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2017年5月30日火曜日

吸入ステロイド喘息治療剤アニュイティ エリプタ




アニュイティはフルチカゾンフランカルボン酸エステルを有効成分とする副腎皮質ステロイド吸入薬です。

2017年3月に承認され、2017年5月31日薬価収載されました。

フルチカゾンフランカルボン酸エステルというは、すでに他の薬の有効成分として使用されています。
アレルギー性鼻炎治療薬の『アラミスト点鼻液』や喘息・COPD治療剤のレルベア 100 エリプタがあります。

アニュイティは言わば、レルベアの片割れのような存在です。

気管支喘息の治療では気管支局所の炎症を制御し発作の発現を予防することが重要で、吸入ステロイド薬は長期管理薬の第一選択薬と位置付けられています。
また、重症度に応じて、長時間作動型 β2 刺激薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン、長時間作用性抗コリン薬、経口ステロイド薬、抗 IgE 抗体等を併用することとされています。
喘息症状のコントロール状態を参考に、吸入ステロイド薬投与量の増減又は併用薬剤の追加・中止といった、いわゆる薬物治療のステップアップ及びステップダウンを検討することとされています。

アニュイティの位置づけとしてはレルベアからのステップダウン、または軽症喘息の導入療法が考えられます。


吸入デバイス エリプタ


アニュイティの吸入デバイスにはレルベアやアノーロ、エンクラッセと同じエリプタが採用されています。
エリプタの特徴は、吸入口のカバーを開けるだけで、1回分の薬剤が充填されるため、レバー操作などの操作ステップがないため簡便な操作で吸入できることです。
出典:アニュイティ インタビューフォーム


アニュイティに適した患者像


喘息治療では症状のコントロール状況に合わせて吸入ステロイド薬の用量調節がなされます。アニュイティの適切な使用対象患者像を考えてみたいと思います。

軽症持続型から中等症持続型相当の患者を対象として実施された臨床試験において、アニュイティ100 µg はプラセボと比較して症状が有意に改善しました。
このことからアニュイティ100 µgは軽症持続型から中等症持続型に相当する患者に使用することが適切と考えられます。

重症持続型相当の患者を対象として実施された臨床試験においてアニュイティ200 µg は フルタイド500 µg(日本未承認) 1 日 2 回投与と同程度の有効性を示しました。
このことからアニュイティ200 µgは高用量の吸入ステロイドやアドエア250による前治療でコントロール不十分な重症持続型に相当する患者に使用することが適切と考えられます。

また、レルベア100エリプタにより喘息症状がコントロールされた患者を対象に、レルベアからアニュイティ100 µgへ切り替えた際の有効性及び安全性が臨床試験で確認されています。
このことからアニュイティ100 µgはレルベア100エリプタからのステップダウン時の治療薬として用いることも可能と考えられます。



アニュイティからステップダウンの方法


アニュイティ100 µg の効力は、フルタイド250 µg (日本未承認)1 日 2 回投与の効力に対応していると考えられています。
アニュイティ100 µgで喘息症状がコントロールされた患者に対してステップダウンを行う場合、投与を急に中止するとコントロール不良に陥る可能性があります。

ステップダウンに際しては、フルタイド100などの低用量の吸入ステロイド薬への切替えを考慮するとともに患者の状態を慎重に観察する必要があります。



アニュイティ 100 μg エリプタ
アニュイティ 200 μg エリプタ
[効能又は効果]
気管支喘息
[用法及び用量]
通常、成人にはアニュイティ 100 μg エリプタ 1 吸入(フルチカゾンフランカルボン酸エステルとして100 μg)を 1 日 1 回吸入投与する。
なお、症状に応じてアニュイティ 200 μg エリプタ 1 吸入(フルチカゾンフランカルボン酸エステルとして 200 μg)を 1 日 1 回吸入投与する。

