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2017年10月6日金曜日

脂質異常症治療薬 アトーゼット配合錠LD/HD





アトーゼット配合錠は、エゼチミブとアトルバスタチンを有効成分とする配合剤です。
商品名だと『ゼチーア』と『リピトール』の配合剤と考えると分かりやすいと思います。

アトーゼット配合錠LDは
エゼチミブを10mg、アトルバスタチンを10mgを1錠に配合した薬剤です。

アトーゼット配合錠HD
エゼチミブを10mg、アトルバスタチンを20mgを1錠に配合した薬剤です。


エゼチミブとアトルバスタチンをそれぞれ併用して飲まれている患者さんでは 1 日 1 回 2 又は 3 錠を服用する必要があります。
アトーゼット配合錠は 1 日 1 回 1 錠の服用ですむため簡単であり、患者さんの利便性が向上することでアドヒアランスの向上が期待される薬剤です。


日本における動脈硬化性疾患予防ガイドラインでは、高LDLコレステロール血症に対する薬物治療として、スタチンが第一選択薬とされています。そして、スタチンで効果不十分な場合に、エゼチミブを追加することが推奨されています。

2016 ESC/EAS ガイドライン(Atherosclerosis 2016; 253: 281-344)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27594540

2013 ACC/AHA ガイドライン(J Am Coll Cardiol 2014; 63: 2889-934)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24239923

2016 ACC Expertconsensus decision(J Am Coll Cardiol 2016; 68: 92-125)
http://www.onlinejacc.org/content/68/1/92

アメリカやヨーロッパのガイドラインにおいても、
スタチンの大規模試験によるエビデンスが豊富であることから、動脈硬化性疾患に対する薬物治療としては、日本と同様に最初にスタチンを使用することを考慮し、スタチンで効果不十分な場合にエゼチミブを追加することが推奨されています。

エゼチミブとスタチンの併用は、エゼチミブの作用機序である小腸でのコレステロール取込み抑制とスタチンによる肝臓でのコレステロール合成の抑制の異なる2つの作用によって、血中のLDLコレステロールを減少させます。

スタチン単独投与したときの動脈硬化性疾患予防効果は、数多くの無作為化試験が実施されていて、これらの試験のメタ解析から、スタチン投与により予後が改善されることが示されています。
Lancet 2012; 380:581-90
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22607822

では、エゼチミブとスタチンの併用についてエビデンスはどうでしょうか?

家族性高コレステロール血症患者を対象とした ENHANCE試験ではエゼチミブとシンバスタチンの併用投与群とシンバスタチン単独投与群の内膜中膜肥厚の変化について有意差はみられなかったとの報告があります。
N Engl J Med 2008; 358: 1431-43
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0800742

しかし、急性冠症候群患者を対象とした試験(IMPROVE-IT 試験)においては、エゼチミブとシンバスタチンの配合剤を投与した群がシンバスタチン単剤投与群に比べてイベント発現率を有意に低下することが報告されています。
N Engl J Med 2015;372: 2387-97
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1410489#t=article

経皮的冠動脈インターベンションを施行した冠動脈疾患患者を対象とした試験(PRECISE-IVUS 試験)では、エゼチミブとアトルバスタチンの併用投与はアトルバスタチン単剤投与に比べて LDL-コレステロールを有意に低下させ冠動脈プラークを退縮させることが確認されています。
J Am Coll Cardiol 2015; 66: 495-507
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26227186

またスタチン投与例では、低下したLDL-Cが後に上昇する「エスケープ現象」を示す症例の存在が知られています。
Atherosclerosis. Vol. 224, No. 2, 454-6, October, 2012. 
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22892323

スタチンのエスケープ現象のメカニズムは、明らかになってはいませんがコレステロール合成の抑制に伴い、代償性に小腸からの吸収が亢進することが関与しているのではないかと考えられています。
スタチン効果不十分例では増量するよりエゼチミブと併用するほうが理にかなっているというわけです。


なぜ、この配合用量なのか


日本で使用されているエゼチミブとアトルバスタチン併用用量の組合せの割合は、

高コレステロール血症患者では
10 mg+10 mg が最も高く60.2%、
10 mg+20 mgの組み合わせは18.6%でした。

家族性高コレステロール血症の患者では
10 mg+20 mg の割合が最も高く44.7%、
10 mg+10 mgの組み合わせは25.4%でした。
(メーカー調べ)

アトーゼット配合錠の成分の組み合わせは日本における使用状況を考慮したもののようです。


ゼチーア(エゼチミブ)単剤からの切り替えは原則できません


アトーゼット配合錠は各単剤を併用し、LDLコレステロール値が安定している患者において切替えに用いる薬剤と位置付けられています。
エゼチミブ単独で効果不十分な場合にアトーゼットへの切替えについては慎重に判断する必要があります。
なぜかと言うと、高コレステロール患者に対する薬物療法においては現在、スタチンが第一選択薬として用いられていることから、エゼチミブ単独で投与されている患者は、スタチンの忍容性が低かった、もしくは忍容性が低いような背景を有する患者である可能性が考えられるためです。

エゼチミブ単独投与で効果不十分な場合にアトルバスタチンを追加投与することが適切ではないと考えられるような患者も想定されるため、一概にエゼチミブ単独からの切り替えることは、推奨されないので注意しましょう。



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アトーゼット配合錠LD/HD
[効能又は効果]
高コレステロール血症、
家族性高コレステロール血症
[用法及び用量]
通常、成人には 1 日 1 回 1 錠(エゼチミブ/アトルバスタチンとして 10 mg/10 mg 又は 10 mg/20 mg)を食後に経口投与する。