような御理解で問題ありません。
なお、医師や歯科医師が後発医薬品の使用を可能とする処方を行った場合であっても、薬剤師の専門的な知見から先発医薬品を調剤する必要性があると考えられた場合には、薬剤師から処方医に処方内容に係る疑義照会をすることとなります。

後発医薬品の使用の原則化に伴い、医学的な知見に基づき、先発医薬品を調剤した際に、その判断に誤りがないか調査を受け、場合によっては行政指導等の対象になることが考えられる。
その場合、医師が個々の患者について、後発医薬品の使用の可否に係る判断の立証責任を負うこととなり、医師の負担の増加に繋がるのではないか。
【御意見等に対する考え方】
先発医薬品を調剤する場合としては、後発医薬品の在庫がない場合や後発医薬品が先発医薬品より高額である場合、又は薬剤師による医師等への疑義照会の結果、先発医薬品を給付することとした場合が考えられます。従って、先発医薬品を調剤したこと自体、ただちに行政指導の対象になるわけではありません。
対象となるかの判断に当たっては、調剤録等の閲覧による薬剤師の疑義照会の状況確認や後発医薬品の在庫の状況確認を適切に行うこととします。

後発医薬品の使用の原則化は、医師の処方権の侵害になるのではないか。

後発医薬品は、先発医薬品に比べ安全性や効果が低い、供給体制に不安が残るといわれている状況下で、後発医薬品の使用を原則とすることは、治療に悪影響を与えるため、原則化を実施しないこととするか、医師の処方権を強く担保する規定を盛り込むべき。
【御意見等に対する考え方】
後発医薬品の使用の可否に係る判断ついては、医師や歯科医師が医学的な知見に基づき、判断するものです。
例外としては、後発医薬品の在庫がない場合や、後発医薬品の薬価が先発医薬品の薬価よりも高くなっている又は先発医薬品の薬価と同額となっている場合を想定しています。
そのため、本改正は医師や歯科医師の処方権を侵害するものではありません。

従来の後発医薬品の使用を努力義務とする運用においても、実態上は、原則として後発医薬品を使用させるような運用がなされていた。今回の原則化により、何が変わるのか。
【御意見等に対する考え方】
現在、医療の給付を行う際、医師等が後発医薬品を使用することができると認めたものについては、生活保護受給者に可能な限り後発医薬品の使用を促すこととされており、後発医薬品の使用は、法律上努力義務とされていましたが、今後は医師等が医学的な知見に基づき後発医薬品を使用することができると認めたものについては、薬局に在庫がない場合等を除き、原則として後発医薬品を給付することとなります。

後発医薬品の使用の原則化について、「原則として、後発医薬品により投薬を行うこととする」、「原則として、後発医薬品を調剤するものとする」、といった文言では、実効性に欠けると思料する。そのため、「後発医薬品が存在しない等の理由がない限り」、といった文言を追加するなどの対応を行うべき。
【御意見等に対する考え方】
後発医薬品の使用の原則化の例外としては、後発医薬品の在庫がない場合や、後発医薬品の薬価が先発医薬品の薬価よりも高くなっている又は同額となっている場合を想定しており、こうした点について、通知やリーフレットに明記し、丁寧な周知を図ってまいります。

処方せんに先発医薬品の銘柄名処方がなされている場合、後発医薬品は使用できないと医師が判断したと考えて良いか。
【御意見等に対する考え方】
先発医薬品の銘柄名処方がなされ、後発医薬品への変更が不可の欄にチェックがされていれば、後発医薬品は使用できないと医師が判断したと考えます。

骨太の方針で、後発医薬品だけでなくバイオ後続品の使用促進も求められていることから、本規程においても、バイオ後続品を使用原則化の対象とすべき。
【御意見等に対する考え方】
ご指摘のバイオ後続品が、先発医薬品であってバイオテクノロジーを応用して製造したものと有効成分等が同一性を有する医薬品として製造販売の承認を受けた医薬品であって、バイオテクノロジーを応用して製造されたものを指すならば、生活保護法(昭和 25 年法律第 144 号)で定義される後発医薬品に、バイオ後続品は含まれます。

生活保護受給者の後発医薬品の使用原則化による後発医薬品のイメージダウンを防止するため、後発医薬品の推進を国策として打ち出している国家公務員、国会議員についても使用を義務化するべき。