タイレノールFD小児用の代替品





アセトアミノフェンの単味OTCでおなじみのタイレノールですが、小児用のチュアブル錠が存在していました。
商品名は『タイレノールFD小児用』といいます。

「存在していました」と、過去形なのはすでに販売が中止となっているからです。
メーカーHPにも案内がありませんし、いつの間にか販売中止になっていました。

小児の解熱鎮痛剤としてアセトアミノフェンは重宝しますし、チュアブル錠という服用のしやすさが好まれていました。

手にはいらないものは仕方がないので、代わりのものを探します。

条件は以下の通りです。
・小児に使える
・1錠中アセトアミノフェン50mg
・水なしで飲める。


代替品には以下の2点が見つかりました。
対象年齢や見た目が若干違いますが、どちらも似た感じです。



小児用バファリンチュアブル こどもリングルサット
薬効分類  解熱鎮痛薬 解熱鎮痛薬
剤形  チュアブル錠 チュアブル錠
製剤の色  淡橙 クリーム
包装・価格 12錠:650円 24錠:950円
リスク分類 第2類医薬品 第2類医薬品
会社名 ライオン(株)  佐藤製薬(株)
特徴 「小児用バファリンチュアブル」は,3才から15才未満のお子様の,熱や痛みを緩和する,胃にやさしい解熱鎮痛薬です。
●アセトアミノフェンがお子様の急な発熱・痛みをすみやかに緩和します。
●水なしでのめるチュアブルタイプです。
●お子様がのみやすいオレンジ味の小粒の錠剤です
●水なしでのめ,サッと溶けますので外出先での急な発熱や痛みにも適しています。
●錠剤の苦手なお子様にもおすすめです。
●眠くなる成分は入っていません。
成分・分量 1錠中
アセトアミノフェン 50mg
1錠中
アセトアミノフェン 50mg
添加物 エチルセルロース,ラウリル硫酸ナトリウム,セタノール,トリアセチン,D-マンニトール,クロスポビドン,アスパルテーム(L-フェニルアラニン化合物),サッカリン,アセスルファムカリウム,セルロース,黄色5号,デキストリン,香料,グリセリン脂肪酸エステル,ステアリン酸マグネシウム エリスリトール,D-マンニトール,ポビドン,サッカリンナトリウム,三二酸化鉄,タルク,香料,デンプン部分加水分解物,グリセリン,バニリン,その他2成分
効能・効果 悪寒・発熱時の解熱,歯痛・抜歯後の疼痛・頭痛・打撲痛・咽喉痛・耳痛・関節痛・神経痛・腰痛・筋肉痛・肩こり痛・骨折痛・捻挫痛・月経痛(生理痛)・外傷痛の鎮痛 頭痛・歯痛・抜歯後の疼痛・咽喉痛・耳痛・関節痛・神経痛・腰痛・筋肉痛・肩こり痛・打撲痛・骨折痛・捻挫痛・月経痛(生理痛)・外傷痛の鎮痛,悪寒・発熱時の解熱
用法・用量 1回14~11才4錠,10~7才3錠,6~3才2錠,1日3回まで。
かみ砕くか,口中で溶かす。
なるべく空腹時を避ける
1回14~11才4錠,10~7才3錠,6~5才2錠,1日3回まで。
なるべく空腹時を避け,かむか口中で溶かす
服用間隔 服用間隔4時間以上 服用間隔4時間以上
年齢制限 3才未満は服用しない 5才未満は服用しない

2017年5月29日月曜日

医療用麻薬ヒドロモルフォン塩酸塩 (ナルサス錠・ナルラピド錠)




ナルサス錠、ナルラピド錠は両剤ともヒドロモルフォン塩酸塩を有効成分とする麻薬性鎮痛薬です。
2017年3月に「中等度から高度の疼痛を伴う各種がんにおける鎮痛」を効能・効果として承認されました。

ナルサス錠とナルラピド錠の違い


ナルサス錠とナルラピド錠は両方共ヒドロモルフォン塩酸塩ですが、
ナルサス錠は徐放錠
ナルラピド錠は即放錠
というちがいがあります。

ナルサス錠は1日1回ヒドロモルフォンとして 4 ~24mgを経口投与します。
ナルラピド錠はヒドロモルフォンとして 1 日 4 ~24mgを 4 ~6 回に分割経口投与します。

ナルサス錠のなかま
オキシコンチン錠
MSコンチン錠

ナルラピド錠のなかま
オキノーム散
オプソ内服液


ヒドロモルフォン塩酸塩製剤の歴史と位置づけ


ヒドロモルフォン塩酸塩製剤は、1921 年にμ オピオイド受容体作動薬として初めてドイツで合成され、海外では、80年以上販売されておりWHOのがん疼痛治療のためのガイドラインなどで疼痛管理の標準薬に位置付けられています。

