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2016年5月31日火曜日

プロヘパール配合錠販売中止と代替品




あの独特の色と大きさの錠剤、
プロヘパール配合錠が販売を中止するようです。
(2017年3月末薬価基準削除予定)

プロヘパール配合錠 販売中止のお知らせ(科研製薬:2016.5)
http://www.kaken.co.jp/medical/bluedi/proheparum_201605.pdf


プロヘパール配合錠は、『ヘパリーゼ』で一躍脚光を浴びた肝臓水解物を成分とする肝臓機能改善薬です。

1957年(昭和32年)発売以来60年近く日本人の肝臓を守ってきました。


プロヘパール配合錠は肝臓加水分解物を主成分に、塩酸システイン、重酒石酸コリン、イノシトール、 シアノコバラミン(VB12)を含有した肝疾患治療剤です。

慢性肝炎の病態改善、肝硬変への進行阻止を目的とした基本治療につながる抗壊死作用、 抗脂肝作用、線維化抑制作用及び肝細胞再生促進作用などが認められています。

プラセボおよび肝臓加水分解物を対象とした二重盲検比較試験において、肝機能数値であるAST(GOT)、 ALT(GPT)の有意な改善効果が認められています。


販売中止の理由


メーカーサイドからの情報では「諸般の事情」ということだけで、何もわかりませんでした。

推測の域を出ませんが、原料の不足と調達コストの上昇があると思います。

肝臓水解物は動物の肝臓を原料としているため、安全で品質の良い原料を安定的に調達するのは非常に難しいと言われています。

また、ヘパリーゼの爆発的ヒットにより、原料の需要が高まり、調達コストが上がったのかもしれません。
さらにプロヘパールは薬価も安いので、コスト上昇に耐えられなかったのかもしれません。



プロヘパール配合錠の代替品


“慢性肝疾患における肝機能の改善”を効能にもつ経口薬


商品名

会社名

用法・用量

プロヘパール配合錠

科研製薬

成人1回1~2錠を1日3回経口投与する。 

ウルソ錠50mg

ウルソ錠100mg

田辺三菱製薬

成人1回50mgを1日3回経口投与する.なお,年齢,症状により適宜増減する.

C型慢性肝疾患における肝機能の改善には,成人1日600mgを3回に分割経口投与する.

ウルソ顆粒5%

田辺三菱製薬

ウルソデオキシコール酸として,通常,成人1回50mgを1日3回経口投与する.なお,年齢,症状により適宜増減する.

キャベジンUコーワ錠25mg

興和

興和創薬

成人1回25~75mgを1日3回経口投与する。

チオラ錠100

マイラン製薬

ファイザー

成人1回100mgを1日3回経口投与する。

リバオール散10%

リバオール錠20mg

第一三共

成人1日20~60mgを2~3回に分割経口投与する。




ジゴキシン錠とラニラピッド錠の等価換算




ラニラピッド0.1mg 1錠とジゴキシン錠0.25mg 0.7錠が同等と考えられています。

すなわち、メチルジゴキシン0.1mgとジゴシン0.175mgが同等と考えられています。

(文献によっては、メチルジゴキシン0.15mgとジゴキシン0.25mgが同等というデータも有ります)


ジゴキシン錠(ジゴシン)とラニラピッド錠(メチルジゴキシン)のちがい


ジゴキシンは心不全の治療薬として高く評価されている薬です。
ジゴキシンは適度な排泄速度をもっているため薬理効果の持続時間が適切であるという長所をもっています。
しかし、腸管からの吸収が悪いので患者間で吸収率にばらつきがあるのが欠点とされてきました。

このジゴキシンの欠点を克服するために、誕生したのがジゴキシンをメチル化したメチルジゴキシンです。

メチルジゴキシンはジゴキシンと比較して腸管からの吸収が極めて良好で、排泄の速度はジゴキシンと同等かまたはむしろやや速いことが確かめられています。
また、薬理学的研究でもジゴキシンと同等の薬理作用を発揮することがわかっています。


ジゴキシンの投与量

新潟薬科大学 薬物動態学研究室


投与モノグラムを参考に
血中濃度が0.5~0.8ng/mLでコントロールされるよう投与量を決定します。

(インタビューフォームでは治療域を0.8~2.0ng/mLとしていますが、臨床ではあまり利用していない)


