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2015年12月24日木曜日

抗PCSK9抗体の作用機序



体の中のコレステロールを一定に保つしくみ

コレステロールは肝臓で作られます。


肝臓で作られたコレステロールのうち一定の量は肝臓に貯められて、余ったものが血液中に分配されます。


肝臓にとって、コレステロールはとても重要なものなので、肝臓に溜め込んでいるコレステロールの量が減ってくると、血液中からコレステロールを回収します。



この回収に一役買うのがLDL受容体です。


LDL受容体の数が増えれば、肝臓にコレステロールを取り込む量が増えるので、血液中のコレステロールを減らすことができます。


一方、「LDL受容体」の数が減れば、血液中のコレステロールの量が増えてしまいます。



LDL受容体はPCSK9によって分解されてしまう

LDL受容体のはたらきは、PCSK9(proprotein convertase subtilisin/kexin type9:前駆体蛋白質転換酵素サブチリシン・ケキシン9型)によって影響を受けます。



PCSK9はLDL受容体にくっつくと、LDL受容体を分解してしまうのです。





「家族性高コレステロール血症」という難病では、PCSK9の働きが活発で、LDL受容体がうまく機能せず、コレステロールの取り込みがうまくいかないために、生まれつき脂質異常症を患っています。


家族性高コレステロール血症について(日本動脈硬化学会)
http://www.j-athero.org/specialist/fh_s.html



PCSK9のはたらきを邪魔する抗PCSK9抗体

そのような患者さんのために開発が進んでいるのが、抗PCSK9抗体です。


抗PCSK9抗体はPCSK9がLDL受容体にくっつくのを邪魔します。


そうすると、LDL受容体の数が増えていきます。


LDL受容体が血液中のコレステロールを取り込みます。



抗PCSK9抗体ではこのような作用機序でコレステロールを減らすのです。



抗PCSK9抗体の例

  • エボロクマブ、AMG145:レパーサ皮下注(アステラス)
  • alirocumab、SAR236553、REGN727:PRALUENT(サノフィ)
  • Bococizumab、PF-04950615、RN316:未定(ファイザー)
  • LY3015014:未定(リリー)

抗PCSK9抗体はスタチン等の既存の脂質低下薬では効果不十分な例や家族性高コレステロール血症、心血管リスクの高い高コレステロール血症の患者を対象に臨床試験が行われています。



すべて注射剤です。


関連:
高コレステロール血症治療の注射薬 レパーサ皮下注


灌流指標(PI)も測れるパルスオキシメーター MightySatTM(マイティサット)Rx



パルスオキシメータ

生体の状態を観察する上で、酸素がどの程度血液に供給されているかを知ることは大変重要なことです。これを知るための指標が動脈血酸素飽和度です。


肺でガス交換が行われた直後の肺静脈における酸素飽和度は100%ですが、血液が末梢に循環するのにつれて徐々に低下し、指先などでは95~97%程度になります。


パルスオキシメータは、この動脈血酸素飽和度(SpO2)を非観血的かつ連続的に測定できる装置です。


在宅医療に出て行く薬剤師にとって、聴診器とセットで必須アイテムになりつつあります。


パルスオキシメーターの測定原理と課題

パルスオキシメータは、心拍ごとに指先などの末梢組織に送り込まれる動脈血の酸素飽和度を、その血液の色(赤さの程度)から測定するものです。


実際には脈拍ごとの血液中に含まれる酸素をもったヘモグロビン(酸化ヘモグロビン)と、酸素をもたないヘモグロビン(還元ヘモグロビン)との吸光度の比を測定し、間接的に酸化の程度すなわち酸素飽和度を知るという方法によっています。


測定原理上、冷えや圧迫などで血液のめぐりが悪い(末梢循環が悪い)場合は、SpO2が低い値を示すことになります。


末梢循環が悪い状態で測定したデータを使用することは好ましくありません。




「末梢循環が悪い」状態が数値でわかれば便利ですよね?



それを知る方法が実はあるのです。




それは灌流指標(Perfusion Index:PI)です。




PI(%)=拍動性分/非拍動性分×100




PIは0.02~20%の間の値をとり、1%以上が「望ましい」値とされています。




MightySat(マイティサット)Rx

この灌流指標PIも測れるパルスオキシメーターを紹介します。


マシモ社の「MightySatTM(マイティサット)Rx」です。


特徴は、


従来のフィンガータイプのパルスオキシメータでは測定が困難であった「体動の多い患者さん」や「末梢の血流状態が悪い患者さん」に対しても測定可能な点です。


また、PI値が目で見てすぐわかるので、血流状態の良い指で測定したり、PI値が1%以下の時のデータは使用しないなどの対応を取ることで、酸素飽和度の正確性や信頼性も向上させることができます。



少し高いですが、オススメの一台です。



●マイティサット(スタンダードタイプ)・・・
  参考価格 49,800円(税別)
  クラス分類:クラスII 認証番号:227ADBZX00082000
●マイティサットBluetooth機能付き・・・
  参考価格 65,000円(税別)
  クラス分類:クラスII 認証番号:227ADBZX00082000



2015年12月12日土曜日

モーラスとモーラスパップXRのちがい



『モーラス』『モーラステープ』は医師の診断のもとに処方される医療用医薬品です。

【2016.12追記】
2016年12月モーラスパップXRの新規格240mgが薬価収載されました。発売は2017年2月上旬を予定しています。

モーラスパップの改良版としてモーラスパップXRが2015年12月登場しました。

モーラスとモーラスパップXRのちがいをまとめてみました。




1枚に含まれる薬の量(成分量)が違う

モーラスパップXR
 1枚あたり ケトプロフェン2%含有
モーラスパップ
 1枚あたり ケトプロフェン0.3%含有
モーラステープ
 1枚あたり ケトプロフェン2%含有

モーラスパップXRは、モーラスパップより有効成分の濃度が約6倍濃く、テープと同じです。



効能効果が違う

モーラスパップXR
○下記疾患並びに症状の鎮痛・消炎
  腰痛症(筋・筋膜性腰痛症、変形性脊椎症、椎間板症、腰椎捻挫)
  変形性関節症
  肩関節周囲炎
  腱・腱鞘炎
  腱周囲炎
  上腕骨上顆炎(テニス肘等)
  筋肉痛外傷後の腫脹・疼痛
○関節リウマチにおける関節局所の鎮痛


モーラスパップ
○下記疾患並びに症状の鎮痛・消炎
  変形性関節症
  肩関節周囲炎
  腱・腱鞘炎
  腱周囲炎
  上腕骨上顆炎(テニス肘等)
  筋肉痛外傷後の腫脹・疼痛


モーラステープ
○下記疾患並びに症状の鎮痛・消炎
  腰痛症(筋・筋膜性腰痛症、変形性脊椎症、椎間板症、腰椎捻挫)
  変形性関節症
  肩関節周囲炎
  腱・腱鞘炎
  腱周囲炎
  上腕骨上顆炎(テニス肘等)
  筋肉痛外傷後の腫脹・疼痛

○関節リウマチにおける関節局所の鎮痛

モーラスパップXRはモーラスパップにはない腰痛症やリウマチ痛に対する効果が期待できます。


用法・用量がちがう

モーラスパップXR
 1日1回患部に貼付する。
モーラスパップ
 1日2回患部に貼付する。
モーラステープ
 1日1回患部に貼付する。


モーラステープL40mgと同じ

健康成人男子の背部に本剤(モーラスパップXR120mg)及び

標準製剤(ケトプロフェン40mg含有テープ剤)を貼付したとき、角層中ケトプロフェン量は次のとおりでした。



まとめ

モーラスパップはテープ剤よりはがしやすくお年寄りに人気があります。

しかし、モーラスパップは腰痛には使用できない。

1日2回貼り換える必要があるというデメリットが有りました。




このデメリットを改良したのがモーラスパップXRです。



新型ノロウイルスに検査キットは反応するのか



病院でノロウイルスの診断をするためには、「ノロウイルス抗原検査」が行われます。




「ノロウイルス抗原検査」は、ふん便中のノロウイルスを検査キットで検出するもので、3歳未満、65歳以上の方等を対象に健康保険が適用されています。

医療機関で、医師が医学的に必要と認めた場合に行われ、診断の補助に用いられます。




ノロウイルスは最近、GⅡ.P17-GⅡ.17(GⅡ.17型変異株)という新型が流行しています。


新規遺伝子型ノロウイルスGII.P17-GII.17の流行(国立感染症研究所)
http://www.nih.go.jp/niid/ja/norovirus-m/norovirus-iasrs/5903-pr4273.html