また、がん性疼痛の治療においては、同じ薬剤を使い続けることにより鎮痛効果が減弱し、増量しても十分な鎮痛効果が得られない場合や副作用の発現により必要な鎮痛が得られる用量での投与ができない場合に、必要に応じて他のオピオイド鎮痛剤への変更が行われます。これをオピオイドスイッチングといいます。
「中等度から高度のがん性疼痛」に関する効能・効果で承認されているオピオイド鎮痛剤として日本にはモルヒネ塩酸塩、オキシコドン塩酸塩、フェンタニル、タペンタドール塩酸塩があります。
そして今後、これらに加えて、ナルサス錠とナルラピド錠が新たな選択肢として使用可能となります。
さらに、がん性疼痛の治療においては、定時投与には徐放性製剤を使用し、用量調節や突出痛への対処には同一成分の即放性製剤を使用することが適しているとされています。
徐放性製剤ナルサス錠と即放性製剤であるナルラピド錠も目的に応じて使い分けることで良好な疼痛コントロールが可能となります。


ヒドロモルフォンとモルヒネの等価換算


薬剤 経口投与量
モルヒネ 10mg
コデイン 100mg
トラマドール 100mg
オキシコドン 5-7.5mg
ヒドロモルフォン 2mg
メサドン 1mg

ヒドロモルフォン経口剤のモルヒネ経口剤に対する効力比は 1:5


ナルサス錠、ナルラピド錠の安全性


ヒドロモルフォンによるμ オピオイド受容体の活性化による有害事象としては、鎮静、悪心・嘔吐、呼吸抑制、消化管運動抑制、徐脈、情動性等が報告されています。安全性薬理試験では嘔吐、鎮静、下痢、呼吸数減少、血圧低下、攻撃性及び異常行動が認められました(被験体イヌ)。臨床使用時には、中枢神経系、呼吸系及び心血管系に及ぼす影響に十分に注意する必要があると考えられます。

悪心及び嘔吐について

臨床試験において薬剤と因果関係が否定できない重篤な悪心及び嘔吐が認められています。ナルサス錠、ナルラピド錠投与に際しては悪心及び嘔吐に対する注意が必要です。
また、オキシコドン徐放錠投与群と比較してナルサス錠投与群における投与 1 日目の悪心及び嘔吐の発現割合が高かったというデータもあります。

意識障害について

臨床試験において薬剤との因果関係が否定できない重篤な意識障害に関連する有害事象が認められています。ナルサス錠、ナルラピド錠投与に際しては意識障害に関連する有害事象に対する注意が必要です。
また、オキシコドン徐放錠投与時と比較してナルサス錠投与時に傾眠の発現割合が高い傾向が示唆されています。

65歳以上の高齢者への投与について

第Ⅲ相比較試験及び長期投与試験において、65 歳未満と比較して 65 歳以上のほうが、ナルサス錠、ナルラピド錠投与後の有害事象の発現割合が高かったという結果がでています。
ナルサス錠、ナルラピド錠を高齢患者に投与する際には、患者の状態を慎重に観察し、呼吸抑制等の有害事象の発現に十分注意する必要があります。
なお、オキノーム散又はオキシコンチンと比較して、ナルサス錠、ナルラピド錠の 65 歳以上における有害事象の発現状況に明らかな差は認められませんでした。

肝機能障害者への投与

ヒドロモルフォンの主な代謝経路は 3 位のグルクロン酸抱合です。
ヒトでは UGT2B7 の関与が報告されています。
Smith HS.Opioid metabolism.Mayo Clin Proc 2009; 84: 613-24

肝機能障害を有する患者では投与時の血漿中ヒドロモルフォンの曝露が増加すると考えられます。
実際、外国人被験者に海外のナルラピド錠4 mg を空腹時単回経口投与したとき、肝機能が正常な被験者と比較してChild-Pugh 分類スコア 7~9 点の中等度の肝機能障害を有する被験者において、ヒドロモルフォンの Cmax及び AUC0-48hが約 4 倍となったことが報告されています。

腎機能障害者への投与

ヒドロモルフォンは肝代謝型の薬物ですが代謝に関与するとされる UGT2B7 については、腎機能低下者において活性が低下し、UGT2B7 で代謝される薬物の血漿中濃度が変化する
ことが報告されています。
Dreisbach AW, Lertora JJ.The effect of chronic renal failure on drug metabolism and transport.Expert Opin Drug Metab Toxicol 2008; 4: 1065-74

Lalande L.et.al,.Consequences of renal failure on non-renal clearance of drugs.Clin Pharmacokinet 2014;53: 521-32

