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2017年9月27日水曜日

ベンゾジアゼピン系睡眠薬の離脱方法




ベンゾジアゼピン系睡眠薬の離脱の方法には

①漸減法
②隔日法
③両者の組わせ

の3つがあります。



①漸減法
超短時間作用型や短時間作用型と言った作用時間の短い睡眠薬の場合に用いる方法です。用量を2~4週おきに3/4、1/2、1/4と減量し、減量によって再び不眠が現れたら、その前の用量に戻します。どうしても睡眠薬がやめられない場合は、必要最小量の服薬を続けます。



②隔日法
作用時間の長い睡眠薬の場合に用いる方法です。一定量まで減量できたら睡眠薬を服用しない日を設け、だんだんとその日数を増やして中止に持って行きます。どうしても睡眠薬がやめられない場合には必要最小日数の服用を続けます。



③漸減法と隔日法の組み合わせ
作用時間の長短にかかわらず、用いることが可能な方法です。まずは漸減法で容量を減らしておき、隔日法により中止に持って行きます。


ベンゾジアゼピン系睡眠薬の特徴

ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は常用量で精神依存、身体依存を引き起こす可能性があります。

通常、ベンゾジアゼピン系薬剤を中等量で短期間(1~2週間)使用する場合、耐性、依存、離脱は出現しないといわれていますが、作用時間の短いベンゾジアゼピン系薬剤では、服用した翌日に抗不安効果に対する耐性が生じた例もあり、慎重な投与が必要です。

また、離脱症状には不安、恐怖感、不眠、めまい、頭痛などがあり、短時間作用型では断薬後2~3日、長時間作用型で7日以内に出現します。短時間型では徐々に減量(3~4日ごとに1日量を30~50%)し、場合によっては、いったん作用時間の長い薬剤に置き換えてから減量することもあります。

また長時間型では、1日おきの服用とし、服用間隔を徐々に拡げて中止します。


睡眠薬の服用で大切なこと


睡眠薬の服用で大切なことは、長時間にわたり漫然と服薬しないことです。
睡眠がとれるようになったら、減量を試みることが重要です。
主治医とよく相談し、自分勝手な中断や乱用をしないことが大切です。

2017年9月26日火曜日

ロヒプノール販売中止と代替品




ロヒプノールが販売中止となるようです。
メーカーサイトにはまだ情報はあがっていないようです。

【製造販売中止のご案内】「ロヒプノール錠1、錠2、静注2mg」(エーザイ)
https://medical.eisai.jp/news/products/pdf/KK1361AKI.pdf

販売中止時期は2018年8月を予定。
経過措置期限2019年3月末日を予定しているそうです。

ロッシュの睡眠薬(hypnotics)だからロヒプノール


『ロヒプノール』の成分であるフルニトラゼパムは、ホフマン・ラ・ロッシュ 社で開発された一連のベンゾジアゼピン系化合物のひとつで、ニトラゼパムを1-メチル化し、5位ベンゼン環のオルト位にフッ素基をつけたものです。
ニトラゼパムとフルラゼパムの両方の作用を備え筋弛緩作用と睡眠活性が強力になっています。

日本では 1983 年に承認され、1984 年に発売に至っています。
そのとき、日本国内での開発を日本ロッシュとエーザイが行っていたことから、ロッシュ販売品を『ロヒプノール』、エーザイ販売品を『サイレース』として、同一成分なのに販売メーカーで名称が異なる、現場泣かせのお薬が誕生しました。

ちなにみ
それぞれの薬の名前の由来ですが

  • ロッシュの睡眠薬(hypnotics)でロヒプノール
  • 鎮静(silent)のエース(ace)でサイレース

だそうです。

その後
ロヒプノールを販売していた日本ロッシュは中外製薬と合併し、日本国内では中外製薬が2002年から製造販売を行っていました。

そして
2017年4月中外製薬は、ロヒプノールの製造販売承認をエーザイに承継し販売移管を行いました。
http://medical.eisai.jp/news/products/pdf/KK1328AKI.pdf

