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2016年1月27日水曜日

爪水虫治療薬 クレナフィンとルコナックのちがい



クレナフィンもルコナックも爪水虫の治療薬です。

患部の爪に直接、塗って使います。



効能効果、用法用量は同じです

【効能・効果】
〈適応菌種〉皮膚糸状菌(トリコフィトン属)
〈適応症〉爪白癬

〈効能・効果に関連する使用上の注意〉
  1. 直接鏡検又は培養等に基づき爪白癬であると確定診断された患者に使用すること。
  2. 重症患者における本剤の有効性及び安全性は確認されていない。

【用法・用量】
1日1回罹患爪全体に塗布する。

〈用法・用量に関連する使用上の注意〉
本剤を長期間使用しても改善が認められない場合は使用中止を考慮するなど、漫然と長期にわたって使用しないこと(48週を超えて使用した場合の有効性・安全性は確立していない)。


有効成分がちがう

クレナフィン爪外用液10%

1g中にエフィナコナゾール100mgを含んでいます。

ルコナック爪外用液5%
1g中にルリコナゾール50mgを含んでいます。

ルリコナゾールは『ルリコン』と同じ成分です。
ルリコンは爪の中まで浸透できず、爪水虫菌に効果はなかったのですが、ルコナックでは、ルリコンより濃度を濃くして浸透力を上げて爪の中の菌に届くように改良されています。



容器の形状がちがう

容器の口の形状が異なるので、塗り方が少し異なります。


クレナフィン

http://www.kaken.co.jp/

容器の口にハケが付いています。
ハケで薬液を塗り拡げます。



ルコナック

http://medinfo-sato.com/


爪に押し付けて薬液を出します。

1回押し付けると、爪1枚分の十分な量が出てきます。



参考:
ルコナック爪外溶液 1本は何日分?



2016年1月26日火曜日

アクトヒブとヴァクセムヒブのちがい



アクトヒブもヴァクセムヒブもインフルエンザ菌b型による感染症の予防に使用されるワクチンです。


ヒブワクチンと呼ばれるワクチンです。


この2つのワクチンにちがいはあるのでしょうか。

製法がちがう

アクトヒブの製法
インフルエンザ菌b型(1482株)の培養液から抽出精製した莢膜多糖体(ポリリボシルリビトールリン酸:PRP)と, 破傷風菌(Harvard株)の培養液から分離精製した毒素をホルマリンで無毒化した破傷風トキソイドを共有結合した破傷風トキソイド結合インフルエンザ菌b型多糖です。

ヴァクセムヒブの製法
インフルエンザ菌b型(10211株)の培養液から抽出精製したオリゴ糖と、ジフテリア菌変異株の培養液から回収・精製した無毒性ジフテリア毒素を(CRM197)を共有結合した無毒性変異ジフテリア毒素結合インフルエンザ菌b型オリゴ糖です。

アジュバントの有無

アジュバントとはワクチンと一緒に投与して、その効果(免疫原性)を増強する目的で使用される物質です。免疫増強剤のことです。


アクトヒブ
アジュバントは添加されていません。

ヴァクセムヒブ
アジュバントとしてリン酸アルミニウムが添加されています。

抗体保有率のちがい

臨床試験における初回免疫後の1μg/mL(長期感染予防レベル)以上の抗体保有率を比較しました。

アクトヒブ
92.4%

ヴァクセムヒブ
99.3%

臨床試験における追加免疫後の1μg/mL(長期感染予防レベル)以上の抗体保有率を比較しました。


アクトヒブ
100%

ヴァクセムヒブ
99.2%


包装のちがい

アクトヒブ

乾燥凍結製剤入りバイアルです。

添付されている注射器に含まれる溶剤(0.4%塩化ナトリウム液)0.5 mLで溶解する必要があります。添付されている注射器には25G 5/8注射針が付いています。



ヴァクセムヒブ

液体製剤入りのバイアルです。

溶解作業は不要です。注射器や針は添付されていません。




※ヴァクセムヒブは2016年1月に承認されましたが、定期接種には組み込まれていません。発売は定期接種に組み込まれてからになると予想されます。(執筆時点)


2016年1月25日月曜日

高コレステロール血症治療の注射薬 レパーサ皮下注



高コレステロール血症治療薬「レパーサ®皮下注」は、一般名をエボロクマブ(遺伝子組換え)といいます。


レパーサ皮下注は2016年1月22日に厚生労働省より製造販売承認を取得しました。
2016年4月20日薬価収載。同21日発売。


レパーサ皮下注の作用機序

レパーサ皮下注はヒトIgG2モノクローナル抗体で、ヒトプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン 9 型(PCSK9)を阻害します。


PCSK9とは、「悪玉」コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールを血中から取り除く肝臓の働きを低下させるタンパク質です。


