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2015年10月14日水曜日

ベンジルアルコール含有注射剤




2015年10月13日、厚生労働省医薬・生活衛生局安全対策課は都道府県に向け課長通知(薬生安発1013第1号)を出し、注射剤に添加剤としてベンジルアルコールが含有されているかどうかを確認するよう指示しました。


さらに新生児に使用される可能性がある場合は、添付文書の改訂を求めました。


通知では、ベンジルアルコールを含有する注射剤で、新生児に使用される可能性があり、注意喚起が行われていない場合は、添付文書の「小児等への投与」の項に「低出生体重児、新生児に使用する場合には十分注意すること」などと記載するよう求めました。


ただし、その医薬品が新生児への投与を禁忌としている場合や、新生児への使用を想定していない場合は、使用上の注意の改訂は不要とのことです。


外国において、低出生体重児へのベンジルアルコールの静脈内大量投与(99~234mg/kg)でGasping症候群(あえぎ症候群)が発現したとの報告は、以前からありました。


ベンジルアルコールが添加されている一部の注射剤には既に注意喚起されています。
(例:クリンダマイシン注射液、ゲンタマイシン注射液、エトポシド注射液、ピリドキサール塩酸塩注など)


医薬品添加物のベンジルアルコールは防腐剤、保存剤、安定化剤など多くの目的に使用されています。また、注射時の疼痛緩和の目的(無痛化剤)として添加されている場合もあります。


ベンジルアルコール含有注射剤(2015年10月時点)


