リンゼスは成分名をリナクロチド(linaclotide)という便秘薬です。
2016年12月に承認されました。
グアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体作動薬に分類されます。
リンゼスは小腸腸管内への水分分泌を促進し便を柔らかくする薬です。古くからの大腸刺激下剤や塩類下剤とは効き方が異なります。
クロライドイオンチャネルを活性化するアミティーザカプセルと作用は似ています。
リンゼスとアミティーザのちがい
大きなちがいは作用機序です。
クロライドイオンを腸管側に分泌させ、腸管内への水分分泌を促進し便を柔らかくするという結果は同じですが、それまでの過程が異なります。
まず、アミティーザですが、直接クロライドイオンチャネルであるClC-2チャネルを活性化することでクロライドイオンを分泌させます。
一方、リンゼスは、小腸粘膜上皮細胞のGC-C受容体を活性化しcGMPの産生を誘導します。細胞内外のcGMPレベルが上昇し、これをきっかけとして小腸上皮では嚢胞性線維症膜貫通型コンダクタンス調節因子(CFTR)の活性化が起こりクロライドイオンが分泌されます。
つまり、
作用点が異なる
リンゼス
グアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体
アミティーザ
ClC-2チャネル
参考:アステラス 決算資料 |
その他のちがい
適応が違う(2016年12月承認時点)
リンゼス
便秘型過敏性腸症候群
アミティーザ
慢性便秘症
腹痛への効果
リンゼス
GC-C受容体を活性化しcGMPの産生を誘導することで、内臓痛覚過敏を改善し、腹痛にも効果が期待できる可能性があります。
Castro J,Gastroenterology.2013;145(6):1334–1346.e1–11.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23958540
Videlock EJらのメタ解析では、プラセボと比較して、腹痛スコアの平均がリンゼス投与によって改善しました。
Videlock EJ, et al.Clin Gastroenterol Hepatol. 2013 Sep;11(9):1084-1092.e3; quiz e68.
http://www.cghjournal.org/article/S1542-3565(13)00601-0/fulltext
PMID: 23644388
アミティーザ
腹痛を改善するという報告や、改善しないという報告が両方あり結論は出ていません。
リンゼスとアミティーザの直接比較
リンゼスとアミティーザのhead-to-headでの直接比較は行われていません(2016年12月時点)
両薬剤のフェーズⅢをメタ解析した費用対効果の研究があります。
When response was defned by treatment satisfaction, linaclotide edged out lubiprostone (39.3% vs 35.0%).
When response was defned by spontaneous bowel movement, lubiprostone was slightly better than linaclotide (59.6% vs 58.6%).
The quality-adjusted life-year scores were similar.
治療満足度はルビプロストンより若干リナクロチドが高く、
自発的腸運動は、ルビプロストンがリナクロチドより僅かに良好だった。
費用対効果は似たようなものだった。
Huang H, et al,.Manag Care. 2016 Feb;25(2):41-8.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27008836
アミティーザでは投与初期に吐き気が好発するため、薬を続けることができない事がよくあり、古いタイプの下剤を使用せざるを得ないことがあります。リンゼスの登場はそういった方の治療選択肢を増やすものであり、アミティーザの市場の広まりを考えても、同様に広く使われる薬になると考えられます。