プルゼニド、アローゼン、ヨーデルSのちがい




プルゼニド、アローゼン、ヨーデルS、いずれも下剤に分類されます。

3製剤ともセンノシドを有効成分としています。

有効成分のセンノシドは生薬のセンナに含まれているものです。
プルゼニド、アローゼン、ヨーデルSではその成分量が異なっています。


プルゼニド12mg

センナ葉配糖体より抽出されたカルシウム塩で、センノシドA、Bとして12mg含有しています。

アローゼン顆粒

センナの葉と実を1.5対1の割合で配合した製剤です。生薬製剤です。
1gあたりのセンノシド量(センノシドA、B、Cを含む)は24mg。センノシドA、Bとしては10~20mg含んでいます。

ヨーデルS糖衣錠-80

センナ末に含まれる樹脂成分を除き生薬センナ本来の有効成分を効率よく抽出したセンナエキス剤です。
1錠中センナエキスを80mg含有(センノシドAとして16mg)。


効果のちがい


プルゼニド、アローゼン、ヨーデルSの効果について臨床で比較検討された報告はありません。

プルゼニドが効かなくなった患者さんが、アローゼンに変えると効いたという話を聞きますし、その逆にアローゼンが効かない人にプルゼニドが効いたという話を聞いたことがあります。


プルゼニド、アローゼン、ヨーデルSの等価換算

(あくまでも目安です)


プルゼニド 1錠
  ||
アローゼン顆粒 0.5g
  ||
ヨーデルS 0.75錠


2016年5月18日水曜日

フェルナビオンテープ販売中止と代替品



温感テープ剤の代表である『フェルナビオンテープ』が販売中止されるようです。


フェルナビオンテープ35・70 販売中止のご案内(大鵬薬品)
http://www.taiho.co.jp/medical/pdf/0000_20160511_1_240_20160502.pdf


出荷停止予定時期は2016年12月初旬~2017年1月下旬です。
(経過措置期限は2018年3月31日です。)

テープ剤の温感タイプは種類が少なく根強いファンも多いだけに、販売中止は残念です。


温感成分が手に入らない


販売中止理由は、温感成分である添加物のノニル酸ワニリルアミドの供給が中止されたためだそうです。

しかし、ノニル酸ワニリルアミドは大鵬薬品の『ロキソプロフェンナトリウムテープ「タイホウ」』にも使用されています。

こちらも中止されるのでしょうか?

詳しくメーカの営業の方に伺ったところ、『ロキソプロフェンナトリウムテープ「タイホウ」』の供給は続けるそうです。

フェルナビオンとロキソプロフェンテープの両剤を安定供給できるほどのノニル酸ワニリルアミドの量を確保できそうにないため、フェルナビオンを作るのをやめて売りの大きいロキソプロフェンテープを残す選択をしたようです。


代替品


フェルナビオンにはテープ剤とパップ剤がありますが、今回販売中止となるのはテープ剤です。

パップ剤の温感成分はテープ剤と異なりトウガラシエキスなので、こちらは継続して販売されます。

同一成分が良いのであれば、フェルナビオンパップが代わりになります。


温感タイプ消炎鎮痛剤のテープ剤は、フェルナビオンの他にはロキソプロフェンナトリウムテープしかありません。


表:温感タイプの鎮痛消炎外用貼付剤


商品名

一般名

サイズ(cm)

温感成分

 

 

 

ノニル酸ワニリルアミド

トウガラシエキス
フェルナビオンテープ35 フェルビナク 7×10
-
フェルナビオンテープ70 フェルビナク 10×14
-
フェルナビオンパップ70 フェルビナク 10×14
-
ロキソプロフェンナトリウム「タイホウ」テープ50mg ロキソプロフェンナトリウム水和物 7×10
-
ロキソプロフェンナトリウム「タイホウ」テープ100mg ロキソプロフェンナトリウム水和物 10×14
-
ロキソプロフェンナトリウム「三友」テープ50mg ロキソプロフェンナトリウム水和物 7×10
-
ロキソプロフェンナトリウム「三友」テープ100mg ロキソプロフェンナトリウム水和物 10×14
-
ラクティオンパップ70mg インドメタシン 10×14
-
フルルバンパップ40mg フルルビプロフェン 10×14
-
MS温シップ「タイホウ」 サリチル酸メチル 
dl-カンフル 
トウガラシエキス
10×14,
14×20
-
MS温シップ「タカミツ」 10×14,
10×21
-
ハーネシップ 10×14
-
ラクール温シップ 10×14
-