生活保護制度のみ後発医薬品の使用の原則化を行うことは、後発医薬品のイメージの悪化に繋がるのではないか。

生活保護制度のみ後発医薬品の使用の原則化を行うことは、生活保護制度が多くの費用がかかるといったネガティブなイメージを与え、生活保護制度の利用に係るスティグマが強くなるのではないか。
【御意見等に対する考え方】
後発医薬品の使用促進については、限られた医療資源を有効活用し、国民医療を守り、医療保険制度を持続可能なものとするために重要な施策として、医療全体においても、生活保護の医療扶助においても、使用割合を80%以上とする目標を目指すこととされており、従来より、生活保護制度に限らず取り組まれています。そのため、後発医薬品の使用を原則化することにより、後発医薬品等のイメージが悪化することには繋がらないと考えています。

処方せんを発行せず、医師又は歯科医師の指示の元、調剤を行っているいわゆる院内調剤を行う医療機関についても、後発医薬品の使用の原則化の対象とすべきである。
【御意見等に対する考え方】
ご指摘の院内調剤を行う医療機関についても、後発医薬品の使用の原則化の対象となります。

医師等が、一般名処方にもかかわらず、後発医薬品への変更を不可としたり、先発医薬品を調剤するよう指導を行う場合があるため、指導改善を行うべき。

【御意見等に対する考え方】
現在、医療の給付を行う際、医師等が後発医薬品を使用することができると認めたものについては、生活保護受給者に可能な限り後発医薬品の使用を促すこととされており、治療上の必要など医学的な知見に基づき、適切に先発医薬品の処方が行われていると考えています。
いずれにせよ、後発医薬品の使用の原則化に向けて、制度の趣旨を理解し、適切な運用を行うよう、地方自治体と連携して指定医療機関に対する周知徹底に努めてまいります。

患者に後発医薬品への変更を納得してもらうことが煩雑などの理由から後発医薬品への変更を行わない場合は、指定医療機関等への罰則を課したり、行政指導をおこなうべきではないか。

【御意見等に対する考え方】
先発医薬品を調剤する場合としては、後発医薬品の在庫がない場合や後発医薬品が先発医薬品より高額である場合、又は薬剤師による医師等への疑義照会の結果、先発医薬品を給付することとした場合が考えられます。従って、先発医薬品を調剤したこと自体、ただちに行政指導の対象にはなるわけではありません。
対象となるかの判断に当たっては、調剤録等の閲覧による薬剤師の疑義照会の状況確認や後発医薬品の在庫の状況確認を適切に行うこととします。

後発医薬品の使用の原則化が適用される段階は、先行発売されるオーソライズド・ジェネリック以外の後発医薬品の発売開始後とすること。

【御意見等に対する考え方】
有効成分のみならず、原薬、添加物、製法等が先発品と同一である後発品であるいわゆるオーソライズド・ジェネリックについては、現行の薬価制度において、一般的な後発品医薬品と同様に取り扱われています。
そして、生活保護制度における医療扶助は、基本的には国民健康保険の診療方針及び診療報酬の例によるため、同様の取扱いとなります。

患者の希望により先発医薬品を調剤した場合は、一部または全額を自己負担とすべき。

生活保護受給者の金銭感覚を養うため、医療費について、一度自己負担してもらい、後ほど償還するという仕組みにすればよいのではないか。

頻回受診等の対策のため、医療扶助費に制限を設けて、それ以上は自己負担とすべき。

先発医薬品か後発医薬品かを選ぶ権利があっても良いのではないか。

生活保護受給者であることを理由に後発医薬品の使用を原則化することは、差別であり人権侵害に当たるのではないか。

平成 25 年 11 月 12 日の生活保護法の一部を改正する法律案に対する附帯決議に、「7、五年後の見直しに際しては、生活保護受給者数、人口比受給率、生活保護の捕捉率、餓死・孤立死などの問題事例等の動向を踏まえ、生活保護受給者、これを支援する団体、貧困問題に関し優れた見識を有する者等、関係者の意見を十分に聴取した上で、必要な改正を行うこと。」とあるが、後発医薬品の使用の原則化に係る改正は、前述の附帯決議を踏まえた上での改正なのか。生活保護受給者のみを対象とした後発医薬品の使用の原則化は差別に当たると考える。

