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2017年10月31日火曜日

エタンブトール錠の一包化





エサンブトールは高湿度条件では脆くなってしまうので一包化の際には注意が必要です。

イスコチン錠100mg   4錠
リファンピシンカプセル150mg   3カプセル
エサンブトール錠250mg 3錠
1日1回朝食後服用       28日分
(一包化指示)

上記処方は、結核治療でよくみかける組み合わせですね。
結核の治療では上記抗結核薬を通常6ヶ月間飲み続けます。
その間、飲み忘れたりに服薬を中止してしまうと、治らないどころか薬剤耐性菌が生じることがあり治療が困難・もしくは不可能となることがあります。
決められた期間忘れずに飲み続けてもらうための工夫として一包化されることがほとんどです。

いずれの薬剤もバラ包装があるので、一包化してもよさそうなのですが、エサンブトール錠には注意しましょう。


エサンブトール錠は温度25℃、湿度75%の条件において
無包装状態では硬度が低下します

2週間後では約50%
1ヶ月後では約30%

脆くなってしまうため、錠剤が崩れてしまうことがあります。
粉砕時の安定性データでは2週間までなら含量低下問題ないとされていますが、
崩れてしまうと錠剤のフィルムコートが剥がれ苦味が強く出てしまいます。

エサンブトールの一包化の際には、除湿剤の入れたタッパーに保管するなど湿度に注意しましょう。


2017年10月11日水曜日

潰瘍性大腸炎とクローン病の違い




潰瘍性大腸炎もクローン病も原因不明の寛解と再燃を繰り返す消化管疾患である炎症性腸疾患です。
両疾患とも厚生労働省の指定難病とされています。近年では、潰瘍性大腸炎16万人、クローン病4万人と増加の一途をたどっています。難病とはいえ稀な病気ではありません。

この潰瘍性大腸炎とクローン病は似たような症状と、治療に使う薬も似ているため違いがよくわからないという声を聞きます。

簡単ですが、潰瘍性大腸炎とクローン病の違いをまとめてみました。

参考:
厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(鈴木班)平成28年度分担研究報告書 別冊
潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針 平成28年度改訂版



炎症範囲が違う

潰瘍性大腸炎
主に大腸に炎症がおきます。大腸の粘膜に炎症が起きます。

クローン病
口から肛門の全消化管に炎症がおきます。
消化管全層に炎症が起きます。


病態

潰瘍性大腸炎
びらんや潰瘍を形成

クローン病
肉芽腫性炎症・縦走潰瘍や敷石像などの特徴的な腸病変
腸管狭窄や瘻孔


好発年齢が違う

潰瘍性大腸炎
20代から30代
近年は中高年層にも多発

クローン病
10代から20代


症状がちがう

腹痛や発熱は同じですが

潰瘍性大腸炎
ケチャップのような血便
持続性または反復性の粘血便・血性下痢

クローン病
下痢、体重減少
腸閉塞、腸瘻孔(内瘻、外瘻)、腸穿孔。


治療法が少し違う

5-ASA製剤、ステロイド、抗TNF-α抗体、免疫調節薬を病態や重症度に合わせて使い分けて、炎症を抑えた状態を維持する治療法は両疾患とも同じです。

クローン病ではエレンタールやツインラインなどを用いた栄養療法を併用することがあります。

クローン病のみ適応を持つ薬剤(2017年10月時点)
  • ステラーラ点滴静注130mg
  • ステラーラ皮下注45mgシリンジ
  • ゼンタコートカプセル3mg


クローン病の診療ガイド
Posted with Amakuri
日本炎症性腸疾患協会
文光堂

2017年10月10日火曜日

ポステリザン軟膏 販売中止と代替品




ポステリザン軟膏が販売中止となるようです。
https://www.maruho.co.jp/medical/pdf/products/posterisan/news/1709posterisan_an.pdf

2017年12月末出荷停止予定。
経過措置期間は2018年3月31日まで(予定)

ポステリザン軟膏は大腸菌死菌浮遊液を有効成分とする痔の薬(塗り薬)です。
大腸菌死菌浮遊液は白血球遊走能を高めることにより局所感染防御作用を示し、また肉芽形成促進作用による創傷治癒促進作用を示すことから、急性・慢性痔疾の治療と予防に有効であることが証明されています。