PCSK9の阻害については別ページで解説していますのでそちらをご覧ください。


抗PCSK9抗体の作用機序(YG研究会)
http://yakuza-14.blogspot.jp/2015/12/pcsk9.html



肝臓には血中のLDLコレステロールを取り込むLDL受容体があります。

LDL受容体が血中LDLコレステロールを下げるはたらきをします。

PCSK9というタンパク質は、このLDL受容体とくっつき、LDL受容体を分解してしまいます。

そのため、肝臓のLDLコレステロールを取り込む機能が低下してしまい血中コレステロールが上昇してしまいます。

レパーサ皮下注はPSCK9にとくっつくことで、PCSK9がLDL受容体を分解するのを阻害します。

肝臓のLDL受容体数が増え、より多くの血中LDLコレステロールを肝臓が取り込める状態にします。

このようにして、血中LDLコレステロールを下げます。



どのような人にレパーサ皮下注は使われるのか

家族性高コレステロール血症や高コレステロール血症の患者さんで、飲み薬(スタチン)が効果の無い人が適応です

特に、冠動脈疾患、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患、糖尿病、慢性腎臓病等、心血管イベントの発現リスクが高いひとに使用されます。

家族性高コレステロール血症とは、LDL受容体やPCSK9の遺伝子異常などにより、高LDLコレステロール血症を呈する優性遺伝の遺伝性疾患です。

若いうちから重篤な動脈硬化を引き起こすため、早期発見・早期治療が重要です。

家族性高コレステロール血症には、ホモ接合体とヘテロ接合体の2つがあります。

ホモ接合体は難病指定されています。

一方、ヘテロ接合体は日本人の500人に1人の割合で罹患している病気です。


家族性高コレステロール血症について(日本動脈硬化学会)
http://www.j-athero.org/specialist/fh_s.html


レパーサの使い方


病院で注射をうってもらう場合と家で自分で注射する場合の二通りあります。

在宅自己注射可能な薬剤としては認められませんでした(2016年4月20日時点)。


家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体及び高コレステロール血症:
140mgを2週間に1回又は420mgを4週間に1回皮下投与する。

家族性高コレステロール血症ホモ接合体:
420mgを4週間に1回皮下投与する。
効果不十分な場合には420mgを2週間に1回皮下投与できる。
なお、LDLアフェレーシスの補助として本剤を使用する場合は、開始用量として420mgを2週間に1回皮下投与することができる。

単独投与での有効性及び安全性は確立していないので、原則、スタチンと併用することになっています。

※在宅自己注射は執筆時点(2016年1月)では、海外の情報です。日本での適応は、2016年4月の薬価収載時に明らかになる予定です。


ホモ型家族性高コレステロール血症患者さん以外に投与する場合は、原則として140mgを2週間に1回投与すること。

レパーサ皮下注はスタチン効果不十分例の一条の光となるのか?


スタチン投与を受けてもまだLDLコレステロールが高い高コレステロール血症患者を対象とした試験(国内第Ⅲ相試験)があります。

アトルバスタチンとレパーサ皮下注を併用したところ、LDLコレステロールが70%近く低下していました。


PCSK9はスタチンを飲み続けると、増えてくるとも言われています。

スタチン治療によりPCSK9の合成が高まり,LDL受容体の分解を促進するためにスタチンの効果を減弱するという、いわゆる「スタチンの弱点」「スタチン6%ルール」と言われるものです。


家族性高コレステロール血症の患者さんは当然のこと、スタチンが効果がなくなってきた心血管リスクの高い高コレステロール血症の患者さんにとって重要な治療選択肢になる薬です。

LAPLACE-2(循環器トライアルデータベース)
http://circ.ebm-library.jp/conferences/acc2014/acc2014_LAPLACE2.html



【2017年4月追記】
2017年3月31日、レパーサとプラルエントの最適使用推進ガイドラインが策定され、保険適用上の留意事項通知が発出されました。以下訂正

平成28年4月19日 使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について(保医発0419 第1号)


① 本製剤の効能・効果は 「家族性高コレステロール血症、 高コレステロール血症。 ただし、心血管イベントの発現リスクが高く、HMG-CoA還元酵素阻害剤で 効果不十分な場合に限る」 であることから、心血管イベントの発現リスクが高く、 HMG-CoA還元酵素阻害剤の最大耐用量を服用しているが、十分な治療効果 が得られていない患者に限り使用すること。 また、本製剤の使用上の注意において、 「本剤投与にあたっては、あらかじめ 高コレステロール血症治療の基本である食事療法を行い、更に運動療法、禁煙、 他の虚血性心疾患のリスクファクター(糖尿病、高血圧症等)の軽減等も十分考慮すること」とされているので、患者に対して必要な治療及び指導を十分に行っ た上で、本製剤の使用を考慮すること。

② 本製剤の使用に当たっては、次の事項を診療報酬明細書の摘要欄に記入すること。

ア 本製剤の使用が必要と判断するに当たって参照したLDL-コレステロールの検査値及び当該検査の実施年月日  
イ 食事療法を行っている旨、及び患者の状況に応じて、運動、喫煙等に関する 指導又は糖尿病、高血圧症等の虚血性心疾患の危険因子に対する治療若しくは指導を行っている旨 
ウ 投与中のHMG-CoA還元酵素阻害剤の成分名及び1日投与量。なお、1 日投与量が最大用量でない場合は、最大耐用量である旨もあわせて記載すること。  
エ 家族性高コレステロール血症以外の患者では、心血管イベントの発現リスクが高いと判断した理由(冠動脈疾患、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患、糖尿病若しくは慢性腎臓病に罹患していること若しくはそのいずれかの既往歴を有すること、又は複数の危険因子が認められること) 。


