スピオルトレスピマットは、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)であるチオトロピウム臭化物水和物及び長時間作用性 β2刺激薬(LABA)であるオロダテロール塩酸塩を有効成分とした吸入用液剤です。
レスピマットという専用吸入器と組み合わせて服用します。
有効成分のチオトロピウムは、専用吸入器(ハンディへラー)を使用する吸入粉末剤スピリーバ吸入用カプセル18μgや専用吸入器(レスピマット)と組み合わせた吸入液剤スピリーバ 2.5μgレスピマット60吸入COPD に係る効能・効果で承認されています。
オロダテロールは、日本で承認された薬剤はありません。(2015年時点)
一方海外ではレスピマットと組み合わせた吸入液剤が、COPD に係る効能・効果で40 ヵ国以上で承認されています。
COPDの治療
COPDはタバコの煙を主とする有害物質を長期に暴露することで生じる肺の慢性炎症性疾患です。
進行性の気流閉塞を呈し、臨床的には労作時の息切れと慢性の咳、痰が特徴です。
安定期のCOPDの薬物治療の中心は気管支拡張薬です。
短時間作用性β2刺激薬(SABA)、LABA、LAMA が患者さんの重症度に応じて段階的に用いられます。
中等症以上の COPD 患者に対する治療として、LABA 又はLAMA の定期的な使用が推奨されています。
単剤で治療効果が不十分な場合又は症状がより重症な場合には、2 種類以上の気管支拡張薬の併用が可能とされています。
日本呼吸器学会. COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン
Global Strategy for the Diagnosis,Management, and Prevention of Chronic Obstructive Pulmonary Disease, 2011
http://www.goldcopd.org/guidelines-global-strategy-for-diagnosis-management.html
作用機序の異なる LAMA 及び LABA の吸入剤の併用投与は臨床現場において汎用されています。
そこで、LAMA 及び LABA の吸入配合剤は、1 つの吸入器で投与でき、1 日 1 回投与製剤とすることによって、服薬アドヒアランスや患者の利便性の向上に寄与すると考えられています。
COPDに係る効能・効果で承認されているLAMA及びLABAの吸入配合剤には、
ウルティブロ(グリコピロニウム臭化物/インダカテロールマレイン酸塩)、
アノーロ(ウメクリジニウム臭化物/ビランテロールトリフェニル酢酸塩)
があります。
スピオルトは新規のLAMA及びLABAの配合剤として、COPD治療の選択肢を増やすことになるでしょう。
海外では、スピオルトは既にCOPDに係る効能・効果でアメリカとヨーロッパで承認されています
チオトロピウムは、ムスカリン性 ACh 受容体サブタイプ(M1、M2、M3)のうち、主に M3 受容体サブタイプに対して高い親和性を示し、気道における迷走神経の緊張を軽減し、気管支収縮及び粘液の分泌を抑制します。
一方、オロダテロールは β2受容体に対して高い親和性及び選択性を有し、β2受容体を刺激することにより、細胞内 cAMPを増加させ、気管支平滑筋細胞の弛緩をもたらすと考えられています。
気道において、ムスカリン性ACh受容体は中枢気道で多く発現している一方、β2受容体は末梢気道で多く発現しています。
つまり、異なる作用機序を有する LAMA 及び LABA の併用により、気管支全体にわたって拡張作用が得られると考えられます。
Dale PR et al.The pharmacological rationale for combining muscarinic receptor antagonists and β-adrenoceptor agonists in the treatment of airway and bladder disease. Curr. Opin. Pharmacol. 16: 31-42, 2014
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24682092
臨床試験成績では、スピオルト投与による心血管系有害事象の発現リスクが、チオトロピウム、オロダテロール各単剤を上回る傾向は示されませんでした。
また、オロダテロール単剤投与による心血管系有害事象リスクがプラセボや既承認のLABA であるホルモテロールを上回る傾向も示されませんでした。
しかし、β2刺激薬は β受容体刺激作用による心血管系への潜在的なリスクを有し、抗コリン薬の吸入投与により心血管系イベントによる死亡等のリスクが上昇することが報告されていることを踏まえると、LAMA 及び LABA の併用投与により心血管系有害事象の発現リスクが上昇する可能性は否定できません。
よって、スピオルト投与時の心血管系有害事象の発現状況について、リスク因子の有無等の背景因子との関連も含めて、引き続き慎重に検討する必要があると考えられ、添付文書においても類薬と同様に、心血管系有害事象並びに LAMA 及び LABA に関連する有害事象の発現リスクに関する注意喚起をおこなわれています。
Singh S et al.Inhaled anticholinergics and risk of major adverse cardiovascular events in patients with chronic obstructive pulmonary disease: a systematic review and meta-analysis. JAMA. 300: 1439-1450,2008
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18812535
Singh S et al.Mortality associated with tiotropium mist inhaler in patients with chronic obstructive pulmonary disease: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. BMJ. 342.d3215(online), 2011
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21672999
臨床試験ではチオトロピウム、オロダテロール各単剤に対するスピオルト 2.5/5 μg 及び 5/5 μg の優越性が示されました。
スピオルト 5/5 μg は、2.5/5 μg と比べ評価項目の数値上一貫して優れていました。
また、2用量間の安全性プロファイルは類似しており、スピオルトの安全性プロファイルがチオトロピウム、オロダテロール各単剤と比較して大きく異なる傾向も認められませんでした。