実際、外国人被験者に海外のナルラピド錠4 mg を空腹時単回経口投与したとき、腎機能が正常な被験者と比較して中等度の腎機能障害を有する被験者(CLcr40~60 mL/min)ではヒドロモルフォンの Cmax 及び AUC0-∞がそれぞれ約 1.4 倍及び約 2 倍となったことが報告されています。
また、透析を含む重度の腎機能障害を有する被験者(CLcr 30 mL/min 未満)ではCmax 及び AUC0-∞が1.0倍及び約 4 倍となったことが報告されています。

さらに、代謝産物の蓄積にも注意が必要です。
ヒドロモルフォンの代謝産物はhydromorphone-3-glucoronide (H3G)ですが、H3Gは神経毒性をもっています。腎機能低下例ではH3G濃度が上昇する恐れがあります。

Tawfic QA, Bellingham G.Postoperative pain management in patients with chronic kidney disease.J Anaesthesiol Clin Pharmacol. 2015 Jan-Mar;31(1):6-13.


ヒドロモルフォンとモルヒネの臨床効果比較


ヒドロモルフォンとモルヒネの臨床効果を比較したメタアナリシスでは、モルヒネに比べて鎮痛効果が高いけれども、副作用については差がほぼないという結論がでています。

Felden L,et.al,.Comparative clinical effects of hydromorphone and morphine: a meta-analysis.Br J Anaesth. 2011 Sep;107(3):319-28.


投与制限


一般的に麻薬には成分ごとに1回に処方できる日数に制限が設けられています。
しかし、薬価収載後1年間は新医薬品としての投与制限である14日が優先されるため、成分としての投与制限は設けられていません。
2018年6月1日に新医薬品の投与制限が解除された後に成分としての投与制限が定められます。


一般名処方なのに先発品又は後発品の銘柄名を併記してもいいの?




一般名処方加算とは、一般的名称による処方せんを交付した場合に限り算定できるものです。

さらに、一般名処方加算は医師が個別の銘柄にこだわらずに処方を行っていることを評価した点数です。

一般名処方傍に先発品又は後発品の銘柄名が併記されている処方箋を見かけることがありますが、これは個別銘柄の指定と誤解されやすいため、やめておいたほうが良いです。

一般名処方である時点で『個別の銘柄にこだわらずに処方を行っている』という意思表示であり、例え銘柄が併記してあろうともそれは処方薬に係る参考情報であると解釈します。

しかし、銘柄名を記載するのであれば、誤解されないよう備考欄などに記載することが望ましいと考えられます。



疑義解釈資料の送付について(その11)(厚生労働省保険局医療課事務連絡平成29年5月26日)
【一般名処方加算】
(問3)
区分番号「F400」処方せん料の注7に規定する一般名処方加算について、一般的名称で処方薬が記載された処方せんに、医療安全の観点から類似性等による薬の取り違えを防ぐ目的の参考情報として、一般的名称に先発品又は後発品の銘柄名を併記する場合は、当該加算は算定可能か。

(答)
算定可能である。
一般名処方加算は、一般的名称による処方せんを交付した場合に限り算定できるものであり、医師が個別の銘柄にこだわらずに処方を行っていることを評価した点数である。したがって、この場合に併記される銘柄名は、処方薬に係る参考情報であることから、個別銘柄の指定と誤解されることのないよう、備考欄などに記載することが望ましい。

(参考)
この疑義解釈については、薬剤名の一般的名称を基本とした販売名の類似性に起因する薬剤取り違え防止のための対応が課題とされた「平成27年度厚生労働科学研究内服薬処方せんの記載方法標準化の普及状況に関する研究」を踏まえ、その対応策の一つとして、類似性等による取り違えリスクが特に懸念される名称のものについては、先発品の使用が誘引されることがない範囲で、先発品や代表的な後発品の製品名等を参考的に付記する等の工夫が有効と考えられることを示した平成29年5月26日付け厚生労働省事務連絡「平成27年度厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)「内服薬処方せんの記載方法標準化の普及状況に関する研究」結果の概要について(情報提供)」において医療機関等へ周知されることになったことに合わせて、個別の銘柄へのこだわりではなく医療安全の観点での銘柄名の併記による、一般名処方加算についての取り扱いを明確にしたものである。

2017年5月15日月曜日

輸液フィルターと相互作用を起こす代表的な医薬品と対処方法





輸液療法では、ガラス片やコアリングによって混入するゴムなどの異物混入や配合変化による沈殿物、微生物汚染、空気塞栓などが問題ことがあるため、調製時あるいは投与時にフィルターが使用されます。

