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2015年11月2日月曜日

C型肝炎治療薬 ヴィキラックス配合錠 疑問解決



ヴィキラックス配合錠は、オムビタスビル水和物、パリタプレビル水和物 及びリトナビルを有効成分として含有するC型肝炎治療薬です。

オムビタスビルとパリタプレビルはC型肝炎ウイルスが体内で増殖するために必要なHCVNS5AとNS3/4Aプロテアーゼという酵素をそれぞれ阻害することにより C型肝炎ウイルスの増殖を抑制します。

リトナビルは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)プロテアーゼの阻害剤です。

日本では、HIV感染症治療薬、つまりエイズの治療薬として使われているお薬です。


なぜ、エイズの治療薬がC型肝炎治療に使われるのでしょうか?


リトナビル自体にはC型肝炎ウイルスを退治する効果はありません。

リトナビルはヒトシトクロムP450(CYP)アイソザイムであるCYP3A阻害作用を持っています。

そのため、主にCYP3Aで代謝される他の薬の血中濃度を上昇させることがあります。


ヴィキラックス配合錠においては、この作用を利用しています。

CYP3Aで代謝されやすいパリタプレビルの血中濃度の上昇を目的として、リトナビルが配合されています。



C型肝炎ウイルス感染者は、世界で約1億7000万人、日本では150万〜200万人いると推定されています。

そしてそのうち約70%がgenotype 1 といわれています。

2015年時点、日本におけるC型慢性肝炎患者(genotype 1) に対する治療薬として、 インターフェロン製剤、リバビリン、NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤であるテラプレビル、シメプレビルナトリウム、アスナプレビル及びバニプレビル、NS5A阻害剤であるダグラタスビル塩酸塩、NS5Bポリメラーゼ阻害剤であるゾホスプビルの各単剤、並びにソホスブビルとNS5A阻害剤であるレジパスビルアセトン付加物の配合剤が承認されています。

ヴィキラックス配合錠は日本で2015年8月に承認され、2015年12月以降に発売される予定です。

なお、海外では米国AbbVie Inc.により本剤の開発が進められ、「テクニヴィ(Technivie)」の名前で36カ国で承認されています。

また、ヴィキラックス配合錠とNS5B阻害剤である Dasabuvir又はリバビリンとの併用レジメンが平成27年6月時点で米国及び欧州を含め49カ国で承認されています。



ヴィキラックス投与前にはセログループ(ジェノタイプ)の検査をする必要はあるのでしょうか?

治療前にセログループ(ジェノタイプ)を確認する必要があります。

■ヴィキラックス効能効果
セログループ 1 (ジェノタイプ 1 )のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善

治療前にセログループを確認してください。

また、肝予備能、臨床症状等により非代償性肝硬変でないことを確認してください。


ヴィキラックスと食事の影響

食後に服用するようにしましょう。

空腹時の服用に比べ、食後の服用がヴィキラックスのバイオアベイラビリティを良好に保つことが知られています。

なお、食事のカロリーや脂肪含有量は吸収に影響を及ぼしません。


ヴィキラックスを飲み忘れてしまったら

服用し忘れた場合12時間以内であれば、1回量(2錠)をなるべく空腹を避けて服用しましょう。

本来飲む時間から12時間経過して気づいた場合は、その日は服用せず、翌日から通常通り1回量(2錠)を服用してください。


ヴィキラックスの粉砕、簡易懸濁の可否

ヴィキラックス配合錠は粉砕、簡易懸濁はできません。

錠剤に特殊な処理を施し有効成分を錠剤中に分散(非晶質固体分散体)させているからです。

また、粉砕や溶解等による物理学的変化が、有効性、安全性、吸収等の薬物動態に与える影響について検討されていません。


ヴィキラックスとの併用に注意が必要な薬剤

添付文書をみると併用禁忌及び併用注意に設定されている薬が多いことに気づくと思います。

併用禁忌については以下の基準で設定されています。

  1. 本剤が併用薬剤の血中濃度を大幅に上昇させ,重篤な副作用を発現するおそれのある薬剤
  2. 本剤が併用薬剤による代謝誘導を受け,本剤の治療効果が減弱するおそれのある薬剤
  3. 臨床試験において副作用の報告があるもの

併用してはいけない薬には、カルブロックやリピトールなど生活習慣病治療によく使われる薬も該当しているので注意が必要です。






カルシウム拮抗剤との併用による末梢性浮腫(むくみ)に注意

降圧剤として使用されるカルシウム拮抗剤とヴィキラックスを併用するとリトナビルのCYP3A4阻害作用によりカルシウム拮抗剤の血中濃度が上昇する恐れがあります。

カルシウム拮抗剤は、末梢静脈よりも末梢動脈に対して強く血管拡張作用を示します。

そのため静脈と動脈との間にアンバランスが生じます。末梢動脈が拡張するのに末梢静脈拡張しないとういう状態です。

これにより毛細血管圧が上昇して血液の流れが悪くなるため、血液成分が血管外に漏れだし浮腫を生じるのです。


【追記】
アッヴィC型肝炎治療薬、FDAが医薬品表示の変更指示-患者死亡で
2015/10/23 10:24 JST (ブルームバーグ)

FDAは22日の発表資料で、「ヴィキラ・パック」もしくは「テクニヴィ」を服用している患者で肝疾患が悪化する兆しがないか医師は監視すべきだと警告した。