この新型ウイルスは検査キットでの反応性が低いという報告があります。




十分なウイルス量があるにもかかわらず陰性となる場合があり、使用に際しては注意が必要と報告されています。

http://www.eurosurveillance.org/images/dynamic/EE/V20N28/USHIJIMA-tab.png


新型ノロウイルス対応検査キットが登場


検査キットのメーカーも努力されています。

ノロウイルスGⅡ.17型に対する反応性を改良した変更品が登場しています。


クイックナビーノロ2(デンカ生研)
http://denka-seiken.jp/jp/content/files/pdf/products/quick-navi_noro2_info_201511-1.pdf


変更品の検出感度は 4.3×10の8乗コピ-/g 便となり、現行品の検出感度 6.9×10の9乗コピー/g 便に比べ GⅡ.P17-GⅡ.17 型に対する感度上昇が確認された。

2015年12月5日土曜日

臭いも気にならず、手にも使えるノロウイルス消毒剤





ノロウイルスはエンベロープがなく、消毒薬に対する抵抗性も比較的強いと考えられているウイルスで、エタノールの消毒効果は十分ではありません。




通常、ノロウイルスの消毒では次亜塩素酸ナトリウムが推奨されています。

ノロウイルスに関するQ&A(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html





次亜塩素酸ナトリウムは、希釈時にキツい塩素臭がしますし使用時にも塩素臭が気になります。

通常の次亜塩素酸ナトリウムは漂白剤として使用されることもあり、色柄物の布に付くと色抜けを起こす原因となります。

次亜塩素酸ナトリウムは水道水で希釈するとその直後から急速に塩素が分解を始めます。

金属イオンの多く含まれる水道水などでは数日間で殺菌効果が半減して殺菌効果が十分期待できず、用時調製しなくてはならず手間がかかります。




以上の理由から、あまり次亜塩素酸ナトリウムは使いたくないですよね?

かわりになるようなものはあるのでしょうか。



弱酸性エタノール消毒剤

近年研究開発されたエタノール系消毒剤の中には、添加物を加えpHを調整して製品化し、ノロウイルスの代替ウイルスであるネコカリシウイルスやマウスノロウイルスの不活化を示しているものが登場しています。


エタノール系消毒剤であれば、次亜塩素酸ナトリウムのようなにおいや脱色など気にすることなく使用できますし、手指の消毒にも使用することができます。



ウエルセプト
丸石製薬
http://www.maruishi-pharm.co.jp/med2/mainproduct-welcept.html


有機酸(乳酸とクエン酸)を一定割合で組み合わせpHを下げ、亜鉛化合物を添加することにより、エタノールの抗微生物効果を引き出す技術で幅広い抗微生物スペクトルを有するのが特徴です。


ウエルセプトには環境除菌用がラインナップされています。

次亜塩素酸には金属腐食性があり使用後拭き取らなければなりませんが、エタノールなので拭きとり要らずです。

http://www.maruishi-pharm.co.jp/public/product/welcept2/index.html


ヴィルキル
吉田製薬
http://www.yoshida-pharm.jp/files/pamphlet/54.pdf

独自の配合(塩化ナトリウム、リン酸、ジイソプロパノールアミン)により幅広い抗微生物スペクトルを有するのが特徴です。

ヴィルキルの性状は適度な粘性をもつため手指に塗り広げやすく、また液ダレしづらいので床を汚しにくい製剤です。


ウィル・ステラV
SARAYA
http://med.saraya.com/products/shodokuscrub/42427.html


リン酸によりpHを低下させノンエンベロープウイルスに対しても効果を得ました。






環境用アルコール除菌剤 ウエルセプト環境除菌用 500ml
丸石製薬株式会社
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2015年11月29日日曜日

エコリシン点眼液の代替品



エコリシン点眼液の販売を中止するそうです。

エコリシン点眼液販売中止のお知らせ(参天製薬)


2017年4月から使用できなくなります。

エコリシン点眼液は、細菌性結膜炎の主要な起炎菌であるブドウ球菌に抗菌作用を示し、グラム陽性菌を主とした抗菌スペクトラムを有するエリスロマイシンラクトビオン酸塩と、グラム陰性菌を主とする抗菌スペクトラムを有し、特に緑膿菌に対して特異的な抗菌作用を示すコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを配合した点眼剤です。

エコリシン点眼液は1970年に登場し、麦粒腫(めばちこ・めいぼ・ものもらい)や結膜炎などに使用されてきました。

最近では、クラミジア・トラコマティス予防及び淋菌感染管理のため新生児出生直後に両目に使用されます。
ビタミンKと同様、ルーチンワークに使用されているお薬です。

日産婦誌60巻 6 号 18.産科感染症の管理と治療



エコリシン点眼液の代替品

同一有効成分の点眼液はありません。

以前までは後発品の「エリコリT」が存在していたのですが、2008年に販売を中止しています。

同一成分でとなるとエコリシン眼軟膏があります。
こちらは継続して販売されるようです。


ただ、眼軟膏は使いにくいですね。


有効成分の1つエリスロマイシンを含有する点眼液はありません。

マクロライド系抗生物質点眼液もありません。


もう1つの有効成分コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含有する点眼液として以下が販売されています。但し、クロラムフェニコールも含有しています。

  • オフサロン点眼液(わかもと製薬)
  • コリナコール点眼液(日本点眼薬研究所)


クロラムフェニコールは大人にはいいですが、子ども、新生児には使いたくない薬です。

他の系統の抗菌点眼液(ニューキノロン系)
クラビット点眼液
タリビッド点眼液


抗菌スペクトル的にもキノロン系が妥当だといえます。

新生児のルーチンにも使用されるようになると思われますが、耐性菌には注意しないといけません。

近年,わが国をはじめとして東アジア地域を中心に淋菌のフルオロキノロン系薬に対する耐性化が大きな問題となってきている。
Y Kagami,et al. Drug-susceptibilities of Neisseria gonorrhoeae strains isolated from male patients with gonococcal urethritis against antimicrobial agents.日本化学療法学会雑誌,53:8(2005)



マクロライド系の点眼薬がなくなってしまうのは非常に残念なことです。
日本の医療は武器を一つ失ってしまったのですから。
今回の販売中止の理由も、一説には採算性の問題から製造できなくなったと聞きます。

今の日本の医療制度ではお薬は2年に一度必ず値段が下がる仕組みになっています。
どんなにいい薬で需要があっても、値段が下げられてしまいます。
そのため、昔に製造された良い薬でもメーカーは採算が取れなくなってしまい造るのをやめてしまうのです。

良い薬を守っていく仕組みを作らなければ今後も必要な薬が姿を消していくでしょう。




2015年11月18日水曜日

ネオラミン・スリービー液がアミノ酸製剤と混合注意の理由



ネオラミン・スリービー液はビタミンB1、B6、B12が配合されたビタミン剤です。

ビタミンB1:チアミンジスルフィド
ビタミンB6:ピリドキシン塩酸塩
ビタミンB12:ヒドロキソコバラミン酢酸塩


輸液などに混合することが多いのですが、

添付文書には
「アミノ酸製剤と混合した場合、ビタミンの分解が促進されることがあるので注意すること。」
と記載されています。


この記載理由は、配合されているビタミンB1のチアミンジスルフィドのためです。


チアミンジスルフィドはジスルフィド結合した2量体です。


輸液などのアミノ酸製剤の安定化剤として添加されている亜硫酸水素ナトリウムは、ジスルフィド結合を切断してしまいます。

そのため、ネオラミン・スリービーとアミノ酸製剤を混合した場合、ビタミンB1の分解が促進されるので注意が必要というわけなのです。


一方、他のビタミンB1、B6、B12配合剤のダイビタミックス注は

ビタミンB1としてジスルフィド結合のないチアミン塩化物塩酸塩が配合されているため、アミノ酸製剤と混合してもビタミンの分解が促進されることはありません。


参考:
ビーフリード®輸液 配合変化表(大塚製薬)