アデシノンP注射液20mg
アデホス-Lコーワ注10mg
アデホス-Lコーワ注20mg
アデホス-Lコーワ注40mg
アデシノンP注射液10mg
アデシノンP注射液20mg
アデノP注20mg
トリノシンS注射液10mg
トリノシンS注射液20mg
アスコルビン酸注100mg「NP」
アスコルビン酸注500mg「NP」
アスコルビン酸注1g「NP」
アスコルビン酸注射液100mg「サワイ」
アスコルビン酸注射液500mg「サワイ」
アスコルビン酸注射液100mg「ツルハラ」
カラシミンC注射液10%
シータック注100
シータック注20%
ビタシミン注射液100mg
ビタシミン注射液500mg
ビーシー注100mg
ビーシー注500
ビタミンC注「フソー」-100mg
ビタミンC注「フソー」-500mg
ビタミンC注「フソー」-2g
アポカイン皮下注30mg
アンカロン注150
エトポシド点滴静注液100mg「サンド」
ベプシド注100mg
エルカトニン注40単位「F」
エルカトニン筋注10単位「F」
オステトニン注10
オステトニン注40
エルゴメトリンマレイン酸塩注0.2mg「F」
エントミン注200mg
クエン酸ガリウム-Ga67注射液
クエン酸ガリウム(67Ga)注NMP
クリダマシン注300mg
クリダマシン注600mg
クリンダマイシンリン酸エステル注300mg「F」
クリンダマイシンリン酸エステル注600mg「F」
クリンダマイシンリン酸エステル注300mg「トーワ」
クリンダマイシンリン酸エステル注600mg「トーワ」
クリンダマイシンリン酸エステル注射液300mg「NP」
クリンダマイシンリン酸エステル注射液600mg「NP」
クリンダマイシンリン酸エステル注射液300mg「サワイ」
クリンダマイシンリン酸エステル注射液600mg「サワイ」
クリンダマイシン注300mgシリンジ「タイヨー」
クリンダマイシン注600mgシリンジ「タイヨー」
ダラシンS注射液300mg
ダラシンS注射液600mg
リンタシン注射液300mg
リンタシン注射液600mg
ネオレスタール注射液10mg
ビスミラー注5mg
ケトプロフェン筋注50mg「日新」
メジェイド筋注50mg
カピステン筋注50mg
エルタシン注10mg
エルタシン注40mg
エルタシン注60mg
ゲンタシン注10
ゲンタシン注40
ゲンタシン注60
ゲンタマイシン硫酸塩注射液10mg「日医工」
ゲンタマイシン硫酸塩注射液40mg「日医工」
ゲンタマイシン硫酸塩注射液60mg「日医工」
ジアゼパム注射液10mg「タイヨー」
ジアゼパム注射液5mg「タイヨー」
セルシン注射液5mg
セルシン注射液10mg
ホリゾン注射液10mg
シアノコバラミン注射液1mg「ツルハラ」
ビタミンB12注1000「コバヤシ」
ビタミンB12注“Z”100μg
ビタミンB12注“Z”1,000μg
ジゴシン注0.25mg
リスモダンP静注50mg
10mgレスミン注射液
30mgレスミン注射液
ジフェンヒドラミン塩酸塩注10mg「日新」
ジフェンヒドラミン塩酸塩注30mg「日新」
ベナスミン注30mg
スペロン注250mg
スペロン注500mg
スルピリン注250mg「NP」
スルピリン注25%「イセイ」
スルピリン注射液250mg「トーワ」
スルピリン注射液500mg「トーワ」
スルピリン注射液250mg「日医工」
スルピリン注射液500mg「日医工」
メチロン注25%
ソマトロピンBS皮下注5mg「サンド」
ソマトロピンBS皮下注10mg「サンド」
ソマトロピンBS皮下注5mg「サンド」シュアパル
ソマトロピンBS皮下注10mg「サンド」シュアパル
バイオゲン注10mg
バイオゲン静注50mg
ビーカップ注10mg
チアミン塩化物塩酸塩注射液10mg「ツルハラ」
チアミン塩化物塩酸塩注射液50mg「ツルハラ」
チアミン塩化物塩酸塩注射液10mg「ファイザー」
チアミン塩化物塩酸塩注射液20mg「ファイザー」
ロンベリン注射液10mg
ロンベリン注射液20mg
チオクト酸注25mg「日新」
チオトミン注25mg
メサドロン注2mg
メサドロン注3mg
テストロンデポー筋注250mg
ケナコルト-A皮内用関節腔内用水懸注50mg/5mL
ケナコルト-A筋注用関節腔内用水懸注40mg/1mL
ナイクリン注射液20mg
ナイクリン注射液50mg
ネオペリドール注50
ネオペリドール注100
ハロマンス注50mg
ハロマンス注100mg
パントール注射液100mg
パントール注射液250mg
パントール注射液500mg
アタラックス-P注射液(25mg/ml)
アタラックス-P注射液(50mg/ml)
E・P・ホルモンデポー筋注
プロゲデポー筋注125mg
プロゲストンデポー筋注125mg
ヒドロキソコバラミン注1000μg「イセイ」
フレスミンS注射液1000μg
ピドキサール注10mg
ピドキサール注30mg
ハイピリドキシン注10mg
ハイピリドキシン注30mg
ハイピリドキシン注60mg
ピリドキサール注10mg「イセイ」
ビタミンB6注「日医工」10mg
ビーシックス注「フソー」-10mg
ビーシックス注「フソー」-30mg
ビタミンK1注10mg
ビタミンK1注30mg
ビタミンK1注50mg
フォリスチム注300IUカートリッジ
フォリスチム注600IUカートリッジ
フォリスチム注900IUカートリッジ
スコルパン注20mg
ワカデニン注射液10mg
ワカデニン注射液20mg
ワカデニン注射液30mg
アデフラビン注10mg
フラジレン注10mg
フラジレン注20mg
フラビタン注5mg
フラビタン注射液10mg
フラビタン注射液20mg
サイレース静注2mg
フルデカシン筋注25mg
フェソロデックス筋注250mg
アミサリン注100mg
アミサリン注200mg
プロゲステロン筋注25mg「F」
プロゲステロン筋注50mg「F」
プロゲホルモン筋注用10mg
プロゲホルモン筋注用25mg
アリナミン注射液10mg
ノボ・硫酸プロタミン静注用100mg
プロタミン硫酸塩静注100mg「モチダ」
ペガシス皮下注45μg
ペガシス皮下注90μg
ペガシス皮下注180μg
ヘパリンNa注5千単位/5mL「F」
ヘパリンNa注5万単位/50mL「F」
ヘパリンNa注10万単位/100mL「F」
ヘパリンナトリウム注1万単位/10mL「AY」
ヘパリンナトリウム注5万単位/50mL「AY」
ヘパリンナトリウム注10万単位/100mL「AY」
ノボ・ヘパリン注5千単位/5mL
ノボ・ヘパリン注1万単位/10mL
ヘパリンNa注5千単位/5mL「モチダ」
ヘパリンNa注1万単位/10mL「モチダ」
オルダミン注射用1g
ビスラーゼ注射液10mg
ビスラーゼ注射液20mg
ホスフラン注-10mg
ホスフラン注-20mg
ホスフラン注-5mg
ホスフラン注-10mg
ホスフラン注-20mg
ビタミンB2注1%「イセイ」
リズピオン注300mg
リズピオン注600mg
リンコシン注射液300mg
リンコシン注射液600mg
リンコシン注射液1g
リンコシン注射液1.5g
リンコマイシン塩酸塩注300mg「NP」
リンコマイシン塩酸塩注600mg「NP」
リンコマイシン塩酸塩注射液600mg「日医工」
アンナカ注「フソー」-10%
アンナカ注「フソー」-20%"
メトクロプラミド注10mg「テバ」
アデラビン9号注1mL
アデラビン9号注2mL
リバレス注
シオゾール注10mg
シオゾール注25mg
コートロシンZ筋注0.5mg
ロヒプノール静注用2mg
トロビシン筋注用2g
グロウジェクトBC注射用8mg
グロウジェクト注射用8mg
ニューロライト注射液第一
ラングシンチTc-99m注
テクネMAAキット
アスルダム注1mL
アスルダム注2mL
エフエーミック注1mL
エフエーミック注2mL
コカルボキシラーゼ注射用25mg「イセイ」
コカルボキシラーゼ注射用50mg「イセイ」
シメチジン注200mg「NP」
シーパラ注
セファランチン注10mg
ダイビタミックス注
トラベルミン注
ボセルモンデポー筋注
メルスモン
ライボミンS注射液

