角膜炎、角膜潰瘍、角膜びらんの角膜障害では、視力低下をきたした症例が報告されています。
これは、適切な治療や休薬により多くは回復・軽快しています。
しかし、投与継続により視力障害が残った症例も報告されています。
角膜炎、角膜潰瘍は、黒目に炎症や潰瘍が生じて、痛みや視力低下、流涙(涙目)などを生じます。
角膜障害が進行すると混濁が残り、視力が傷害されることもあります。
具体的な眼の症状
ティーエスワンを服用されて、よく耳にする眼の不快感は以下のとおりです。
流涙、視力低下、かすみ目、眼痛、眼乾燥。
「何もしていないのに、眼から涙がこぼれてくる。涙でハンカチが手放せなくなった。」
「急激に視力が低下してきて、運転するのも怖いくらいになり急いで眼科を受診した」
副作用が生じてくる時期は?
角膜炎などの角膜障害は、約半数の症例で投与開始からほぼ5ヶ月以内に生じています。
しかし、2年以上経ってから、症状を訴えられた例もあり、発生時期に一定の傾向は認められていません。
副作用の生じやすい投与量・投与期間は?
副作用症例の多くは基準量で投与されていました。
1回、1日の投与量にはあまり影響されず、投与期間が長期に及ぶことで、症状を発現しやすくなると考えられています。
副作用発生機序
ティーエスワンの成分は体の中に入ると、フルオロウラシルという成分に変化します。
フルオロウラシルは細胞分裂の盛んな、がん細胞においてDNA、RNAの合成障害を引き起こし、がん細胞をやっつけます。
がん細胞にだけ作用してくれればいいのですが・・・
涙の中に分泌されたフルオロウラシルが、活発に分裂している角膜上皮細胞や輪部の角膜上皮幹細胞を障害することで角膜障害を発症すると考えられています。
細谷友雅:抗癌剤による角膜および涙道の障害-Corneal and lacrimal ducts disorders associated with anticancer drugs-. 眼科 54 (1) 27-32. 2012
フルオロウラシルを含んだ涙液が涙道を通過することで涙道粘膜の炎症、涙道扁平上皮の肥厚と間質の線維化をきたし、その結果涙道狭窄・閉塞が生じてしまい、排出されない涙が溢れ、涙目になってしまうと考えられています。
Esmaeli B,et al. Canalicular and nasolacrimal duct blockage: an ocular side effect associated with the antineoplastic drug S-1.Am J Ophthalmol. 2005 Aug;140(2):325-7.
しかし、副作用の発現機序は完全には解明されていません。
副作用への対応
ティーエスワンの休薬が考えられます。
※患者さん個人の判断で、服用を中止しないでください。必ず主治医、または薬剤師に相談してください。
また、コンタクトレンズを使用されている方は、角膜への影響を避けるため、メガネの着用に変更しましょう。
治療薬
人工涙液の点眼(マイティア、ソフトサンティアなど)
涙に含まれる薬剤を洗い流すことが目的
抗生物質点眼薬
炎症を抑える
手術
鼻涙管、涙小管、涙点の涙道狭窄が考えられる場合は、涙点切開、シリコンチューブ留置などが行われます。
涙点あるいは涙小管の閉塞は非可逆的であり通水試験で強い抵抗を認めた時点でシリコンチューブ留置を行うことで閉塞を予防できるともいわれています。
以上のことは、ティーエスワンだけでなく、後発品も同様に起こりえます。
ティーエスワンの後発品
EEエスワン配合
エスワンケーケー配合
エスエーワン配合
エヌケーエスワン配合
エスワンエヌピー配合
エスワンメイジ配合
テノックス配合
テメラール配合
EEエスワン配合
エスワンケーケー配合
エスエーワン配合
エヌケーエスワン配合
エスワンエヌピー配合
エスワンメイジ配合
テノックス配合
テメラール配合
ティーエスワンにおける眼の副作用の重篤化を防ぐためには早期発見がかかせません。
医療者はティーエスワン投与時には十分な説明が必要です。
患者さんは流涙などの眼の症状が持続したり、視力低下が見られるなどした場合にはなるべく早めに薬剤師に相談しましょう。