ドイツのドクトル・カーデ製薬会社が創製し、1922年ポステリザン軟膏及びポステリザン坐薬を発売しました。
日本ではマルホ株式会社が 1953年8月(昭和28年8月)にポステリザン軟膏の販売を開始し、2017年に販売中止となる64年間、日本人のお尻を守ってきました。

ポステリザンには抗炎症作用を持つステロイドであるヒドロコルチゾンを配合した強力ポステリザン(軟膏)とポステリザンF坐薬がありますが、こちらは販売継続するそうです。
強力ポステリザン軟膏は痔疾患用外用剤のなかで日本で一番売れているわけですから当然ですね。

ポステリザンF座薬は2020年販売中止

ポステリザン軟膏の良さは


他の痔疾患用外用剤にはない処方のシンプルさです。
ポステリザン軟膏は大腸菌死菌浮遊液のみを成分としています。
他の痔疾患用外用剤はステロイドや局所麻酔剤のリドカインなど、数種類の成分の配合剤です。
ステロイドやリドカインを使いたくない人で、とりあえずなんか処方しておきたいときなどに重宝していました。
薬価の安さと、毒にも薬にもならない安心さで根強い人気のある薬でした。

基剤の精製ラノリン、白色ワセリンだけでも十分効果ありそうなんですけどね。


ポステリザン軟膏の代替品


大腸菌死菌浮遊液のみを成分とする薬はありません。

大腸菌死菌浮遊液+ステロイド

  • 強力ポステリザン(軟膏)
  • ポステリザンF坐薬


ステロイドは嫌だなぁという方には

  • 白色ワセリン


白色ワセリンには感染防御作用はありませんが肉芽形成促進作用はあります。


ソルファ錠 販売中止と代替品





喘息 ・ アレルギー性鼻炎治療剤のソルファ錠が販売中止となるようです。
https://www.takedamed.com/content/medicine/newsdoc/170925solfa_1.pdf
.
<経過措置期間>
2018 年 3 月~2019 年 3 月(予定)

ソルファ錠の有効成分であるアンレキサノクスは抗アレルギー作用を持つアザキサントン誘導体として、生薬の「黄芩(コガネバナの根)」の一成分であるバイカレインが元になっている化合物です。
生薬の成分がもとになっているリード化合物として薬剤師国家試験でも登場する基本的な薬です。

ソルファ(アンレキサノクス)は ヒスタミン遊離抑制作用及 びロイコトリエン生成抑制作用、 抗ロイコトリエン作用をあわせもち、しかも抗ヒスタミン作用はなく、I型およびⅢ型アレルギー反応を抑制することが認められています。


1987年6月ソルファ50mg錠が喘息治療薬として承認されました。
そして1989年9月アレルギー性鼻炎の効能・効果を追加するとともに、25mg錠も承認されました。

しかし、
喘息治療は経口剤から吸入外用剤へシフトし、アレルギー鼻炎治療は第二世代抗ヒスタミン薬の登場により、その処方数は減少していました。
そして2017年9月販売中止となりました。

ソルファの名前の由来は
英語で solfaとは書き「ドレミファ音階で歌う」という意味で、気管支喘息やアレルギー性鼻炎の症状が改善され、爽快な気分になり歌も歌いたくなることを願う、
という、今では考えられないとてもオシャレなネーミングでした。


ソルファの代替品


ヒスタミン遊離抑制作用はありませんが
ロイコトリエン拮抗剤が代替品の候補となります。

  • オノン
  • シングレア
  • キプレス




潰瘍性大腸炎治療剤 レクタブル2mg注腸フォーム




レクタブル2mg注腸フォームは泡状にして直腸・S状結腸患部に注入する薬剤です。

「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議(第3回)」において、「ブデソニドの早期承認を求めるIBD患者会(全国のIBD患者会27団体)」から早期開発要望が出されていたお薬です。

