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2015年8月29日土曜日

沖縄のインフルエンザは夏でも流行する




沖縄県で夏のインフルエンザ流行が規模拡大傾向(2013年3月)

沖縄県で近年、夏のインフルエンザ流行がほぼ毎年続いている。沖縄県立中部病院感染症内科の高山義浩氏らは、沖縄県における夏(6~9月)の流行の実態や特徴を調べた。その結果、患者数は冬(12~3月)に比べると少ないものの、最近規模拡大の傾向にあること、成人、特に高齢者の割合が冬より高く、しかもワクチンがないこともあり、院内感染対策上でも大きな問題になっていることが分かった。同氏が第28回日本環境感染学会総会(3月1~2日、開催地:横浜市)で報告した。夏の流行の原因については、夏にインフルエンザ流行が見られる東アジアからの旅行者の増加が影響している可能性も考えられるようだ。



熱帯・亜熱帯気候地域では温帯気候地域と異なり、年間を通じてインフルエンザウイルスの活動が見られることがしられています。

Otomaru H, et al. influenza and Other Respiratory Viruses Detected by Influenza-Like Illness Surveillance in Leyte Island, the Philippines, 2010–2013:PLoS One. 2015;10(4):e0123755
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4404362/


沖縄は亜熱帯気候に位置しています。


温帯気候の本州とは、インフルエンザの流行パターンが異なっています。


沖縄県感染症センターの報告を見ると、流行のピークは本州と同じ1~2月ころにみられることが多いのですが、それ以外にも7月あたりの初夏にもう一つのピークがみることができます。




なぜ、沖縄などの亜熱帯気候地域で、夏にもインフルエンザが流行するのでしょうか。


実のところ、これについてはよくわかっていません。


2015年8月27日木曜日

背中に薬を塗るためのらくらく便利グッズ




患者さんから

「背中のかゆいところに薬を塗りたいのだけれど、自分では上手く塗れない。なにかいい道具はないだろうか」

と、ご相談を受けました。


いろいろ調べて、見つけたのがこれです。




セヌール(ユースキン製薬)
http://www.yuskin.co.jp/products/ai/03.html



手の届かない背中に孫の手のように使い、軟膏を塗ることができます。

3パーツの組立て式で使わない時はコンパクトに収納できます。


使い方は簡単です。

抗菌加工されたブルーのスポンジ部分に、クリームやローションをのばして使います。

使い終わったら、ぬるま湯で洗います。



製品特徴


全長は約32cmです。

伸び縮みはしません。

3つのパーツの組み立て式で、使わない時はバラして保管できます。


使用可能薬剤


保湿剤やステロイドなど軟膏剤・クリーム剤全般で使用可能です。


使わないほうがいい薬剤

・精油やサンオイルなどのオイル製品

・虫除けなどのディート含有製品

・硬い軟膏


これら薬剤の使用は製品の破損に繋がる恐れがあります。


洗浄方法


水もしくはぬるま湯でブルーのスポンジ部分を洗い流してください。

軟膏の油分をおとそうと、洗剤を使用してしまいがちですが、洗剤で洗ってしまうと抗菌性が低下してしまいます。

洗剤のご使用はお控えください。

製品の耐熱温度は60℃です。60℃以下の少し熱めのお湯で洗うとよいでしょう。
(やけどには十分ご注意ください)


洗浄後は十分乾かしてください。

パッドの面を上にしたほうが乾きやすいです。

温風や乾燥機などを使わずに自然乾燥させてください。


使用期限


衛生的にご使用いただくためにも、2~3ヶ月をめどに交換をオススメします。




2015年8月21日金曜日

塗る・貼るかぜ薬にはどんなものがある?




