口内炎は非常に強い痛みを伴い、食べたり飲んだり話したりすることが困難になり、患者さんの生活の質を落としてしまいます。
そんな口内炎の痛みが、スプレーするだけで和らげられることができればどんなに幸せなことでしょうか。
実はがん治療に伴う口内炎の痛みを和らげるスプレーはアメリカやヨーロッパなどではよく知られており、多くの患者さんが使用しています。
そのスプレーの名前は『episil®(エピシル)』といいます。
2017年7月に日本でもようやく承認され、
http://www.meiji-seika-pharma.co.jp/info/2017/detail/pdf/170707.pdf
【2018年5月9日追記】
5月中旬発売予定のようです。
https://www.meiji-seika-pharma.co.jp/medical/product/episil/index.html
なお、エピシルは歯科における『周術期等専門的口腔衛生処置2』を実施する際の材料としてのみ保険算定可能です。医科及び調剤では保険算定できません。
なので、実際に使用される施設はがん診療連携登録歯科医のいる施設に限られると考えられます。
メーカーも発売当初は口腔外科のあるがん拠点病院に販路を限定し、PRしていくようなことを言っていました。
【2018年2月1日追記】
2018年4月から保険適応となります。
https://solasia.co.jp/images/Kw2ehVisVJIvCx.pdf
保険償還価は752円/mL(2018年度)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000192797.pdf
留意事項
・がん等に係る放射線治療又は化学療法を実施している患者であって、周術期口腔機能管理計画に基づき、口腔機能の管理を行っている患者について、放射線治療又は化学療法に伴う口内炎に対して使用した場合に原則10 mLを限度として算定する。
・がん等に係る放射線治療又は化学療法を実施している患者であって、周術期口腔機能管理計画に基づき、口腔機能の管理を行っている患者について、放射線治療又は化学療法に伴う口内炎に対して使用した場合に原則10 mLを限度として算定する。
2018年2月時点ではエピシルは特定保険医療材料ではありませんので、薬局での処方箋による交付はできません。
薬局においては実費による購入が可能です。
エピシル口腔用液についてまとめてみました。
エピシル口腔用液の説明
『エピシル口腔用液』は、脂質ベースの液体で、口の中に噴射すると5分以内に口腔粘膜を覆う強固な生体接着保護膜を形成し、患部を物理的に保護、痛みを軽減します。使い方は簡単で、ノズルヘッドを口の中に向けてプッシュするだけ。
痛みが和らぐ程度や口の中に形成される脂質膜の感触は口の中の湿潤状態に依存するので、多少の個人差があります。
口腔内適用状況:製品に着色剤(緑)を添加して噴霧して可視化したもの 出典:ソレイジア・ファーマ株式会社有価証券届出書(新規公開時) |
エピシル口腔用液の成分
『エピシル口腔用液』の成分は以下のとおりです。
- ジオレイン酸グリセロール
- ホスファチジルコリン(大豆レシチン)
- エタノール
- プロピレングリコール
- ポリソルベート80
- ペパーミントオイル
薬効成分が含まれないため、医薬品医療機器等法上は医薬品ではなく、医療機器に分類されます。※だから院外処方にはなじみません。
作用機序はグリセロールジオレエート、ホスファチジルコリン(大豆レシチン)が唾液と混合されごく薄い脂質皮膜を構成して口内炎表面を物理的に覆います。
エピシル口腔用液を使用する前の注意点
成分に関する重要な情報:
『エピシル口腔用液』には少量ですがアルコールが含まれているため、患部に触れた際に一時的な灼熱感を引き起こす可能性があります。
また、プロピレングリコール、大豆レシチンおよびペパーミントオイルが含まれているので、これら成分にアレルギー歴のある方は使用できません。
妊娠中および授乳中:
妊婦・授乳婦への使用については問題ありません。
自動車運転と機械の操作:
自動車運転などに影響を及ぼすことはありません。
エピシル口腔用液の使い方
使用方法:
まず保護キャップを取り外します。
口に噴霧する前に、スプレーをティッシュなどに向け数回ポンプを押して、きちんと液体がスプレーされることを確認します。
1回のプッシュで約0.15mL 出ます。
口が過剰にネバつく場合や乾燥状態(口腔乾燥症)がある場合は、使用前に口をすすいでおくことをお勧めします。
スプレーを他人と共有することはやめましょう。
用法用量:
成人(18歳以上)
口の中に1〜3回スプレーします。患部に向けて直接スプレーするか、噴霧した液を患部に舌をつかって塗り広げます。
数分以内に脂質の膜が形成されます。 『エピシル口腔用液』は、口から喉までの使用を想定して開発されており、たとえ飲み込んでも無害です。
小児または青年(18歳未満)
基本的な使い方は大人と同じです(上記参照)。
子供は一般に口腔が大人より小さいので、1プッシュで十分です。年齢に応じて調節してください。小児に使用する場合は、大人の管理の元使用してください。
投与の頻度:
目安として1回8時間効果が持続すると考えられています。
1日2〜3回または必要に応じて適宜増減してください。
使用期間:
『エピシル口腔用液』は、1本で最大30日間連続使用することを想定しています。
エピシル口腔用液の臨床データ
4カ国12の拠点で行われたオープンラベル並行群研究
造血幹細胞移植の前処置療法として化学療法及び放射線療法を受けた患者116症例。
口内炎に対する各施設の標準的な処置とエピシルの併用療法と、
標準的な処置のみを実施した場合の有効性及び安全性を確認。
一定量以上のエピシルを併用した症例では、標準的な処置のみが行われた症例に対して高い有効性が確認され、安全性も確認されています。
https://www.episil.net/wp-content/uploads/2016/06/A4-EBMT-20161.pdf
その他、RCTもなく小規模な観察研究がいくつかあるだけでエビデンスは弱めです。
エピシル口腔用液の保管方法
子供の手の届かないところに保管してください。
室温に保管します。 有効期限を過ぎてから使用しないでください。
『エピシル口腔用液』10mlは、防腐剤が入っていませんので最初の塗布後1ヶ月経ったものは廃棄してください。