これにより、エーザイ1社でロヒプノールとサイレースという名称の異なる同じ成分の薬を販売するという効率の悪い状態になってしまいました。

この非効率を改善するため、サイレースを残しロヒプノールを販売中止にするという措置に至ったのだと考えられます。


ロヒプノールは年間1億錠以上も使用されていた


フルニトラゼパムはベンゾジアゼピン系の中では強力な睡眠薬であり、ベゲタミンよりも人気がありました。マイスリーと肩を並べるほどです。

ロヒプノールとサイレースではどちらが売れているのでしょうか。平成27年度のNDBオープンデータによると、ロヒプノールがよく使用されているようです。(概算:1億1千万錠/年)

これだけ処方されている薬の販売中止となると、様々な影響が予想されるため早めの連絡となったのだと推察されます。

ただ、よく売れているロヒプノールブランドの方を残してほしかった・・・。

ロヒプノールの代替品


ロヒプノールの代替品はサイレース。
成分も添加物も同じです。違うのは包装と刻印だけ。

安心して使用できます。

繰り返しますが、
ロヒプノールサイレースは全く同じものです。




2017年9月12日火曜日

プラルエントを打ち忘れたら




脂質異常症治療薬のプラルエント皮下注ペンが2017年9月から在宅自己注射可能になりました。

プラルエントに関する説明は以前のエントリーから↓
https://yakuza-14.blogspot.jp/2016/07/blog-post_14.html


そこで、プラルエント皮下注ペンを使う患者さん向けに
使い方や想定される疑問点についてまとめてみたいと思います。


プラルエント皮下注ペンを打ち忘れた場合


打ち忘れに気がついたら、すぐに注射をしてください。次の予定日の前日まで投与は可能です。その次の注射からは、当初のスケジュール通りに行ってください。


ペンに気泡がはいっている場合


ペンの中に気泡が入っていることがありますが、プラルントは皮下に注射するため、身体や投与量に影響はありません。


冷蔵庫から取り出して30分以上待つのが面倒


薬液が冷たいと刺激となって痛みを感じたり、注入時間が長くかかる場合があります。冷蔵庫から出して室温に戻す時間である30分というのはあくまで目安です。季節や室温の状況によって時間を調整しても構いません。痛みを我慢できるのであれば待つ必要もありません。


注射が途中で止まったり、ペンを皮膚から離してしまった場合


確認窓が完全に黄色に変わっていれば注入完了しているので問題ありません。黄色に変わっていない場合は注入が完了していない場合があります。再注射はせずに、主治医に相談しましょう。


プラルエント皮下注ペンの注射の方法



①青色のキャップを引き抜きます


②確認窓が見えるようにしてペンをしっかりと握ります


③ペンを皮膚に強く押し当てます


④注入ボタンを親指で押します(注入には5~15秒かかります)
注入ボタンが押せない場合
黄色の安全カバーが押し込めていない可能性があります。黄色の安全カバーがペンの中に入っていくまで、きちんと押し込んでください。 


黄色の安全カバーが押し込めない場合
腹部に注射する場合、皮膚が柔らかすぎて黄色の安全カバーを押し込めない場合などがありますので、皮膚をつまんだり、抑えるなどして注射部位を固定してください。

どうしてもうまく注入ボタンが押せない場合
注射サポートツールが用意してあります。処方元の医療機関に相談すると良いでしょう。


⑤皮膚からペンを離します

皮膚からペンを離す前に、親指を注入ボタンから離しても構いません


2017年9月6日水曜日

アボコート軟膏 販売中止




アボコート軟膏0.1%が販売中止となるようです。

「アボコート®軟膏0.1%」販売中止のご案内(佐藤製薬)
http://medinfo-sato.com/update/pdf/170823_abocoat.pdf
経過措置期間満了日は 2018 年 3 月 31 日を予定


アボコート軟膏0.1%はロコイド軟膏(ヒドロコルチゾン酪酸エステル軟膏)の後発品です。2014年にアボコートクリームが販売を中止しており、3年越しに軟膏も販売中止となりました。

ロコイド軟膏の後発品はアボコートのみで、この販売中止によりロコイドの後発品は存在しなくなります。
※ロコイドが「後発品のない先発品」となるかどうかは現時点では不明です。2018年4月1日になり厚生労働省が公表するまで誰にも分かりません。