特に、凍結乾燥製剤、微量元素製剤、エトポシド、パクリタキセル等やメイロン、TPN 製剤は、輸液フィルターを必ず通すべき薬剤です。

原則、すべての薬剤は輸液フィルターを通すべきなのですが、なかにはフィルターと相互作用をおこしフィルターを使うことができない薬剤が存在します。

フィルターと薬剤の相互作用には大きく分けて4つあります。
フィルターの目詰まりフィルターへの薬剤の吸着フィルターの溶解エアフィルターからの液漏れ等です。

輸液フィルターと相互作用を起こす代表的な医薬品と対処方法について紹介します。

輸液フィルターの目詰まり

分子量の大きい薬剤、粘度の高い薬剤、油性製剤などは輸液フィルターの目詰まりが起こり、薬剤の含量低下や投与ルートの閉塞等の可能性があります。

・分子量の大きい薬剤
血液製剤(アルブミン製剤、グロブリン製剤)
脂肪乳剤(リプル注、パルクス注、ロピオン静注、イントラリポス輸液、ミキシッドL輸液、ミキシッドH 輸液、ディプリバン注)
コロイド製剤(ファンギゾン注)
※『献血アルブミン5%静注』『アルブミナー静注5%』はフィルター使用可能
・粘度の高い薬剤
油性製剤(ビタミンA 製剤、ビタミンD 製剤、サンディミュン点滴静注用、プログラフ注)
・グリセオール注
・低分子デキストランL 注

【対処法】
フィルターの下流部から投与する。
専用フィルター(脂肪乳剤では孔径1.2μm のフィルター)を使用する。


輸液フィルターへの薬剤の吸着

輸液フィルターに薬剤が吸着することにより、薬剤の含量低下の可能性があります。

・インスリン製剤
・G-CSF 製剤(グラン注、ノイトロジン注、ノイアップ注)
・ミリスロール注
・セルシン注
・コスメゲン静注用
・オンコビン注

【対処法】
フィルターの下流部から投与する。


輸液フィルターの溶解

エトポシド製剤はセルロース系フィルターを溶解することが知られています。

・エトポシド製剤(ラステット注、ベプシド注)

【対処法】
ポジダイン・ナイロン66 膜、ポリエーテルスルホン膜、ナイロン66膜等のフィルターを使用する。
エトポシド製剤は、溶かす濃度によって結晶が析出することがあるので0.4mg/mL濃度以下になるよう生理食塩液等の輸液に溶解して投与することが推奨されています。


エアーベントフィルターからの液漏れ

界面活性剤や溶解補助剤を含有している製剤は、エアーベントフィルターを親水化しエアブロックや液漏れを起こす可能性があります。

・フェノバール注
・セルシン注

【対処法】
エアーベントフィルターが透明化してきたら、直ちに交換する。


なお、フィルター透過性試験の有無については、添付文書や医薬品インタビューフォームに記載されていることがあります。確認してみてください。

http://www.otsukakj.jp/med_nutrition/products/lipid/section_3_4.html


参考:
添付文書又は医薬品インタビューフォーム等でフィルターを使用しない旨の記載がある注射薬


  • 1%ディプリバン注

微生物ろ過フィルターを用いて投与した場合、フィルターのろ過孔を通過する際にエマルジョンが破壊される可能性がある。エマルジョンが破壊された場合、正確な量のプロポフォールを投与できなくなる可能性がある。


  • ミキシッドL 輸液、ミキシッドH 輸液

本剤は脂肪を含有するため除菌用ファイナルフィルターが使用できない。したがって、ビタミン剤、微量元素製剤又は電解質製剤(ナトリウム製剤、カリウム製剤のみ)の投与時に投与部位あるいは輸液ライン等からの細菌混入防止について特に注意する必要がある。


  • ラスリテック点滴静注用

海外の添付文書に基づきフィルターを使用しないよう設定した。なお、国内外の臨床試験、及び海外の市販製剤の使用時いずれの場合においても、フィルターは使用せず投与を行っている。


