【2017年4月追記】
2017年3月31日、プラルエントの最適使用推進ガイドラインが策定され、保険適用上の留意事項通知が発出されました。
ア 本製剤の使用が必要と判断するに当たって参照したLDL-コレステロールの検査値及び当該検査の実施年月日
イ 食事療法を行っている旨、及び患者の状況に応じて、運動、喫煙等に関する指導又は糖尿病、高血圧症等の虚血性心疾患の危険因子に対する治療若しくは指導を行っている旨
ウ 投与中のHMG-CoA還元酵素阻害剤の成分名及び1日投与量。なお、1日投与量が最大用量でない場合は、最大耐用量である旨もあわせて記載すること。
エ 家族性高コレステロール血症以外の患者では、心血管イベントの発現リスクが高いと判断した理由(冠動脈疾患、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患、糖尿病若しくは慢性腎臓病に罹患していること若しくはそのいずれかの既往歴を有すること、又は複数の危険因子が認められること)。
平成 29 年3月 31 日 抗 PCSK9 抗体製剤に係る最適使用推進ガイドラインの策定に伴う留意事項の 一部改正について(保医発 0331 第9号)
(1)本製剤については、最適使用推進ガイドラインに従い、有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間、本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに、副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件を満たす医療機関で使用するよう十分留意すること。
(2)本製剤の効能・効果は「家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症。ただし、心血管イベントの発現リスクが高く、HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分な場合に限る」であることから、心血管イベントの発現リスクが高く、HMG-CoA還元酵素阻害剤の最大耐用量を服用しているが、十分な治療効果が得られていない患者に限り使用すること。また、本製剤の使用上の注意において、「本剤投与にあたっては、あらかじめ高コレステロール血症治療の基本である食事療法を行い、更に運動療法、禁煙、他の虚血性心疾患のリスクファクター(糖尿病、高血圧症等)の軽減等も十分考慮すること」とされているので、患者に対して必要な治療及び指導を十分に行った上で、本製剤の使用を考慮すること。
(3)本製剤の投与開始に当たっては、次の事項を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。本製剤の継続投与に当たっては、投与開始時の情報を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
① 次に掲げる施設のうち、該当するもの(「施設要件ア」又は「施設要件イ」と記載)
ア 医師免許取得後、満6年以上の臨床研修歴を有し、このうち3年以上は循環器診療に関する臨床研修歴を有する医師が所属する施設
イ 医師免許取得後、満6年以上の臨床研修歴を有し、このうち3年以上は動脈硬化学に関する臨床研修歴を有する医師が所属する施設
② 本製剤の使用が必要と判断するに当たって参照したLDL-コレステロールの検査値及び当該検査の実施年月日
③ 食事療法を行っている旨、及び患者の状況に応じて、運動、喫煙等に関する指導又は糖尿病、高血圧症等の虚血性心疾患の危険因子に対する治療若しくは指導を行っている旨
④ 投与中のHMG-CoA還元酵素阻害剤の成分名及び1日投与量。なお、1日投与量が最大用量でない場合は、最大耐用量である旨もあわせて記載すること。
⑤ 家族性高コレステロール血症以外の患者では、以下の心血管イベントのリスク因子のいずれに該当するか(「リスク因子ア」から「リスク因子オ」までのうち該当するものを記載)。
ア 冠動脈疾患(安定狭心症に対する冠動脈形成術を含む)の既往歴
イ 非心原性脳梗塞の既往歴
ウ 糖尿病
エ 慢性腎臓病
オ 末梢動脈疾患
⑥ 家族性高コレステロール血症以外の患者で、⑤の「リスク因子ウ」から「リスク因子オ」までのいずれかに該当する場合、投与中のHMG-CoA還元酵素阻害剤の投与期間
(4)(1)にかかわらず、次の場合においては投与が認められるものとする。
① 平成29年3月31日以前に既に本製剤の投与を受けている患者については、医学薬学的に本製剤の投与が不要となるまでの間は投与が認められるものとする。その際、(3)を記載できない場合は、従前のとおり次の事項を診療報酬明細書の摘要欄に
記載するともに、投与中である旨(「投与中患者」と記載)及び当該患者に初めて本製剤を投与した年月を記載すること。
ア 本製剤の使用が必要と判断するに当たって参照したLDL-コレステロールの検査値及び当該検査の実施年月日
イ 食事療法を行っている旨、及び患者の状況に応じて、運動、喫煙等に関する指導又は糖尿病、高血圧症等の虚血性心疾患の危険因子に対する治療若しくは指導を行っている旨
ウ 投与中のHMG-CoA還元酵素阻害剤の成分名及び1日投与量。なお、1日投与量が最大用量でない場合は、最大耐用量である旨もあわせて記載すること。
エ 家族性高コレステロール血症以外の患者では、心血管イベントの発現リスクが高いと判断した理由(冠動脈疾患、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患、糖尿病若しくは慢性腎臓病に罹患していること若しくはそのいずれかの既往歴を有すること、又は複数の危険因子が認められること)。
② 平成 29 年3月 31 日以前に本製剤の使用実績がある保険医療機関において、本製剤を初めて投与する必要が生じた患者に対しては、平成 29 年4月 30 日までの間は投与開始が認められ、また、医学薬学的に本製剤の投与が不要となるまでの間は投与が認められるものとする。その際、(3)を記載できない場合は、従前のとおり(4)①に掲げる事項を診療報酬明細書の摘要欄に記載するとともに、当該保険医療機関での使用実績がある旨(「使用実績有」と記載)及び当該患者に初めて本製剤を投与した年月を記載すること。
プラルエント皮下注の作用機序
プラルエント皮下注はアリロクマブを成分とするヒトプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン 9 型(PCSK9)に対する遺伝子組換えヒト IgG1 モノクローナル抗体です。PCSK9というタンパク質は、このLDL受容体とくっつき、LDL受容体を分解してしまいます。