2015年11月16日月曜日

ベンテイビス吸入液 10 μg(イロプロスト) 肺動脈性肺高血圧症治療薬 




ベンテイビス吸入液は、イロプロストの吸入用製剤です。

携帯用ネブライザー(I-neb)を用いて患者自身が簡便に投与可能なプロスタグランジンI2(PGI2)製剤として開発されました。

イロプロストは、PGI2誘導体です。


イロプロストは血管拡張作用及び血小板凝集抑制作用を示すことにより、肺動脈性肺高血圧症の病態を改善することが期待されています。

日本では肺動脈性肺高血圧症の治療に用いるPGI2誘導体としてエポプロステノール(フローラン)やトレプロスチニル(トレプロスト)などが承認されています。

しかし、これら薬剤は持続的な静脈内投与や皮下投与が必要です。

また、注射部位疼痛等の副作用や中心静脈カテーテルに関連する感染症等の合併症等のリスクがあります。

そのため、もっと簡便な薬が患者さんから希望されていました。

そこで、肺動脈性肺高血圧症患者の会である特定非営利法人PAHの会より本剤の開発要望が提出され、厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、厚生労働省から製薬メーカーに対して開発要請がなされました。

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kaihatsuyousei/
平成22年5月21日付医政研発0521第1号、薬食審査発 0521 第1号


世界的にはヨーロッパで2003年9月に「原発性肺高血圧症」、アメリカでは2004年12月に「肺動脈性肺高血圧症」の効能・効果で承認されています。



類薬との比較、切り替え及び使い分け

2013年12月に公表された第5回WHO肺高血圧症ワールドシンポジウムの推奨治療アルゴリズムにおいて、ベンテイビス吸入液は WHO 機能分類クラスIIIの初期治療に対してClassI(Is recommended, Is indicated:使用を推奨)として推奨されています。

そして新たに肺動脈性肺高血圧症治療を行う場合には第一選択薬の一つとして位置付けられています。


WHO 機能分類クラスIVに対してはエポプロステノール(フローラン)が ClassIで推奨されています。


ベンテイビス吸入液は、ERA、PDE-5 阻害薬、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬、トレプロスチニル(トレプロスト)と同様に ClassIIa(Should be considered:使用を考慮)の推奨とされています。


また、併用療法ではベンテイビス吸入液を含むPGI2製剤を他の2系統の肺動脈性肺高血圧症治療薬(ERA 及び PDE-5 阻害薬又は sGC 刺激薬)と組み合わせることが推奨されています。


ベンテイビス吸入液は吸入投与なので、既存の他の PGI2製剤に比べて、全身性の副作用の発現抑制や持続静脈内又は皮下注入に関連する合併症(疼痛、血栓症及び敗血症等)がないといったメリットがあります。


しかし、その一方で咳嗽等の局所刺激症状の発現割合が上昇するといったデメリットがあります。

Galie N et al. The Fifth World Symposium on Pulmonary Hypertension.J Am Coll Cardiol 62: D60–72, 2013

既存のPGI2製剤からの切り替えについては、

移行期間や患者集団を適切に選択することで、既存の PGI2製剤(フローランやトルプロスト)からの切り替えが安全で効果的に実施可能です。

フローランやトルプロストの持続静注又は持続皮下注療法を受け症状が安定した、WHO機能分類クラスII又はIIIの肺動脈性肺高血圧症患者において、治療移行期間を設けてベンテイビス吸入液による吸入療法に切り替えたところ、切替え後 1 年まで 81.1%の患者で悪化することはありませんでした。

さらに78.4%の患者はベンテイビス吸入液による吸入療法が継続することができました。

また、肺動脈性肺高血圧症治療薬であるERA 及び PDE-5 阻害薬を2剤又は3剤併用した患者の方が併用しなかった患者より高い割合でベンテイビス吸入液による吸入療法を長期間継続することができたと報告されています。

Channic RN et al.A multicenter, retrospective study of patients with pulmonary arterial hypertension transitioned from parenteral prostacyclin therapy to inhaled iloprost.Pulm Circ 2: 381-388, 2013
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24015339

第5回WHO肺高血圧症ワールドシンポジウムの推奨治療アルゴリズムでは、特定の薬剤をエビデンスに基づいた第一選択薬として推奨していません。

CHESTガイドライン(2014 年)では、患者の WHO 機能分類、運動耐容能、心エコー、血液データ等を総合的に考慮し、肺動脈性肺高血圧症治療の専門医療施設にて第一選択薬を決めることが望ましいとされています。

各薬剤は有効性が評価された各々の臨床試験での患者背景と同一の背景を有する患者に対して推奨されています。

したがって、実臨床では、各治療薬の有効性及び副作用プロファイル、承認効能・効果及び用法・用量、患者背景、患者の希望等を総合的に考慮した上で、第一選択薬が決定されるものと考えられています。


Taichman DB et al.Pharmacologic therapy for pulmonary arterial hypertension in adults: CHEST guideline and expert panel report. Chest 146: 449-475, 2014

ネブライザーはI-neb(PHILIPS社製)を使いましょう

ネブライザは機種により性能,噴霧特性が異なるのでのベンテイビス吸入液の吸入には、臨床試験で有効性が確立されている『I-neb AAD』ネブライザを使用しましょう。

使用にあたっては、ネブライザの取扱説明書を御覧ください。


他のネブライザーではダメなのか

海外臨床試験ではネブライザーとしてHaloLiteとI-nebが使用されていました。

一般に、吸入薬投与にはエアロゾルの粒子径が重要であると考えられています。


Byron PR.Prediction of drug residence times in regions of the human respiratory tract following aerosol inhalation. J Pharm Sci 75: 433-438, 1986
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3735078


HaloLite 及び I-neb のエアロゾルの特性を比較した結果、HaloLite と I-neb で噴霧量、噴霧速度及び液滴粒子径は類似していました。

したがって、ベンテイビス吸入液の肺局所への到達速度や量はネブライザー間で同程度と推測できます。


また、一般に、3μm未満の粒子径の薬物はほとんどが肺胞に到達すると考えられています。

HaloLite、I-neb のエアロゾルの平均液滴粒子径はそれぞれ 1.4 及び 2.1 μm でした。

HaloLite 及びI-neb を用いて吸入投与された本薬のほとんどが肺胞に到達すると考えられます。

さらに、HaloLite 及びI-neb を用いて吸入投与した試験において、AUC はそれぞれ 52.6±36.5 及び 47.7±13.4 ng·h/mL であり、ネブライザー間で同程度でした。


以上より、HaloLite と I-neb では互換可能であると考えられます。


この2機種以外のネブライザーでは使用しないほうが良いでしょう。


吸入時の注意

吸入ごとに新しいアンプル全量を使用直前にネブライザに移します。

4~10分かけて吸入します。

吸入後ネブライザ内に残った液は捨てます。

ベンテイビス吸入液を希釈したり他剤と混合してはいけません。



平成28年4月19日 使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について(保医発0419 第1号)

① 本製剤はプロスタグランジンI2製剤であり、在宅において、携帯型精密ネブライザーを用いて本製剤を投与している患者に対して指導管理等を行った場合は、 医科点数表区分番号「C111」の在宅肺高血圧症患者指導管理料を算定できるものであること。

② 本製剤を肺高血圧症の患者であって入院中の患者以外のものに対して、携帯型精密ネブライザーを使用して投与した場合は、医科点数表「C168-2」携帯型精密ネブライザー加算を算定できるものであること。



C168-2 携帯型精密ネブライザー加算

肺高血圧症の患者であって入院中の患者以外のものに対して、携帯型精密ネブライザーを使用した場合に、第1款の所定点数に加算する。

通知
(1) 本加算は、吸入用のプロスタグランジンI2製剤を使用するに当たり、一定量の薬液を効率的に吸入させるため、患者の呼吸に同調して薬液を噴霧する機構を備えた携帯型精密ネブライザーを使用した場合に算定する。 
(2) 携帯型精密ネブライザー加算には、携帯型精密ネブライザーを使用するに当たって必要な全ての費用が含まれ、別に算定できない。



ベンテイビス吸入液 10 μg
[効能・効果]
肺動脈性肺高血圧症
[用法・用量]
通常,成人にはイロプロストとして初回は 1 回2.5㎍をネブライザを用いて吸入し,忍容性を確認した上で 2 回目以降は 1 回5.0㎍に増量して 1 日 6 ~ 9 回吸入する. 1 回5.0㎍に忍容性がない場合には, 1 回2.5㎍に減量する.