患者さんからの期待度も高い薬剤がようやく日本でも使えるようになります。
収載予定は2017年11月です。
2017年12月7日発売予定


レクタブル2mg注腸フォームの大きな特徴は3つあります。

①泡状であること
②ブデソニドが有効成分
③かさばらない


①泡状であること

泡が直腸~S状結腸までひろがり、とどまることで、漏れにくく、立ったままで投与できるのがレクタブルのメリットです。
既存のステロイド注腸剤(ステロネマ・プレドネマ)は挿入が甘かったりすると投与後に液漏れてしまい、手が汚れるなど手技が難しいということがありました。
また、投与後に薬液が腸壁へ行き渡るようにするため寝転んでうつ伏せや横向きに体位をかえなければならず、外出先での投与がしづらいものでした。

レクタブルは泡状なので液垂れを起こす心配も少なく、立ったままでも投与できるので外出先でも安心して投与できます。
http://www.kissei.co.jp/


②ブデソニドが有効成分

ブデソニドは他のステロイド剤に比べて高い受容体結合親和性をもちますが、速やかに肝臓で代謝されます。実際、ブデソニドのバイオアベイラビリティは約16%と推察され比較的全身への曝露が少ないステロイドだと言われています。
ステロイドによる全身性副作用のリスクが抑えられると考えられています。
経口ブデソニド(ゼンタコートカプセル)はすでに「軽症から中等症の活動期クローン病」の適応で使用されています。
ちなみにブデソニドは喘息治療剤のシムビコートに使われているステロイドです。


③かさばらない

レクタブルは1本で1週間分です。肛門に挿入するアプリケーターを毎回交換します。

既存薬ですと、1ヶ月分の場合、スーパーのビニール袋いっぱいになるほど持って帰ることになります。レクタブルの場合ですと小さな缶を4本なので、かさがかなり減ります。外出時の持ち運びも便利です
(2018年12月までは一度の処方に2本まで)


その他の注意


●容器の中には14回(7日)分よりたくさんのお薬が入っていますが、14回使用したら、薬液が残っていても新しい容器に交換してください。

●廃棄方法|
廃棄する前にまず、トイレや洗面所などにアルミ製容器に残った薬剤をできる限り出し切ってください。出し切る前にアルミ製容器に穴を開けないでください。
その後、地方自治体により定められたアルミ製容器の廃棄ルールに従って捨ててください。

●アルミ製容器は横にせず、立てた状態で保管してください。

●使用前にアルミ製容器を手で温めてください。
冷えていると、薬液の流動性が悪くお薬が出にくい場合や、ポンプを押しにくい場合があります。アルミ製容器を振って、バシャバシャという音がすることを確認してください。音がしない場合、まだ冷えていますので再度手で温めてください。

●患者に本剤を交付する際には、患者用説明文書<レクタブル2mg注腸フォーム14回を使用される方へ>を渡し、使用方法を指導すること。

レクタブル インタビューフォーム

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レクタブル2mg注腸フォーム
[効能又は効果]
潰瘍性大腸炎(重症を除く)
[用法及び用量]
通常、成人には1回あたり1プッシュ(ブデソニドとして2mg)、1日2回直腸内に噴射する。


2017年10月6日金曜日

脂質異常症治療薬 アトーゼット配合錠LD/HD





アトーゼット配合錠は、エゼチミブとアトルバスタチンを有効成分とする配合剤です。
商品名だと『ゼチーア』と『リピトール』の配合剤と考えると分かりやすいと思います。

アトーゼット配合錠LDは
エゼチミブを10mg、アトルバスタチンを10mgを1錠に配合した薬剤です。

アトーゼット配合錠HD
エゼチミブを10mg、アトルバスタチンを20mgを1錠に配合した薬剤です。


エゼチミブとアトルバスタチンをそれぞれ併用して飲まれている患者さんでは 1 日 1 回 2 又は 3 錠を服用する必要があります。
アトーゼット配合錠は 1 日 1 回 1 錠の服用ですむため簡単であり、患者さんの利便性が向上することでアドヒアランスの向上が期待される薬剤です。


日本における動脈硬化性疾患予防ガイドラインでは、高LDLコレステロール血症に対する薬物治療として、スタチンが第一選択薬とされています。そして、スタチンで効果不十分な場合に、エゼチミブを追加することが推奨されています。