【御意見等に対する考え方】
生活保護の医療扶助において窓口負担を導入すべきとの御意見ですが、
・最低生活保障との両立が難しくなるという懸念や
・必要な医療の受診まで抑制され、むしろ長期的には医療費が増えるといった懸念、
・仕組みによっては、医療機関の未収金やケースワーカーの事務負担の増加につながるといった懸念から、反対意見が多数であるところです。
こうした様々な御意見を踏まえつつ、課題として検討する必要があると考えています。
後発医薬品は、
・先発医薬品と有効性及び安全性が同等であるものとして製造販売が承認されているものであるため、生活保護受給者に対して必要な医療の給付は行われること、
・医師又は歯科医師が医学的知見に基づき使用を認めている場合に限り、原則化するものであり、医師等が治療上の効果からや、患者の相談を受けて医学的な知見に基づき、後発医薬品を処方することが適当でないと判断する場合は先発医薬品による給付が行われることから、差別であり人権侵害であるとは考えておりません。

処方せんに医師が後発医薬品への変更を不可とする旨を記載した場合、その変更ができなくなる規定について撤廃するべき。

【御意見等に対する考え方】
処方せんに後発医薬品への変更を不可とすることを記載する欄が設けられているのは、医学的な知見に基づき、後発医薬品を処方することが適当でない場合があるためですので御理解ください。

医学的根拠により後発医薬品が使用できない旨とその理由を医療券等へ記載することを求めたい。

【御意見等に対する考え方】
御意見として今後の参考にさせていただきます。

医療券、調剤券に後発医薬品の使用を原則とすることについて記載するべき。

【御意見等に対する考え方】
御意見として今後の参考にさせていただきます。

薬局では、処方せんに後発医薬品への変更が不可であることについて記載がないにもかかわらず、患者から副作用を理由に後発医薬品の使用を拒否される場合がある。
その場合は、本当に副作用があるのか薬局では確認できないため、後発医薬品の調剤ができない。可能であれば、処方元の医師に、アレルギー・副作用歴などの有無を記載していただき、変更可能と明示してほしい。

【御意見等に対する考え方】
医師や歯科医師が後発医薬品の使用を可能とする処方を行った場合であっても、薬剤師の専門的な知見から先発医薬品を調剤する必要性があると考えられた場合には、薬剤師から処方医に処方内容に係る疑義照会をすることとなります。
ご提案のアレルギー・副作用歴などの有無の記載については、御意見として今後の参考にさせていただきます。

先発医薬品のみに適応症がある場合でも、処方せんの後発医薬品への変更不可欄にチェックがないため誤って後発医薬品を調剤しても罰則は課さないこと。

【御意見等に対する考え方】
生活保護制度においては、生活保護受給者が一般名処方又は後発医薬品への変更を不可としていない銘柄名処方の処方せんを持ってきた場合は、原則として後発医薬品が調剤されることとなるため、制度の趣旨を理解し、適切な運用を行うよう、自治体と連携して指定医療機関に対する周知徹底に努めてまいります。

厚生労働省は、各市町村の生活保護担当部局に対して、後発医薬品の使用を病院側に推進するよう周知する旨を通達されたい。

サラリーマンは会社からジェネリック推奨のはがきがよく届くが、生活保護受給者の方にはそのような対応は行っているか。

後発医薬品の使用を原則化する場合は、後発医薬品とは何か、なぜ後発医薬品を使用しなければならないのか等について国や自治体から丁寧な説明を行っていただきたい。

行政の窓口で生活保護受給者に対して、後発医薬品の使用の原則化について、しっかりと説明を行ってほしい。

後発医薬品の使用原則化の理解促進のため、医師から患者への説明や薬局等の待合室、自治体の生活保護部局に掲示するわかりやすい政府発行のポスターの作成が必要ではないか。

【御意見等に対する考え方】
従来より、後発医薬品の使用促進のため、周知を行ってきたところですが、後発医薬品の使用の原則化に係る取扱いついて、御理解をいただけるよう指定医療機関及び生活保護受給者向けのリーフレット等を作成し、地方自治体と連携して周知に努めてまいります。

生活保護受給者に明細書を無償で交付する意味を理解している者が少ない。もう少しはっきりとコスト意識を持てと明確に打ち出すべき。

明細書の無償化により、生活保護受給者がコストを意識することとなり、医療扶助を利用することに引け目を感じるようになるのではないか。

明細書の無償化は、医療扶助の一部負担を導入することに繋がるのではないか。

【御意見等に対する考え方】
患者への医療費の内容の情報提供等を進めるため、医療保険において詳細な明細書を交付することとしていますが、公費負担医療についても交付することとされたことから、生活保護制度においても交付することとしたものです。