③ 家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体及び高コレステロール血症の患者における本製剤の使用に当たっては、原則として140mgを2週間に1回投与すること

平成 29 年3月 31 日抗 PCSK9 抗体製剤に係る最適使用推進ガイドラインの策定に伴う留意事項の 一部改正について(保医発 0331第9号)
① 本製剤については、最適使用推進ガイドラインに従い、有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間、本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに、副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件を満たす医療機関で使用するよう十分留意すること。

② 本製剤の効能・効果は「家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症。ただし、心血管イベントの発現リスクが高く、HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分な場合に限る」であることから、心血管イベントの発現リスクが高く、HMG-CoA還元酵素阻害剤の最大耐用量を服用しているが、十分な治療効果が得られていない患者に限り使用すること。また、本製剤の使用上の注意において、「本剤投与にあたっては、あらかじめ高コレステロール血症治療の基本である食事療法を行い、更に運動療法、禁煙、他の虚血性心疾患のリスクファクター(糖尿病、高血圧症等)の軽減等も十分考慮すること」とされているので、患者に対して必要な治療及び指導を十分に行った上で、本製剤の使用を考慮すること。

③ 本製剤の投与開始に当たっては、次の事項を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。本製剤の継続投与に当たっては、投与開始時の情報を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
1)次に掲げる施設のうち、該当するもの(「施設要件ア」又は「施設要件イ」と記載)
ア 医師免許取得後、満6年以上の臨床研修歴を有し、このうち3年以上は循環器診療に関する臨床研修歴を有する医師が所属する施設
イ 医師免許取得後、満6年以上の臨床研修歴を有し、このうち3年以上は動脈硬化学に関する臨床研修歴を有する医師が所属する施設
2)本製剤の使用が必要と判断するに当たって参照したLDL-コレステロールの検査値及び当該検査の実施年月日
3)食事療法を行っている旨、及び患者の状況に応じて、運動、喫煙等に関する指導又は糖尿病、高血圧症等の虚血性心疾患の危険因子に対する治療若しくは指導を行っている旨
4)投与中のHMG-CoA還元酵素阻害剤の成分名及び1日投与量。なお、1日投与量が最大用量でない場合は、最大耐用量である旨もあわせて記載すること。
5)家族性高コレステロール血症以外の患者では、以下の心血管イベントのリスク因子のいずれに該当するか(「リスク因子ア」から「リスク因子オ」までのうち該当するものを記載)。
ア 冠動脈疾患(安定狭心症に対する冠動脈形成術を含む)の既往歴
イ 非心原性脳梗塞の既往歴
ウ 糖尿病
エ 慢性腎臓病
オ 末梢動脈疾患
6)家族性高コレステロール血症以外の患者で、5)の「リスク因子ウ」から「リスク因子オ」までのいずれかに該当する場合、投与中のHMG-CoA還元酵素阻害剤の投与期間

④ 家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体及び高コレステロール血症の患者における本製剤の使用に当たっては、原則として 140mg を2週間に1回投与すること。ただし、重症の家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体患者に対する、利便性の向上による投薬アドヒアランスの向上を目的とした投与である場合、420mg の4週間に1回投与が認められる。

⑤ ①にかかわらず、次の場合においては投与が認められるものとする。
1)平成29年3月31日以前に既に本製剤の投与を受けている患者については、医学薬学的に本製剤の投与が不要となるまでの間は投与が認められるものとする。その際、③を記載できない場合は、従前のとおり次の事項を診療報酬明細書の摘要欄に記載するとともに、投与中である旨(「投与中患者」と記載)及び当該患者に初めて本製剤を投与した年月を記載すること。
ア 本製剤の使用が必要と判断するに当たって参照したLDL-コレステロールの検査値及び当該検査の実施年月日
イ 食事療法を行っている旨、及び患者の状況に応じて、運動、喫煙等に関する指導又は糖尿病、高血圧症等の虚血性心疾患の危険因子に対する治療若しくは指導を行っている旨
ウ 投与中のHMG-CoA還元酵素阻害剤の成分名及び1日投与量。なお、1日投与量が最大用量でない場合は、最大耐用量である旨もあわせて記載すること。
エ 家族性高コレステロール血症以外の患者では、心血管イベントの発現リスクが高いと判断した理由(冠動脈疾患、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患、糖尿病若しくは慢性腎臓病に罹患していること若しくはそのいずれかの既往歴を有すること、又は複数の危険因子が認められること)。
2)平成 29 年3月 31 日以前に本製剤の使用実績がある保険医療機関において、本製剤を初めて投与する必要が生じた患者に対しては、平成 29 年4月 30 日までの間は投与開始が認められ、また、医学薬学的に本製剤の投与が不要となるまでの間は投与が認められるものとする。その際、③を記載できない場合は、従前のとおり⑤1)に掲げる事項を診療報酬明細書の摘要欄に記載するとともに、当該保険医療機関での使用実績がある旨(「使用実績有」と記載)及び当該患者に初めて本製剤を投与した年月を記載すること。


【2017年5月追記】
2017年5月1日エボロクマブ製剤が在宅で保険医が投与可能な薬剤として定められました。
これによりレパーサも在宅での処方が可能となりました。
療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等の一部改正等について(保医発0428第3号平成29年4月28日)
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T170501S0040.pdf