2015年11月2日月曜日

エクアとメトホルミンの配合剤 エクメット配合錠LD/HD



エクメット配合錠は、DPP-4阻害薬であるビルダグリプチン(エクア錠)とビグアナイド系薬剤であるメトホルミン塩酸塩との配合剤です。

エクアは、グルコースなどの栄養素の摂取に伴い消化管から血中に分泌されるインクレチンの分解酵素であるDPP-4 を阻害することにより、内因性イングレチンの濃度を高めることで血糖依存性にインスリン分泌を促進させ血糖降下作用を示します。

さらに、グルカゴンの分泌を抑制し血糖降下作用を示します。

一方、メトホルミン塩酸塩は、肝の糖産生及び消化管からの糖吸収を抑制し、末梢組織のインスリン感受性及びグルコース消費を増加させインスリン抵抗性を改善することによって血糖降下作用を示します。


このように、エクメット配合剤は異なる作用機序を有する成分を含んでいます。

エクメット配合剤を用いることでインスリン分泌不全とインスリン抵抗性の両要因を改善することが可能となります。


また、エクアとメトホルミン塩酸塩併用時には両剤が相加的に血中 GLP-1 濃度を上げる作用があると考えられ、これらの薬剤での併用療法は各薬剤の単独療法を上回る血糖降下作用が期待できます。

エクアの GLP-1 を介したインスリン分泌促進作用は血糖依存性であることと、メトホルミン塩酸塩の血糖改善効果はインスリン分泌促進を介さないことから、これら薬剤の併用は低血糖の発現リスクが低い組合せと考えられます。

なお、ビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩の配合剤は、2015年6月現在、120の国と地域で承認されているワールドスタンダードな薬剤です。



配合剤による患者さんのメリット


2型糖尿病患者の薬物療法では、アドヒアランスの向上が血糖コントロール改善の要因の一つとなることが報告されています。
Schernthaner G,Fixed-dose combination therapies in the management of hyperglycaemia in Type 2 diabetes: an opportunity to improve adherence and patient care. Diabet Med, 2010; 27(7): 739-43

Guillausseau PJ,Influence of oral antidiabetic drugs compliance on metabolic control in type 2 diabetes. A survey in general practice. Diabetes Metab, 2003; 29(1): 79-81

アドヒアランスを低下させる要因としては、単独療法から併用療法に移行する際の薬剤の種類と錠数の増加及び投与回数の増加が挙げられます。
Thayer S, et al.,Adherence to a fixed-dose combination of rosiglitazone/glimepiride in subjects switching from monotherapy or dual therapy with a thiazolidinedione and/or a sulfonylurea. Ann Pharmacother, 2010; 44(5): 791-9

Dailey G, et al.,Patient compliance and persistence with antihyperglycemic drug regimens: evaluation of a medicaid patient population with type 2 diabetes mellitus. Clin Ther, 2001; 23(8): 1311-20

Hutchins V, et al.,A systematic review of adherence, treatment satisfaction and costs, in fixed-dose combination regimens in type 2 diabetes. Curr Med Res Opin,2011; 27(6): 1157-68


エクメット配合剤の使用により、薬剤の種類及び錠数の増加を回避することができます。

治療効果とアドヒアランスを併用療法と配合剤との間で比較したメタアナリシスでは、併用療法の患者よりも配合剤治療の患者で HbA1c は低く、また、前治療の内容(単独療法又は併用療法)に関わらず併用療法の患者よりも配合剤治療の患者でアドヒアランスは有意に高かったという結果でした。
Han S, et al.,Glycemic effectiveness and medication adherence with fixed-dose combination or coadministered dual therapy of antihyperglycemic regimens: a meta-analysis. Curr Med Res Opin, 2012; 28(6): 969-77

また、DPP-4阻害薬とメトホルミンの配合剤治療を受けている患者の方が、それぞれの単剤で併用療法を受けている患者よりも血糖コントロールが良好で、治療満足度が高いという調査報告もあります。
Benford M, et al.,Fixed-dose combination antidiabetic therapy: real-world factors associated with prescribing choices and relationship with patient satisfaction and compliance. Adv Ther, 2012; 29(1): 26-40



オルメテックとエクメット配合錠の一包化

オルメテックとメトホルミンを一包化すると変色することが知られています。

メーカーの営業の方からの情報によると、エクメットと配合錠とオルメテックは一包化しても色調変化はみられないと回答を得ました。

理由はよくわからないですが、エクアを配合することで色調変化を防げるようになったとか。
(本当かどうかは発売されて実際試してみたいと思います)




エクメット配合錠

[効能・効果]
2 型糖尿病
ただし、ビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩の併用による治療が適切と判断される場合に限る。

[用法・用量] 
通常、成人には 1 回 1 錠(ビルダグリプチン/メトホルミン塩酸塩として 50mg/250 mg 又は 50 mg/500 mg)を 1 日 2 回朝、夕に経口投与する。


ダニ抗原減感作療法剤 アシテアとミティキュアの比較




2015年2つのダニ抗原減感作療法用の舌下錠が発売されます。
  • アシテアダニ舌下錠
  • ミティキュアダニ舌下錠


承認日が違う

アシテアダニ舌下錠
2015年3月

ミティキュアダニ舌下錠
2015年8月


禁忌と慎重投与の比較

本剤によるショックの既往のある患者さん及び重症の気管支喘息の患者さんには両薬剤とも投与できません。

「悪性腫瘍、又は免疫系に影響を及ぼす全身性疾患患(自己免疫疾患,免疫複合体疾患,又は免疫不全症等)」のある患者さんについては、アシテアは禁忌とされていますが、ミティキュアは慎重投与に設定されています。


効能又は効果

アシテア、ミティキュアとも同じです。

ダニ抗原によるアレルギー性鼻炎に対する減感作療法

あくまで鼻炎に対するものなのでアトピー性皮膚炎やほかのアレルギーに対しての効果は不明です。


治療に使用されるアレルゲンの量が違う

使用されているアレルゲンはコナヒョウヒダニから抽出したエキスとヤケヒョウヒダニから抽出したエキスで両薬剤共通です。

ダニ舌下錠に含有されているダニの量はアレルギー患者の皮膚試験に基づき設定されたアレルゲン活性単位で表されています。

アシテアは国際単位で表記され、100 単位(IR)と300単位の2製剤があります。

ミティキュアは日本アレルギー学会により設定された国内のアレルゲン活性単位(JAU)で表記され、3300単位(JAU)と10000単位(JAU)の2製剤があります。

2つの基準の単位があり、わかりにくいので、アシテアを(JAU)表記に換算すると以下のようになります。

アシテアダニ舌下錠 100 単位(IR)は 19000JAU に相当
アシテアダニ舌下錠 300 単位(IR)は 57000JAU に相当

治療に用いるアレルゲン活性の多寡が治療に与える影響についてはよくわかっていません。


用法・用量

アシテア
通常,成人及び 12 歳以上の小児には,1 回 100 単位(IR)を1日1回舌下投与から開始し,1 回投与量は 100 単位(IR)ずつ,300 単位(IR)まで増量する。なお,漸増期間は,原則として 3 日間とするが,患者の状態に応じて適宜延長する。舌下投与後は完全に溶解するまで保持した後,飲み込む。その後 5 分間は,うがいや飲食を控える。

ミティキュア
通常、成人及び12 歳以上の小児には、投与開始後1週間は、ミティキュアダニ舌下錠3,300JAUを1 日1 回1 錠、投与2 週目以降は、ミティキュアダニ舌下錠10,000JAUを1 日1 回1 錠、舌下にて1 分間保持した後、飲み込む。その後5 分間は、うがいや飲食を控える。

アシテアは3日間で100単位(IR)ずつ増量していき、3日目から維持量となるのに対し、ミティキュアは7日目までは3300JAUと投与し8日目から維持量を投与します。

つまり、維持量までの期間が異なっています。

また、アシテアは舌下に完全に溶けるまで保持しなければなりません。

一方、ミティキュアは「1分間保持する」という時間制限があります。


副作用はほぼ同じ

アシテア
咽喉刺激感 21.0%,口腔浮腫 20.0%,口腔そう痒感 18.3%,耳そう痒感 10.4%

ミティキュア
口腔浮腫 16.9%、口腔そう痒症 14.5%、咽喉刺激感 12.9%、咽頭不快感 10.7%、口腔内不快感 10.2%、口の錯感覚 9.6%、耳そう痒症 7.0%


処方できる医師に制限があります

舌下免疫療法はアナフィラキシー等の副作用発現の可能性があることから、適正使用のために、処方・使用は、緊急時対応が可能な医療機関において、薬剤に対する十分な知識と減感作療法に関する十分な知識・経験を持ち、使用する薬剤のリスク等について十分に管理・説明できる医師によってのみ行われなければいけません。

処方する医師は事前に関連学会主催等の「舌下免疫療法講習」を受講し、その後、使用薬剤の「適正使用eラーニング」の受講、及び使用薬剤の「適正使用eテスト」の合格を経て、「登録医師」となる必要があります。