ボナロン経口ゼリーの後発品数量シェアにおける分類が変更




平成28年4月からボナロン経口ゼリーの後発品数量シェアにおける分類が変更されました。



数量シェアにおける分類

製品名

厚生労働省
薬価基準収載
医薬品コード

平成28年
3月31日まで

平成28年
4月1日から

ボナロン錠5mg

3999018F1030

2

2

ボナロン錠35mg

3999018F2036

2

2

ボナロン経口ゼリー35mg

3999018Q1022

2

1

1:後発医薬品がない先発医薬品(後発医薬品の上市前の先発医薬品等)
2:後発医薬品がある先発医薬品(先発医薬品と後発医薬品で剤形や規格が同一でない場合等を含む。ただし、全ての後発医薬品が経過措置として使用期限を定められている場合を除く)


ようやく矛盾が解消されました。


矛盾というのは、

ボナロン経口ゼリーは、変更調剤可能な後発医薬品が存在していないにもかかわらず、後発医薬品数量シェアにおける分類において、後発医薬品がある先発医薬品に分類されていたことです。

数量シェアを上げるためには、疑義照会をして錠剤の後発医薬品に処方を変えてもらうしかありませんでした。

平成28年4月から、後発医薬品シェアの計算式の分母から除かれます。


※ボナロン経口ゼリーは内用液剤です。そのため、含量規格が異なる後発医薬品または類似する別財形の後発医薬品への変更調剤はできません。


参考:

アムロジピン内用ゼリーは液剤
https://yakuza-14.blogspot.jp/2014/07/blog-post_18.html

平成28年度版 後発医薬品数量シェア計算方法
https://yakuza-14.blogspot.jp/2016/02/28.html


2016年5月17日火曜日

バクシダール錠やケフラールカプセルから後発医薬品へ変更調剤できなくなった?(平成28年診療報酬改定)



この件について疑義解釈が通知されました。
http://www.mhlw.go.jp/file.jsp?id=381888&name=file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000136971.pdf


【後発医薬品への変更調剤】 
(問)処方せんにおいて変更不可とされていない処方薬については、後発医薬品への変更調剤は認められているが、基礎的医薬品への変更調剤は行うことができるか。

(答)基礎的医薬品であって、平成28年3月31日まで変更調剤が認められていたもの (「診療報酬における加算等の算定対象となる後発医薬品」等)については、従来と同様に変更調剤を行うことができる。 なお、その際にも処方せんに記載された医薬品の後発医薬品への変更について」(平成24年3月5日付け保医発0305第12号)に引き続き留意すること。


【2016/09/16追記】


平成28年度診療報酬改訂において、バクシダール錠やケフラールカプセルから当該後発医薬品へ変更調剤できなくなったのかと、知り合いの薬剤師から問い合わせがありました。

理由を聞いてみると
バクシダール錠やケフラールカプセルの後発医薬品だったものが、この改訂で後発医薬品ではなくなったというのです。


結論からいうと、これは勘違いなのです。


どういうことなのか、考えてみましょう。


厚生労働省のホームページで確認してみましょう。
「薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2016/04/tp20160401-01.html


【平成28年3月31日まで】



【平成28年4月以降】



確かに、後発品の文字が平成28年4月からのリストからは消えています。


なぜ、こんなことになったのでしょうか?



その答えは「基礎的医薬品」です。


平成28年度診療報酬改定における「基礎的医薬品」の対象成分については、「各先発医薬品の後発医薬品の有無に関する情報」は空欄となっています。


ここで『後発医薬品』の定義を確認しましょう。

先発医薬品の特許が切れた後に、先発医薬品と成分や規格等が同一で、治療学的に同等であるとして承認される医薬品を「後発医薬品」(いわゆるジェネリック医薬品)と呼んでいます。