レバサルト注




先発メーカー自身で後発品を発売することは禁止されていません




オーソライズドジェネリックについて話題にしていると、

「先発メーカー自身で後発品を発売することが禁止されているから、関連会社に作らせてる」

という話がよく聞かれるのですが、これは間違いです。


先発メーカー自身で後発品を発売することを禁止する法律や通達はありません。


先発メーカー自身で後発品を発売している場合もあります。



ニトログリセリン舌下錠は日本化薬が先発品のニトログリセリン舌下錠0.3mg「NK」と後発品のニトロペン舌下錠を発売しています。


また、過去には山之内製薬(現アステラス)がマーロックス内用液という先発品と後発品のマーロックス懸濁内服用を販売していました。


昔は、先発品メーカーが自社製品の改良品として後発品を発売することがよくあったようです。


では、なぜ後発品を先発メーカー自身で製造販売しないのでしょうか。



メーカーに直接聞いてみたところ、営業戦略として後発品部門と先発品部門で分けているだけであるという回答でした。


製造販売の手続きや、PMSなど先発品と後発品では、人とお金の動き方が変わってきます。


うまく機能させるには、同じ会社であるより後発品専用の子会社をつくって事業を分けたほうが効率が良いのでしょう。












2015年10月12日月曜日

抗うつ薬ベンラファキシン塩酸塩 イフェクサーSRカプセル



イフェクサーSRカプセルはベンラファキシン塩酸塩を有効成分とする抗うつ薬です。


ベンラファキシン塩酸塩はワイス(現ファイザー)が創製したセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)です。


イフェクサーSRカプセルは、徐放性のカプセル剤です。


海外では1997年6月にスイスで大うつ病性障害の効能・効果で承認されて以降、2015 年 4 月現在、世界91の国又は地域で承認されています。


実は、この薬は2000年代初頭に日本で「うつ病・うつ状態」に対する承認申請が行われたのですが、その時の国内臨床試験成績からは有効性が説明できなかったこと等から、申請を取り下げたという過去があります。


その後、追加臨床試験が実施された結果、「うつ病・うつ状態」に対する有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認申請を行い承認されました。


日本で、うつ病・うつ状態を効能・効果とするSNRIとしては、デュロキセチン塩酸塩(サインバルタ)とミルナシプラン塩酸塩(トレドミン)が承認されています。



イフェクサーSRカプセルはうつ病治療の第一選択薬


イフェクサーSRカプセルは SNRI に分類される薬剤です。

海外の治療ガイドラインではうつ病治療における第一選択薬として、SSRIと他のSNRIとともに推奨されています。

Gelenberg AJ et al, American Psychiatric Association. Practice Guideline for the Treatment of Patients With Major Depressive Disorder,3rd edition, American Psychiatric Association, 2010

Suehs B et al, Texas Medication Algorithm Project Procedures Manual Major Depressive Disorder, Texas Department of State Health Services, 2008