  • ドキシル注20mg

本剤はフィルターで除去されることから、インラインフィルターは使用しないこと。


  • アブラキサン点滴静注用

本剤は懸濁液に調製し投与するため、インラインフィルターは使用しないこと。

2017年5月11日木曜日

日本初ステロイド含有シャンプー コムクロシャンプー



※注意※
コムクロシャンプーは「シャンプー」ではありますが、劇薬に指定されている処方箋医薬品です。ドラッグストアなどで購入することはできません。入手するには、医師の診察と処方箋が必要となります。


コムクロシャンプーは2017年3月に承認された日本で初めてのステロイド含有シャンプーです。

シャンプーという形の薬はとても珍しくいですね、
他にはOTCのスミスリンシャンプーくらいでしょうか。

このコムクロシャンプーは頭部の「尋常性乾癬」を効能効果とする医薬品で、成分はデルモベートと同じクロベタゾールプロピオン酸エステルです。

https://www.maruho.co.jp/medical/products/comclo/index.html

尋常性乾癬とは


慢性の皮膚疾患で、頭や肘、腰など、刺激を受けやすい部位に銀白色の薄いかさぶたのような鱗屑(フケ)が付着した少し盛り上がった赤い発疹ができます。特に毛が皮膚をこする頭部にはできやすいといわれています。
日本には乾癬の患者は約10万人程度いると考えられていて、そのうち9割が尋常性乾癬です。

皮膚科Q&A-乾癬- 日本皮膚科学会
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa14/q01.html

治療はステロイドの塗り薬を塗って炎症を抑えたり、ビタミンD3の塗り薬を使って皮膚のゴワゴワを抑えたりします。

しかし、症状が出やすい頭皮は、髪の毛が邪魔で上手に薬を塗る事がむずかしく、また、薬が髪の毛についてしまうのことを女性の患者さんは非常に嫌がられます。
そのため、あまり治療がうまくすすみにくい状態でした。

そのため、塗りやすさや美容に配慮した製剤の開発が望まれており、開発されたのがコムクロシャンプーなのです。


コムクロシャンプーの特徴


コムクロシャンプーの特徴は剤形と使い方です。
剤形は適度なとろみを持ったシャンプーのような外用液剤で、頭部の尋常性乾癬の皮疹に塗りやすくなっています。また、使用方法は塗った15 分後に洗い流すという短時間接触療法なので、strongest クラスのステロイド外用剤がもつ副作用発現リスクを軽減することができます。


コムクロシャンプーの使い方


コムクロシャンプーは乾いた頭皮に使用します。薬を塗る前に濡らさないようにしましょう。
広げた手のひらにシャンプーを500円玉くらいの大きさ分出して、患部に塗ります。
500円玉3枚分で頭全体に塗ることができます。
患部に塗り終わったら指の腹で患部にシャンプーをなじませます。

その後、15分間そのまま待ちます。
浴室、リビングどこで待ってもいいと思います。テレビを見たり、スマホをいじったりゲームしたり、メイクを落としたり自由に待ち時間を使ってください。

15分経ったら、頭皮にお湯または水をかけて指の腹でよく泡立てます。
このとき、強くゴシゴシと擦ってはいけません。
乾癬は強くこすることで、ゴワゴワが硬くなり悪化することがあるからです。

泡が立ったら、すすぎます。
流し残しのないように頭皮、手、全身を十分に洗い流します。
この時、リンスなどを使用しても良いです。髪が結構ぱさつきます。
また、他のシャンプーを使用しても良いのですが、過度に乾燥する恐れがあるのであまりお薦めはできません。保湿は十分にしましょう。


コムクロシャンプーはなぜ乾いた頭皮に塗るのか


濡れたまま薬を塗ると、薬が垂れてきて目に入る危険性があるからです。ステロイドの副作用に眼圧上昇作用があるので、緑内障や白内障のリスクを最小限に抑えるためです。

シャンプーハットやヘアバンドなどで目に垂れてこないようにすれば、濡れた状態でも問題ないとは思います。
しかし、シャワーキャップなどの頭皮全体を覆うものは使用できません。


コムクロシャンプーは風呂場に保管してはいけません


コムクロシャンプーはシャンプー剤であり、処方された患者以外の人が通常のシャンプーと間違えて、使用するおそれがあります。このような事態を防ぐため、また子どもが誤って使ったり飲んだりしないよう保管には十分注意する必要があります。
また、浴室等高温(30℃以上)になる場所には保管してはいけません。十分な薬効が発揮されない可能性があります。


コムクロシャンプーは開封後4週間以上経過したものは廃棄してください


コムクロシャンプーは未開封かつ「室温(1~30℃)」で 3 年間の安定性が確認されていますが、開封後の安定性は、4 週間までしか確認されていません。そのため開封後、4 週間以上経過したものは使用しないようにしましょう。