上記リストをよくみてみましょう。
後発品の見出し欄には『診療報酬において加算等の算定対象となる後発医薬品』と記載してあり、『後発医薬品』ではありません。


多くの方が勘違いされていますが
『診療報酬において加算等の算定対象となる後発医薬品』と薬機法上の『後発医薬品』は概念がちがいます。


『診療報酬において加算等の算定対象となる後発医薬品』≠『後発医薬品』
『診療報酬において加算等の算定対象となる後発医薬品』∈『後発医薬品』


もう一点、処方せんに記載された医薬品の後発医薬品への変更に関するルールを確認してみましょう。

平成28年診療報酬改訂時点では、「処方せんに記載された医薬品の後発医薬品への変更について」(平成24年3月5日保医発0305第12号)のルールが適応されます。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken15/dl/tuuchi1-4.pdf

平成22年度に『診療報酬において加算等の算定対象となる後発医薬品』の概念が誕生しましたが、後発医薬品への変更に関するルールにおいて、後発医薬品の特に言及はありませんでした。

このことからも、後発医薬品への変更に関するルールにおいて後発医薬品とは広義の『後発医薬品』であると考えられます。


以上のことから、バクシダール錠やケフラールカプセルの後発医薬品は、
平成28年度から後発医薬品体制加算等の計算式に反映される後発医薬品ではなくなったが、先発品の商品名が処方せんに記載されており、変更調剤不可ではなく、患者さんの同意を得られれば、疑義照会無しに当該後発医薬品を調剤することが可能であると考えられます。


※管轄の厚生局によっては、解釈が異なる場合があります。


参考資料:
「診療報酬において後発医薬品調剤体制加算等の算定対象となる後発医薬品」の考え方について(中医協資料 平成22年2月8日)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryou/kouhatu-iyaku/dl/28.pdf

第1 基本的な考え方

  1. 後発医薬品については、生物学的同等性試験の結果等から、品質、有効性及び安全性が先発医薬品と同等であることを確認した上で、薬事に基づき承認されるものである。
  2. 後発医薬品は、開発に要する費用が先発医薬品よりも少なくて済み、一般的に、先発医薬品の薬価よりも低い薬価であるため、患者負担の軽減や医療保険財政の改善に資するという観点から、診療報酬上の評価(後発医薬品調剤体制加算等)の対象とし、その使用を促進してきた。
  3. また、診療報酬において後発医薬品調剤体制加算等の算定対象となる後発医薬品を公表しており、これまで、薬事法上の後発医薬品をリストに掲載してきたところである。


参考:
基礎的医薬品とは
https://www.ygken.com/2016/09/blog-post_18.html


2016年5月15日日曜日

尋常性乾癬治療薬 マーデュオックス軟膏




マーデュオックス軟膏はオキサロール(マキサカルシトール)とアンテベート(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)を配合した軟膏剤です。

尋常性乾癬の治療に使用されます。

尋常性乾癬は、雲母状鱗屑を伴う境界明瞭な紅斑を特徴とする慢性炎症性角化疾患であり、寛解と再燃を繰り返します。

尋常性乾癬は遺伝的素因に種々の環境因子の影響を受けて発症すると考えられています。日本における尋常性乾癬の有病率は、1,000~2,000 人あたり1人という疫学調査報告がされています。


尋常性乾癬の治療には、薬物による外用療法、光線療法及び全身療法があり、これらの単独療法又は併用療法が行われています。

外用療法には、活性型ビタミンD3外用剤とステロイド外用剤が広く使用されています。
単独療法又は両薬剤を同時使用する併用療法が実施されています。


併用療法の問題点


2 剤を塗布する場合、塗布に手間がかかり、コンプライアンスが低下する問題が知られています。

また、使用時にステロイド外用剤と活性型ビタミンD3外用剤を混合する方法が広く行われていますが、混ぜることで安定性等の問題から力価が低下することがあるという報告があります。


このように医療現場でステロイド外用剤とビタミンD3外用剤を混合し調製された場合は規格及び安定性は担保されていません。

一方、マーデュオックス軟膏は、活性型ビタミン D3 誘導体であるマキサカルシトールとステロイドであるベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルをあらかじめ適切に調製し、長期安定性を担保した製剤です。