また、薬局では調剤前には薬剤師により、処方医師が「登録医師」であることが確認できなければ調剤することができません。

これらは、両薬剤とも共通です。


舌下投与による減感作療法(アレルゲン免疫療法)薬処方のためのアレルゲン免疫療法(減感作療法)eラーニング/eテストについて

週1回服用の糖尿病治療薬 オマリグリプチン(マリゼブ錠)



マリゼブ錠はDPP4阻害薬であるオマリグリプチンを有効成分とする錠剤です。

週 1 回投与が可能な薬剤として開発されました。

2015年8月時点では、マリゼブ錠は日本でのみの承認で海外では承認されていません。

また日本においてはトレラグリプチンコハク酸塩(ザファテック錠)が週 1回投与製剤として既に承認されています。



作用時間の長さの秘密


オマグリプチンは肝代謝を受けません。

また、体内の組織分布が広いため低濃度で作用します。

オマグリプチンは腎排泄型の薬剤です。

オマグリプチンは腎尿細管で再吸収され、リサイクルされるので効果が長続きするのです。


日本人健康成人男性に、マリゼブ錠5~100mg を単回経口投与し、血漿中 DPP-4 阻害率を検討したところ、25mg 以上の用量で、投与 168 時間後の DPP-4 活性をベースラインから 80%以上阻害したことでDPP-4 阻害効果の持続性が示されました。

また、25mg 単回投与 168 時間後の血漿中 DPP-4 活性阻害率は 86.0%もありました。


マリゼブ錠を飲み忘れたら

飲み忘れを防ぐために、決められた曜日に服用するようにします。

万が一飲み忘れてしまっても、DPP-4 活性阻害率は高めに推移しているので気づいた時点で服用すれば問題ありません。

その後は、決められた曜日に飲み直せば大丈夫です。

但し、同じ日に2錠飲むことはしないようにしましょう。


マリゼブ錠を間違えて2日連続で飲んでしまった

(例:毎週月曜日に飲む予定のものを、月曜と火曜続けて飲んでしまった)

心配はいりません。

次の曜日に飲む予定だったものを1回飛ばしてください。
(次の月曜日は飲まず、再来週の月曜日から再開します)

治験の段階でも誤って連日投与されてしまった例はあり、その場合においても過量投与に関連すると考えられる低血糖症及び副作用の発現は認められませんでした。

また他の臨床試験において、臨床用量を超える高用量投与時において、安全性及び忍容性が確認されています。

また、予定の曜日よりも早く飲んでしまった場合も上と同じです。



透析患者さんにも使えます

腎排泄型の薬物なのですが、に重度腎機能障害がある患者さん、血液透析又は腹膜透析を要する末期腎不全患者さんには適切な用量調節を行うことで使用することができます。

オマリグリプチンは血液透析により除去されにくい薬物です。

オマリグリプチン 3mg 投与 2時間後に血液透析した際の平均透析液中回収量(0.433mg)は、血液透析直後にオマリグリプチン 3mg を投与し、投与 72 時間後に血液透析した際の値(0.153mg)と比べ、わずかに増加した程度でした。

末期腎不全被験者の血漿及び透析液に基づいた透析クリアランスは類似しており、平均値は約 84~106mL/min でした。

このため、末期腎不全患者に対して、オマリグリプチンは血液透析との時間関係は問わず投与可能となっています。



マリゼブ錠12.5mg
マリゼブ錠25mg

[効能・効果] 
2 型糖尿病

[用法・用量]
通常、成人にはオマリグリプチンとして 25 mg を 1 週間に 1 回経口投与する。




高リン血症改善薬 スクロオキシ水酸化鉄(ピートルチュアブル錠)



スクロオキシ水酸化鉄(ピートルチュアブル錠)は、酸化水酸化鉄(III)/スクロース/デンプンから成るカルシウムを含まないリン吸着薬です。


作用機序

消化管内で、食物由来のリン酸イオンと本薬中の酸化水酸化鉄(III)が結合し、消化管からのリンの吸収を抑制します。

ピートルチュアブル錠 インタビューフォームより


高リン血症

血清リン濃度は、主に消化管からの吸収、骨からの遊離、骨への取込み及び腎臓から尿中への排泄により調節されています。

しかし、慢性腎不全患者では腎機能低下によりリン排泄が低下し、高リン血症を発症してしまいます。

慢性腎不全に伴う高リン血症は、カルシウム・リンの上昇を招き、軟部組織(血管壁、心臓弁膜、関節周囲等)にリン酸カルシウムが沈着し、異所性石灰化を引き起こす原因となります。

また、慢性腎不全患者では腎臓におけるビタミンD活性化が障害されており、消化管からのカルシウム吸収低下により低カルシウム血症が生じ、副甲状腺ホルモンの分泌が亢進し、二次性副甲状腺機能亢進症が誘発されます。

二次性副甲状腺機能亢進症では骨ミネラル代謝異常を生じており、高回転型骨病変や心不全等の心血管系疾患との関連が示唆されています。

エビデンスに基づく CKD 診療ガイドライン 2013(日本腎臓学会編、東京医学社、2013 年)
http://www.jsn.or.jp/guideline/ckdevidence2013.php

このような背景から、日本では2012年に一般社団法人 日本透析医学会より「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン」が発出され、CKD 患者では、さまざまな骨ミネラルの代謝異常が発現しているが、特に透析患者では高リン血症は生命予後と関連し、血清リン濃度の管理は重要とされています。

ガイドラインでは透析患者における血清リン濃度、補正血清カルシウム濃度、血清 intact PTH 濃度の管理目標値が示され、血清リン濃度の管理目標値は 3.5~6.0mg/dL と設定されています。

日本透析医学会ガイドライン
透析会誌 45: 301-356, 2012



既存の高リン血症治療薬の問題点

現在、透析患者における高リン血症の治療では、食事指導によるリン摂取制限、透析によるリンの除去に加え、消化管からのリン吸収を抑制する経口リン吸着薬の投与が行われています。

既存経口リン吸着薬としては、沈降炭酸カルシウム、セベラマー塩酸塩、ビキサロマー、炭酸ランタン水和物及びクエン酸第二鉄水和物が用いられています。

それぞれの薬剤の特性により、高カルシウム血症、胃腸障害(便秘、腹部膨満等)、長期投与時における希少金属の組織蓄積の懸念等の問題点があります。

沈降炭酸カルシウムは、カルシウム負荷による高カルシウム血症に注意が必要で、日本では投与量は 3g/日を上限とすることが妥当とされています。

そのため沈降炭酸カルシウム単剤では血清リン濃度を管理するための十分量を投与できない場合があります。

セベラマーはカルシウム非含有リン吸着薬ですが、便秘、腹部膨満等の消化器系の副作用が高頻度に認められ、便秘のある患者では腸閉塞や腸管穿孔のおそれもあります。

また、セベラマーの投与量は 3~9g/日(服薬錠数 12~36 錠/日)であり、患者さんにとって服薬する錠数が多いのはかなりの負担となります。

ビキサロマーはセベラマーと比較して便秘、腹部膨満等の消化器系の副作用が軽減されてはいますが、投与量は 1,500~7,500mg/日(服薬カプセル数 6~30 カプセル/日)でセベラマーと同様に服薬の数の面で負担があります。

炭酸ランタン水和物は便秘の副作用は少ないものの、嘔吐及び悪心の発現が他のリン吸着薬と比較して多く、また長期投与によるランタンの骨及び他の臓器への蓄積とその影響は明らかではありません。

透析患者は他にも服薬する薬剤数量が多く、リン吸着薬の服薬錠数の負担の増大は服薬アドヒアランスの低下と血清リン濃度の上昇を引き起こすと報告されています。

Arenas MD et al., Challenge of phosphorus control in hemodialysis patients: a problem of adherence?J Nephrol. 2010 Sep-Oct;23(5):525-34.


