ペントイル錠が販売中止となるようです。
http://www.sandoz.jp/medical/products/medical_news/pdf/news_pentoil_200t004.pdf
経過措置期間(予定)は2017年3月末までです。
メブロンに続き塩基性NSAIDsがまた日本からなくなってしまいました。
ペントイル錠(エモルファゾン)
ペントイル錠は日本の森下製薬研究所が開発した塩基性NSAIDsです。
一般の酸性消炎鎮痛剤と異なり、プロスタグランジンの生合成阻害ではなく炎症時において痛みの元になる物質であるブラジキニンの遊離を抑制することで鎮痛効果を示します。
そのため、他のNSAIDsでみられる消化管出血や喘息発作の誘発などのプロスタグランジン生合成由来の副作用が認められないという利点があります。
上記の理由によりペントイル錠はアスピリン喘息に禁忌ではない唯一のNSAIDsでした。
一定の需要はあるはずなのですが、販売中止となってしまい残念です。
ほとんどのNSAIDsはアスピリン喘息に禁忌
COXを阻害しない塩基性NSAIDsであるソランタール(チアラミド)も、添付文書に「アスピリン喘息に禁忌」と記載されています。
しかし、塩基性のペントイル錠(エモルファゾン)の添付文書には記載されていませんでした。
この理由は、1994年にソランタールが再評価の対象であったのに対し、ペントイルは対象ではなかったため発売当時の添付文書内容が現在も使われていたのです。
アスピリン喘息患者における解熱鎮痛剤の使用
アスピリン喘息は、プロスタグランジン合成酵素シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害作用、特にCOX-1阻害作用をもつNSAIDsによって鼻閉、鼻汁、喘息発作などの強い呼吸器症状が現れる、非アレルギー性の過敏症です。
アスピリンに対するアレルギーではありません。
過敏反応の機序は、COX阻害により、プロスタグランジンE2(PGE2)が減少することで、補完的にロイコトリエンが過剰産生され過敏症状が発現すると考えられています。
しかし関与する細胞やメディエーターなど詳しい機序に関しては不明です。
アスピリン喘息患者の喘息発作を誘発する物質の代表的なものはNSAIDsです。
COX-1阻害作用の強いNSAIDsほど過敏症状を呈しやすいとされています。
そのため、COX-2の選択的阻害薬では、誘発されにくいとされています(添付文書では禁忌)。
アスピリン喘息のNSAIDs誘発閾値は、常用量の 1/5~1/10 程度であるため、少量でも十分な注意を要するといわれています。
過敏症状は、注射薬、坐薬>内服薬>貼付薬、塗布薬の順で出現が早く重篤であり、また点眼薬も原因となりうるといわれています。
化学構造による NSAIDs の分類
酸性NSAIDs
【サリチル酸系】
中性NSAIDs
【コキシブ系】
塩基性NSAIDs
【サリチル酸系】
アスピリン、サリチル酸【アントラニル酸系】
メフェナム酸、フルフェナム酸【アリール酢酸系】
フェニル酢酸系:ジクロフェナク、アンフェナク【プロピオン酸系】
インドール酢酸系:インドメタシン、スリンダクなど
イソキサゾール酢酸系:モフェゾラク
ピラノ酢酸系:エトドラク
ナフタレン系:ナブトメン
イブプロフェン、ロキソプロフェン、ナプロキセンなど【オキシカム系】
アンピロキシカム、メロキシカム、ロルノキシカムなど
中性NSAIDs
【コキシブ系】
セレコキシブ
塩基性NSAIDs
チアラミド、エピリゾール、エモルファゾン
アスピリン喘息に対する使用可能な薬剤
喘息予防・管理ガイドライン 2015
1.多くのaspirin-exacerbated respiratory disease(AERD)で投与可能
ただし喘息症状が不安定なケースで発作が生じることがある(わずかな COX-1 阻害)
特に④~⑥は安全性が高い
①PL 顆粒*(アセトアミノフェン*などを含有)
②アセトアミノフェン*1 回 300mg 以下
③NSAIDs を含まずサリチル酸を主成分とした湿布(MS冷シップ)
④選択性の高い COX-2 阻害薬 エトドラク、メロキシカム(高用量で COX-1 阻害あり)
⑤選択的 COX-2 阻害薬(セレコキシブ、ただし重症不安定例で悪化の報告あり)
⑥塩基性消炎薬(チアラミド塩酸塩など、ただし重症不安定例で悪化の報告あり)
2.安全
喘息の悪化は認めない(COX-1 阻害作用なし)
①モルフィン、ペンタゾシン
②非エステル型ステロイド薬(内服ステロイド薬)
③漢方薬(地竜、葛根湯など)
④その他、鎮痙薬、抗菌薬、局所麻酔薬など、添加物のない一般薬はすべて使用可能
ただし喘息症状が不安定なケースで発作が生じることがある(わずかな COX-1 阻害)
特に④~⑥は安全性が高い
①PL 顆粒*(アセトアミノフェン*などを含有)
②アセトアミノフェン*1 回 300mg 以下
③NSAIDs を含まずサリチル酸を主成分とした湿布(MS冷シップ)
④選択性の高い COX-2 阻害薬 エトドラク、メロキシカム(高用量で COX-1 阻害あり)
⑤選択的 COX-2 阻害薬(セレコキシブ、ただし重症不安定例で悪化の報告あり)
⑥塩基性消炎薬(チアラミド塩酸塩など、ただし重症不安定例で悪化の報告あり)
2.安全
喘息の悪化は認めない(COX-1 阻害作用なし)
①モルフィン、ペンタゾシン
②非エステル型ステロイド薬(内服ステロイド薬)
③漢方薬(地竜、葛根湯など)
④その他、鎮痙薬、抗菌薬、局所麻酔薬など、添加物のない一般薬はすべて使用可能
重篤副作用疾患別対応マニュアル「非ステロイド性抗炎症薬による喘息発作」(平成18年11月)
http://www.pmda.go.jp/files/000143599.pdf
疼痛時は、塩基性鎮痛薬(例えば、ソランタール、ペントイル)やペンタゾシンは比較的安全に使用できます。発熱時は氷冷以外に安全な方法はありません。