せき、鼻水、鼻詰まり、くしゃみなどのかぜに伴う諸症状の緩和に効果を発揮する、胸やのどのに塗ったり貼ったりするタイプの薬があるのを知っていますか。


CMでお馴染みのヴィックスヴェポラッブが有名ですね。


天然精油成分のカンフル,メントール,ユーカリオイルなどが有効成分として配合されています。


これら、塗り薬や貼り薬は薬を塗ったり貼ったりした箇所から薬が吸収されて効果が発揮されるわけではありません。


鼻、口から効きます。

胸またはのどに「塗る」「貼る」すると、有効成分が体温により温められ揮散します。


その揮散した空気を吸い込むことで鼻粘膜やのどに作用するのです。



塗ったり貼ったりするだけでホントに効果があるのでしょうか?


2010年アメリカでの臨床試験(RCT)の結果が公表されています。

報告者の米ペンシルバニア州立大学Ian M Paul氏らによると,ヴィックスヴェポラッブを首や胸部に塗布した群では,対照群(ワセリン,非介入)に比べ夜間の咳や睡眠の改善といった風邪症状の有意な緩和が見られたという。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1011/1011026.html


ほとんど多くの市販の風邪薬はお子様が服用できるものはありません。


服用できるものがあったとしても、子供にあまり薬は飲ませたくないものです。


そういう場合に、塗る・貼るタイプのかぜ薬は適しています。


夜間の咳や睡眠の改善でき、ぐっすり眠ることができれば、自然と風邪は早く治るでしょう。


塗るタイプのかぜ薬



小林製薬)カゼピタンぬる 50ml
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貼るタイプのかぜ薬


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2015年8月7日金曜日

病院の薬を処方箋なしに薬局で購入することはできるのか




処方箋医薬品以外の医療用医薬品であっても、薬局においては処方箋に基づいた調剤での交付が原則です。


ただし、やむを得ない事情があり、「必要最低限の数量とする」「対面により販売する」などの留意事項を厳守し、購入者が使用者本人であることを確認、情報提供及び指導等に関する規定に則って販売するなどの条件をクリアすれば販売(購入)は可能です。


薬局医薬品の取扱いについて(薬食発 0318 第4号平成26年3月18日)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/ippanyou/pdf/140325_1.pdf




病院の処方箋をもとに薬局で調剤してもらって手にする薬を医療用医薬品といいます。


医療用医薬品は大きく分けて2つに分類できます。


「処方箋医薬品」と「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」です。


処方箋医薬品以外の医療用医薬品には、ロキソニン、ガスター、モーラス、カタリンK、PL配合顆粒などがあります。



処方箋医薬品については、医薬品医療機器法第49条第1項の規定に基づき、処方箋がなければ薬局で手にすることはできません。


薬局側も正当な理由なく、処方箋がないのに処方箋医薬品を販売した場合については、罰則がかせられます。



処方箋医薬品以外の医療用医薬品については、基本的原則は薬局においての購入はできませんが、条件付きで購入可能です。


原則、医療用の医薬品は薬局間同士や薬局が医療機関へ販売する場合を除いて、無闇に販売することは慎まなくてはなりません。


医薬品医療機器法 第三十六条の三 第二項
薬局開設者は、薬局医薬品を使用しようとする者以外の者に対して、正当な理由なく、薬局医薬品を販売し、又は授与してはならない。ただし、薬剤師、薬局開設者、医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者、医師、歯科医師若しくは獣医師又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者に販売し、又は授与するときは、この限りでない。

しかし、一般用医薬品の販売による対応を考慮したにもかかわらず、やむを得ず販売を行わざるを得ない場合などにおいては、必要な受診勧奨を行った上で、以下の事項を遵守するほか、販売された処方箋医薬品以外の医療用医薬品と医療機関において処方された薬剤等との相互作用・重複投薬を防止するため、患者の薬歴管理を実施するよう努めることを条件に販売することができます。


条件1 処方箋医薬品以外の医療用医薬品販売にあたり遵守すること

販売数量の限定など(医薬品医療機器法施行規則第158条第7項)