つまり外用治療に関する患者の利便性の向上に役立つと同時に品質上の問題を解消し、治療選択肢が広がることになりました。



マーデュオックス軟膏

[効能・効果]
 尋常性乾癬
[用法・用量]
 通常、1 日 1 回、適量を患部に塗布する。


2016年5月14日土曜日

抗てんかん薬 フィコンパ錠(ペランパネル水和物)は攻撃性を高める



抗てんかん薬フィコンパ錠はAMPA型グルタミン酸受容体に対する非競合的な拮抗薬です。

有効成分はペランペネル水和物です。


てんかん発作とAMPA受容体


AMPA受容体は脳内で最も多く存在するグルタミン酸受容体です。
脳内に広く分布している受容体です。
主としてシナプス後膜に存在し、グルタミン酸結合によりNaイオン等のイオン流入を引き起こして興奮性シナプス後電位を惹起することにより、速い興奮性神経伝達を担っています。




てんかん発作は局所で開始されたけいれん波が伝播することにより発生すると考えられています。
側頭葉てんかん患者の扁桃体におけるけいれん波の発生にAMPA受容体が関与していることや、側頭葉てんかん患者の扁桃体及び難治性複雑部分てんかん患者の海馬歯状回においてAMPA受容体の発現が上昇していることが報告されています。



AMPA受容体がてんかんでの脳における神経興奮性の上昇とてんかん発作の開始に関与していると考えられています。


フィコンパ錠の作用機序



フィコンパ錠インタビューフォーム


フィコンパ錠の有効成分ペランパネルはAMPA受容体に選択的かつ非競合的に拮抗する作用を持ちます。


  • ペランパネルの神経細胞膜への結合はAMPA及びグルタミン酸により阻害されずAMPA受容体の非競合的拮抗薬により阻害されます。

  • 動物実験では、ペランパネルが神経細胞におけるAMPA誘発細胞内Ca濃度上昇を抑制し、マウスにおけるAMPA誘発けいれん潜時を延長したことが確認されています。

  • ペランパネルはAMPA受容体括抗作用により、一部の神経で発生したけいれん波が徐々に脳の他の部分に伝播する部分発作及びけいれん波が脳全体に短時間で伝播される全般性けいれんのいずれに対しても抑制作用を発揮すると考えられます。

  • 強直間代性けいれんのモデル及び部分てんかんのモデルにおいて同程度の用量で効果を示したことから、部分発作及び強直間代発作の両方を抑制することが考えられます。



AMPA受容体を介する興奮性の抑制のみを作用機序とするのはペランパネルだけ


てんかん患者の部分発作に関連する効能・効果を有する類薬
カルバマゼピン、フェニトイン、ゾニサミド、バルプロ酸ナトリウム、トピラマート、ラモトリギン、レベチラセタム

強直間代発作に関連する効能・効果を有する類薬
パルプロ酸ナトリウム、ラモトリギン、クロバザム、ゾニサミド、フェノバルビタール、フェニトイン


既存の抗てんかん薬の主な作用機序には、電位依存性Naチャネル又はCaチャネルの阻害、神経伝達物質放出機構の調節、グルタミン酸神経伝達の抑制、GABA系神経伝達の賦活等があります。
抗てんかん薬の多くはこれらの作用の単独又は組合せで効果を発揮すると考えられています。

一方、ペランパネルは電位依存性チャネルや GABA受容体を介した神経伝達に対しては影響を及ぼしません。

トピラマート(トピナ) はAMPA受容体に対する拮抗作用を示すことが報告されていますが、トピラマートは電位依存性Naチャネル阻害、電位依存性L型 Caチャネル阻害等の複数の薬理作用を有すること、AMPA型よりもカイニン酸型グルタミン酸受容体に対する抑制作用が強いとの報告があります。

トピラマートの抗てんかん作用におけるAMPA受容体拮抗作用は部分的であると考えられます。




AMPA受容体を介する興奮性の抑制のみを作用機序とするのはペランパネルだけです。

既存の抗てんかん薬とは異なる作用機序を有するので他のメカニズムを薬理作用とする薬剤では効果が得られにくい発作に対して有効性を示す可能性があるので、難治性てんかんに対する新たな治療選択肢になると考えられています。