生活保護財源の自治体の負担率が低いためか、後発医薬品の使用推進に積極的でない自治体もあるのではないか。そのためにも医療扶助費の地方自治体の一部負担などを検討してはどうか。

【御意見等に対する考え方】
生活保護費の費用負担割合は国が4分の3、地方自治体が4分の1となっており、この中に医療扶助費も含まれています。
また、自治体においては医療扶助について、後発医薬品使用促進計画を作成し、その使用推進に向けて取組を進めているところです。

後発医薬品の使用について生活保護受給者に理解が得られない場合に自治体のどこに相談すれば良いか。

生活保護受給者が後発医薬品を使用することについて、医学的な根拠なく拒否し続けた場合には、指定医療機関からその旨を自治体へ報告するようにするべき。

後発医薬品の使用について、指定医療機関で説明を行っても、なお、後発医薬品の使用を拒む場合はどのように対応すれば良いか。

【御意見等に対する考え方】
指定医療機関による再度の説明を受けても、なお先発医薬品の使用を希望する生活保護受給者に対しては、福祉事務所からも制度について説明し、理解を求めることとしています。

財政状況が厳しいため、後発医薬品の使用の原則化に取り組んでいくべきであるが、提供される医療のレベルを下げないことを前提とすべきである。

【御意見等に対する考え方】
必要な医療を確保しつつ、後発医薬品の使用促進をさらに進めるため、医師等が医学的知見に基づき、後発医薬品の使用が可能と判断する場合は、後発医薬品の使用を原則化しています。

生活保護受給者の医療費は無料のため、不必要な医療が行われていると聞いたことがあるが、税金の無駄遣いが行われているのではないか。

【御意見等に対する考え方】
レセプト点検や頻回受診対策を実施していますが、今後とも、医療扶助費の適正化に向け、取り組んでまいります。

本告示の規定に、医師・歯科医師は、後発医薬品の使用について患者本人の十分な納得が得られるよう懇切丁寧な説明をすべきことと盛り込むべき。

【御意見等に対する考え方】
ご提案については、生活保護法第50条第1項において、既に、同趣旨の内容が規定されています。
なお、後発医薬品の使用の原則化の施行に向けて、制度の趣旨を理解し、適切な運用を行うよう、地方自治体と連携して指定医療機関に対する周知徹底に努めてまいります。

後発医薬品の使用の原則化の実施に伴い、病院の調剤関係のシステムを改修する必要があるが、9月下旬に告示、10 月1日に施行では、システムの改修を行うための時間が足りない。

【御意見等に対する考え方】
具体的な実施方法の案については、事前に自治体や関係団体に情報提供するなど、早期の周知に努めています。


めまいがするんです!



めまいは、その症状の起こり方や程度、訴え方、随伴する症状などが多様です。この違いは、障害の部位、程度、患者自身の感じ方などの要素が絡んでいます。めまいは、内耳性めまいと中枢性めまいとに大きく分けられるが、他には心因性めまい、更年期症状としてのめまい、整形外科的・眼科的めまいなど多岐にめまい症状として扱われることが多いで。めまい症状の訴えがあるものの、病態や原因がはっきりしない場合、所見が取れない場合などもあり、その扱いに苦慮することも少なくありません。

めまい発作を起こした時に、最もつらい症状は自律神経症状の悪心・嘔吐です。ほかに、冷や汗、便意、震え、血圧の異常とともに不安、過呼吸などを伴いやすいです。

抗めまい薬といわれる薬剤の分類は明確ではありませんが、その作用から悪心・嘔吐を抑制する制吐剤が含まれる場合も多いです。通常は、鎮静剤や循環改善剤などがその作用として総称的に使われているのが実情です。非常に曖昧に受け取られかねませんが、薬剤は効果として、即効性や特攻性が期待されます。しかし、めまい症状は、主に体平衡系の器官が急に障害を受けたときに起こる症状であり、眼振・ふらつきを含めた平衡障害症状を即効的に治癒させることは難しいです。しかし、自律神経症状を軽快させる治療は可能であることから、抗めまい薬として急性期には抗不安薬や鎮静薬などの薬剤が使われます。慢性期には障害器官の改善薬が抗めまい薬として使われることが多いようです。症状としては乗り物酔いと同じ症状を落ち着かせるためには、酔い止め薬が好んで使われます。