チオトロピウム単剤は 5 μg の用量で COPD治療薬として国内外で広く使用され、現在までに安全性上の大きな懸念は示唆されていないことや、スピオルト 5/5 μg は臨床試験において チオトロピウム単剤と同様の安全性プロファイルを示していることも踏まえて2.5/5 μg と比べ有効性で上回る本剤 5/5 μg を用量として設定されました。
患者の状態によっては初期治療として合剤の投与が必要となる場合もあると考えられますが、国内ガイドライン等では基本的には患者の重症度を判断した上で段階的に治療を増強していくことが推奨されていることやLAMA と LABA の長期併用による重篤な心血管系有害事象の発現リスク等が十分に明らかにされていません。
このことを踏まえ、効能・効果に「長時間作用性吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入 β2刺激剤の併用が必要な場合」が付記されています。
http://www.goldcopd.org/guidelines-global-strategy-for-diagnosis-management.html
作用機序の異なる LAMA 及び LABA の吸入剤の併用投与は臨床現場において汎用されています。
そこで、LAMA 及び LABA の吸入配合剤は、1 つの吸入器で投与でき、1 日 1 回投与製剤とすることによって、服薬アドヒアランスや患者の利便性の向上に寄与すると考えられています。
COPDに係る効能・効果で承認されているLAMA及びLABAの吸入配合剤には、
ウルティブロ(グリコピロニウム臭化物/インダカテロールマレイン酸塩)、
アノーロ(ウメクリジニウム臭化物/ビランテロールトリフェニル酢酸塩)
があります。
スピオルトは新規のLAMA及びLABAの配合剤として、COPD治療の選択肢を増やすことになるでしょう。
海外では、スピオルトは既にCOPDに係る効能・効果でアメリカとヨーロッパで承認されています
スピオルトの作用機序
チオトロピウムは、ムスカリン性 ACh 受容体サブタイプ(M1、M2、M3)のうち、主に M3 受容体サブタイプに対して高い親和性を示し、気道における迷走神経の緊張を軽減し、気管支収縮及び粘液の分泌を抑制します。
一方、オロダテロールは β2受容体に対して高い親和性及び選択性を有し、β2受容体を刺激することにより、細胞内 cAMPを増加させ、気管支平滑筋細胞の弛緩をもたらすと考えられています。
気道において、ムスカリン性ACh受容体は中枢気道で多く発現している一方、β2受容体は末梢気道で多く発現しています。
つまり、異なる作用機序を有する LAMA 及び LABA の併用により、気管支全体にわたって拡張作用が得られると考えられます。
Dale PR et al.The pharmacological rationale for combining muscarinic receptor antagonists and β-adrenoceptor agonists in the treatment of airway and bladder disease. Curr. Opin. Pharmacol. 16: 31-42, 2014
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24682092
スピオルトの安全性
臨床試験成績では、スピオルト投与による心血管系有害事象の発現リスクが、チオトロピウム、オロダテロール各単剤を上回る傾向は示されませんでした。
また、オロダテロール単剤投与による心血管系有害事象リスクがプラセボや既承認のLABA であるホルモテロールを上回る傾向も示されませんでした。
しかし、β2刺激薬は β受容体刺激作用による心血管系への潜在的なリスクを有し、抗コリン薬の吸入投与により心血管系イベントによる死亡等のリスクが上昇することが報告されていることを踏まえると、LAMA 及び LABA の併用投与により心血管系有害事象の発現リスクが上昇する可能性は否定できません。
よって、スピオルト投与時の心血管系有害事象の発現状況について、リスク因子の有無等の背景因子との関連も含めて、引き続き慎重に検討する必要があると考えられ、添付文書においても類薬と同様に、心血管系有害事象並びに LAMA 及び LABA に関連する有害事象の発現リスクに関する注意喚起をおこなわれています。
Singh S et al.Inhaled anticholinergics and risk of major adverse cardiovascular events in patients with chronic obstructive pulmonary disease: a systematic review and meta-analysis. JAMA. 300: 1439-1450,2008
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18812535
Singh S et al.Mortality associated with tiotropium mist inhaler in patients with chronic obstructive pulmonary disease: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. BMJ. 342.d3215(online), 2011
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21672999
用法・用量
臨床試験ではチオトロピウム、オロダテロール各単剤に対するスピオルト 2.5/5 μg 及び 5/5 μg の優越性が示されました。
スピオルト 5/5 μg は、2.5/5 μg と比べ評価項目の数値上一貫して優れていました。
また、2用量間の安全性プロファイルは類似しており、スピオルトの安全性プロファイルがチオトロピウム、オロダテロール各単剤と比較して大きく異なる傾向も認められませんでした。
チオトロピウム単剤は 5 μg の用量で COPD治療薬として国内外で広く使用され、現在までに安全性上の大きな懸念は示唆されていないことや、スピオルト 5/5 μg は臨床試験において チオトロピウム単剤と同様の安全性プロファイルを示していることも踏まえて2.5/5 μg と比べ有効性で上回る本剤 5/5 μg を用量として設定されました。
効能・効果
患者の状態によっては初期治療として合剤の投与が必要となる場合もあると考えられますが、国内ガイドライン等では基本的には患者の重症度を判断した上で段階的に治療を増強していくことが推奨されていることやLAMA と LABA の長期併用による重篤な心血管系有害事象の発現リスク等が十分に明らかにされていません。
このことを踏まえ、効能・効果に「長時間作用性吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入 β2刺激剤の併用が必要な場合」が付記されています。