Anderson IM et al, J Psychopharmacol, 22: 343-396, 2008

Bauer M et al, World J Biol Psychiatry, 8: 67-104, 2007

Lam RW et al, J Affect Disord, 117 Suppl 1: S26-S43, 2009


国内の治療ガイドラインにおいてもSNRIは、SSRI、ミルタザピン、三環系抗うつ薬等とともに第一選択薬として推奨されています。

日本うつ病学会 気分障害の治療ガイドライン作成委員会,日本うつ病学会治療ガイドライン II. 大うつ病性障害, 2013


日本でもイフェクサーSRカプセルは海外と同様に第一選択薬として位置付けられると考えられます。


現状のうつ病治療では、最初の抗うつ薬で寛解が得られるのは全体の約 1/3 程度であるとされています。

Rush AJ et al,Acute and longer-term outcomes in depressed outpatients requiring one or several treatment steps: a STAR*D report. Am J Psychiatry, 163: 1905-1917, 2006


また、SSRI に対し十分な反応を示さなかった患者において、他のSSRIに変更するよりもイフェクサーSRカプセルに変更した場合の方が、寛解率が高かったとする報告があります。

Papakostas GI et al,Treatment of SSRI-resistant depression: a meta-analysis comparing within- versus across-class switches. Biol Psychiatry, 63: 699-704, 2008


一部の海外ガイドラインでは、他の第一選択薬に反応しない又は忍容性がないために治療変更を要する場合の第二選択薬としてもイフェクサーSRカプセルが推奨されています。

Crismon ML et al,The Texas Medication Algorithm Project: report of the Texas Consensus Conference Panel on Medication Treatment of Major Depressive Disorder. J Clin Psychiatry, 60: 142-156, 1999

SchuelerYB et al,A systematic review of duloxetine and venlafaxine in major depression, including unpublished data. Acta Psychiatr Scand, 123: 247-265, 2011


イフェクサーSRカプセルは漸増が必要な薬です。


開始用量は37.5 mg/日です。

これは、国内臨床試験において、開始用量が 75 mg/日の集団では高度の有害事象及び投与中止に至った事象の発現割合が高くなる可能性が示唆されたためです。


イフェクサーSRカプセル及び主要代謝物の消失半減期(7.6~9.7 時間及び 11.1~12.3 時間)を踏まえ、4日間の反復投与で定常状態に達するとかんがえられます。
そのため、用量に依存した有害事象は1週間以内に発現すると考えられます。

以上より増量間隔を1週間と設定されました。



イフェクサーSRカプセル37.5mg、75mg

[効能・効果]
うつ病・うつ状態


[用法・用量]
通常、成人にはベンラファキシンとして 1 日 37.5 mg を初期用量とし、1週後より 1 日 75 mg を 1 日 1 回食後に経口投与する。なお、年齢、症状に応じ 1 日 225 mg を超えない範囲で適宜増減するが、増量は 1 週間以上の間隔をあけて 1 日用量として 75 mg ずつ行うこと。

2015年10月11日日曜日

フッ化物洗口剤『エフコート』の作用機序



『エフコート』は、むし歯予防効果が高い有効成分として知られるフッ化物(フッ素)の洗口剤です。


エフコートの虫歯予防


①再石灰化を促進し、歯の質を強化する
むし歯を予防するには、歯を強くすることと、原因菌が活動しにくい環境をお口の中につくることが大切です。食後の歯みがきはお口の中を清潔に保つのには有効ですが、歯そのものを強くするものではありません。
②脱灰を抑制し、酸に溶けにくくする
フッ化物は、歯から溶けだしたカルシウムやリンの取り込み(再石灰化)を促進することで歯質を強くします。また原因菌に働きかけて酸の産出を抑えることで、歯からカルシウムやリンの溶け出し(脱灰)を抑制し、むし歯を予防する効果があります。
お口の中で脱灰と再石灰化が繰り返されている時にフッ化物があると高いむし歯予防効果が期待できます。
参考:サンスター株式会社 http://www.fcoat.jp/yobou/

日本における虫歯予防用フッ化物


新フッ化物ではじめるむし歯予防 筒井昭二 八木稔/編 医歯薬出版株式会社


市販ハミガキの約9割にフッ化物配合されています。

しかし、ハミガキではハブラシの毛先が届きにくいところにはフッ化物が行き届かず、虫歯の予防効果は不十分です。

その点、洗口剤であればハブラシの毛先が届きにくいところにも、洗口剤が行き渡ります。

さらに、洗口剤は使用後に水ですすぐ必要がないので、フッ化物がよりお口の中にとどまるため虫歯予防効果も高いと考えられます。

エフコートは4歳から5歳の永久歯が生え始める、比較的早期からの仕様が効果的です。

4歳から6歳までフッ素うがいを続けた場合と、まったくフッ素うがいをしたことがない場合の6歳時の虫歯の数を比較するとフッ素うがいをした場合、虫歯の発生を約80%抑制しました。