めまい疾患とその治療

メニエール病

内耳性めまい疾患では最も古くから知られていた疾患です。聴覚症状として、耳閉感・難聴・耳鳴とともにめまい発作が起こり、数十分から3~4時間、長くても班日くらいのめまいが続きます。落ち着くと耳閉感や耳鳴りが軽快します。これらが繰り返し起きるのが特徴です。めまい発作の数が増えてくるに従い、聴力の回復は悪くなり、難聴が進行します。
原因は、内耳内リンパ水腫が起こるためだと言われていますが、水腫が起こるメカニズムは明らかになっていません。
治療は、病態が内リンパ水腫であることから水腫の改善をさせるためにステロイドホルモン剤、利尿薬を使用します。軽いめまい感が続く場合には抗めまい薬や内耳循環改善薬の投与とともに利尿薬を続け、吐き気が出てくるようであれば酔い止め役を頓服で使用します。耳鳴りやじへいかんのが強くなってくるのはめまいの準備状態でもあるので、精神を落ち着けるようにします。
薬により半年以上聴覚症状が悪化せず、めまいもない時期が続いてくると薬の中止が可能です。しかし、神経質な性格の人はメニエール病にかかりやすいと言われ、そのような人がストレスを与えられると発症しやすいためストレスを与えない環境の整備なども治療には必要です。神経質で不安症な性格の人は治ったからとすぐに薬を中止してしまうことは再発時の不安を逆に煽ってしまい悪化してしまいがちなので、中止する時は3~6ヶ月かけて減量して中止します。
よく使用されるイソバイドは、即効性に乏しい利尿薬で、短期の投与で効果を期待することは難しいです。最低数ヶ月投与して効果を確認します。めまい改善についての効果は大きいのですが、聴覚障害の改善は乏しいという報告があることは知っておいたほうが良いでしょう。

前庭神経炎、突発性難聴

前庭神経炎は、突然強いめまいが始まり、数日~数週間持続します。非常に強いめまいが続き、平衡感覚を司る内耳半規管機能が高度に低下することによって、急な左右内耳機能のアンバランスがおきます。内耳機能の回復が悪い場合にはめまいは長く続き、半規管機能が戻らない場合には内耳機能の左右差が残るために動いたときのふらつきやめまい感が続くことがあります。
突発性難聴は、急に耳の聞こえが悪くなるとともにめまいを起こすことがあり数日持続します。
発作時の治療にはステロイドホルモン剤の点滴を行います。半規管機能低下が残る場合には、抗めまい薬と内耳循環改善薬などの薬物治療とともに、運動療法をおこないます。左右の耳の平衡感覚のアンバランスの影響を改善させるための運動を含めたリハビリを行います。こごくことでフラツキをもろに感じてしまうのでどうしても動かない生活をしてしまいがちですが、頭部の動きを与えるリハビリを行うことで、耳だけでなく脳が慣れていきふらつきの軽減を図ることができます。

良性発作性頭位めまい症

内耳性めまいの中では最も多いめまいの病気です。内耳性めまいの6割がこの病気と言われるほどです。頭を動かしたときにめまいが起こり、安静にしていると起こらないという特徴があります。これは内耳内の傾きセンサーである耳石器から耳石が半規管に入り込んで塊を作り出すことで生じます。内耳半規管の耳石の塊が頭を動かしたときに移動するとめまいが生じます。このため、起床時や寝るとき、髪を洗うとき、うがいするときなどに起こりやすいです。
基本的な治療は耳石を元の耳石器に戻す理学療法、浮遊耳石置換法です。抗めまい薬や酔い止め薬を症状に合わせて投与することもありますが、根本治療にはなりません。あくまで補助的なものです。しかし、浮遊耳石置換法と薬の併用で早期治療を図ることができます。頭部の動きが少ない生活で繰り返しやすいので、普段の運動も再発予防には重要です。

めまいに使用する薬

ベタヒスチンメシル酸塩(メリスロン)

日本で最も一般的に使われている抗めまい薬です。海外ではベタヒスチン二塩酸塩が使用されています。ベタヒスチンメシル酸塩のRCTでは、メニエール病において少なくとも1日あたり24mg以上の服用でプラセボに対するめまいへの有効性が示唆されています。また副作用が多いという印象はありません。
James AL, Burton MJ.Betahistine for Menière's disease or syndrome.Cochrane Database Syst Rev. 2001;(1)