2016 ESC/EAS ガイドライン(Atherosclerosis 2016; 253: 281-344)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27594540

2013 ACC/AHA ガイドライン(J Am Coll Cardiol 2014; 63: 2889-934)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24239923

2016 ACC Expertconsensus decision(J Am Coll Cardiol 2016; 68: 92-125)
http://www.onlinejacc.org/content/68/1/92

アメリカやヨーロッパのガイドラインにおいても、
スタチンの大規模試験によるエビデンスが豊富であることから、動脈硬化性疾患に対する薬物治療としては、日本と同様に最初にスタチンを使用することを考慮し、スタチンで効果不十分な場合にエゼチミブを追加することが推奨されています。

エゼチミブとスタチンの併用は、エゼチミブの作用機序である小腸でのコレステロール取込み抑制とスタチンによる肝臓でのコレステロール合成の抑制の異なる2つの作用によって、血中のLDLコレステロールを減少させます。

スタチン単独投与したときの動脈硬化性疾患予防効果は、数多くの無作為化試験が実施されていて、これらの試験のメタ解析から、スタチン投与により予後が改善されることが示されています。
Lancet 2012; 380:581-90
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22607822

では、エゼチミブとスタチンの併用についてエビデンスはどうでしょうか?

家族性高コレステロール血症患者を対象とした ENHANCE試験ではエゼチミブとシンバスタチンの併用投与群とシンバスタチン単独投与群の内膜中膜肥厚の変化について有意差はみられなかったとの報告があります。
N Engl J Med 2008; 358: 1431-43
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0800742

しかし、急性冠症候群患者を対象とした試験(IMPROVE-IT 試験)においては、エゼチミブとシンバスタチンの配合剤を投与した群がシンバスタチン単剤投与群に比べてイベント発現率を有意に低下することが報告されています。
N Engl J Med 2015;372: 2387-97
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1410489#t=article

経皮的冠動脈インターベンションを施行した冠動脈疾患患者を対象とした試験(PRECISE-IVUS 試験)では、エゼチミブとアトルバスタチンの併用投与はアトルバスタチン単剤投与に比べて LDL-コレステロールを有意に低下させ冠動脈プラークを退縮させることが確認されています。
J Am Coll Cardiol 2015; 66: 495-507
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26227186

またスタチン投与例では、低下したLDL-Cが後に上昇する「エスケープ現象」を示す症例の存在が知られています。
Atherosclerosis. Vol. 224, No. 2, 454-6, October, 2012. 
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22892323

スタチンのエスケープ現象のメカニズムは、明らかになってはいませんがコレステロール合成の抑制に伴い、代償性に小腸からの吸収が亢進することが関与しているのではないかと考えられています。
スタチン効果不十分例では増量するよりエゼチミブと併用するほうが理にかなっているというわけです。


なぜ、この配合用量なのか


日本で使用されているエゼチミブとアトルバスタチン併用用量の組合せの割合は、

高コレステロール血症患者では
10 mg+10 mg が最も高く60.2%、
10 mg+20 mgの組み合わせは18.6%でした。

家族性高コレステロール血症の患者では
10 mg+20 mg の割合が最も高く44.7%、
10 mg+10 mgの組み合わせは25.4%でした。
(メーカー調べ)

アトーゼット配合錠の成分の組み合わせは日本における使用状況を考慮したもののようです。


ゼチーア(エゼチミブ)単剤からの切り替えは原則できません


アトーゼット配合錠は各単剤を併用し、LDLコレステロール値が安定している患者において切替えに用いる薬剤と位置付けられています。
エゼチミブ単独で効果不十分な場合にアトーゼットへの切替えについては慎重に判断する必要があります。
なぜかと言うと、高コレステロール患者に対する薬物療法においては現在、スタチンが第一選択薬として用いられていることから、エゼチミブ単独で投与されている患者は、スタチンの忍容性が低かった、もしくは忍容性が低いような背景を有する患者である可能性が考えられるためです。

エゼチミブ単独投与で効果不十分な場合にアトルバスタチンを追加投与することが適切ではないと考えられるような患者も想定されるため、一概にエゼチミブ単独からの切り替えることは、推奨されないので注意しましょう。



--
アトーゼット配合錠LD/HD
[効能又は効果]
高コレステロール血症、
家族性高コレステロール血症
[用法及び用量]
通常、成人には 1 日 1 回 1 錠(エゼチミブ/アトルバスタチンとして 10 mg/10 mg 又は 10 mg/20 mg)を食後に経口投与する。