コムクロシャンプーの処方は一度に4週間まで


頭部の尋常性乾癬患者を対象とした国内第Ⅲ相臨床試験において、4週間を超える使用経験がなく、 短期間接触療法とはいえども strongest のステロイドを含有しているので長期間投与することでステロイド由来の副作用(皮膚萎縮、毛細血管拡張等)が発現する可能性があります。乾癬症状の改善がみられないまま、長期にわたり漫然と使用することは、安全性上望ましくありません。そのため、患者の病態を十分観察し、投与 4 週間を目安に本剤の必要性を検討する必要があるのです。

尋常性乾癬は良くなったり悪くなったりを繰り返す病気であることから、長期にわたり繰り返し投与が必要になり、また、状態により 4 週を超えた投与も想定されます。
1 日 1 回 4 週間投与(導入期)した後に週 2 回最大 24 週間投与(維持期)を行った海外の臨床試験では 、維持期の有害事象及び副作用の発現状況に、コムクロシャンプー群とプラセボ群で問題となるような差は認められなかったというデータがあります。


薬価請求単位は1g


コムクロシャンプーの薬価請求単位は1gです。
シャンプー1本の包装薬価はいくらになるでしょうか?
シャンプー1本あたり125mL入っており、1mL=1gとして換算します。
シャンプー1本は125gです。
すなわち、包装薬価は『125×1g薬価』となります。
※添付文書には1本あたりの重さの記載はありませんが、インタビューフォームに記載があります。


コムクロシャンプーの使用感アンケート


治験時に使用した患者78人に尋ねた使用感アンケートでは
7割の患者さんが「塗りやすかった」「簡単に塗ることができた」と回答しています。











2017年5月3日水曜日

ADHD治療薬 インチュニブ(グアンファシン)





インチュニブ(グアンファシン)は2017年3月に承認されたADHDの治療薬です。

グアンファシンは2005年まで『エスタリック』という商品名で降圧薬として日本では使用されていました。

既存の薬であるコンサータやストラテラとは作用機序が異なる新しいタイプの治療薬です。

ADHDとは


ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder:注意欠如・多動症)とは、年齢や発達に不つりあいな不注意さや衝動性、多動性を特徴とする発達障害で、日常活動や学習に支障をきたす状態をいいます。

これらの症状のあらわれ方は人によってさまざまですが、そのあらわれ方の違いから「不注意が目立つ状態」、「多動性・衝動性が目立つ状態」、「混合した状態」の3つに分けられます。

ADHDには生まれつきの脳の発達の偏りが関係していると考えられており、育て方やしつけによって起こるものではありません。ADHDの症状が強くて社会的生活を送るのが難しい子どもたちには、その子の発達特性にあった正しいサポートが必要です。ADHDの特性を理解しないままに、ただしつけを厳しくしても、症状を改善することはできません。
治療的対応法には「教育・療育的支援(環境調整、ペアレント・トレーニング、ソーシャルスキル・トレーニングなど)」と「薬による治療」があります。

参考:https://adhd.co.jp/


インチュニブの作用機序


健康な人に比べてADHDの患者さんの脳の前頭前野皮質(PFC)は小児期の成熟の遅れや神経活動の低下を示しているといわれています。
インチュニブの成分であるグアンファシンは、前頭前野皮質におけるα2A-アドレナリン作動性受容体を刺激することによってADHDに対する効果を発揮していると考えられています。

しかし、α2A-アドレナリン作動性受容体を刺激することがADHDの症状に対してどのようなメカニズムで改善しているのか詳しいいことは分かっていません

いくつかの仮説のうち一つを紹介します。

シナプス後細胞内のcAMP産生が高まっている状態の時、HCNチャネルの開口頻度が増え、信号がそこで減衰されてしまい情報の伝達がうまくいきません。

グアンファシンによってα2A-アドレナリン作動性受容体が刺激されると、cAMPの産生が抑えられHCNチャネルが閉じ、情報の伝達がスムースに行くよう調節されると考えられています。