  • 適正な使用のため、他の薬局での購入の有無や処方の有無を確認した上で、販売を行わざるを得ない必要最小限の数量に限って販売しなければいけません。
  • 薬剤師が対面で販売しなくてはいけません。
  • 薬を使う人が購入者でなければいけません。
  • 適正な使用のために必要と認められる数量に限り、販売可能です。
  • 情報の提供及び指導の内容を理解し、質問がないことを確認した後でなければ販売してはいけません。
  • 購入者から相談があつた場合には、情報の提供又は指導を行わなければなりません。
  • 販売した薬剤師の氏名、薬局の名称及び薬局の電話番号その他連絡先を、購入者に伝えなければなりません。


条件2 販売記録の作成など(医薬品医療機器法施行規則第14 条第2項、第5項)



  • 薬局医薬品を販売した場合は、品名、数量、販売の日時等を書面に記載し、2年間保存しなければなりません。
  • 購入者の連絡先を書面に記載し、これを保存しなければなりません。



条件3 処方箋医薬品以外の医療用医薬品は調剤室での保管・分割



  • 医療用医薬品は、原則として、医師等の処方箋に基づく調剤に用いられるものなので、通常、処方箋に基づく調剤に用いられるものとして、調剤室又は備蓄倉庫において保管しなければなりません。
  • 販売に当たっては、薬剤師が調剤室で必要最小限の数量を小分けして販売しなければなりません。



条件4 その他


(1)広告の禁止
患者のみの判断に基づく選択がないよう、全ての医療用医薬品について、一般人を対象とする広告は行ってはいけません。

(2)服薬指導の実施
処方箋医薬品以外の医療用医薬品についても、販売する場合は、処方箋で調剤するのと同様の服薬指導を行わなければいけません。

これは、処方箋医薬品以外の医療用医薬品が、処方箋が必要とないといえども、消費者が自分でその使用を判断する一般用医薬品とは異なり、処方箋医薬品と同様に医療において用いられることを前提としたものだからです。

(3)添付文書の添付等
医療用医薬品を処方箋に基づかずに販売を行う場合は、「分割販売」に当たることから、販売に当たっては、外箱の写しなど医薬品医療機器法第50条に規定する事項を記載した文書及び法第52 条に規定する添付文書又はその写しの添付を行うなどしなければいけません。


処方箋医薬品以外の医療用医薬品の直接販売している薬局

オオギ薬局(東京都三鷹市)
http://ogiyakkyoku.com/


くすりやカホン(北海道)
http://kusuriya-cajon.com/


薬局アットマーク(新潟)
http://www.attomark.com/



参考


日薬・石井副会長 非処方箋薬の積極的な零売「好ましくない」(RISFAX)http://www.risfax.co.jp/risfax/article.php?id=48446

石井甲一(日本薬剤師会副会長)、非処方箋薬の顧客への直接販売(零売)を経営の軸とする形態の薬局について「好ましくない」との考えを示した。非処方箋薬の直接販売は、厚生労働省が05年通知で一定の条件下での販売を認めているが、主旨は「通常の営業形態で処方箋調剤をやっている」薬局が、例えば、普段医師から非処方箋薬の処方を受けている患者に対し、たまたま手元の医薬品がなくなった場合に、調剤用の在庫から「最小限」販売するものと説明。あくまで「調剤の一環」であり「例外的なものを主たる業とすることは意図されていない」とした。
(中略)薬剤師、医療人たるものその主旨を考えて行動すべきであって、法に触れないからやってもいいというのは『いかに儲けるのか』ということになってしまう気がする」と自省を求めている。


処方箋ない薬販売 苦慮 保健所「違法ではないけど…」(2017/5/30 日本経済新聞 電子版)

通常、医師の診察を受けて処方箋をもらわないと購入できない医療用医薬品を処方箋なしでも販売する薬局が登場している。法令上、やむを得ない場合の販売は違法ではないが、専門家は「薬の不適切利用につながる恐れもある」と指摘している。行政も対応に苦慮しており、処方箋に基づく販売を指導し続けている。