岸洋志, 20歳成人の小児期齲蝕予防管理の成果,口腔衛生学会雑誌,42(3),1992.358-370


フッ素うがいは大人のむし歯にも効果的です。


60歳以上でフッ素うがいを実施した場合のむし歯予防効果を調べた研究があります。

フッ素うがいを2年間継続実施した人と、そうではない人を比べた結果、フッ素うがいをしたグループで歯の付け根の再石灰化が促進が38%増加しました。

wallance et al. The 48-month increment of root caries in an urban population of older adults participating in a preventive dental program.J Public Health Dent. 1993 Summer;53(3):133-7.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8371190


エフコートQ&A


どこで購入できますか?

エフコートは要指導医薬品です。書面による薬剤師の説明を受けなければ購入することができません。薬剤師のいる薬局やドラッグストアで購入可能です。

誤って飲み込んだ場合、大丈夫?

1回分程度を誤飲されても、問題はありません。万が一起こりうる症状としては、消化器症状(吐き気,下痢)の可能性があります。4歳児の平均体重でのフッ化物の中毒量を換算すると、221~374mLを一度に摂取した場合、消化器症状が生じます。(エフコート1本を丸々摂取した場合に消化器症状が生じます。)1回5~10mLの用法・用量ですので、適正な使用下に於いて副作用が生じる可能性は低いと考えます。もしも消化器症状が生じた場合は、①牛乳(無い場合は水)をコップ1~2杯程度を摂取する。②医師、歯科医師又は薬剤師にご相談ください。

エフコートだけの使用で歯磨き無しでも良いの?

むし歯予防には、毎日の口腔清掃も合わせて行うことが重要です。しっかりと歯磨きでお口をきれいにしてからエフコートを使用ください。また、エフコートの使用による効果の確認の為、定期的な歯科の受診もおすすめします。

入れ歯や、さし歯のも使っていいですか?

ご自信の歯が残っていればおつかいいただけます。エフコートは天然の歯に対してしか効果はありません。総入れ歯で自分の歯が残っていない場合は効果はありません。入れ歯には特に問題ありませんが、うがいしにくいようなら外してから使用して下さい。

インプラントにフッ素がよくないと聞いたが、本当ですか?

インプラントには高濃度のフッ素や酸性条件はよくありません。エフコートは中性であり、フッ素濃度も低濃度なのでインプラントの方が使用しても問題ないと考えられます。


関連:
フッ素でうがい 知っておきたいこと

2015年10月8日木曜日

COPD治療配合吸入剤 スピオルト レスピマット




スピオルトレスピマットは、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)であるチオトロピウム臭化物水和物及び長時間作用性 β2刺激薬(LABA)であるオロダテロール塩酸塩を有効成分とした吸入用液剤です。


レスピマットという専用吸入器と組み合わせて服用します。


有効成分のチオトロピウムは、専用吸入器(ハンディへラー)を使用する吸入粉末剤スピリーバ吸入用カプセル18μgや専用吸入器(レスピマット)と組み合わせた吸入液剤スピリーバ 2.5μgレスピマット60吸入COPD に係る効能・効果で承認されています。


オロダテロールは、日本で承認された薬剤はありません。(2015年時点)


一方海外ではレスピマットと組み合わせた吸入液剤が、COPD に係る効能・効果で40 ヵ国以上で承認されています。


COPDの治療


COPDはタバコの煙を主とする有害物質を長期に暴露することで生じる肺の慢性炎症性疾患です。


進行性の気流閉塞を呈し、臨床的には労作時の息切れと慢性の咳、痰が特徴です。


安定期のCOPDの薬物治療の中心は気管支拡張薬です。


短時間作用性β2刺激薬(SABA)、LABA、LAMA が患者さんの重症度に応じて段階的に用いられます。


中等症以上の COPD 患者に対する治療として、LABA 又はLAMA の定期的な使用が推奨されています。


単剤で治療効果が不十分な場合又は症状がより重症な場合には、2 種類以上の気管支拡張薬の併用が可能とされています。



Global Strategy for the Diagnosis,Management, and Prevention of Chronic Obstructive Pulmonary Disease, 2011
http://www.goldcopd.org/guidelines-global-strategy-for-diagnosis-management.html