ただし、レパーサ皮下注の自己注射を行っている患者に対して指導管理を行った場合、「在宅自己注射指導管理料」を算定できるのは『レパーサ皮下注140mgペン』だけです。
レパーサ添付文書の使用上の注意において、「自己投与にはレパーサ皮下注140mgペ
ンを用いること。」とされているため、
『レパーサ皮下注140mgシリンジ』については、「在宅自己注射指導管理料」は算定できません。

なお、『レパーサ皮下注140mgペン』は針付注入器一体型のキットなので、在宅自己注射指導管理料を算定する場合において「注入器加算」や「注入器用注射針加算」は算定できません。


レパーサ皮下注140mgシリンジ
レパーサ皮下注140mgペン

[効能・効果]
家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症
ただし、心血管イベントの発現リスクが高く、HMGCoA還元酵素阻害剤で効果不十分な場合に限る。

[用法・用量]
家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体及び高コレステロール血症:
通常、成人にはエボロクマブ(遺伝子組換え)として140mgを2週間に1回又は420mgを4週間に1回皮下投与する。

家族性高コレステロール血症ホモ接合体:
通常、成人にはエボロクマブ(遺伝子組換え)として420mgを4週間に1回皮下投与する。効果不十分な場合には420mgを2週間に1回皮下投与できる。なお、LDLアフェレーシスの補助として本剤を使用する場合は、開始用量として420mgを2週間に1回皮下投与することができる。

2016年1月24日日曜日

エビプロスタット配合錠SG 販売中止と代替品




エビプロスタット配合錠SGが販売を中止するようです。


エビプロスタット配合錠 SG 販売中止のご案内(日本新薬)
http://www.nippon-shinyaku.co.jp/official/medicine/news/20160114_salesstop.pdf


在庫なくなり次第販売を中止するようです(2016年9月頃)。
経過措置期間は2017年3月末までです。



エビプロスタット配合錠SGは前立腺肥大症に伴う排尿困難に対する治療薬としてドイツで開発されました。


1 錠中下記成分を含有します。
  • オオウメガサソウエキス 0.5 mg
  • ハコヤナギエキス 0.5 mg
  • セイヨウオキナグサエキス 0.5 mg
  • スギナエキス 1.5 mg
  • 精製小麦胚芽油 15.0 mg

成分を見て分かるとおり、植物のエキスを配合したお薬です。


副作用が少なく効き方がマイルドなので、軽症の前立腺肥大症に使われます。


また、治療に変化を付けたい時など、他の前立腺肥大症治療薬と併用されることもあります。



なぜ、販売中止なのか

それは、役目を終えたからです。


エビプロスタット配合錠には「SG」の他に「DB」があります。


エビプロスタット配合錠DBは、「SG」の成分を2倍にした薬です。


エビプロスタット配合錠SGは、1日6錠という服用錠数の多さから、服用にあたって抵抗がある点がしばしば指摘されていました。

このような患者や医療現場の声に応え、有効成分を2倍量含有とする「エビプロスタット配合錠DB」が2008年登場しました。


これにより、「SG」から服用錠数が少なくてすむ「DB」へ切り替えが進んできました。



エビプロスタット配合錠SGの代替品

代替品は「エビプロスタット配合錠DB」です。


成分量が2倍なので注意が必要です。


「SG」を飲んでいた用法で飲んでしまうと2倍多く飲んでしまうことになります。


気をつけましょう。





2016年1月23日土曜日

妊婦さんは要注意したい感染症「ジカ熱」



蚊が媒介する感染症で発熱などの症状が現れる「ジカ熱」がブラジルなどの中南米で流行していることから、厚生労働省はこうした地域に渡航する際には蚊に刺されないよう注意を呼びかけています。

NHK NEWSweb 1月22日
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160122/k10010380961000.html


中南米を中心に、ジカ熱の感染が多数報告されています。


ジカ熱はデング熱及びチクングニア熱と同様、蚊を媒介して感染します。また、ジカ熱は感染しても症状がないか、症状が軽いため気付きにくいこともあります。

海外の流行地において、蚊に刺されてから数日後に、軽度の発熱、発疹、結膜炎、筋肉痛、関節痛、倦怠感、頭痛等の症状が見られた場合は、医療機関を受診してください。

海外の流行地へ出かける際は、できるだけ肌を露出せず、虫よけ剤を使用するなど、蚊に刺されないよう注意してください。


ジカ熱について(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000109881.html



2015年の8月以降、ブラジル北東部の州を中心に小頭症児の新生児が急増しており、11月末、ブラジル保健省は妊娠中のジカウイルス感染が胎児の小頭症と関連していることを確認したと発表しました。2016年1月9日現在、ジカ熱に関連した疑い例を含む小頭症児は3530例、死亡例は46例と報告されています。


ブラジルにおけるジカ熱の流行に関する注意喚起(在ブラジル日本大使館)
http://www.br.emb-japan.go.jp/itpr_ja/kaigai_anzen.html




ジカ熱とは、どのような病気ですか?