2015年8月6日木曜日

牛乳アレルギーの人に投与してはいけない薬、慎重に投与されなければならない薬



添付文書中「禁忌」の項に「牛乳アレルギー」の記載のある主な医療用医薬品

血管拡張剤 
 エマベリン L カプセル

止しゃ剤、整腸剤 
 エンテロノン-R 散
 コレポリーR 散 10%
 耐性乳酸菌散 10%「JG」
 ラックビーR 散
 タンニン酸アルブミン(タンナルビン)

制酸剤、下剤
 ミルマグ錠

たん白アミノ酸製剤
 アミノレバン EN 配合散
 エネーボ配合経腸用液
 エンシュア・H
 エンシュア・リキッド
 ラコール NF 配合経腸用液、
 ラコール NF 配合経腸用半固形剤



添付文書中「慎重投与」の項に「乳製品に対して過敏症の既往歴のある患者」の記載のある主な医療用医薬品

副腎皮質ホルモン剤
 ソル・メドロール静注用(40mgのみ)

ノイラミニダーゼ阻害剤(2015年8月6日追記)
 イナビル
 リレンザ


添加物に「脱脂粉乳」および「カゼイン」を含む一般用医薬品

 幸健生彩
 婦人華N
 ヘルビタS
 ベクニスドラッジェ
 メコプロミン
 ロスミンS
 DHC トローチ
 新ジキナトローチ
 新ルルエーストローチ
 スコールトローチS
 セキサミントローチS
 トピックトローチS
 トローチS

前立腺がん治療薬 イクスタンジ(エンザルタミド)



前立腺から発生するがんを前立腺がんとよびます。


前立腺がんは男性ホルモンの刺激で増殖します。

つまり、男性ホルモンが働かないようにすれば、がんの増大を抑えることができるのです。

治療には主に、LH-RHアゴニスト(またはLH-RHアンタゴニスト)という注射薬で男性ホルモンの分泌を抑える内科的去勢術と、精巣摘除術という手術による外科的去勢術があります。


治療効果はどちらもほぼ同等です。


これらの治療に、抗男性ホルモン薬(男性ホルモンが前立腺がんに働きかけるのを抑える薬)を併用するCAB療法という治療も行われています。



イクスタンジはこの抗男性ホルモン薬に分類される薬剤です。


イクスタンジは外科的又は内科的去勢術が行われた前立腺癌患者に対して使用される薬剤です。


アメリカでは2012年に既に承認され、ガイドラインにも記載されています。

National Comprehensive Cancer Network Clinical Practice Guidelines in Oncology.Prostate Cancer(NCCN ガイドライン)(v.4.2013)

化学療法歴を有する去勢抵抗性前立腺がん患者を対象とした第Ⅲ相試験試験においてエンザルタミド群で OS の有意な延長が認められた結果に基づき、エンザルタミドは、ドセタキセル水和物による化学療法歴を有する去勢抵抗性前立腺がん患者に対して推奨される薬剤である。また、エンザルタミドは、初回アンドロゲン除去療法に対して病勢進行した化学療法歴のない去勢抵抗性前立腺がん患者に対する二次ホルモン療法における治療選択肢の一つである。


既に他の抗男性ホルモン受容体阻害薬で治療をしている患者にイクスタンジは使用できるのか


イクスタンジの作用機序はアンドロゲン(男性ホルモン)の 男性ホルモン受容体への結合を競合的に阻害することで、男性ホルモンが前立腺がんに働きかけるのを抑える薬です。


イクスタンジと同様に男性ホルモン受容体阻害剤であるビカルタミド(カソデックス)及びフルタミド(オダイン)が、日本の臨床現場において既に使用されています。


ビカルタミド及びフルタミドは、男性ホルモン受容体阻害剤として臨床現場で使用されてはいますが、受容体を完全に阻害するのではなく男性ホルモン受容体を刺激してしまう作用を持つことが報告されています。