作用機序の異なる LAMA 及び LABA の吸入剤の併用投与は臨床現場において汎用されています。


そこで、LAMA 及び LABA の吸入配合剤は、1 つの吸入器で投与でき、1 日 1 回投与製剤とすることによって、服薬アドヒアランスや患者の利便性の向上に寄与すると考えられています。


COPDに係る効能・効果で承認されているLAMA及びLABAの吸入配合剤には、

ウルティブロ(グリコピロニウム臭化物/インダカテロールマレイン酸塩)、
アノーロ(ウメクリジニウム臭化物/ビランテロールトリフェニル酢酸塩)

があります。


スピオルトは新規のLAMA及びLABAの配合剤として、COPD治療の選択肢を増やすことになるでしょう。

海外では、スピオルトは既にCOPDに係る効能・効果でアメリカとヨーロッパで承認されています



スピオルトの作用機序


チオトロピウムは、ムスカリン性 ACh 受容体サブタイプ(M1、M2、M3)のうち、主に M3 受容体サブタイプに対して高い親和性を示し、気道における迷走神経の緊張を軽減し、気管支収縮及び粘液の分泌を抑制します。


一方、オロダテロールは β2受容体に対して高い親和性及び選択性を有し、β2受容体を刺激することにより、細胞内 cAMPを増加させ、気管支平滑筋細胞の弛緩をもたらすと考えられています。


気道において、ムスカリン性ACh受容体は中枢気道で多く発現している一方、β2受容体は末梢気道で多く発現しています。


つまり、異なる作用機序を有する LAMA 及び LABA の併用により、気管支全体にわたって拡張作用が得られると考えられます。

Dale PR et al.The pharmacological rationale for combining muscarinic receptor antagonists and β-adrenoceptor agonists in the treatment of airway and bladder disease. Curr. Opin. Pharmacol. 16: 31-42, 2014
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24682092


スピオルトの安全性


臨床試験成績では、スピオルト投与による心血管系有害事象の発現リスクが、チオトロピウム、オロダテロール各単剤を上回る傾向は示されませんでした。


また、オロダテロール単剤投与による心血管系有害事象リスクがプラセボや既承認のLABA であるホルモテロールを上回る傾向も示されませんでした。


しかし、β2刺激薬は β受容体刺激作用による心血管系への潜在的なリスクを有し、抗コリン薬の吸入投与により心血管系イベントによる死亡等のリスクが上昇することが報告されていることを踏まえると、LAMA 及び LABA の併用投与により心血管系有害事象の発現リスクが上昇する可能性は否定できません。


よって、スピオルト投与時の心血管系有害事象の発現状況について、リスク因子の有無等の背景因子との関連も含めて、引き続き慎重に検討する必要があると考えられ、添付文書においても類薬と同様に、心血管系有害事象並びに LAMA 及び LABA に関連する有害事象の発現リスクに関する注意喚起をおこなわれています。

Singh S et al.Inhaled anticholinergics and risk of major adverse cardiovascular events in patients with chronic obstructive pulmonary disease: a systematic review and meta-analysis. JAMA. 300: 1439-1450,2008
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18812535

Singh S et al.Mortality associated with tiotropium mist inhaler in patients with chronic obstructive pulmonary disease: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. BMJ. 342.d3215(online), 2011
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21672999



用法・用量


臨床試験ではチオトロピウム、オロダテロール各単剤に対するスピオルト 2.5/5 μg 及び 5/5 μg の優越性が示されました。


スピオルト 5/5 μg は、2.5/5 μg と比べ評価項目の数値上一貫して優れていました。


また、2用量間の安全性プロファイルは類似しており、スピオルトの安全性プロファイルがチオトロピウム、オロダテロール各単剤と比較して大きく異なる傾向も認められませんでした。


チオトロピウム単剤は 5 μg の用量で COPD治療薬として国内外で広く使用され、現在までに安全性上の大きな懸念は示唆されていないことや、スピオルト 5/5 μg は臨床試験において チオトロピウム単剤と同様の安全性プロファイルを示していることも踏まえて2.5/5 μg と比べ有効性で上回る本剤 5/5 μg を用量として設定されました。



効能・効果


患者の状態によっては初期治療として合剤の投与が必要となる場合もあると考えられますが、国内ガイドライン等では基本的には患者の重症度を判断した上で段階的に治療を増強していくことが推奨されていることやLAMA と LABA の長期併用による重篤な心血管系有害事象の発現リスク等が十分に明らかにされていません。


このことを踏まえ、効能・効果に「長時間作用性吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入 β2刺激剤の併用が必要な場合」が付記されています。