ジカウイルスが感染することによりおこる感染症で、軽度の発熱、発疹、結膜炎、筋肉痛、関節痛、倦怠感、頭痛などが主な症状です。

妊婦や胎児にジカ熱はどのように影響しますか?
ブラジル保健省は、妊娠中のジカ熱感染と胎児の小頭症に関連がみられるとの発表をしており、 2016 年1月15 日には、米国 CDC が、妊娠中のジカ熱感染に関してより詳細な調査結果が得られるまでは、流行国地域への妊婦の方の渡航を控えるよう警告を発出しました。現在、胎児の小頭症とジカウイルスとの関連についての調査が行われています。

どのようにして感染するのですか?

ウイルスに感染した患者を蚊が吸血すると、蚊の体内でウイルスが増殖し、その蚊が他者を吸血することでウイルスが感染します(蚊媒介性)。感染したヒトから他のヒトに直接感染するような病気ではありません。また、感染して全員が発症するわけではなく、症状がないか、症状が軽いため気付かないこともあります。
妊娠中の女性が感染すると胎児に感染する可能性が指摘されていますが、その感染機序や感染時期はわかっていません。

治療薬はありますか?

ジカウイルスに対する特有の薬は見つかっておりません。対症療法となります。

予防接種はありますか?
ジカ熱に有効なワクチンはありません。

ジカ熱に関するQ&Aについて(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000109899.html



診断方法

特異的な臨床症状・検査所見に乏しいことから、実験室内診断が重要となる。主要な検査方法は遺伝子検査法によるウイルス RNA の検出(血清、尿)である。ジカウイルス特異的 IgM/IgG の ELISA による検出法も報告されているが、デングウイルス IgM との交差反応が認められる症例もあるため、結果の解釈には注意が必要である。また、中和抗体価を測定すればデングウイルス感染とジカウイルス感染は血清学的に鑑別できる。また、急性期と回復期のペア血清での測定が重要である。


ジカウイルス感染症(ジカ熱)のリスクアセスメント 2016年1月20日(国立感染症研究所)
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10906000-Kenkoukyoku-Kekkakukansenshouka/0000109917.pdf


南米に引き続き米国ハワイでもジカ熱が確認されています。


蚊が媒介する感染症で妊婦が感染すると子供が小頭症になると言われてます。


Anthony S.et al,. Zika Virus in the Americas — Yet Another Arbovirus Threat. N Engl J Med. 2016 Jan 13.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26761185



米ハワイで生まれた小頭症の新生児が、蚊が媒介する感染症のジカ熱に感染していたことが18日までに分かった。南米ブラジルではジカ熱が流行し、小頭症の乳児が激増しているが、米国で症例が確認されたのは初めて。小頭症とジカ熱との因果関係が確認されたわけではないが、当局は警戒を呼びかけている。


ハワイで小頭症の新生児、ジカ熱の感染を確認 米国で初(CNNニュース)
http://www.cnn.co.jp/usa/35076344.html



蚊が媒介し、ブラジルでは新生児の小頭症の増加との因果関係も指摘されているジカ熱について、カリブ海の米自治領プエルトリコで初の感染者が出たことが2日までに分かった。衛生当局者が明らかにした。

小頭症との関連疑われるジカ熱、プエルトリコでも感染者(CNN.co.jp)
http://www.cnn.co.jp/world/35075661.html



日本でもジカ熱って診断されたことあるんですか?

あります

これまでに日本で3例が報告。

Kutsuna S et al,. Two cases of Zika fever imported from French Polynesia to Japan, December 2013 to January 2014,Euro Surveill. 2014 Jan 30;19(4).
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24507466




2016年1月20日水曜日

片頭痛治療薬ジヒデルゴット 販売中止




起立性低血圧や、片頭痛の症状を改善する薬のジヒデルゴット錠が販売を中止するようです。


ジヒデルゴット錠1mg 販売中止のご案内(ノバルティスファーマ)
http://product.novartis.co.jp/dhe/st/an_DHE_0113.pdf


2016年5月以降在庫限り販売、処方できるのは2017年3月までのようです。

※後発品も同様に中止です。



販売中止理由

2013年に欧州医薬品庁(EMA)から、麦角誘導体含有医薬品(エルゴタミン製剤)について、適応症によっては線維症や麦角中毒のリスクが懸念されることから、その使用を制限する勧告がなされました。

この勧告より日本国内でも需要が減少したため販売を中止するようです。

医薬品安全性情報Vol.11 No.16 (2013/08/01)
http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly11/16130801.pdf
EMAの医薬品委員会(CHMPA)は,麦角誘導体含有医薬品の使用を制限するよう勧告した。麦角誘導体含有医薬品は今後,血行障害や記憶・感覚障害を伴ういくつかの症状の治療,および片頭痛の予防には使用すべきでない。これらの適応では,リスクがベネフィットを上回るためである。


ジヒデルゴットの代替品

ジヒデルゴットの効能効果は以下の2つです。
  • 片頭痛(血管性頭痛)
  • 起立性低血圧
片頭痛
片頭痛急性期治療に使う薬剤ははエルゴタミン製剤の他にアセトアミノフェン、NSAIDs、トリプタン系、制吐薬があります。

ガイドラインで「有効」として推奨されているのはトリプタン系薬物です。

片頭痛は、理由は不明ですが、脳の中の血管が拡張し過ぎることなどによって起こります。

トリプタンにはこの拡張した血管を元の状態に戻す作用があります。

トリプタンは血管を収縮させるため脳梗塞や狭心症など、血管が収縮すると発作が起きる可能性のある病気を持つ人は、使えません。その他、肝機能が低下している人、重度の高血圧の人や、てんかんがある人なども使用できません。