Choi-iok Wong et al,. Androgen Receptor Antagonist versus Agonist Activities of the Fungicide Vinclozolin Relative to Hydroxyflutamide. J Biol Chem 1995; 270:19998-20003

Yoshida T et al,. Antiandrogen bicalutamide promotes tumor growth in a novel androgen-dependent prostate cancer xenograft model derived from a bicalutamide-treated patient. Cancer Res 2005; 65: 9611-6
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16266977

Chen CD et al,. Molecular determinants of resistance to antiandrogen therapy. Nat Med 2004; 10: 33-9
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14702632

イクスタンジは、受容体刺激作用を作用を示さないようにデザインされた薬剤です。


この点がビカルタミド及びフルタミドとは異なるところです。


試験管の中での結果にはなりますが実際に、イクスタンジの男性ホルモン受容体に対するアゴニスト活性は弱かったというデータがあります。


また、ビカルタミドとフルタミドが効果を示さなかったヒト前立腺癌由来細胞株に対して、イクスタンジが有効だったというデータもあります。




イクスタンジカプセル 40mg

[効能・効果]
去勢抵抗性前立腺癌

[用法・用量]
通常、成人にはエンザルタミドとして160mgを1日1回経口投与する。

[禁 忌]
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

[効能・効果に関連する使用上の注意]
(1) 本剤の化学療法未治療の前立腺癌における有効性及び安全性は確立していない。
(2) 「臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で適応患者の選択を行うこと。

[用法・用量に関連する使用上の注意]
外科的又は内科的去勢術と併用しない場合の有効性及び安全性は確立していない。


2015年8月5日水曜日

高濃度ランタス ランタスXR注ソロスター




インスリン グラルギン(遺伝子組換え)は、2003年10月に日本で承認された持効型インスリンアナログです。

「ランタス注」やバイオ後続品の「インスリングラルギンBS 注 」が販売されています。


持効型インスリンとは


本来人間には2つのインスリン分泌のパターンがあります。

ひとつは24時間続けて分泌する基礎インスリン(Basalインスリン)で、もうひとつは毎食後に分泌される、追加インスリンと呼ばれるタイプのインスリンです。


インスリン治療では、正常な人のインスリンの体内分泌を再現することが理想であると考えられています。

空腹時や毎食後の血糖値がコントロールできない場合、1日1~2回のBasalインスリンと、1日3回食事の前に追加インスリンを打つ方法です。


よくわかるインスリン(サノフィ) http://www.dm-town.com/insulin/start/kind/merit.html

Basalインスリンとして、持効性をもつインスリン グラルギンが使用されます。


また、持効性をもつ他の薬剤に、インスリン デテミル(レベミル注)、インスリン デグルデク(トレシーバ注)もあります。


日本では、低血糖発現に対するおそれや、インスリン療法が医師の指示どおりに実施されないこと等により、インスリン療法中の多くの患者で治療目標を達成できていないことが問題となっています。


1 日 1 回の投与で確実に Basalインスリンが補填できて、血糖値の日内変動が小さく、低血糖の発現リスクが低い Basal インスリンの誕生が望まれていました。


また、Basal インスリンを高用量必要とする患者さんは、現在日本で用いられている持効型インスリンアナログ製剤の 1 日 1回投与による治療では 1 日に必要な Basal インスリン量を十分に補充できず、1 日 2 回投与を必要とする場合がありました。