ピートルチュアブル錠はカルシウムを含有しないため、投薬によるカルシウム負荷がありません。

また、非ポリマー性なので、ポリマー性の経口リン吸着薬(セベラマー塩酸塩及びビキサロマー)で認められる便秘や腸閉塞・腸管穿孔等の重篤な胃腸障害の発現リスクが低いと考えられています。

さらに、生体内必須金属元素である鉄を主成分としており、炭酸ランタン水和物で危惧される、生体内非必須金属元素であるランタンの長期投与に伴う骨への蓄積のような懸念は少ないと考えられます。

そのため、ピートルチュアブル錠は安全性上の懸念が少ないリン吸着薬と言えるでしょう。

またピートルチュアブル錠は、80%以上の被験者で服薬錠数が 1 回 1 錠(250mg 錠又は 500mg 錠)であり、既存の高リン血症治療薬と比較して少ない錠数で血清リン濃度低下効果を示しています。



既存の高リン血症治療薬とのリン吸着作用の比較

スクロオキシ水酸化鉄,セベラマー塩酸塩,炭酸ランタン水和物及び沈降炭酸カルシウムのリン吸着能を比較検討したデータが有ります。

この試験は臨床での効果を推測するため、消化管内の条件を模したpH3.0,5.5及び8.0にてリン吸着能を評価し、1000mgのリン酸の吸着に必要なリン吸着薬の量を求めたものです。

吸着能が高いほど少ない量ですみます。

セベラマーやスクロオキシ水酸化鉄はどの環境においても高いリン吸着作用を示したのに対し、炭酸ランタンや沈降炭酸カルシウムは環境のpHによってりん吸着能が左右されるのがわかります。

ピートルチュアブル錠 インタビューフォームより



既存の高リン血症治療薬との併用について

CKD における高リン血症の血清リン濃度管理は単剤では困難な場合があり、臨床現場ではピートルチュアブル錠と他の高リン血症治療薬が併用されることも想定されます。

沈降炭酸カルシウムについては、血液透析患者を対象としたピートルチュアブル錠との炭酸カルシウム併用試験が行われています。

その結果では併用時の安全性及び有効性に特段の問題は認められませんでした。

しかし、その他の高リン血症治療薬について併用した臨床試験成績はありません。

そのため、ピートルチュアブル錠の有効成分に含まれる鉄と既存の経口リン吸着薬の相互作用について公表資料を参考に検討されています。


有効性について、セベラマーは、微量金属元素への吸着性を in vitro 試験で検討した結果、2価及び 3 価の鉄への吸着性は示されていません。

また、米国の添付文書においても、無水硫酸鉄の薬物動態に影響を及ぼさないことが記載されています。

ビキサロマーは、陽イオンの吸着作用を in vitro 試験で検討した結果、2 価及び 3 価の鉄を含めたいずれの陽イオンもほとんど吸着しませんでした。

炭酸ランタン水和物及びクエン酸第二鉄水和物に含まれるランタン及び鉄は陽イオンであるため、ピートルチュアブル錠の有効成分に含まれる鉄と結合する可能性は低いと考えられます。

以上より、ピートルチュアブル錠の有効成分に含まれる鉄により既存の経口リン吸着薬の有効性が減弱する可能性は低いと推察されます。

しかし沈降炭酸カルシウム以外の既存の経口リン吸着薬の相互作用について直接検討した情報はないので、併用時には定期的に血清リン濃度、血清カルシウム濃度及び血清 intact PTH 濃度を測定しながら投与する必要があります。


安全性については、ポリマー製剤であるセベラマー及びビキサロマーは、水分を吸収し腸内で膨潤することにより腸管内容物の通過障害を来すおそれがあることから、便秘を発現・悪化させます。

あるいは腸管の虚血状態を悪化させ、腸管穿孔及び腸閉塞を引き起こす可能性があると考えられます。

炭酸ランタン水和物は、便秘の副作用は少ないものの、嘔吐及び悪心の発現が他のリン吸着薬に比べて高いことが報告されています。

ピートルチュアブル錠で認められている主な副作用は「軟便」及び「下痢」です。

これらの経口リン吸着薬とピートルチュアブル錠との併用時には、それぞれの薬剤に特徴的な副作用が発現する可能性があります。

クエン酸第二鉄水和物は有効成分に鉄を含有しており、主な副作用は、下痢、便秘、腹部不快感等の胃腸障害です。

さらに、クエン酸第二鉄水和物は鉄を含むことから鉄過剰や Hb の過度の増加が懸念されます。

クエン酸第二鉄水和物とピートルチュアブル錠の特徴的な副作用がいずれも下痢であることから、両剤を併用した場合は下痢の発現頻度が増加する可能性があります。

また、ピートルチュアブル錠においても血清フェリチン、トランスフェリン飽和度及び Hb の値が上昇する傾向があるので、クエン酸第二鉄水和物との併用により、血清フェリチン、トランスフェリン飽和度及び Hb が相加的に上昇する可能性は否定できません。



ピートルチュアブル錠

[効能・効果]
透析中の慢性腎臓病患者における高リン血症の改善

[用法・用量]
通常、成人には、鉄として 1 回 250mg を開始用量とし、1 日 3 回食直前に経口投与する。以後、症状、血清リン濃度の程度により適宜増減するが、最高用量は 1 日 3000mg とする。



C型肝炎治療薬 ヴィキラックス配合錠 疑問解決



ヴィキラックス配合錠は、オムビタスビル水和物、パリタプレビル水和物 及びリトナビルを有効成分として含有するC型肝炎治療薬です。

オムビタスビルとパリタプレビルはC型肝炎ウイルスが体内で増殖するために必要なHCVNS5AとNS3/4Aプロテアーゼという酵素をそれぞれ阻害することにより C型肝炎ウイルスの増殖を抑制します。

リトナビルは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)プロテアーゼの阻害剤です。

日本では、HIV感染症治療薬、つまりエイズの治療薬として使われているお薬です。


なぜ、エイズの治療薬がC型肝炎治療に使われるのでしょうか?


リトナビル自体にはC型肝炎ウイルスを退治する効果はありません。

リトナビルはヒトシトクロムP450(CYP)アイソザイムであるCYP3A阻害作用を持っています。

そのため、主にCYP3Aで代謝される他の薬の血中濃度を上昇させることがあります。


ヴィキラックス配合錠においては、この作用を利用しています。

CYP3Aで代謝されやすいパリタプレビルの血中濃度の上昇を目的として、リトナビルが配合されています。



C型肝炎ウイルス感染者は、世界で約1億7000万人、日本では150万〜200万人いると推定されています。

そしてそのうち約70%がgenotype 1 といわれています。

2015年時点、日本におけるC型慢性肝炎患者(genotype 1) に対する治療薬として、 インターフェロン製剤、リバビリン、NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤であるテラプレビル、シメプレビルナトリウム、アスナプレビル及びバニプレビル、NS5A阻害剤であるダグラタスビル塩酸塩、NS5Bポリメラーゼ阻害剤であるゾホスプビルの各単剤、並びにソホスブビルとNS5A阻害剤であるレジパスビルアセトン付加物の配合剤が承認されています。

ヴィキラックス配合錠は日本で2015年8月に承認され、2015年12月以降に発売される予定です。

なお、海外では米国AbbVie Inc.により本剤の開発が進められ、「テクニヴィ(Technivie)」の名前で36カ国で承認されています。

また、ヴィキラックス配合錠とNS5B阻害剤である Dasabuvir又はリバビリンとの併用レジメンが平成27年6月時点で米国及び欧州を含め49カ国で承認されています。



ヴィキラックス投与前にはセログループ(ジェノタイプ)の検査をする必要はあるのでしょうか?

治療前にセログループ(ジェノタイプ)を確認する必要があります。

■ヴィキラックス効能効果
セログループ 1 (ジェノタイプ 1 )のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善

治療前にセログループを確認してください。

また、肝予備能、臨床症状等により非代償性肝硬変でないことを確認してください。


ヴィキラックスと食事の影響

食後に服用するようにしましょう。

空腹時の服用に比べ、食後の服用がヴィキラックスのバイオアベイラビリティを良好に保つことが知られています。

なお、食事のカロリーや脂肪含有量は吸収に影響を及ぼしません。


ヴィキラックスを飲み忘れてしまったら

服用し忘れた場合12時間以内であれば、1回量(2錠)をなるべく空腹を避けて服用しましょう。

本来飲む時間から12時間経過して気づいた場合は、その日は服用せず、翌日から通常通り1回量(2錠)を服用してください。


ヴィキラックスの粉砕、簡易懸濁の可否

ヴィキラックス配合錠は粉砕、簡易懸濁はできません。

錠剤に特殊な処理を施し有効成分を錠剤中に分散(非晶質固体分散体)させているからです。

また、粉砕や溶解等による物理学的変化が、有効性、安全性、吸収等の薬物動態に与える影響について検討されていません。


ヴィキラックスとの併用に注意が必要な薬剤

添付文書をみると併用禁忌及び併用注意に設定されている薬が多いことに気づくと思います。

併用禁忌については以下の基準で設定されています。

  1. 本剤が併用薬剤の血中濃度を大幅に上昇させ,重篤な副作用を発現するおそれのある薬剤
  2. 本剤が併用薬剤による代謝誘導を受け,本剤の治療効果が減弱するおそれのある薬剤
  3. 臨床試験において副作用の報告があるもの