2015年10月6日火曜日

6ヶ月に1回投与でOK リュープリンPRO注射用キット22.5mg




リュープリンPROは、武田薬品工業株式会社により開発された黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニストであるリュープロレリン22.5mgを含有する24週間持続型の徐放性製剤です。


日本には、リュープロレリンを有効成分とする製剤として、4週間持続型の徐放性製剤である、3.75mg製剤及び1.88mg製剤が開発されています。


3.75mg製剤は、前立腺癌、子宮内膜症、中枢性思春期早発症、閉経前乳癌、子宮筋腫を効能・効果として承認されています。


1.88mg製剤は、中枢性思春期早発症、子宮筋腫、子宮内膜症を効能・効果として承認されています。


シリンジに薬剤が充填されたキット製品として3.75mg製剤、1.88mg製剤も承認されています。


また、4週間製剤よりも投与間隔が長い12週間持続型の徐放性製剤(リュープリンSR)がキット製品として開発され、前立腺癌と閉経前乳癌を効能・効果として承認されています。


リュープリンPROとSRの違い


リュープリンPROの原薬は、既承認製剤であるリュープリン注射用3.75mg、リュープリンSR注射用キット11.25mgの原薬と同じものです。


リュープリンPROは、1シリンジ中にリュープロレリン原薬22.5mgを含有する徐放性注射剤です。


リュープリンPROは粉末部本体と液体部(懸濁用液1mL)が一体となっているキット製剤です。


懸濁用液1mLには、注射用水及び添加物としてD-マンニトール50mg、カルメロースナトリウム5mg、ポリソルベート80を1mgを含有しています。

リュープリンPROインタビューフォームより


製剤は、ステンレス製針付きプレフィル用シリンジの ガラス製カートリッジ部に、粉末部及び液体部をブチルゴム製ストッノパーにより 2室に分けて充てんしたコンビネーション製品です。


リュープリンPROは投与容量を12週間製剤と同様とすることと原薬を24週間持続的に放出することを目的として製剤設計がなされています。


12週間製剤(リュープリンSR)からの主な変更点は以下のとおりです。
  • 原薬を含有するマイクロカプセルを変更。
  • マイクロカプセルの徐放性基剤についてステアリン酸を添加。


リュープリンPROの意義


内分泌療法既治療の前立腺癌患者やHR陽性の閉経前乳癌術後患者を対象とした臨床試験では、リュープリンPROを投与することよりリュープリンSRと同様の臨床的有用性が認められました。


日本では、前立腺癌患者及び閉経前乳癌患者に対して、LH-RHアゴニストとしてリュープロレリン製剤 (4週間製剤または12週間製剤)が使用されています。


しかし前立腺癌患者や閉経前乳癌患者に対するLH-RHアゴニスト投与による内分泌療法は、治療期間が長期となります。


リュープリンPROは、12週間製剤と比較して投与間隔が長いため、患者負担の軽減等が期待できます。



リュープリンPRO注射用キット22.5mg

[効能又は効果]

○前立腺癌
○閉経前乳癌


[用法及び用量]

通常、成人には24 週に1回リュープロレリン酢酸塩として22.5mg を皮下に投与する。
投与に際しては、注射針を上にしてプランジャーロッドを押して、懸濁用液全量を粉末部に移動させて、泡立てないように注意しながら、十分に懸濁して用いる。

本剤は24週間持続の徐放性製剤であり、24週を超える間隔で投与すると下垂体-性腺系刺激作用により性腺ホルモン濃度が再度上昇し、臨床所見が一過性に悪化するおそれがあるので、24 週に1回の用法を遵守すること。



2015年10月5日月曜日

ロコアテープ(エスフルルビプロフェン貼付剤)は1回2枚まで



2016年1月20日発売。

「ロコアテープ」はエスフルルビプロフェンとハッカ油を有効成分とする外用テープ剤です。


有効成分のエスフルルビプロフェンは、非ステロイド性抗炎症薬フルルビプロフェンの活性本体で、(S) -エナンチオマーです。


フルルビプロフェンは、日本において、1978年8月に「フロべン錠」として承認されて以降、現在までに、顆粒剤及び貼付剤が変形性関節症等の鎮痛・消炎を 効能・効果として承認されています。