この場合はNSAIDsやアセトアミノフェンで痛みを抑えます。


起立性低血圧
ガイドラインにおけるエルゴタミンは「有益であるという意見が少ない」に位置づけられていましたが、2012年の改訂版では記載自体がなくなりました。

他に起立性低血圧に使用されるものとしてα刺激薬があります。

  • 塩酸ミドドリン(メトリジン) 4mg/日 分2
  • 塩酸エチレフリン(エホチール) 15~30mg/日 分3

失神の診断・治療ガイドライン(2012年改訂版)



桜皮エキス調達できず ブロチンシロップ販売中止




真っ黒な液体でインパクトある鎮咳去痰薬として、ブロチンシロップ3.3%と濃厚ブロチンコデイン配合シロップがあります。


この2製剤が販売中止となります。


販売中止のご案内(第一三共)
https://www.medicallibrary-dsc.info/announce/other/2016/pdf/1601stop_bro4_brcd2.pdf


経過措置期間満了のご案内(第一三共)
https://www.medicallibrary-dsc.info/announce/other/pdf-data/2017/1702stop_bro4_brcd2.pdf


2016年11月末日をもって中止となるようです。
(経過措置期間2017年3月末日迄)


販売中止の理由

上記案内文書では、販売中止の理由を「諸般の事情」としています。


よくわからないので、MRに聞いてみたところ、原料である桜皮エキスを調達することが難しくなり安定供給できなくなったから、という理由らしいです。



2年ほど前から品薄

濃厚ブロチンコデイン配合シロップは分からないのですが、ブロチンシロップは2013年頃から入手が難しくなっていました。


卸さんに注文しても、すぐには入手できなくて患者さんに迷惑をお掛けしたこともあります。


今では、処方する先生も理解されて他の薬を使われるようになったので影響は限定的なのではないかと思います。



ブロチンシロップの代替品

ブロチンシロップの効能効果
下記疾患に伴う咳嗽及び喀痰喀出困難
急性気管支炎肺炎肺結核

同様の効能効果を持つシロップ製剤には以下があります。


・アスベリンシロップ
下記疾患に伴う咳嗽及び喀痰喀出困難
感冒、上気道炎(咽喉頭炎、鼻カタル)、急性気管支炎、慢性気管支炎、肺炎肺結核、気管支拡張症

・メジコン配合シロップ
下記疾患に伴う咳嗽及び喀痰喀出困難
急性気管支炎,慢性気管支炎,感冒・上気道炎,肺結核,百日咳

・セキコデ配合シロップ
下記疾患に伴う咳嗽および喀痰喀出困難
急性気管支炎,慢性気管支炎,感冒・上気道炎


濃厚ブロチンコデイン配合シロップの代替品

濃厚ブロチンコデイン配合シロップの効能効果
下記疾患に伴う咳嗽及び喀痰喀出困難
急性気管支炎感冒・上気道炎肺結核

同様の効能効果を持つシロップ製剤には以下があります。

・アスベリンシロップ
下記疾患に伴う咳嗽及び喀痰喀出困難
感冒、上気道炎(咽喉頭炎、鼻カタル)、急性気管支炎、慢性気管支炎、肺炎、肺結核、気管支拡張症

・メジコン配合シロップ
下記疾患に伴う咳嗽及び喀痰喀出困難
急性気管支炎,慢性気管支炎,感冒・上気道炎肺結核,百日咳

・セキコデ配合シロップ
下記疾患に伴う咳嗽および喀痰喀出困難
急性気管支炎,慢性気管支炎,感冒・上気道炎


アストミンやフスコデは咳止めの適応はありますが、去痰の適応はありません。



【追記】
ブロチンシロップの後発品である『サリパラ液』(丸石製薬)は製造を継続するようです。

しかし、濃厚ブロチンコデイン配合シロップの後発品である『サリパラ・コデイン液』は販売中止です(経過措置は2018年3月31日まで)。サリパラ液の製造に原材料をあてるためだそうです。

http://www.maruishi-pharm.co.jp/med2/files/item/123/other/news.pdf?1453168255

2016年1月13日水曜日

モクタールの製造中止と代替品





ここ最近、「モクタール」を売ってくれないかと相談があります。

モクタールはありません。


モクタールは以前、吉田製薬が製造していました。


2006年9月販売中止になっています。


既に製造しているメーカーはないのですが、統一名収載として薬価収載されています。
(2016年3月に薬価削除予定)
2017年3月17日に官報に告示され2018年3月31日薬価削除されます。



代替品は
第一三共の「グリテール(脱脂大豆乾留タール)」


しかし、値段が高価なのと、薬価未収載品なので扱いづらいです。




モクタールとは

モクタールの「タール(Tar)」とは有機性の植物および動物を乾留あるいは熱分解することによって得られる褐色ないしは黒色の粘稠性油状物質という意味です。


モクタールは木を乾留することで得られるタール剤なので、「木タール」=「モクタール」 という名となっています。



モクタールは防腐、殺菌および皮膚疾患治療剤として古くから使用されてきました。

日本においては明治24年にモクタールが皮膚疾患の消炎止痒剤として収載され保険適応とされていました。


しかしながら、モクタールを塗った部位の着色と強烈な焦げた臭いがあるために使用時に不快感を伴います。


さらに、薬としての有効性を立証する科学的根拠がないため、使用されなくなりました。



怪しいモクタール


動物の爪の病気に使用したり、害虫よけに使用するものがホームセンター等で売られているようですが、現在、医薬品のモクタールを入手することはできません。



巷には、ネット等でモクタール軟膏がアトピーに効果があるかのように謳い販売されているようですが、医療用モクタールがしようされたものか疑わしいです。気をつけましょう。