併用してはいけない薬には、カルブロックやリピトールなど生活習慣病治療によく使われる薬も該当しているので注意が必要です。






カルシウム拮抗剤との併用による末梢性浮腫(むくみ)に注意

降圧剤として使用されるカルシウム拮抗剤とヴィキラックスを併用するとリトナビルのCYP3A4阻害作用によりカルシウム拮抗剤の血中濃度が上昇する恐れがあります。

カルシウム拮抗剤は、末梢静脈よりも末梢動脈に対して強く血管拡張作用を示します。

そのため静脈と動脈との間にアンバランスが生じます。末梢動脈が拡張するのに末梢静脈拡張しないとういう状態です。

これにより毛細血管圧が上昇して血液の流れが悪くなるため、血液成分が血管外に漏れだし浮腫を生じるのです。


【追記】
アッヴィC型肝炎治療薬、FDAが医薬品表示の変更指示-患者死亡で
2015/10/23 10:24 JST (ブルームバーグ)

FDAは22日の発表資料で、「ヴィキラ・パック」もしくは「テクニヴィ」を服用している患者で肝疾患が悪化する兆しがないか医師は監視すべきだと警告した。








2015年10月14日水曜日

ベンジルアルコール含有注射剤




2015年10月13日、厚生労働省医薬・生活衛生局安全対策課は都道府県に向け課長通知(薬生安発1013第1号)を出し、注射剤に添加剤としてベンジルアルコールが含有されているかどうかを確認するよう指示しました。


さらに新生児に使用される可能性がある場合は、添付文書の改訂を求めました。


通知では、ベンジルアルコールを含有する注射剤で、新生児に使用される可能性があり、注意喚起が行われていない場合は、添付文書の「小児等への投与」の項に「低出生体重児、新生児に使用する場合には十分注意すること」などと記載するよう求めました。


ただし、その医薬品が新生児への投与を禁忌としている場合や、新生児への使用を想定していない場合は、使用上の注意の改訂は不要とのことです。


外国において、低出生体重児へのベンジルアルコールの静脈内大量投与(99~234mg/kg)でGasping症候群(あえぎ症候群)が発現したとの報告は、以前からありました。


ベンジルアルコールが添加されている一部の注射剤には既に注意喚起されています。
(例:クリンダマイシン注射液、ゲンタマイシン注射液、エトポシド注射液、ピリドキサール塩酸塩注など)


医薬品添加物のベンジルアルコールは防腐剤、保存剤、安定化剤など多くの目的に使用されています。また、注射時の疼痛緩和の目的(無痛化剤)として添加されている場合もあります。


ベンジルアルコール含有注射剤(2015年10月時点)


アデシノンP注射液20mg
アデホス-Lコーワ注10mg
アデホス-Lコーワ注20mg
アデホス-Lコーワ注40mg
アデシノンP注射液10mg
アデシノンP注射液20mg
アデノP注20mg
トリノシンS注射液10mg
トリノシンS注射液20mg
アスコルビン酸注100mg「NP」
アスコルビン酸注500mg「NP」
アスコルビン酸注1g「NP」
アスコルビン酸注射液100mg「サワイ」
アスコルビン酸注射液500mg「サワイ」
アスコルビン酸注射液100mg「ツルハラ」
カラシミンC注射液10%
シータック注100
シータック注20%
ビタシミン注射液100mg
ビタシミン注射液500mg
ビーシー注100mg
ビーシー注500
ビタミンC注「フソー」-100mg
ビタミンC注「フソー」-500mg
ビタミンC注「フソー」-2g
アポカイン皮下注30mg
アンカロン注150
エトポシド点滴静注液100mg「サンド」
ベプシド注100mg
エルカトニン注40単位「F」
エルカトニン筋注10単位「F」
オステトニン注10
オステトニン注40
エルゴメトリンマレイン酸塩注0.2mg「F」
エントミン注200mg
クエン酸ガリウム-Ga67注射液
クエン酸ガリウム(67Ga)注NMP
クリダマシン注300mg
クリダマシン注600mg
クリンダマイシンリン酸エステル注300mg「F」
クリンダマイシンリン酸エステル注600mg「F」
クリンダマイシンリン酸エステル注300mg「トーワ」
クリンダマイシンリン酸エステル注600mg「トーワ」
クリンダマイシンリン酸エステル注射液300mg「NP」
クリンダマイシンリン酸エステル注射液600mg「NP」
クリンダマイシンリン酸エステル注射液300mg「サワイ」
クリンダマイシンリン酸エステル注射液600mg「サワイ」
クリンダマイシン注300mgシリンジ「タイヨー」
クリンダマイシン注600mgシリンジ「タイヨー」
ダラシンS注射液300mg
ダラシンS注射液600mg
リンタシン注射液300mg
リンタシン注射液600mg
ネオレスタール注射液10mg
ビスミラー注5mg
ケトプロフェン筋注50mg「日新」
メジェイド筋注50mg
カピステン筋注50mg
エルタシン注10mg
エルタシン注40mg
エルタシン注60mg
ゲンタシン注10
ゲンタシン注40
ゲンタシン注60
ゲンタマイシン硫酸塩注射液10mg「日医工」
ゲンタマイシン硫酸塩注射液40mg「日医工」
ゲンタマイシン硫酸塩注射液60mg「日医工」
ジアゼパム注射液10mg「タイヨー」
ジアゼパム注射液5mg「タイヨー」
セルシン注射液5mg
セルシン注射液10mg
ホリゾン注射液10mg
シアノコバラミン注射液1mg「ツルハラ」
ビタミンB12注1000「コバヤシ」
ビタミンB12注“Z”100μg
ビタミンB12注“Z”1,000μg
ジゴシン注0.25mg
リスモダンP静注50mg
10mgレスミン注射液
30mgレスミン注射液
ジフェンヒドラミン塩酸塩注10mg「日新」
ジフェンヒドラミン塩酸塩注30mg「日新」
ベナスミン注30mg
スペロン注250mg
スペロン注500mg
スルピリン注250mg「NP」
スルピリン注25%「イセイ」
スルピリン注射液250mg「トーワ」
スルピリン注射液500mg「トーワ」
スルピリン注射液250mg「日医工」
スルピリン注射液500mg「日医工」
メチロン注25%
ソマトロピンBS皮下注5mg「サンド」
ソマトロピンBS皮下注10mg「サンド」
ソマトロピンBS皮下注5mg「サンド」シュアパル
ソマトロピンBS皮下注10mg「サンド」シュアパル
バイオゲン注10mg
バイオゲン静注50mg
ビーカップ注10mg
チアミン塩化物塩酸塩注射液10mg「ツルハラ」
チアミン塩化物塩酸塩注射液50mg「ツルハラ」
チアミン塩化物塩酸塩注射液10mg「ファイザー」
チアミン塩化物塩酸塩注射液20mg「ファイザー」
ロンベリン注射液10mg
ロンベリン注射液20mg
チオクト酸注25mg「日新」
チオトミン注25mg
メサドロン注2mg
メサドロン注3mg
テストロンデポー筋注250mg
ケナコルト-A皮内用関節腔内用水懸注50mg/5mL
ケナコルト-A筋注用関節腔内用水懸注40mg/1mL
ナイクリン注射液20mg
ナイクリン注射液50mg
ネオペリドール注50
ネオペリドール注100
ハロマンス注50mg
ハロマンス注100mg
パントール注射液100mg
パントール注射液250mg
パントール注射液500mg
アタラックス-P注射液(25mg/ml)
アタラックス-P注射液(50mg/ml)
E・P・ホルモンデポー筋注
プロゲデポー筋注125mg
プロゲストンデポー筋注125mg
ヒドロキソコバラミン注1000μg「イセイ」
フレスミンS注射液1000μg
ピドキサール注10mg
ピドキサール注30mg
ハイピリドキシン注10mg
ハイピリドキシン注30mg
ハイピリドキシン注60mg
ピリドキサール注10mg「イセイ」
ビタミンB6注「日医工」10mg
ビーシックス注「フソー」-10mg
ビーシックス注「フソー」-30mg
ビタミンK1注10mg
ビタミンK1注30mg
ビタミンK1注50mg
フォリスチム注300IUカートリッジ
フォリスチム注600IUカートリッジ
フォリスチム注900IUカートリッジ
スコルパン注20mg
ワカデニン注射液10mg
ワカデニン注射液20mg
ワカデニン注射液30mg
アデフラビン注10mg
フラジレン注10mg
フラジレン注20mg
フラビタン注5mg
フラビタン注射液10mg
フラビタン注射液20mg
サイレース静注2mg
フルデカシン筋注25mg
フェソロデックス筋注250mg
アミサリン注100mg
アミサリン注200mg
プロゲステロン筋注25mg「F」
プロゲステロン筋注50mg「F」
プロゲホルモン筋注用10mg
プロゲホルモン筋注用25mg
アリナミン注射液10mg
ノボ・硫酸プロタミン静注用100mg
プロタミン硫酸塩静注100mg「モチダ」
ペガシス皮下注45μg
ペガシス皮下注90μg
ペガシス皮下注180μg
ヘパリンNa注5千単位/5mL「F」
ヘパリンNa注5万単位/50mL「F」
ヘパリンNa注10万単位/100mL「F」
ヘパリンナトリウム注1万単位/10mL「AY」
ヘパリンナトリウム注5万単位/50mL「AY」
ヘパリンナトリウム注10万単位/100mL「AY」
ノボ・ヘパリン注5千単位/5mL
ノボ・ヘパリン注1万単位/10mL
ヘパリンNa注5千単位/5mL「モチダ」
ヘパリンNa注1万単位/10mL「モチダ」
オルダミン注射用1g
ビスラーゼ注射液10mg
ビスラーゼ注射液20mg
ホスフラン注-10mg
ホスフラン注-20mg
ホスフラン注-5mg
ホスフラン注-10mg
ホスフラン注-20mg
ビタミンB2注1%「イセイ」
リズピオン注300mg
リズピオン注600mg
リンコシン注射液300mg
リンコシン注射液600mg
リンコシン注射液1g
リンコシン注射液1.5g
リンコマイシン塩酸塩注300mg「NP」
リンコマイシン塩酸塩注600mg「NP」
リンコマイシン塩酸塩注射液600mg「日医工」
アンナカ注「フソー」-10%
アンナカ注「フソー」-20%"
メトクロプラミド注10mg「テバ」
アデラビン9号注1mL
アデラビン9号注2mL
リバレス注
シオゾール注10mg
シオゾール注25mg
コートロシンZ筋注0.5mg
ロヒプノール静注用2mg
トロビシン筋注用2g
グロウジェクトBC注射用8mg
グロウジェクト注射用8mg
ニューロライト注射液第一
ラングシンチTc-99m注
テクネMAAキット
アスルダム注1mL
アスルダム注2mL
エフエーミック注1mL
エフエーミック注2mL
コカルボキシラーゼ注射用25mg「イセイ」
コカルボキシラーゼ注射用50mg「イセイ」
シメチジン注200mg「NP」
シーパラ注
セファランチン注10mg
ダイビタミックス注
トラベルミン注
ボセルモンデポー筋注
メルスモン
ライボミンS注射液