攻撃性、不安等の精神症状の副作用


【副作用】攻撃性
 易刺激性(6.2%)、攻撃性(2.7%)、不安(1.4%)及び怒り(1.0%)等の精神症状があらわれる

臨床試験において、不安、攻撃性及び怒り等の精神障害に関連する有害事象の発現率は用量増加に伴って上昇する傾向が認められています。

本剤投与中は患者の状態及び病態の変化を注意深く観察し、医師と緊密に連絡を取り合うことが必要になります。

臨床試験において、フィコンパ錠の代謝を促進する抗てんかん薬(カルバマゼピン、フェニトイン)を併用しない場合と併用している場合を比較したところ、併用していない場合に易刺激性、攻撃性・敵意、不安等の精神症状等の発現が高まる傾向が認められています。

抗てんかん薬との相互作用の一覧表
フィコンパ錠 添付文書より


また、成人より小児のほうが刺激性、攻撃性・敵意等の精神症状の発現割合が高い傾向があり、特に攻撃性が高くなる報告があります。小児(12歳以上)においては、これらの精神症状の発現について観察を十分に行い、注意する必要があります。


フィコンパ錠

【効能・効果】
他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の下記発作に対する抗てんかん薬との併用療法
 部分発作(二次性全般化発作を含む)
 強直間代発作

【用法・用量】
通常、成人及び12歳以上の小児にはペランパネルとして1日1回2㎎の就寝前経口投与より開始し、その後1週間以上の間隔をあけて2㎎ずつ漸増する。
本剤の代謝を促進する抗てんかん薬を併用しない場合の維持用量は1日1回8㎎、併用する場合の維持用量は1日1回8~12㎎とする。
なお、症状により1週間以上の間隔をあけて2㎎ずつ適宜増減するが、1日最高12㎎までとする。


腎機能評価は血清クレアチニンから推定糸球体濾過量eGFRによる評価へ(糖尿病学会)





2016年5月12日日本糖尿病学会は「ビグアナイド薬の適正使用に関する Recommendation」をおよそ2年ぶりに改訂しました。

「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」から(日本糖尿病学会)
http://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?page=article&storyid=20


改訂箇所は2つ。

名称の変更と腎機能評価法の変更です。


名称の変更


「ビグアナイド薬の適正使用に関する Recommendation」から「メトホルミンの適正使用に関する Recommendation」に変わっています。

今回の変更理由は、国内で使用されているビグアナイド薬のほとんどがメトホルミンであることや、内外の安全性に関するエビデンスについても、メトホルミンに関するものがほとんどだからです。

多くの留意点がメトホルミンの配合薬や他のビグアナイド薬についても該当することには変わりありません。


腎機能評価法の変更


改訂前

改定後

メトグルコを除くビグアナイド薬は、腎機能障害患者には禁忌である。

メトグルコは、中等度以上の腎機能障害患者では禁忌である。SCr値(酵素法)が男1.3mg/dL、女性1.2mg/dL以上の患者には投与を推奨しない。
高齢者ではSCr値が正常範囲内であっても実際の腎機能は低下していることがあるので、eGFR等も考慮して腎機能の評価を行う。
ショック、急性心筋梗塞、脱水、重症感染症の場合やヨード造影剤の併用では急性増悪することがある。
尚、SCrがこの値より低い場合でも添付文書の他の禁忌に該当する症例などで、乳酸アシドーシスが報告されている。

腎機能を推定糸球体濾過量eGFRで評価し、eGFRが30(mL/分/1.73m2)未満の場合にはメトホルミンは禁忌である。
eGFRが30~45の場合にはリスクとベネフィットを勘案して慎重投与とする。
脱水、ショック、急性心筋梗塞、重症感染症の場合などやヨード造影剤の併用などではeGFRが急激に低下することがあるので注意を要する。
eGFRが30~60の患者では、ヨード造影剤検査の前あるいは造影時にメトホルミンを中止して48時間後にeGFRを再評価して再開する。
尚、eGFRが45以上また60以上の場合でも、腎血流量を低下させる薬剤(レニン・アンジオテンシン系の阻害薬、利尿薬、NSAIDsなど)の使用などにより腎機能が急激に悪化する場合があるので注意を要する。


この改訂は2016年4月8日にFDAからDrug Safety Communicationが出されたことを受けたものです。

従来の血清クレアチニンによる腎機能評価から推定糸球体濾過量eGFRによる評価へ変更されました。

血清クレアチニンによる腎機能評価は、年齢・性別による筋肉量の多寡を考慮せずに一律で基準値を設定したもので不正確な評価となってしまう問題がありました。
それを解決した腎機能評価法が推定糸球体濾過量eGFRです。


eGFRは下の式に血清クレアチニン値(SCr)の数値と、あなたの年齢を代入すれば、腎臓が何%機能しているかが算出できる仕組みです。



あなたのeGFR値は下記のサイトで調べることができます。 
・ 日本慢性腎臓病対策協議会 http://j-ckdi.jp 
・ 腎臓ネット http://www.jinzou.net/ 




2016年5月11日水曜日

糖尿病の薬を飲んでいると心臓カテーテル検査はできないの?