1 日 2 回に分割することなく少ない注射液量で同じ単位を投与できる製剤の登場が望まれていました。




インスリン グラルギンの持効性の仕組み。

ランタスXR注製品情報概要 改変

インスリン グラルギンは、生理的 pH では溶解度が低いです。


そのため、酸性注射液中では完全に溶解していますが、皮下注射後に無晶性沈殿物が形成されます。


この無晶性沈殿物から持続的に薬剤が放出されることで持効性をもつのです。



ランタスXRとランタスの違い

出典:ランタスXR注製品情報概要


ランタスXR注は、ランタス注(100 単位/mL)に対して、インスリン グラルギンの製剤中濃度を 300 単位/mL に高めた持効型インスリンアナログです。


注射液量を少なくすることで、皮下の無晶性沈殿物の単位量あたりの表面積が小さくなり、投与部位からのインスリン グラルギンの吸収がより緩徐になります。


これにより、ランタス注と比較してより平坦かつ持続的な薬物動態及び血糖降下作用を示すとともに、低血糖リスクの低減が期待できます。




ランタスXR注は、既存の持効型インスリンアナログ製剤であるランタス(100 単位/mL)と比較してインスリン グラルギンの製剤中濃度を高めた製剤(300 単位/mL)です。


投与部位からのインスリン グラルギンの吸収がより穏やかになることで、平坦かつ持続的な薬物動態と血糖降下作用を示すと考えられています。


1 型及び 2 型糖尿病患者を対象とした臨床試験の結果から、ランタスXR注の 1 日 1 回投与における有効性及び安全性はランタス注と同等でした。


また、低血糖発現リスクはランタスと比較して低い傾向が認められました。


しかし、インスリン投与量はランタスと比較してランタスXR注群で大きく増加していました。

この増加は、ランタスXR投与におけるインスリングラルギンの血中濃度の上昇が、ランタスに比べ緩やかになる、つまりベースのインスリン濃度が低いところで平坦に安定的に持続するためと考えられます。



臨床試験においてランタス群よりインスリン投与量は多くなりましたが、注射部位反応、過敏反応及び免疫原性の有害事象の発現状況については同程度で、低血糖及び体重増加のリスクを増大させる傾向は認められませんでした。



ランタスXR注は 1 日1回投与で Basal インスリン量を補充でき、低血糖の発現が少なく、投与タイミングをより柔軟に設定できる製剤です。



よって、低血糖リスクの回避等を目的として、新たにBasal インスリンを開始する場合はランタスXR注の使用が推奨されます。


また、ランタスをすでに使用している場合はランタスXR注への切替えを考慮することが有用であると考えることもできます。。


ただし、ランタスは日本における豊富な使用経験があり、有効性及び安全性が確立していること、ランタスによって低血糖を起こすことなく十分に血糖コントロールされている場合もあるので個々の患者の状態に応じた治療選択肢の一つとして医師の判断により使い分けられることになるでしょう。



ランタスXR注は専用インスリンペン型注入器と組み合わせたプレフィルドシリンジ製剤としてのみ発売です。


したがって他のインスリン製剤の注入器との互換利用は想定されません。


さらに、バイアルや、カートリッジ製剤の発売もありません。






歯を抜く時にワルファリンを中止する必要はありません




ワルファリンは血を固まりにくくする薬です。


脳卒中などの血栓塞栓症を防ぐ目的で投与されます。


従来はワルファリン投与を行っている患者さんに対しては、ワルファリンを数日間中断してから抜歯することが一般的でした。


しかし、抗凝固療法を中断することによる塞栓症や死亡のリスクは無視できないものです。


最近では、ワルファリン継続下での抜歯について多く報告されています。


ランダム化比較試験も実施され、ワルファリン継続下でも安全に抜歯ができることが示されています。

伊藤 弘人 ら,. ワーファリン服用患者の抜歯症例の検討 有病者歯科医療 Vol. 10(2001) No. 1. p23-27
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjmcp1992/10/1/10_1_23/_pdf

川瀬 ゆか ら,.抗血栓薬の維持量投与下での抜歯を優先させた際の対応と止血状態 有病者歯科医療 Vol. 10(2001) No. 2 p.97
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjmcp1992/10/2/10_2_97/_pdf

河野 博之 ら,.人工弁置換術後抗凝血薬療法中の外科的処置 抗凝血状態を維持する管理法の薦め.日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 21(1992) No. 3 .p245-249.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcvs1975/21/3/21_3_245/_pdf

新美 直哉 ら,. 抗凝固療法施行患者の抜歯における出血管理について.日本口腔外科学会雑誌 Vol. 46(2000) No. 7 .p.445-447.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjoms1967/46/7/46_7_445/_pdf

