ページ

2015年8月6日木曜日

前立腺がん治療薬 イクスタンジ(エンザルタミド)



前立腺から発生するがんを前立腺がんとよびます。


前立腺がんは男性ホルモンの刺激で増殖します。

つまり、男性ホルモンが働かないようにすれば、がんの増大を抑えることができるのです。

治療には主に、LH-RHアゴニスト(またはLH-RHアンタゴニスト)という注射薬で男性ホルモンの分泌を抑える内科的去勢術と、精巣摘除術という手術による外科的去勢術があります。


治療効果はどちらもほぼ同等です。


これらの治療に、抗男性ホルモン薬(男性ホルモンが前立腺がんに働きかけるのを抑える薬)を併用するCAB療法という治療も行われています。



イクスタンジはこの抗男性ホルモン薬に分類される薬剤です。


イクスタンジは外科的又は内科的去勢術が行われた前立腺癌患者に対して使用される薬剤です。


アメリカでは2012年に既に承認され、ガイドラインにも記載されています。

National Comprehensive Cancer Network Clinical Practice Guidelines in Oncology.Prostate Cancer(NCCN ガイドライン)(v.4.2013)

化学療法歴を有する去勢抵抗性前立腺がん患者を対象とした第Ⅲ相試験試験においてエンザルタミド群で OS の有意な延長が認められた結果に基づき、エンザルタミドは、ドセタキセル水和物による化学療法歴を有する去勢抵抗性前立腺がん患者に対して推奨される薬剤である。また、エンザルタミドは、初回アンドロゲン除去療法に対して病勢進行した化学療法歴のない去勢抵抗性前立腺がん患者に対する二次ホルモン療法における治療選択肢の一つである。


既に他の抗男性ホルモン受容体阻害薬で治療をしている患者にイクスタンジは使用できるのか


イクスタンジの作用機序はアンドロゲン(男性ホルモン)の 男性ホルモン受容体への結合を競合的に阻害することで、男性ホルモンが前立腺がんに働きかけるのを抑える薬です。


イクスタンジと同様に男性ホルモン受容体阻害剤であるビカルタミド(カソデックス)及びフルタミド(オダイン)が、日本の臨床現場において既に使用されています。


ビカルタミド及びフルタミドは、男性ホルモン受容体阻害剤として臨床現場で使用されてはいますが、受容体を完全に阻害するのではなく男性ホルモン受容体を刺激してしまう作用を持つことが報告されています。

Choi-iok Wong et al,. Androgen Receptor Antagonist versus Agonist Activities of the Fungicide Vinclozolin Relative to Hydroxyflutamide. J Biol Chem 1995; 270:19998-20003

Yoshida T et al,. Antiandrogen bicalutamide promotes tumor growth in a novel androgen-dependent prostate cancer xenograft model derived from a bicalutamide-treated patient. Cancer Res 2005; 65: 9611-6
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16266977

Chen CD et al,. Molecular determinants of resistance to antiandrogen therapy. Nat Med 2004; 10: 33-9
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14702632

イクスタンジは、受容体刺激作用を作用を示さないようにデザインされた薬剤です。


この点がビカルタミド及びフルタミドとは異なるところです。


試験管の中での結果にはなりますが実際に、イクスタンジの男性ホルモン受容体に対するアゴニスト活性は弱かったというデータがあります。


また、ビカルタミドとフルタミドが効果を示さなかったヒト前立腺癌由来細胞株に対して、イクスタンジが有効だったというデータもあります。




イクスタンジカプセル 40mg

[効能・効果]
去勢抵抗性前立腺癌

[用法・用量]
通常、成人にはエンザルタミドとして160mgを1日1回経口投与する。

[禁 忌]
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

[効能・効果に関連する使用上の注意]
(1) 本剤の化学療法未治療の前立腺癌における有効性及び安全性は確立していない。
(2) 「臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で適応患者の選択を行うこと。

[用法・用量に関連する使用上の注意]
外科的又は内科的去勢術と併用しない場合の有効性及び安全性は確立していない。