肝臓のLDLコレステロールを取り込む機能が低下してしまい血中コレステロールが上昇してしまいます。
プラルエント皮下注はPSCK9にとくっつくことで、PCSK9がLDL受容体を分解するのを阻害します。
肝臓のLDL受容体数が増え、より多くの血中LDLコレステロールを肝臓が取り込める状態にします。
このようにして、血中LDLコレステロールを下げます。
PCSK9の阻害については別ページで解説していますのでそちらをご覧ください。
抗PCSK9抗体の作用機序(YG研究会)
http://yakuza-14.blogspot.jp/2015/12/pcsk9.html
プラルエント皮下注
高コレステロール血症は、アテローム性動脈硬化症や冠動脈疾患の主な危険因子です。
高コレレステロールを含む脂質異常症の管理として、日本動脈硬化学会(JAS)ガイドラインでは、患者のリスクに応じて治療法及び LDLコレステロールの管理目標値が決められています。
しかし、スタチンを使用しても、ガイドラインで設定されている LDLコレステロールの管理目標値に達していない患者が存在するとの報告があります。
日本臨床 2008; 66: 606-610
http://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/200902234915848772
東京都医師会雑誌 2009; 62: 421-430
そのため、より確実に LDLコレステロール値を低下させる必要のある患者(ホモ型家族性高コレステロール血症等)では、更なる脂質低下療法の追加が必要とされています。
プラルエント皮下注の国内臨床試験においては、JAS ガイドラインの定義と一致するヘテロ型家族性好コレステロール血症患者、冠動脈疾患の既往を有する高コレステロール血症患者やカテゴリーⅢの患者で、既存の標準的薬物治療を受けているにもかかわらず LDLコレステロール値が管理目標値に到達しない高コレステロール血症患者を対象として、有効性が示されています。
国内外の第Ⅲ相試験で重症ヘテロ型家族性高コレステロール血症患者が含まれ、海外臨床試験ではホモ型家族性高コレステロール血症患者や複合ヘテロ接合体及びダブルヘテロ接合体患者も含まれており、これらの患者層でも強力な LDLコレステロール低下効果を示したことから、プラルエント皮下注ではホモ型家族性高コレステロール血症患者を対象とした臨床試験は実施していません。
プラルエント皮下注はスタチンと併用して使用します
スタチンはPCSK9の産生を促してプラルエント皮下注の標的分子であるPCSK9を介するクリアランスに部分的に関与します。
スタチンの用量による LDLコレステロール変化率への影響を評価した国内第Ⅲ相試験があります。
安定した用量のスタチンを 4 週間以上投与されても LDLコレステロールが管理目標値に到達しない患者を対象にしたものです。
この試験での併用されたスタチンは 6 種類です。
プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチンです。
スタチンの用量は定義されておらず、本試験に組み入れられた患者で実際に併用されたスタチンの用量は、最低規格用量からスタチン強化療法の該当用量まで幅広く設定されました。
結果は下の表のとおりです。
24 週時点におけるスタチンの種類毎のベースラインからの LDLコレステロール変化率(ITT)
出典:プラルエント承認申請資料 |
24 週時点における LDLコレステロールのベースラインからの変化率について、各カテゴリーの症例数が少ないために結論的な考察は難しいですが、特定のスタチン及び用量が本剤の有効性に影響を及ぼす傾向はないと考えられます。
【2017年9月追記】
2017年9月1日アリロクマブ製剤が在宅で保険医が投与可能な薬剤として定められました。
これによりプラルエントも在宅での処方が可能となりました。
療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等の一部改正等について(保医発0831第1号
平成29年8月31日)
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T170901S0010.pdf
ただし、プラルエント皮下注の自己注射を行っている患者に対して指導管理を行った場合、「在宅自己注射指導管理料」を算定できるのは『プラルエント皮下注150mgペン』又は『プラルエント皮下注75mgペン』です。
プラルエント添付文書の使用上の注意において、「自己投与にはプラルエント皮下注75mgペン又はプラルエント皮下注150mgペンを用いること。」とされているため、『プラルエント皮下注150mgシリンジ』又は『プラルエント皮下注75mgシリンジ』については「在宅自己注射指導管理料」は算定できません。
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T170901S0010.pdf
ただし、プラルエント皮下注の自己注射を行っている患者に対して指導管理を行った場合、「在宅自己注射指導管理料」を算定できるのは『プラルエント皮下注150mgペン』又は『プラルエント皮下注75mgペン』です。
プラルエント添付文書の使用上の注意において、「自己投与にはプラルエント皮下注75mgペン又はプラルエント皮下注150mgペンを用いること。」とされているため、『プラルエント皮下注150mgシリンジ』又は『プラルエント皮下注75mgシリンジ』については「在宅自己注射指導管理料」は算定できません。
なお、『プラルエント皮下注150mgペン』および『プラルエント皮下注75mgペン』は針付注入器一体型のキットなので、在宅自己注射指導管理料を算定する場合において「注入器加算」や「注入器用注射針加算」は算定できません。
プラルエント皮下注75 mgシリンジ
プラルエント皮下注150 mgシリンジ
プラルエント皮下注75 mgペン
プラルエント皮下注150 mgペン
[効能又は効果]
家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症
ただし、心血管イベントの発現リスクが高く、HMG-CoA 還元酵素阻害剤で効果不十分な場合に限る。
[用法及び用量]
通常、成人にはアリロクマブ(遺伝子組換え)として 75 mg を 2 週に 1 回皮下投与する。効果不十分な場合には 1 回 150 mg に増量できる。