歯科の3学会が合同で作成したガイドラインでは、抜歯前72時間以内にPT-INRが3.0以下であることを確認し、ワルファリン継続下で抜歯を行うことが推奨されています。


そして、術後には,食事の影響や併用する抗菌薬や鎮痛薬などの影響により、INR値の延長がみられることもあり十分に管理を行う必要があるとされています。


科学的根拠に基づく抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン2010年版
http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/tooth/CPGs2010_toothextraction_anticoagulants.pdf



NOACと抜歯



ワルファリン以外の抗凝固薬のNOACについては、エビデンスが十分ではありませんが、現時点ではこれらも抜歯時に継続することが望ましいとされています。


抗凝固薬継続下での抜歯では、特別な局所止血を行わない場合止血するまでには2 〜12 時間、平均5.9時間を要するとの報告があります。


抗凝固薬を継続したまま抜歯しても約6 時間で止血しますが、少量とはいえ長時間出血が続くのは気持ちが良いものではありません。


これを避けるためにも積極的な止血処置が行われるべきと考えられます。


亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏の違い




主薬である酸化亜鉛(亜鉛華)の含有量の違いと勘違いされやすいですが、酸化亜鉛の含有量については、亜鉛華軟膏には日本薬局方収載品なので20%という決まりがありますが、亜鉛華単軟膏は20%(サトウザルベ軟膏 20%)と10%の製品があり含有量に決まりはありません。


では

亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏のおおきな違いはなにかというと、軟膏の基剤です。


亜鉛華軟膏は白色軟膏。

亜鉛華単軟膏は単軟膏。



軟膏基剤の違い


日局 亜鉛華軟膏(酸化亜鉛軟膏)
白色軟膏

白色軟膏は、白色ワセリンにソルビタンセスキオレイン酸エステル(界面活性剤)とサラシミツロウを加えた基剤です。


吸水性が高く、稠度は高くありません。


まれに接触性皮膚炎の副作用を起こすことがあるので注意が必要です。



亜鉛華単軟膏
単軟膏

単軟膏は、ミツロウに植物油(ダイズ油やゴマ油など)を加えた基剤です。


軟膏に稠度を与える目的で使用されます。


皮膚への浸透性はよくありませんが皮膚保護作用をもっています。



使い分け



亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏の効能効果は同じです。

【効能又は効果】
・下記皮膚疾患の収れん・消炎・保護・緩和な防腐
外傷、熱傷、凍傷、湿疹・皮膚炎、肛門瘙痒症、白癬、面皰、癤、よう(癰)
・その他皮膚疾患によるびらん・潰瘍・湿潤面

界面活性剤が配合されている白色軟膏は容易に水分を吸収します。


そのため、滲出液の吸収や皮膚の乾燥を目的に、酸化亜鉛の含有量が多く、基剤に吸水能のある亜鉛華軟膏が選択されます。


一方、あまり乾燥させたくない場合には亜鉛華単軟膏が選ばれます。


酸化亜鉛には、抗炎症作用と共に、創面又は潰瘍面などを乾燥させる作用があるので、酸化亜鉛の含有量が多いと長期使用により皮膚の乾燥を招き、発赤、掻痒が再現してくるため、両薬剤共に注意が必要です。




2015年8月4日火曜日

デュピュイトラン拘縮治療薬 ザイヤフレックス注射用 (コラゲナーゼ(クロストリジウム ヒストリチクム))




