2017年8月23日水曜日

ハルナールとアボルブを併用してもいいですか?


前立腺肥大症治療薬のα1遮断薬と5α還元酵素阻害薬の併用には根拠があるのでしょうか。

代表的な研究としてCombAT Studyがあります。

前立腺肥大症の患者さん(IPSS12点以上、前立腺体積30mL以上1.5≦PSA≦10ng/mL、最大尿流量5~15mL /秒)4844例を対象に
アボルブ(デュタステリド)とハルナール(タムスロシン)の併用療法と
デュタステリド0.5mg単独投与群、タムスロシン0.4mg単独投与群と比較して
4年後のIPSSスコアが改善するかどうか検討した研究です。

投与4年目のIPSS減少の平均値はタムスロシン=3.8点、デュタステリド=5.3点、併用群=6.3点で、単独投与群に比べ併用群で有意に大きくなる結果になりました。
最大尿流量の増大はタムスロシン=0.7mL/秒、デュタステリド=2.0mL/秒、併用群=2.4mL/秒で、単独投与群に比べ併用群で有意に大きくなる結果になりました。
臨床的進行の累積発生率は、タムスロシン21.5%、デュタステリド17.8%、併用群12.6%でした。
急性尿閉または前立腺肥大症に関連した外科治療の累積発生率は、タムスロシン11.9%、デュタステリド5.2%、併用群4.2%でした。発生までの期間は、併用群とタムスロシン群には有意差があり、併用群とデュタステリド群には有意差はありませんでした。

Roehrborn CG,et al., Eur Urol. 2010 Jan;57(1):123-31.[PMID: 19825505]
http://www.europeanurology.com/article/S0302-2838(09)00970-1/fulltext

CombAT StudyのPost hoc解析で背景因子別に長期効果を評価したところ、併用療法はタムスロシン単独に比べて背景因子によらず優れていました。デュタステリド単独との比較では前立腺体積が60mL未満の症例のみで優れていました。

Roehrborn CG,et al.,BJU Int. 2014 Apr;113(4):623-35.[PMID: 24127818]
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/bju.12500/epdf

日本人を含むアジア人を対象としたCombAT Studyのサブ解析においても全体の症例と同様の結果がみられています。

Chung BH,et al.,Int J Urol. 2012 Nov;19(11):1031-5. [PMID: 22774774] 
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1442-2042.2012.03091.x/epdf

また、日本におけるアボルブの第Ⅲ相臨床試験のサブ解析でタムスロシンの前投与の有無によらず上乗せ効果が同等であったことから相加効果があることが考えられます。

Tsukamoto T, Endo Y, Narita M.Int J Urol. 2009 Sep;16(9):745-50.[PMID: 19674165]
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1442-2042.2009.02357.x/epdf

以上より
前立腺肥大症治療薬のα1遮断薬と5α還元酵素阻害薬の併用は単独療法より有効であるとする根拠が十分あると考えられます。