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2017年5月15日月曜日

輸液フィルターと相互作用を起こす代表的な医薬品と対処方法





輸液療法では、ガラス片やコアリングによって混入するゴムなどの異物混入や配合変化による沈殿物、微生物汚染、空気塞栓などが問題ことがあるため、調製時あるいは投与時にフィルターが使用されます。

特に、凍結乾燥製剤、微量元素製剤、エトポシド、パクリタキセル等やメイロン、TPN 製剤は、輸液フィルターを必ず通すべき薬剤です。

原則、すべての薬剤は輸液フィルターを通すべきなのですが、なかにはフィルターと相互作用をおこしフィルターを使うことができない薬剤が存在します。

フィルターと薬剤の相互作用には大きく分けて4つあります。
フィルターの目詰まりフィルターへの薬剤の吸着フィルターの溶解エアフィルターからの液漏れ等です。

輸液フィルターと相互作用を起こす代表的な医薬品と対処方法について紹介します。

輸液フィルターの目詰まり

分子量の大きい薬剤、粘度の高い薬剤、油性製剤などは輸液フィルターの目詰まりが起こり、薬剤の含量低下や投与ルートの閉塞等の可能性があります。

・分子量の大きい薬剤
血液製剤(アルブミン製剤、グロブリン製剤)
脂肪乳剤(リプル注、パルクス注、ロピオン静注、イントラリポス輸液、ミキシッドL輸液、ミキシッドH 輸液、ディプリバン注)
コロイド製剤(ファンギゾン注)
※『献血アルブミン5%静注』『アルブミナー静注5%』はフィルター使用可能
・粘度の高い薬剤
油性製剤(ビタミンA 製剤、ビタミンD 製剤、サンディミュン点滴静注用、プログラフ注)
・グリセオール注
・低分子デキストランL 注

【対処法】
フィルターの下流部から投与する。
専用フィルター(脂肪乳剤では孔径1.2μm のフィルター)を使用する。


輸液フィルターへの薬剤の吸着

輸液フィルターに薬剤が吸着することにより、薬剤の含量低下の可能性があります。

・インスリン製剤
・G-CSF 製剤(グラン注、ノイトロジン注、ノイアップ注)
・ミリスロール注
・セルシン注
・コスメゲン静注用
・オンコビン注

【対処法】
フィルターの下流部から投与する。


輸液フィルターの溶解

エトポシド製剤はセルロース系フィルターを溶解することが知られています。

・エトポシド製剤(ラステット注、ベプシド注)

【対処法】
ポジダイン・ナイロン66 膜、ポリエーテルスルホン膜、ナイロン66膜等のフィルターを使用する。
エトポシド製剤は、溶かす濃度によって結晶が析出することがあるので0.4mg/mL濃度以下になるよう生理食塩液等の輸液に溶解して投与することが推奨されています。


エアーベントフィルターからの液漏れ

界面活性剤や溶解補助剤を含有している製剤は、エアーベントフィルターを親水化しエアブロックや液漏れを起こす可能性があります。

・フェノバール注
・セルシン注

【対処法】
エアーベントフィルターが透明化してきたら、直ちに交換する。


なお、フィルター透過性試験の有無については、添付文書や医薬品インタビューフォームに記載されていることがあります。確認してみてください。

http://www.otsukakj.jp/med_nutrition/products/lipid/section_3_4.html


参考:
添付文書又は医薬品インタビューフォーム等でフィルターを使用しない旨の記載がある注射薬


  • 1%ディプリバン注

微生物ろ過フィルターを用いて投与した場合、フィルターのろ過孔を通過する際にエマルジョンが破壊される可能性がある。エマルジョンが破壊された場合、正確な量のプロポフォールを投与できなくなる可能性がある。


  • ミキシッドL 輸液、ミキシッドH 輸液

本剤は脂肪を含有するため除菌用ファイナルフィルターが使用できない。したがって、ビタミン剤、微量元素製剤又は電解質製剤(ナトリウム製剤、カリウム製剤のみ)の投与時に投与部位あるいは輸液ライン等からの細菌混入防止について特に注意する必要がある。


  • ラスリテック点滴静注用

海外の添付文書に基づきフィルターを使用しないよう設定した。なお、国内外の臨床試験、及び海外の市販製剤の使用時いずれの場合においても、フィルターは使用せず投与を行っている。


  • ドキシル注20mg

本剤はフィルターで除去されることから、インラインフィルターは使用しないこと。


  • アブラキサン点滴静注用

本剤は懸濁液に調製し投与するため、インラインフィルターは使用しないこと。