レバサルト注




先発メーカー自身で後発品を発売することは禁止されていません




オーソライズドジェネリックについて話題にしていると、

「先発メーカー自身で後発品を発売することが禁止されているから、関連会社に作らせてる」

という話がよく聞かれるのですが、これは間違いです。


先発メーカー自身で後発品を発売することを禁止する法律や通達はありません。


先発メーカー自身で後発品を発売している場合もあります。



ニトログリセリン舌下錠は日本化薬が先発品のニトログリセリン舌下錠0.3mg「NK」と後発品のニトロペン舌下錠を発売しています。


また、過去には山之内製薬(現アステラス)がマーロックス内用液という先発品と後発品のマーロックス懸濁内服用を販売していました。


昔は、先発品メーカーが自社製品の改良品として後発品を発売することがよくあったようです。


では、なぜ後発品を先発メーカー自身で製造販売しないのでしょうか。



メーカーに直接聞いてみたところ、営業戦略として後発品部門と先発品部門で分けているだけであるという回答でした。


製造販売の手続きや、PMSなど先発品と後発品では、人とお金の動き方が変わってきます。


うまく機能させるには、同じ会社であるより後発品専用の子会社をつくって事業を分けたほうが効率が良いのでしょう。












2015年10月12日月曜日

抗うつ薬ベンラファキシン塩酸塩 イフェクサーSRカプセル



イフェクサーSRカプセルはベンラファキシン塩酸塩を有効成分とする抗うつ薬です。


ベンラファキシン塩酸塩はワイス(現ファイザー)が創製したセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)です。


イフェクサーSRカプセルは、徐放性のカプセル剤です。


海外では1997年6月にスイスで大うつ病性障害の効能・効果で承認されて以降、2015 年 4 月現在、世界91の国又は地域で承認されています。


実は、この薬は2000年代初頭に日本で「うつ病・うつ状態」に対する承認申請が行われたのですが、その時の国内臨床試験成績からは有効性が説明できなかったこと等から、申請を取り下げたという過去があります。


その後、追加臨床試験が実施された結果、「うつ病・うつ状態」に対する有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認申請を行い承認されました。


日本で、うつ病・うつ状態を効能・効果とするSNRIとしては、デュロキセチン塩酸塩(サインバルタ)とミルナシプラン塩酸塩(トレドミン)が承認されています。



イフェクサーSRカプセルはうつ病治療の第一選択薬


イフェクサーSRカプセルは SNRI に分類される薬剤です。

海外の治療ガイドラインではうつ病治療における第一選択薬として、SSRIと他のSNRIとともに推奨されています。

Gelenberg AJ et al, American Psychiatric Association. Practice Guideline for the Treatment of Patients With Major Depressive Disorder,3rd edition, American Psychiatric Association, 2010

Suehs B et al, Texas Medication Algorithm Project Procedures Manual Major Depressive Disorder, Texas Department of State Health Services, 2008

Anderson IM et al, J Psychopharmacol, 22: 343-396, 2008

Bauer M et al, World J Biol Psychiatry, 8: 67-104, 2007

Lam RW et al, J Affect Disord, 117 Suppl 1: S26-S43, 2009


国内の治療ガイドラインにおいてもSNRIは、SSRI、ミルタザピン、三環系抗うつ薬等とともに第一選択薬として推奨されています。

日本うつ病学会 気分障害の治療ガイドライン作成委員会,日本うつ病学会治療ガイドライン II. 大うつ病性障害, 2013


日本でもイフェクサーSRカプセルは海外と同様に第一選択薬として位置付けられると考えられます。


現状のうつ病治療では、最初の抗うつ薬で寛解が得られるのは全体の約 1/3 程度であるとされています。

Rush AJ et al,Acute and longer-term outcomes in depressed outpatients requiring one or several treatment steps: a STAR*D report. Am J Psychiatry, 163: 1905-1917, 2006


また、SSRI に対し十分な反応を示さなかった患者において、他のSSRIに変更するよりもイフェクサーSRカプセルに変更した場合の方が、寛解率が高かったとする報告があります。

Papakostas GI et al,Treatment of SSRI-resistant depression: a meta-analysis comparing within- versus across-class switches. Biol Psychiatry, 63: 699-704, 2008


一部の海外ガイドラインでは、他の第一選択薬に反応しない又は忍容性がないために治療変更を要する場合の第二選択薬としてもイフェクサーSRカプセルが推奨されています。

Crismon ML et al,The Texas Medication Algorithm Project: report of the Texas Consensus Conference Panel on Medication Treatment of Major Depressive Disorder. J Clin Psychiatry, 60: 142-156, 1999

SchuelerYB et al,A systematic review of duloxetine and venlafaxine in major depression, including unpublished data. Acta Psychiatr Scand, 123: 247-265, 2011


イフェクサーSRカプセルは漸増が必要な薬です。


開始用量は37.5 mg/日です。

これは、国内臨床試験において、開始用量が 75 mg/日の集団では高度の有害事象及び投与中止に至った事象の発現割合が高くなる可能性が示唆されたためです。


イフェクサーSRカプセル及び主要代謝物の消失半減期(7.6~9.7 時間及び 11.1~12.3 時間)を踏まえ、4日間の反復投与で定常状態に達するとかんがえられます。
そのため、用量に依存した有害事象は1週間以内に発現すると考えられます。

以上より増量間隔を1週間と設定されました。



イフェクサーSRカプセル37.5mg、75mg

[効能・効果]
うつ病・うつ状態


[用法・用量]
通常、成人にはベンラファキシンとして 1 日 37.5 mg を初期用量とし、1週後より 1 日 75 mg を 1 日 1 回食後に経口投与する。なお、年齢、症状に応じ 1 日 225 mg を超えない範囲で適宜増減するが、増量は 1 週間以上の間隔をあけて 1 日用量として 75 mg ずつ行うこと。