ちなみに、モクタールを精製すると皆さんご存知の「正露丸」の成分である、木クレオソートが抽出できます。

木(もく)クレオソートとは(大幸薬品)
http://www.seirogan.co.jp/medical/creosote/what.html



もしかしたら、正露丸がモクタールの代わりに使えるかもしれませんね。


2016年1月12日火曜日

リルテック錠50mgの粉砕可否



リルテック錠は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療に使われるお薬です。

筋萎縮性側索硬化症は、身体を動かすための神経系(運動ニューロン)が変性する病気です。
神経の命令が伝わらなくなって筋肉がだんだん縮み、力がなくなります。


そのため、錠剤を飲み込む力も弱くなります。


粉砕を提案するところなのですが、リルテック錠は粉砕しても問題ないのでしょうか?



リルテック錠はフィルムコート錠です。


フィルムコートされているのには理由が2つあります。


1つは
光により徐々に分解するためです。

遮光するために、製剤は白色PTPが施されています。


2つ目は
局所麻酔作用があり、口のしびれや苦味がでてくるためです。



粉砕することで、フィルムコートが剥がれてしまいます。
粉砕するのであれば、遮光保存が絶対条件です。

また、患者さんにも苦味やしびれがあることを予め伝えておかなくてはなりません。




ちなみに、室温遮光下で5週間含量低下は見られなかったというデータが有ります。

2016年1月6日水曜日

ストメリンDエアロゾルの代替品




ストメリンDエアロゾルの処方せんがきたのですが、どうやら販売中止(経過措置期間2016年3月末)らしく、卸業者さんから入荷することができませんでした。

http://med2.astellas.jp/med/jp/message/keika/keika-20150330060000.pdf


ストメリンDエアロゾルの代替品は何が良いでしょうか。



ストメリンDは喘息の吸入薬です。

これは喘息の発作の時に使う薬で、気管支を広げ、発作を抑えます。




成分としてイソプロテレノール(β2刺激薬)、臭化メチルアトロピン(抗コリン薬)、デキサメタゾン(ステロイド薬)を含んでいる合剤です。




分類としては短時間作用型β2刺激薬です。





短時間作用型β2刺激薬の吸入薬には以下があります。
  • サルタノール
  • メプチン
  • ベロテック
  • アイロミール
これらが代替の候補になります。


また、「喘息予防・管理ガイドライン 2015」にも以下のような記載があり、発作時に使用する薬剤として上記候補薬が推奨されています。

喘鳴/胸苦しさのみから中等度までの喘息症状の出現に際しては、まず短時間作用性β2刺激薬の加圧式定量吸入器(pMDI:サルタノールインヘラー、メプチンエアー、ベロテックエロゾル、アイロミールなど)で1~2パフ(各薬剤の添付文書を参考にする)を吸入し、効果が不十分であれば1時間まで20分おきに吸入を繰り返し、以後は1時間に1回を目安に吸入する。

しかし、ストメリンDは、メプチンなどの短時間作用型β2刺激薬の単剤が効果が芳しく無いとき、ステロイドの効果を狙って選択されるという印象があります。


短時間作用型β2刺激薬の単剤が効果ない場合は、コントロールに使う長時間作用型の薬剤のコンプライアンスの確認や処方変更を考慮されるべきなのですが、その点を呼吸器専門医以外のドクターに説明するのは苦労します。


そこで、
喘息発作のレスキューに使用できるβ2刺激薬とステロイドの合剤の吸入刺激薬を探してみましょう。



この条件に該当するのは

シムビコートです。



シムビコートの成分はホルモテロール(長時間作用型β2刺激薬)とブデソニド(ステロイド)です。



ホルモテロールは長時間作用型に分類されますが、効果発現までに短時間で作用するという特性を持っているので発作でのレスキューとして投与可能なのです。



シムビコートを1日2回投与の定期吸入に加えて頓用吸入する治療法をSMART療法といいます。

SMART療法では、発作発現時に1吸入し、数分経過しても発作が持続する場合には、追加で1吸入することが可能でです。1回の発作発現につき最大は6吸入までとされています。


喘息予防・管理ガイドライン 2015」にも発作時の対応としてSMART療法の追加投与が記載されています。

Kenneth R Chapman, et al.Single maintenance and reliever therapy (SMART) of asthma: a critical appraisal. Thorax (2010). doi:10.1136/thx.2009.128504
http://thorax.bmj.com/content/early/2010/06/26/thx.2009.128504.full