偽造医薬品の流通防止のための省令改正(2017年10月5日公布)



平成29年1月に発生したC型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品流通事案を受け、偽造医薬品の流通防止のために対応を行うべき事項に関して所要の省令改正が2017年10月5日公布されました。

【省令改正の内容(ポイント)】
(1)  薬局開設者等に課される医薬品の譲受・譲渡時の記録事項として相手方の身元確認の方法、ロット番号、使用期限等を追加する。
(2)  同一の薬局開設者等が開設する複数の薬局間における医薬品の譲受・譲渡に係る取引について、業許可を受けた場所ごとに、取引に係る記録(品名、数量、ロット番号、使用期限等)及びその保存を行うことを明確化する。
(3)  製造販売業者により医薬品に施された封を開封して販売・授与する場合(調剤の場合を除く。)について、開封した者(薬局等)を明確にするため、その名称、住所等の表示を新たに求める。
(4)  薬局、店舗販売業者の店舗、卸売販売業者の営業所の構造設備の基準として、貯蔵設備を設ける区域が他の区域から明確に区別されていることを追加する。
(5)  薬局並びに店舗販売業及び卸売販売業の店舗における医薬品等の販売又は授与を行う体制の基準について、医薬品の貯蔵設備を設ける区域へ立ち入ることができる者を特定することを追加する。

【公布日及び施行日】
公布日:平成29年10月5日
施行日:平成30年1月31日。ただし、(1)及び(2)のうちロット番号及び使用期限に関する部分については、平成30年7月31日。

【参考】
■日本薬剤師会ウェブサイト:
薬局間における医療用医薬品の譲受・譲渡に関するガイドライン【概要版】
薬局間における医療用医薬品の譲受・譲渡に関するガイドライン





(1)  薬局開設者等に課される医薬品の譲受・譲渡時の記録事項として相手方の身元確認の方法、ロット番号、使用期限等を追加する。


医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則
(医薬品の購入等に関する記録)
第十四条
薬局開設者は、医薬品を購入し、又は譲り受けたとき及び薬局開設者、医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設(獣医療法(平成四年法律第四十六号)第二条第二項に規定する診療施設をいい、往診のみによつて獣医師に飼育動物の診療業務を行わせる者の住所を含む。以下同じ。)の開設者に販売し、又は授与したときは、次に掲げる事項(第二号及び第三号に掲げる事項にあつては、当該医薬品が医療用医薬品として厚生労働大臣が定める医薬品(以下「医療用医薬品」という。)(体外診断用医薬品を除く。)である場合に限る。)を書面に記載しなければならない。
一 品名
二 一の製造期間内に一連の製造工程により均質性を有するように製造された製品の一群に付される番号(以下「ロツト番号」という。)(ロツトを構成しない医薬品については製造番号)
三 使用の期限
四 数量
五 購入若しくは譲受け又は販売若しくは授与の年月日
六 購入若しくは譲り受けた者又は販売若しくは授与した者(以下「購入者等」という。)の氏名又は名称、住所又は所在地及び電話番号その他の連絡先(次項ただし書の規定により同項に規定する確認を行わないこととされた場合にあつては、氏名又は名称以外の事項は、その記載を省略することができる。)
 前号に掲げる事項の内容を確認するために提示を受けた資料(次項ただし書の規定により同項に規定する確認を行わないこととされた場合を除く。)
 購入者等が自然人であり、かつ、購入者等以外の者が医薬品の取引の任に当たる場合及び購入者等が法人である場合にあつては、医薬品の取引の任に当たる自然人が、購入者等と雇用関係にあること又は購入者等から医薬品の取引に係る指示を受けたことを示す資料

 薬局開設者は、前項の規定に基づき書面に記載するに際し、購入者等から、薬局開設、医薬品の製造販売業、製造業若しくは販売業又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設の許可に係る許可証の写し(以下単に「許可証の写し」という。)その他の資料の提示を受けることで、購入者等の住所又は所在地、電話番号その他の連絡先を確認しなければならない。ただし、購入者等が当該薬局開設者と常時取引関係にある場合は、この限りではない。