アボコートには根強いファンも多く残念です。


アボコートとロコイドのちがい


アボコートはロコイドの後発品なので成分は同じですが、一つ明確に違うものがあります。ファンを引きつけているのもこのちがいがあるからです。

そのちがいとは、基剤です。

外用剤は肌に直接塗る薬です。同じ軟膏でも基剤のちがいによって使用感は異なります。患者さんごとに好まれる使用感があるのです。

アボコートの基剤ゲル化炭化水素(プラスチベース) 
ロコイドの基剤白色ワセリン(サンホワイト)

プラスチベースは、日常生活での温度変化では、「硬さ」がほとんど変化しません。のびがよく、肌に密着する硬さ年中一定に保つことができます。またワセリンよりも洗い流しやすいのも特徴です。


アボコートの代替品


同一成分の薬としてロコイドが候補となります。

ロコイドの基剤の白色ワセリンは『サンホワイト』という高い安全性並びに品質安定性を有する高度精製ワセリンを使用しています。通常のワセリンと比べて夾雑物が少なく高度に精製されているため紫外線を吸収する物質をほとんど含んでいません。刺激が少ないのが特徴です。

ヒドロコルチゾン酪酸エステルはステロイドのランクではマイルドに分類されるため。同一ランクの外用薬も選択肢となります。

2017年9月5日火曜日

オキシコンチンTR錠 粉砕・溶解できないオキシコンチン



乱用防止を目的としたオキシコドン塩酸塩水和物徐放錠「オキシコンチンTR錠」が2017年8月に承認されました。2017年12月発売。
http://www.shionogi.co.jp/company/news/2016/qdv9fu0000012heq-att/161130.pdf

米国ではオピオイド鎮痛薬による誤用・乱用が増加し社会問題となっています。

従来のオキシコンチン錠は徐放性製剤であり、通常服用する場合、成分がゆっくり溶けだし鎮痛効果を半日程度持続させます。

しかし、錠剤をつぶしたり噛んだりすれば、徐々に鎮痛効果を発揮するはずの機能は消え、代わりに陶酔感や多幸感を生み出します。これら精神作用を目的とするオキシコドン中毒者が問題となっています。

破砕などがしづらい製剤工夫がなされ、乱用防止のために改良されたオキシコドン塩酸塩徐放錠がアメリカで2010年8月に発売されました。
日本でも厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」に取り上げられ、塩野義製薬が開発を行っており2017年承認されました。


オキシコンチンTR錠の特徴


叩いても、粉砕できない。
錠剤の強度を高くすることで粉末まで砕くことが困難な硬い製剤に設計されています。金属製のハンマーで叩いても、変形はしても砕けません。

水に溶かそうとしても、ゲル化するのみ!
添加物であるポリエチレンオキシドは酸化エチレンの非イオン性ホモポリマーで、溶解するとゲル状になる特徴を有しています。
簡易懸濁はもちろんできません。



ゴーストタブレットが出てこない
従来のオキシコンチン錠では、有効成分放出後の殻錠、いわゆるゴーストタブレットが糞中に排泄されることがありました。オキシコンチンTR錠ではそのゴーストタブレットは出てこないようです。


オキシコンチンTR錠の『TR』の意味


TR=Time Release
という意味だそうです(MR談)

「徐放」ということなのだろうけど、従来のオキシコンチンも徐放錠だったのですが、なぜそんな名前にしたのでしょうか。

オキシコンチンTR錠の一般名処方


【般】オキシコドン徐放錠○mg
です。

【般】オキシコドン徐放カプセル○mg
と、記載されている処方ではオキシコンチンTR錠は調剤できません。
疑義照会により処方変更してもらう必要があります。

いままでのオキシコンチン錠はいつまで流通するの?


