DPP-4阻害薬とメトホルミンの配合剤の中では、エクメット配合錠に次いで2番めの登場です。
1日1回タイプでは日本初です。
ネシーナは、グルコースなどの栄養素の摂取に伴い消化管から血中に分泌されるインクレチンの分解酵素であるDPP-4 を阻害することにより、内因性イングレチンの濃度を高めることで血糖依存性にインスリン分泌を促進させ血糖降下作用を示します。
さらに、グルカゴンの分泌を抑制し血糖降下作用を示します。
一方、メトホルミン塩酸塩は、肝の糖産生及び消化管からの糖吸収を抑制し、末梢組織のインスリン感受性及びグルコース消費を増加させインスリン抵抗性を改善することによって血糖降下作用を示します。
このように、イニシンク配合剤は異なる作用機序を有する成分を含んでいます。
イニシンク配合剤を用いることでインスリン分泌不全とインスリン抵抗性の両要因を改善することが可能となります。
また、ネシーナとメトホルミン塩酸塩併用時には両剤が相加的に血中 GLP-1 濃度を上げる作用があると考えられ、これらの薬剤での併用療法は各薬剤の単独療法を上回る血糖降下作用が期待できます。
ネシーナの GLP-1 を介したインスリン分泌促進作用は血糖依存性であることと、メトホルミン塩酸塩の血糖改善効果はインスリン分泌促進を介さないことから、これら薬剤の併用は低血糖の発現リスクが低い組合せと考えられます。
なお、アメリカでは「KAZANO」という名称で2013年から販売されています。
配合剤による患者さんのメリット
2型糖尿病患者の薬物療法では、アドヒアランスの向上が血糖コントロール改善の要因の一つとなることが報告されています。
Schernthaner G,Fixed-dose combination therapies in the management of hyperglycaemia in Type 2 diabetes: an opportunity to improve adherence and patient care. Diabet Med, 2010; 27(7): 739-43
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20636953
Guillausseau PJ,Influence of oral antidiabetic drugs compliance on metabolic control in type 2 diabetes. A survey in general practice. Diabetes Metab, 2003; 29(1): 79-81
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12629452
アドヒアランスを低下させる要因としては、単独療法から併用療法に移行する際の薬剤の種類と錠数の増加及び投与回数の増加が挙げられます。
Thayer S, et al.,Adherence to a fixed-dose combination of rosiglitazone/glimepiride in subjects switching from monotherapy or dual therapy with a thiazolidinedione and/or a sulfonylurea. Ann Pharmacother, 2010; 44(5): 791-9
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20371759
Dailey G, et al.,Patient compliance and persistence with antihyperglycemic drug regimens: evaluation of a medicaid patient population with type 2 diabetes mellitus. Clin Ther, 2001; 23(8): 1311-20
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11558867
Hutchins V, et al.,A systematic review of adherence, treatment satisfaction and costs, in fixed-dose combination regimens in type 2 diabetes. Curr Med Res Opin,2011; 27(6): 1157-68
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21466277
イニシンク配合剤の使用により、薬剤の種類及び錠数の増加を回避することができます。
治療効果とアドヒアランスを併用療法と配合剤との間で比較したメタアナリシスでは、併用療法の患者よりも配合剤治療の患者で HbA1c は低く、また、前治療の内容(単独療法又は併用療法)に関わらず併用療法の患者よりも配合剤治療の患者でアドヒアランスは有意に高かったという結果でした。
Han S, et al.,Glycemic effectiveness and medication adherence with fixed-dose combination or coadministered dual therapy of antihyperglycemic regimens: a meta-analysis. Curr Med Res Opin, 2012; 28(6): 969-77
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22494018
また、DPP-4阻害薬とメトホルミンの配合剤治療を受けている患者の方が、それぞれの単剤で併用療法を受けている患者よりも血糖コントロールが良好で、治療満足度が高いという調査報告もあります。
Benford M, et al.,Fixed-dose combination antidiabetic therapy: real-world factors associated with prescribing choices and relationship with patient satisfaction and compliance. Adv Ther, 2012; 29(1): 26-40
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22246944
オルメテックとイニシンク配合錠の一包化
オルメテックとメトホルミンを一包化すると変色することが知られています。イニシンク配合錠とオルメサルタン メドキソミル製剤等との一包化においても、一包化して高温高湿度条件下にて保存した場合、変色することがあるそうです。
(同じDPP4阻害薬とメトホルミンの配合剤であるエクメット配合錠とオルメテックは一包化しても色調変化はみられません)
参考:
メトホルミンを変色させるのはオルメサルタンだけではなかった
https://yakuza-14.blogspot.jp/2016/09/blog-post_12.html
イニシンク配合錠
[効能・効果]
2 型糖尿病
ただし、アログリプチン安息香酸塩及びメトホルミン塩酸塩の併用による治療が適切と判断される場合に限る。
[用法・用量]
通常、成人には 1 日 1 回 1 錠(アログリプチン/メトホルミン塩酸塩として25㎎/500㎎)を食直前又は食後に経口投与する。