インチュニブの心血管系への影響


インチュニブの成分であるグアンファシンは血圧を下げる作用があることから心血管系への影響(高度な徐脈,低血圧,QT延長等)があらわれる可能性があります。

これらのリスクを回避するため、
投与を始める前に心電図検査を行います。
結果を確認して、心電図に異常が認められたり、心血管系リスクがあると判断されれば定期的に心電図検査が実施され、状態を慎重に観察しながらとうよされることとなります。
また、高リスクな患者さん以外においても、心血管系への影響が認められた場合には、心電図検査が実施されます。


インチュニブは急にやめてはダメ


同じADHD治療薬のコンサータは、副作用である睡眠障害、食欲減退そして成長抑制を軽減したり、薬の効果を確認したりすることを目的として、週末や学校の長期休暇の時期に休薬が勧められることがあります。

しかし、インチュニブでは急激に減量又は中止した場合には血圧が跳ね上がったり頻脈が認められる可能性があるので、勝手な判断で薬をのむことを中止してはいけません。

中止・休薬する場合には原則として3日間以上の間隔をあけて1mgずつ,血圧及び脈拍数を測定するなど状態を十分に観察しながら徐々に減量を行っていきます。




インチュニブ錠1mg/インチュニブ錠3mg

[用法及び用量]
通常、体重 50 kg 未満の小児ではグアンファシンとして 1 日 1 mg、体重 50 kg以上の小児ではグアンファシンとして 1 日 2 mg より投与を開始し、1 週間以上の間隔をあけて 1 mg ずつ、下表の維持用量まで増量する。なお、症状により適宜増減するが、下表の最高用量を超えないこととし、いずれも 1 日 1 回経口投与すること。




参考:
Mode of action|Shire
http://adhd-institute.com/disease-management/pharmacological-therapy/mode-of-action/


2017年5月1日月曜日

リーバクト配合顆粒の変更調剤と一般名



※2018.8内容一部修正

リーバクト配合顆粒は1包(4.15g)に

  • L-イソロイシン952mg
  • L-ロイシン1904mg
  • L-バリン1144mg

を含むアミノ酸製剤です。

リーバクトはいわゆる後発医薬品の数量シェア(置換え率)でいうところの「後発品のある先発品(先発医薬品と後発医薬品で剤形や規格が同一でない場合等を含む。)」なのですが、後発品は1包あたりの製剤量が異なっています。

リーバクト配合顆粒は疑義紹介なしに1包あたりのg数が違う後発品へ変更可能なのでしょうか?

結論:
疑義紹介なしに変更は可能。ただし、患者同意は必要

考え方:
有効成分の含有量は同じなのですが1包あたりの製剤量は異なるので、剤形規格違い後発品とみなされます。規格の異なる後発医薬品の変更調剤は、条件を満たせば疑義義照会無しで変更調剤可能です。


出典:日医工Stu-GE



また、リーバクトの一般名処方は
【般】イソロイシン・ロイシン・バリン配合顆粒4.15g
です。

この処方が来た場合でも、後発品の選択は可能です。


商品名 会社名 1包 成分量(1包あたり)
【般】イソロイシン・ロイシン・バリン配合顆粒4.15g
リーバクト配合顆粒
EAファーマ 4.15g L-イソロイシン952mg
L-ロイシン1904mg
L-バリン1144mg
【般】イソロイシン・ロイシン・バリン配合顆粒4.5g
ヘパアクト配合顆粒
東亜薬品
日本臓器製薬
日本ケミファ
4.5g L-イソロイシン952mg
L-ロイシン1904mg
L-バリン1144mg
【般】イソロイシン・ロイシン・バリン配合顆粒4.73g
ブラニュート配合顆粒
日本製薬
武田薬品工業
4.73g L-イソロイシン952mg
L-ロイシン1904mg
L-バリン1144mg
【般】イソロイシン・ロイシン・バリン配合顆粒4.74g
アミノバクト配合顆粒
日医工
4.74g
L-イソロイシン952mg
L-ロイシン1904mg
L-バリン1144mg
コベニール配合顆粒
陽進堂 
4.74g
L-イソロイシン952mg
L-ロイシン1904mg
L-バリン1144mg
リックル配合顆粒
沢井製薬
4.74g
L-イソロイシン952mg
L-ロイシン1904mg
L-バリン1144mg
リバレバン配合顆粒
沢井製薬
メディサ新薬

4.74g
L-イソロイシン952mg
L-ロイシン1904mg
L-バリン1144mg
レオバクトン配合顆粒分包
日本ジェネリック
長生堂製薬

4.74g
L-イソロイシン952mg
L-ロイシン1904mg
L-バリン1144mg

出典:日医工Stu-GE