オキシコンチン錠は2018年8月で製造を中止するそうです。
卸の在庫状況等に影響されるためいつまで流通されるかは不明。
在庫限りの流通となるため、順次オキシコンチンTR錠への切り替えをすすめています。

オキシコンチン錠からTR錠へ切り替える際の注意点

オキシコンチン錠とTR錠では空腹時における生物学的同等性が確認されています。しかしTR錠は高脂肪食を摂取した後の投与ではオキシコドンの血中濃度上昇が認められているため、オキシコンチン錠からTR錠へ切り替えにおいて、食後投与時には副作用の発現に十分な注意が必要です。

また、オキシコンチン錠の処方箋をTR錠へ疑義照会なしに変更することはできませんので注意しましょう。
薬剤師法第二十三条の2

ペンタジン販売中止と代替品



ペンタジン錠25、ペンタジン注射液15・注射液30が販売中止となるようです。
https://www.medicallibrary-dsc.info/announce/other/pdf-data/2017/1706stop_pent_etc2.pdf

ペンタジンはペンタゾシンを成分とする非麻薬性の中枢性鎮痛剤です。

ペンタゾシンは米国スターリングウインスロップ社(現:SANOFI)で開発されたアゴニスト・アンタゴニスト作用を有するベンゾモルファン系の非麻薬性鎮痛薬です。モルヒネほどの鎮痛作用はありませんが、多幸感などの精神作用も少なく、大量投与で不快感を引き起こすため1966年WHOはこの薬物を麻薬規制外としました。

そのため1967年にペンタゾシンの注射剤は癌性疼痛の鎮痛及び麻酔前投薬、術中の麻酔補助として、米国において発売され、日本では 1970 年に発売され、広く臨床で使用されていくこととなります。

米国スターリングウインスロップ社は塩酸ペンタゾシンを主剤とする経口用製剤ペンタゾシン錠を、1969 年にTalwin錠として発売しました。しかし、この錠剤を水に溶解し、抽出された塩酸ペンタゾシンを注射する形の乱用が問題となりました。その後、米国スターリングウインスロップ社は 1983 年にモルヒネ急性中毒に用いられる麻薬拮抗薬であるナロキソン塩酸塩を添加した錠剤(Talwin Nx)を発売しました。ナロキソン塩酸塩は非経口投与できわめて強いオピオイド拮抗作用を示しますが、経口投与では肝臓で速やかに分解されるため拮抗作用を示しません。つまり、ジャンキー対策がとられた薬剤だといえます。

癌性疼痛の治療には、鎮痛薬を一定の順序で選択していく WHO 方式癌疼痛治療法(三段階式鎮痛薬選択順序)が一般的に推奨されています。
  • 第一段階には非オピオイド鎮痛薬
  • 第二段階には弱オピオイド鎮痛薬
  • 第三段階には強オピオイド鎮痛薬
非オピオイド鎮痛薬としては消炎鎮痛薬などが、強オピオイド鎮痛薬としてはモルヒネが一般的に用いられます。第二段階の弱オピオイド鎮痛薬としては麻薬指定医薬品であるコデインが用いられることが多く、外国ではその代替し得る経口鎮痛薬としてデキストロプロポキシフェンが用いられていました。しかし、日本においては当時(1983年)、適当な経口剤がなく、管理の容易な非麻薬指定のペンタゾシンの錠剤の開発が望まれていました。

そこで日本においてもナロキソン塩酸塩添加塩酸ペンタゾシン錠の開発が企画されるところとなりました。グレラン製薬(現:あすか製薬)、三共(現:第一三共株式会社)、山之内製薬(現:アステラス製薬)及びスターリングウインスロップ社(現:SANOFI)の 4 社による共同開発を実施し、1997年 7 月に製造販売承認を取得しました。
  • ペルタゾン錠(あすか製薬=日本化薬)
  • ペンタゾシン錠(第一三共)
  • ソセゴン錠(丸石:アステラスから販売移管)

1物3名称という珍しい薬剤です。

承認から20年経った今、ペンタゾシンは疼痛治療に対してあまり使われていません。それは、効果があまりにも短すぎるためです。がんの持続痛に対し1日に何度も投与することになり、結果として副作用のリスクが増大します。また肝心の鎮痛作用も弱く過量投与のリスクもはらんでいます。

そういう理由で使用量が減ってきています。

ペンタゾシン錠の代替品


同じ成分である
  • ペルタゾン錠(あすか製薬=日本化薬)
  • ソセゴン錠(丸石:アステラスから販売移管)
が候補となります。

しかし、これら2剤もいつまで供給されるか分かりません。

売上から見ると、ソセゴンのほうがメジャーなので、最後まで残りそうですね。