患者さん「○○病院で心臓の検査してもらう時、エクメットっていうお薬飲んでいること伝えたら、検査できないといわれて延期になっちゃたたんだけど。なんでかしら」



3年前に心筋梗塞を患い、ステント手術をされた患者さん。今は、安定しており定期的にカテーテル検査をされているとのことでした。

今までに何度も検査を受けてきて、そのときも糖尿病薬は飲んでいたのになぜなのか、不思議だとおっしゃいました。

おくすり手帳を拝見すると、他の薬局で調剤されいる糖尿病の薬がエクアからエクメット配合錠に変更されていました。



エクメット配合錠は、エクアとメトホルミン(メトグルコ)の2つの薬を1つにしたものです。



ビグアナイド系糖尿病薬を服用している患者へのヨード造影剤投与は,乳酸アシドーシスのリスクを増加させる


メトホルミンに代表されるビグアナイド系糖尿病薬による最も重篤な副作用に、乳酸アシドーシスというものがあります。

発症することは極めて稀ですがいったん発症すると致死率が高い副作用です。

乳酸アシドーシスをきたしやすい病態のひとつは、腎機能障害です。


メトホルミンは腎臓から排泄される薬ですので,腎機能が低下すると血中濃度も高くなる可能性があります。


心臓カテーテル検査などでヨード造影剤を投与することにより一過性に腎機能が低下する場合があります。そのとき、メトホルミンを服用しているとメトホルミンの腎排泄が減少してしまい、乳酸アシドーシスを起こす危険性があります。

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McCartney MM, et al.,Metformin and contrast media―a dangerous combination? Clin Radiol 1999;54:29—33.

Rasuli P, Hammond DI:Metformin and contrast media:where is the conflict? Can Assoc Radiol J 1998;49:161—166.

添付文書の使用上の注意にも記載が


ビグアナイド系糖尿病薬の添付文書の「重要な基本的注意」には、

ヨード造影剤を用いて検査を行う患者においては、本剤の併用により乳酸アシドーシスを起こすことがあるので,検査前は本剤の投与を一時的に中止する(ただし,緊急に検査を行う必要がある場合を除く).ヨード造影剤投与後 48 時間は本剤の投与を再開しない.なお,投与再開時には,患者の状態に注意する

と記載されています。


また、「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」の作成による「ビグアナイド薬の適正使用に関する Recommendation(2012年2月1日)」において、乳酸アシドーシスの症例に認められた特徴の 1 つに腎機能障害患者があり、recommendation のなかでヨード造影剤の併用による腎機能障害の急性増悪がとりあげられ、注意喚起がなされています。

さらに
日本医学放射線学会はヨード造影剤(尿路・血管用)とビグアナイド系糖尿病薬との併用注意についてのポスターを作成しています。
http://www.radiology.jp/member_info/safty/20161228.html


以上のように、ビグアナイド薬を服用中の患者さんでは、ヨード造影剤を使用する場合は休薬などの安全性への十分な配慮が必要です。次のようにビグアナイド薬あるいはその配合剤であることがわかりにくいものもありますのでご注意ください。

  • イニシンク配合錠
  • ジベトス錠
  • グリコラン錠
  • メデット錠


通常の腎機能が正常である場合、休薬せず検査も。


ヨーロッパのガイドラインでは腎機能が正常である場合,ヨード造影剤を用いた検査の前にビグアナイド系糖尿病薬の休薬を勧めるものはほとんどありません。


これを根拠に、ビグアナイド薬を服用していても休薬するすることなしに検査を行う施設があるそうです。


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狭心症や心筋梗塞などで冠動脈ステント手術歴がある患者さんの処方にメトホルミンがあるときには、心カテ検査の予定の有無を聞き取りましょう。

冠動脈ステント手術歴は、アスピリンやプラビックスの処方で。