以上から

ストメリンDの代替品は

まず、短時間作用型β2刺激薬

  • サルタノール
  • メプチン
  • ベロテック
  • アイロミール

短時間作用型β2刺激薬でコントロール不良な場合

  • シムビコートでのSMART療法を考慮します。

2016年1月5日火曜日

Sの刻印がある謎の錠剤



ある日、患者さんのお宅に訪問して、残薬等をチェックしていました。


すると、見慣れない白い錠剤が出てきました。


しかも丁寧に1錠ずつ丁寧に一包化してありました。


おくすり手帳を調べてもよくわかりませんし、
患者さんもいつもらったものか、覚えていらっしゃいませんでした。





大きさは8mmくらいでそこそこ大きめでした。

割線はありません。



錠剤識別コード検索

錠剤識別は以前は書籍を使って調べていましたが、最近は便利ですね。

お世話になっている業者さんのホームページから検索できます。


SAFE-DI
https://www.safe-di.jp/data/udata/users/html/manual/use_02_3.html




そこで、

色「白色」、識別コード「S」の刻印がある錠剤を検索しました。


検索した結果でてきたのが
  • セドリーナ錠2mg
  • セロフェン錠50mg
です。


しかし、これらには割線があるのようなのですが

実物には割線はありませんでした。



そのときは、何かよくわからない薬なので、こちらで処分させてもらいました。


そして、この前のお正月、実家に帰省した時に「S」の刻印がある白い錠剤を見つけたのです。

思わず声を上げてしまいました。




それはこれです。




新ビオフェルミンS錠





正体がわかったのはいいのですが、なぜ一包化されていたのか謎です。

OTCがバラされていたらお手上げです。

2016年1月4日月曜日

抗インフルエンザ薬の予防効果はどのくらい




自由診療で抗インフルエンザ薬を予防投与のために処方される患者さんから「どの程度の期間効果が続くのか?」質問を受けることがあります。




とくに受験生(の親)からがよく聞いてきますね。







一回飲めば、1シーズン効いてほしいという期待を胸に聞いてこられるのですが、残念ながらそんなに長く予防効果は持続しないんですよね。




回答を聞いた患者さんの殆どが、がっくりされるか、中にはキレだす人もいます。


抗インフルエンザ薬の予防効果の仕組み



抗インフルエンザ薬のタミフル、リレンザ、イナビルを服用したからといってインフルエンザが体の中に入ってくるのを防ぐことはできません。




抗インフルエンザ薬はインフルエンザが体の中で増えるのを防ぐ薬です。




ウイルスの増殖を抑えている間に体の免疫が、ウイルスをやっつけることで、発症を防ぐ仕組みになっています。




薬を服用しているからといって、寝不足やストレスなど免疫力が落ちるようなことをすると、ウイルスが体の中にいつまでも残り、いつか増殖し発症してしまうでしょう。




抗インフルエンザ薬の予防効果はどのくらい


タミフル
インフルエンザウイルス感染症に対する予防効果は、本剤を連続して服用している期間のみ持続する。(投与期間は10日間まで)


リレンザ
インフルエンザウイルス感染症に対する予防効果は、本剤を連続して使用している期間のみ持続する。(投与期間は10日間まで)


イナビル
本剤の服用開始から10日以降のインフルエンザウイルス感染症に対する予防効果は確認されていない。





抗インフルエンザ薬での予防は、家族や周囲の人間ががインフルエンザにかかった場合、短期的かつ緊急避難的に使用されるべきであり、真の予防にはワクチン接種が望ましいと考えられます。





ゴム手袋のパウダーの正体と安全性







Foot Surgery / ex_magician


パウダー付き医療用手袋は、米国食品医薬品局(FDA)が安全性上のリスク要因になりうる
として流通を差し止める措置をとることを発表したことを受け、日本でも医療機器製造販売業者等に対して、2018年末までにパウダーフリー手袋への切替えを行うよう通知が出されています。

パウダーが付いていない医療用手袋への供給切替えを促します(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000147462.html

【2018.12追記】

ゴム手袋には「パウダーフリー」を謳っている製品が増えてきました。

この「パウダー」とは一体何なのでしょうか。

天然ゴム製の手袋には、着用をスムーズにするため、パウダーが塗布されている場合があります。

このパウダーの正体はコーンスターチ(トウモロコシデンプン)です。

パウダー(コーンスターチ)自体はタンパク質ではありませんのでアレルゲンにはなり得ません。
しかし、パウダーとラテックス抗原は簡単に吸着してしまうので、手指皮膚への接触や、空気中に舞った、ラッテクスを吸着したパウダーを吸入することによりアレルギー反応を引き起こす可能性があります。

また、パウダー自体が手指皮膚の乾燥や摩擦を引き起こし刺激性接触性皮膚炎の原因ともなりえます。

岡田淳子.手袋.感染対策ICTジャーナル Vol.4 No.3 2009. 感染対策vs PPE 個人防護具のセオリーとTPO. ヴァンメディカル.
http://www.vanmedical.co.jp/content/zasshi/k12.htm


イギリスやドイツでは、パウダー付き手術用手袋の使用は禁止されています。

Richard F, William B, Dean K, et al. Dangers of Cornstarch Powder on Medical Gloves -Seeking a Solution-.Annals of Plastic Surgery,63(1):111-115.2009.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19546685


パウダー付き手袋は、着用した後、手袋表面のパウダーを滅菌水で十分に洗い流してから使用する必要があります。

手間やコストがかかるので、パウダーフリーの製品を積極的に選択するのが良いでしょう。