薬理作用はヒスタミンH1受容体作動作用とH3受容体拮抗作用です。H1受容体作動作用によって脳や内耳の血管を拡張させ、H3受容体拮抗作用で前庭機能の左右差で生じる興奮性のアンバランスを調整することで症状を緩和していると考えられています。
副作用は稀ではありますが、吐き気や嘔吐、発疹などがみられることがあります。
めまいに対する明確な予防効果が確立されている薬ではないので基本症状がなくなれば飲む必要はありません。

ジフェニドール(セファドール)

ベタヒスチンとともに抗めまい薬として、よく使用されています。薬理作用としては、延髄にある嘔吐中枢を抑制することにより、前庭性嘔吐を含む様々な嘔吐を抑制します。このため海外では制吐薬としての適応もあります。比較的短時間で効果が出るので、眠気の少ない、めまい時の頓服としても利用可能で、めまいの原因疾患にかかわらず効果が期待できます
副作用は抗コリン作用による喉の渇きが比較的頻度が高いです。さらに抗コリン作用があるため緑内障や前立腺肥大症の病気にかかっている方は症状を悪化させる恐れがあり注意が必要です。

ジフェニドールにはめまいの予防効果はありません。喉の渇きの副作用も強く出ることがあるので、ダラダラ飲み続けることはおすすめできません。症状がなくなった時点で中止するのが望ましいです。

ATP(アデホス、トリノシン)

ATPは体内ですぐにアデノシンになり、プリン受容体を介して血管を拡張させます。これにより椎骨動脈の血流を増加させ内耳の血流循環を改善させることが知られています。

イソソルビド(イソバイド)

浸透圧利尿薬という分類の薬です。内リンパ水腫が原因となるメニエール病などが適応になります。ブーンという低音の耳鳴りが数時間続くようなめまいであればメニエール病の可能性が高く効果も期待できます。一方で、内リンパ水腫のない他のめまいには無効です。イソソルビドの長期投与は血漿浸透圧を上昇させ、ストレスホルモンの一つである抗利尿ホルモン(ADH)を上昇させるとの報告があります。ADHは近年、メニエール病の発生機序としての関与が示唆されているため、漫然とした長期投与は避けたほうが良いでしょう。

ジフェンヒドラミン(トラベルミン)

血液脳関門を通過する抗ヒスタミン薬です。脳幹にある嘔吐中枢に作用してめまいに伴う吐き気や嘔吐を抑制します。
副作用には眠気があります。しかし、めまいの急性期では睡眠も回復のために重要な場合が多いのでこの眠気の副作用を利用することもあります。アレグラなど新しい抗ヒスタミン薬は脳に作用しないため眠気は誘発しないのですが、同様にめまいにも効果は期待できません。また、緑内障にかかっている患者さんには、緑内障を悪化させる恐れがあるため慎重に投与します。ただ、頓用で用いられることがほとんどなので問題になることは少ないと考えられます。

7%炭酸水素ナトリウム注射液(メイロン)

めまいの発作の治療として注射で使用します。作用機序については明らかではありません。経験的に汎用されていますが、めまい症状の抑制効果については疑問視されるようなことはありません。メイロンは炭酸水素ナトリウムの濃度が下がると効果が減弱するとされているので、他の輸液や薬剤に混合して投与すると効果が少なくなるので注意です。

漢方薬

漢方では、めまいを「水」の流れの異常によるものと考え、「水」の流れを正す苓桂朮甘湯がよく使用されます。胃腸虚弱で冷え性や頭痛を伴う場合には半夏白朮天麻湯、更年期障害で抑うつ傾向のある女性のめまいには加味逍遙散などを使うこともあります。



薬局やドラッグストアで薬を買ってなんとかしたい

「めまいがするんですけど・・・」というお客さんの訴えは、ドラッグストアで従事しているなかで一番困ると言っていいものかもしれません。すでに上で述べているように、めまいには様々な原因や症状があって、回転するようなものか、ふわふわする揺れる感じなのか、訴える人と聞き手のニュアンスが合致しないことがほとんどです。さらにめまいには脳梗塞など直接命に関わる緊急性の高い病気の一つの症状であったりするので、薬だけ購入してもらって帰すのは、とても不安です。しかし、症状を訴えている人は、「なんとかしたい」と藁にもすがる思いでしょうから、薬を薦める場合には医療用に使われるものをとりあえず紹介して、服用していただき病院への受診を促します。
ドラッグストアや薬局で買えるもので効果が期待できるのは、乗り物酔い止め薬や漢方薬です。医療用のトラベルミンの類似薬となりますが、一般用医薬品OTCの酔い止め薬には多くの種類があり、それぞれに特徴を持っています。OTCにはスコポラミン製剤が多く配合されています。スコポラミンは中枢神経及び副交感神経を抑制する作用や唾液分泌抑制、鎮痛作用、消化管運動の抑制などの作用があります。