ex.ゼポラス、アドフィード、フルルバン、ファルケンテープ


また、フルルビプロフェンアキセチルを有効成分とした「ロピオン静注50mg」が、術後及び各種癌における鎮痛を効能・効果として1992年3月に承認されています。


ロコアテープに含まれるハッカ油は、有効成分として承認されてはいますが、当初は効能効果をもたない添加物として配合していたとのことです。

しかし、関節痛等に対する医療用医薬品及び一般用医薬品の有効成分の一つとしてロコアテープに含まれている濃度に近いハッカ油が承認され、長年使用されています。


このことから、「医薬品の承認申請に際し留意すべき事項について」(平成26年11月21日薬食審査発1121第12号) において「医薬品添加物として配合した成分であっても、その分量が薬用量に近似のものは、原則として有効成分として取扱う」とされていることを踏まえ、ハッカ油を有効成分としたという経緯があります。



変形性関節症とロコアテープ


変形性関節症は、関節軟骨をはじめとする関節構成体の退行変性に起因して、膝関節や股関節等の四肢関節、手指関節、脊椎等で疫痛、腫肢、変形及び可動域制限等の症状が生じます。


変形性関節症の治療の中心は保存的療法による症状の進行遅延と症状の軽減です。


保存的療法には非薬物療法(運動療法、減量、患者教育等)と薬物療法があります。


薬物療法では主にNSAIDsが用いられています。


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「変形性膝関節症の管理に関するOARSI勧告 OARSIによるエビデンスに基づくエキスパートコンセンサスガイドライン」 (日本整形外科学会変形性膝関節症診療ガイドライン策定委員会2015年4月)において、 NSAIDs経口剤は、推奨度A (行うように強く推奨する) とされ、変形性膝関節症患者の疫痛緩和に有効であるとのエビデンスを有していますが、消化管障害のリスクが高いとされています。


NSAIDs外用剤は、推奨度 B (行うよう推奨する) とされ、NSAIDs外用剤の疫痛緩和に関する有効性は治療開始2週間以内においてのみ認められるが、治療開始第1週までの効果はNSAIDs経口剤に比べて劣ることが示されています。


上記ガイドラインにおけるNSAIDs外用剤の位置付けは、NSAIDs経口剤の追加又は代替薬とされています。


つまり、NSAIDs外用剤は有効性という点ではまだ改善の余地があるといえます。


ロコアテープは既に承認されているNSAIDs貼付剤の有効性を改善することを目標に、経皮吸収性及び標的組織移行性を向上させた新たなNSAIDs貼付剤として開発されました。


開発過程において、ロコアテープ2枚貼付時のエスフルルビプロフェンの全身暴露量が「フロべン錠40」と同程度になることが示唆されました。

そのため、「フロべン錠40」と同様の安全性リスクを有する可能性が考えられました。


貼付剤は患者さんが1回に複数枚を使用する可能性の高い製剤です。

そのため過剰投与につながるおそれがあります。


変形性関節症は定期的に医師の診察がなされ、適正使用の状況が把握しやすいと考えられることからフルルビプロフェン貼付剤の適応疾患のうち、変形性関節症を対象に絞り申請されました。


なお、ロコアテープは2015年7月時点で、海外における開発は行われていません。
日本のみの発売です。


ロコアテープの安全性 

1回2枚までしか貼れない理由

ロコアテープを膝変形性関節症患者の膝に貼付した時、滑膜、関節液及び血漿中の未変化体濃度はラセミ体のフルルプロビフェン貼付剤投与時の未変化体濃度と比較して高かったという臨床試験データがあります。


また、ロコアテープ2枚貼付時の未変化体の全身暴露量は「フロべン錠40」及び「ロピオン静注50mg」投与時の未変化体の推定値と同程度でしたが、変形性膝関節症患者を対象とした長期投与試験において、多くの被験者で、ロコアテープ単独貼付にて、約1年まで治療継続が可能であり、2枚までの貼付において安全性上の大きな問題は認められませんでした。


ただし、フルルプロビフェン貼付剤より消化管障害の発現が高い可能性が示唆されていることや、ロコアテープ2枚貼付時の全身暴露量はフルルプロビフェン貼付剤を上回り、「フロべン錠40」及び「ロピオン静注50mg」の投与時と同程度になることが示唆されたことを踏まえるとすでに承認されている他のNSAIDs経口剤と同程度の安全性リスクを有する可能性があります。


このことからロコアテープはNSAIDs経口剤の追加薬として使用することは避ける必要があります。


そしてさらに1回2枚までという貼付枚数とNSAIDs経口剤との併用等に係る適正使用が遵守されることが重要で、十分な注意喚起が必要な薬剤です。