ページ

2016年5月14日土曜日

抗てんかん薬 フィコンパ錠(ペランパネル水和物)は攻撃性を高める



抗てんかん薬フィコンパ錠はAMPA型グルタミン酸受容体に対する非競合的な拮抗薬です。

有効成分はペランペネル水和物です。


てんかん発作とAMPA受容体


AMPA受容体は脳内で最も多く存在するグルタミン酸受容体です。
脳内に広く分布している受容体です。
主としてシナプス後膜に存在し、グルタミン酸結合によりNaイオン等のイオン流入を引き起こして興奮性シナプス後電位を惹起することにより、速い興奮性神経伝達を担っています。




てんかん発作は局所で開始されたけいれん波が伝播することにより発生すると考えられています。
側頭葉てんかん患者の扁桃体におけるけいれん波の発生にAMPA受容体が関与していることや、側頭葉てんかん患者の扁桃体及び難治性複雑部分てんかん患者の海馬歯状回においてAMPA受容体の発現が上昇していることが報告されています。



AMPA受容体がてんかんでの脳における神経興奮性の上昇とてんかん発作の開始に関与していると考えられています。


フィコンパ錠の作用機序



フィコンパ錠インタビューフォーム


フィコンパ錠の有効成分ペランパネルはAMPA受容体に選択的かつ非競合的に拮抗する作用を持ちます。


  • ペランパネルの神経細胞膜への結合はAMPA及びグルタミン酸により阻害されずAMPA受容体の非競合的拮抗薬により阻害されます。

  • 動物実験では、ペランパネルが神経細胞におけるAMPA誘発細胞内Ca濃度上昇を抑制し、マウスにおけるAMPA誘発けいれん潜時を延長したことが確認されています。

  • ペランパネルはAMPA受容体括抗作用により、一部の神経で発生したけいれん波が徐々に脳の他の部分に伝播する部分発作及びけいれん波が脳全体に短時間で伝播される全般性けいれんのいずれに対しても抑制作用を発揮すると考えられます。

  • 強直間代性けいれんのモデル及び部分てんかんのモデルにおいて同程度の用量で効果を示したことから、部分発作及び強直間代発作の両方を抑制することが考えられます。



AMPA受容体を介する興奮性の抑制のみを作用機序とするのはペランパネルだけ


てんかん患者の部分発作に関連する効能・効果を有する類薬
カルバマゼピン、フェニトイン、ゾニサミド、バルプロ酸ナトリウム、トピラマート、ラモトリギン、レベチラセタム

強直間代発作に関連する効能・効果を有する類薬
パルプロ酸ナトリウム、ラモトリギン、クロバザム、ゾニサミド、フェノバルビタール、フェニトイン


既存の抗てんかん薬の主な作用機序には、電位依存性Naチャネル又はCaチャネルの阻害、神経伝達物質放出機構の調節、グルタミン酸神経伝達の抑制、GABA系神経伝達の賦活等があります。
抗てんかん薬の多くはこれらの作用の単独又は組合せで効果を発揮すると考えられています。

一方、ペランパネルは電位依存性チャネルや GABA受容体を介した神経伝達に対しては影響を及ぼしません。

トピラマート(トピナ) はAMPA受容体に対する拮抗作用を示すことが報告されていますが、トピラマートは電位依存性Naチャネル阻害、電位依存性L型 Caチャネル阻害等の複数の薬理作用を有すること、AMPA型よりもカイニン酸型グルタミン酸受容体に対する抑制作用が強いとの報告があります。

トピラマートの抗てんかん作用におけるAMPA受容体拮抗作用は部分的であると考えられます。




AMPA受容体を介する興奮性の抑制のみを作用機序とするのはペランパネルだけです。

既存の抗てんかん薬とは異なる作用機序を有するので他のメカニズムを薬理作用とする薬剤では効果が得られにくい発作に対して有効性を示す可能性があるので、難治性てんかんに対する新たな治療選択肢になると考えられています。


攻撃性、不安等の精神症状の副作用


【副作用】攻撃性
 易刺激性(6.2%)、攻撃性(2.7%)、不安(1.4%)及び怒り(1.0%)等の精神症状があらわれる

臨床試験において、不安、攻撃性及び怒り等の精神障害に関連する有害事象の発現率は用量増加に伴って上昇する傾向が認められています。

本剤投与中は患者の状態及び病態の変化を注意深く観察し、医師と緊密に連絡を取り合うことが必要になります。

臨床試験において、フィコンパ錠の代謝を促進する抗てんかん薬(カルバマゼピン、フェニトイン)を併用しない場合と併用している場合を比較したところ、併用していない場合に易刺激性、攻撃性・敵意、不安等の精神症状等の発現が高まる傾向が認められています。

抗てんかん薬との相互作用の一覧表
フィコンパ錠 添付文書より


また、成人より小児のほうが刺激性、攻撃性・敵意等の精神症状の発現割合が高い傾向があり、特に攻撃性が高くなる報告があります。小児(12歳以上)においては、これらの精神症状の発現について観察を十分に行い、注意する必要があります。


フィコンパ錠

【効能・効果】
他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の下記発作に対する抗てんかん薬との併用療法
 部分発作(二次性全般化発作を含む)
 強直間代発作

【用法・用量】
通常、成人及び12歳以上の小児にはペランパネルとして1日1回2㎎の就寝前経口投与より開始し、その後1週間以上の間隔をあけて2㎎ずつ漸増する。
本剤の代謝を促進する抗てんかん薬を併用しない場合の維持用量は1日1回8㎎、併用する場合の維持用量は1日1回8~12㎎とする。
なお、症状により1週間以上の間隔をあけて2㎎ずつ適宜増減するが、1日最高12㎎までとする。