 薬局開設者は、薬局医薬品、要指導医薬品又は第一類医薬品(以下この項において「薬局医薬品等」という。)を販売し、又は授与したとき(薬局開設者、医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者に販売し、又は授与したときを除く。第五項及び第六項並びに第百四十六条第三項、第五項及び第六項において同じ。)は、次に掲げる事項を書面に記載しなければならない。
一~五(略)
4~6(略)


(2)  同一の薬局開設者等が開設する複数の薬局間における医薬品の譲受・譲渡に係る取引について、業許可を受けた場所ごとに、取引に係る記録(品名、数量、ロット番号、使用期限等)及びその保存を行うことを明確化する。


医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則
第二百八十九条(新設)
法の規定により許可を受けて医薬品を業として販売又は授与する者(以下この条において「許可事業者」という。)が、二以上の許可を受けている場合であつて、当該者の保有する医薬品を当該二以上の許可のうちの一の許可に基づき業務を行う場所から他の許可に基づき業務を行う場所へ移転したときは、当該移転前及び移転後の場所において、それぞれ次に掲げる事項(第二号及び第三号に掲げる事項にあつては、該医薬品が医療用医薬品(体外診断用医薬品を除く。)である場合に限る。)を書面に記載なければならない。
 品名
 ロット番号(ロツトを構成しない医薬品については製造番号)
 使用の期限
 数量
 移転先及び移転元の場所並びに移転の年月日


許可事業者は、前項の書面を、法の規定により許可を受けて業務を行う場所ごとに、記載の日から三年間、保存しなければならない


(3)  製造販売業者により医薬品に施された封を開封して販売・授与する場合(調剤の場合を除く。)について、開封した者(薬局等)を明確にするため、その名称、住所等の表示を新たに求める。


医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則
(医薬品の直接の容器等の記載事項)
第二百十条
法第五十条第十五号の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。
一~六 (略)
 分割販売される医薬品にあつては、分割販売を行う者の氏名又は名称並びに分割販売を行う薬局、店舗又は営業所の名称及び所在地


(4)  薬局、店舗販売業者の店舗、卸売販売業者の営業所の構造設備の基準として、貯蔵設備を設ける区域が他の区域から明確に区別されていることを追加する。


薬局等構造設備規則
第一条
薬局の構造設備の基準は、次のとおりとする。
一~八(略)
 貯蔵設備を設ける区域が、他の区域から明確に区別されていること。
十~十六(略)


(5)  薬局並びに店舗販売業及び卸売販売業の店舗における医薬品等の販売又は授与を行う体制の基準について、医薬品の貯蔵設備を設ける区域へ立ち入ることができる者を特定することを追加する。

薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令
第一条 
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「法」という。)第五条第二号の規定に基づく厚生労働省令で定める薬局において調剤及び調剤された薬剤又は医薬品の販売又は授与の業務を行う体制の基準は、次に掲げる基準とする。

(略)

前項第十五号から第十七号までに掲げる薬局開設者が講じなければらない措置には、次に掲げる事項を含むものとする。
 医薬品の使用に係る安全な管理(以下「医薬品の安全使用」という。)のための責任者の設置
 従事者から薬局開設者への事故報告の体制の整備
 医薬品の貯蔵設備を設ける区域に立ち入ることができる者の特定
 医薬品の安全使用並びに調剤された薬剤及び医薬品の情報提供のための業務に関する手順書の作成及び当該手順書に基づく業務の実施
 調剤及び医薬品の販売又は授与の業務に係る適正な管理のための業務に関する手順書の作成及び当該手順書に基づく業務の実施
 薬剤師不在時間がある薬局にあつては、薬剤師不在時間における薬局の適正な管理のための業務に関する手順書の作成及び当該手順書に基づく業務の実施
 医薬品の安全使用並びに調剤された薬剤及び医薬品の情報提供及び指導のために必要となる情報の収集その他調剤の業務に係る医療の安全及び適正な管理並びに医薬品の販売又は授与の業務に係る適正な管理の確保を目的とした改善のための方策の実施


2017年10月3日火曜日

アレルギー性疾患治療剤 ルパフィン錠(ルパタジンフマル酸塩)