【第2類医薬品】トラベルミン 6錠

ジフェンヒドラミンサリチル酸塩 40mg
ジプロフィリン 26mg

【第2類医薬品】ツムラ漢方苓桂朮甘湯エキス顆粒 20包

本品2包(3.75g)中、下記の割合の苓桂朮甘湯エキス(1/2量)0.75g
を含有します。
日局ブクリョウ 3.0g 日局ソウジュツ 1.5g
日局ケイヒ 2.0g 日局カンゾウ 1.0g

【第2類医薬品】ルビーナ 180錠

9錠(1日服用量)中に次の成分を含有する。
連珠飲エキス散・・・3,150mg
〔トウキ・・・・・・1,500mg
シャクヤク・・・・・1,500mg
センキュウ・・・・・1,000mg
ジオウ・・・・・・・・500mg
ブクリョウ・・・・・2,000mg
ケイヒ・・・・・・・1,500mg
ソウジュツ・・・・・1,500mg
カンゾウ・・・・・・・500mg
上記生薬より抽出〕


2018年8月2日木曜日

パーキン販売中止と代替品



パーキンソン病治療薬のパーキンが販売中止となるようです。
販売中止のご案内(田辺三菱2018.07)

経過措置期間は 2019年3月 31日まで(予定)

パーキンソン病の治療薬だから『パーキン』。とても覚えやすい名前です。
パーキンは 1962年2月に日本で販売が開始された薬で、販売中止の2018年まで56年もの間使用された薬です。
販売中止は諸般の事情とのことです。


パーキンはプロフェナミン塩酸塩を成分とするパーキンソン病治療薬で、アセチルコリンのはたらきを抑える抗コリン薬です。 

抗コリン薬によるパーキンソン病治療は、1867年のOrdensteinによるアトロピン使用がその始まりとされています。
1949年Cunninghamが、その時代の新しい副交感神経遮断薬であるトリヘキシフェニジルの薬理作用がアトロピンと類似しており、かつ中毒作用が少ないことを報告し今日まで使用され続けています。そして多くの同効薬が開発されました。パーキンもその一つです。

パーキンなど抗コリン薬はかつてはパーキンソン病の初期治療によく使われていましたが、高齢者で精神症状発現のリスクを上げることや長期に服用すると認知機能に影響を与える可能性が指摘され、最近ではあまり処方されなくなっています。
Ehrt U, et al.,Use of drugs with anticholinergic effect and impact on cognition in Parkinson's disease: a cohort study. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2010 Feb;81(2):160-5.[PMID: 19770163]

エビデンスは乏しいですが、相対的に抗振戦作用が強いと考えられています。
現在ではレボドパ製剤、ドパミンアゴニストが効果不十分な難治性の振戦に処方されることが多いようです。


パーキンソン病における抗コリン薬の作用機序


パーキンソン病ではドパミン神経の機能が低下し、アセチルコリン神経の活動が亢進しているとされています。抗コリン薬は、線条体においてムスカリン性アセチルコリン受容体を遮断することにより、ドパミン系に対して相対的に優位となったアセチルコリン系の作用を抑制し、ドパミン神経とアセチルコリン神経のアンバランスを是正することで治療効果を発現するとされています。

パーキンの代替品

パーキンの代替品は、同効品の抗コリン薬が候補となります。
アーテンがよく使用されている印象があります。



また、薬効分類上はH1ブロッカーですがパーキンと同じフェノチアジン誘導体のプロメタジン塩酸塩製剤(ヒベルナ/ピレチア)も候補となります。ちなみに、プロフェナミン100に対してプロメタジン50が等価と考えられています。

パーキンから他の抗コリン薬などへ切り替える際には、オフ状態やジスキネジアが出やすくなります。患者さんの状態をよく診ながら用量を調節するようにしましょう。




パーキンソン病診療ガイドライン2018
Posted with Amakuri at 2018.8.2
日本神経学会
医学書院