ルパタジンは、1994年にスペインのウリアッシュ社により創製されたN-アルキルピリジン誘導体で、選択的ヒスタミンH1受容体拮抗作用を有するピペリジニル構造と血小板活性化因子(PAF)の受容体への拮抗作用を有するルチジニル構造を併せ持つ、経口アレルギー性疾患治療薬です。
アレルギー性鼻炎及び蕁麻疹の治療薬として、世界80ヵ国以上で承認されています(2017年6月現在)。

日本では、帝國製薬が2017年9月にルパフィン錠として製造販売承認を取得し、同年12月頃から田辺三菱製薬が販売を行うようです。
田辺三菱としてはタリオン錠の特許切れ対策のような位置づけになっていますね。

ルパフィン錠の作用機序


ルパフィン(RUPAFIN)錠の名前の由来にもなっているように、この薬の特徴は血小板活性化因子(PAF)の受容体への拮抗作用です。


ルパタジンは、ヒスタミンやPAFなどのケミカルメディエーターを抑えることにより、血管拡張や血管透過性の亢進、気管支収縮、知覚神経刺激等の即時型アレルギー症状を抑制するとともに、白血球の遊走活性化も抑えることから、遅延型アレルギー症状の抑制も期待できる薬剤として期待されています。


ルパタジンの活性代謝物にデスロラタジン


ルパタジンは未変化体での排泄はほとんどなく、肝臓においてCYP3A4 により速やかに活性代謝物であるデスロラタジン(商品名:デザレックス)へ代謝されます。活性代謝物のデスロラタジンもルパフィン錠の効果に寄与しているものと考えられています。
ルパタジン自体にも薬効があり、代謝されてもさらに薬効が続くため1日くらい飲み忘れても良さそうな気がしますが、真理は不明です。

活性代謝物が存在するため肝機能によって薬効が左右されそうなのですが、肝機能障害患者を対象とした試験を実施していないそうです。なぜなんでしょう。
有効性の面はさておき、安全性の面では肝機能障害のある人やCYP3A阻害剤との併用には注意が必要です。

さらに、活性代謝物の排泄が腎排泄であることから腎機能低下例に投与する場合も要注意です。


ルパフィン錠の有効性


プラセボと比較した国内臨床試験において、ルパフィン錠10 mgとルパフィン錠20 mg の 1 日 1 回の用法・用量で、アレルギー性鼻炎の鼻症状、眼症状の改善、慢性蕁麻疹及び皮膚疾患に伴うそう痒の各症状の改善が認められています。

既存薬との比較については抗ヒスタミン薬のセチリジンとロラタジンを対照とした海外臨床試験が行われています。
結果は通年性アレルギー性鼻炎患者及び季節性アレルギー性鼻炎患者において、対照群との薬効は非劣性を示しています。


ルパフィン錠の安全性

比較的安全性は高いのですが、

ルパフィン錠は眠気に注意

海外臨床試験の併合解析において、既存の抗ヒスタミン薬と比較して傾眠の発現率が高い傾向が認められています。セチリジンやエバステルと同じくらいのようです。

そのため、ルパフィン服用時の運転や機械操作などは控えるようにしましょう。


若い女性は注意

幼若雌性ラットの動物試験において卵巣重量減少、性周期(発情間期)延長等が認められているそうです。
動物実験の結果であり、人での影響は今のところ確認されていないとは言え、あまり気分のいいものではないですね。
他にもアレルギーの薬はあるので、若い女性にあえて使うことはないと思います。


まとめ


PAF受容体拮抗という興味深い作用はあるものの、臨床での有効性についてロラタジンと非劣性という微妙な薬のルパフィン。さらに、傾眠作用が認められたため添付文書に運転注意の記載がなされ処方しにくい薬になってしまっています。
あえて使い所を考えてみるとすると
PAF拮抗による遅延相反応抑制と眠気を利用した、
鼻詰まりがひどくて眠れない」場合に使用するのがいいかもしれません。


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ルパフィン錠10mg

[効能・効果]
アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症)に伴うそう痒
[用法・用量]
通常、12 歳以上の小児及び成人にはルパタジンとして 1 回 10mg を 1 日 1 回経口投与する。
なお、症状に応じて、ルパタジンとして 1 回 20mg に増量できる。