デュピュイトラン(Dupuytren)拘縮は、手掌から指にかけて硬結(こぶのようなもの)ができ、皮膚がひきつれて徐々に伸ばしにくくなる病気です。

薬指、小指に多く見られますが、他の指や足の裏にもできることがあります。

出典:日本手外科学会「手外科シリーズ 17」

痛みや腫れなどはありません。


手のひら(手掌)の皮下にある線維性の手掌腱膜(しゅしょうけんまく)の繊維(コラーゲン)が異常増殖する疾患です。


筋線維芽細胞等から産生されたコラーゲンが異常に沈着することで、手掌腱膜に結節や拘縮索が形成されます。


病態が進行すると、指が曲がったまま伸ばしにくくなり、日常生活に影響がでてきます。


日本でのデュピュイトラン拘縮に対する主な治療法は手術療法です。


しかし手掌や指を皮切して病変組織を切除又は切開するので、侵襲性が高く、手術による神経損傷や動脈損傷等の合併症の問題があります。


さらに手術療法には、手術手技の難易度が高いこと、手術後の固定やリハビリテーションが必要であり機能回復まで時間を要すること、再発時の再手術のリスクが高いこと等の問題点もあります。


ザイヤフレックス注射用による治療は拘縮索への注射と伸展処置のみで手術に比べて侵襲性が低く、手の機能に影響を及ぼす合併症の発現割合は低く安全性は高いと考えられます。


デュピュイトラン拘縮(日本整形外科学会) https://www.joa.or.jp/jp/public/sick/condition/dupuytrens_contracture.html

デュプイトラン拘縮(日本形成外科学会) http://www.jsprs.or.jp/member/disease/extremities_malformation/extremities_malformation_08.html

Dupuytren's Disease, p.59-116, Martin Dunitz Ltd; 2000 http://www.amazon.co.jp/Dupuytrens-Disease-Marie-A-Badalmente/dp/1853174750

Rayan GM. Dupuytren disease: Anatomy, pathology, presentation, and treatment. J Bone Joint Surg Am 89: 189-198, 2007 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17256226


ザイヤフレックス注射用は、クロストリジウム属の細菌のクロストリジウム ヒストリチクム由来のコラーゲン分解酵素であるコラゲナーゼ クロストリジウム ヒストリチクムを有効成分とする注射剤です。


コラゲナーゼ クロストリジウム ヒストリチクムは、基質特異性の異なる 2 種類のコラゲナーゼ(クラス I コラゲナーゼ及びクラス II コラゲナーゼ)を含有しています。


これら2種類のコラゲナーゼが相補的に作用することにより、効率よくコラーゲン分子を加水分解すると考えられています。


コラゲナーゼ クロストリジウム ヒストリチクムをデュピュイトラン拘縮索に投与することにより、コラーゲンを主成分とする拘縮索を破断し、デュピュイトラン拘縮に対する効果を示すと考えられています。



治療効果

デュピュイトラン拘縮の治療目標は、指の伸展の制限を軽減し日常生活動作障害を改善することにあります。


指の伸展不足角度は、指角度計で測定することができます。


伸展不足角度が5度以下であれば指の伸展制限がほぼ解消された状態と判断され治療成功とされます。


国内臨床試験では、薬剤最終投与後30日後に治療成功した割合は、投与された85%でした。


また、投与回数は平均で1.2回でした。


治療成功の鍵は、指の伸展処置(リハビリ)です。


リハビリ時に局所麻酔をかけてでも、大きな力で伸ばして、拘縮索を破断することで成功率は上昇すると考えられます。



安全性

ザイヤフレックス注射用は2010年3月から、アメリカでは既に使用されています。


発売されて4年で約6万人に投与されています。


その4年間に約2,300 件の副作用報告がありました。


件数が多かった重篤な副作用は「腱断裂」(45 件)及び「裂傷」(15 件)で、これら以外の重篤な副作用はいずれも 3 件以下でした。



使用できる医師が限定されます

使用できる医師は手外科専門医に限定されます。


かつ、ザイヤフレックス注射用の治療手技等に関する講習の受講が条件となります。


講習内容は、本薬の調製方法、投与部位、投与方法、指の伸展処置の方法、副作用発現時の対応等です。


受講資格は、一般社団法人日本手外科学会認定手外科専門医の方のみとなります。


デュピュイトラン拘縮研究会が制定した「デュピュイトラン拘縮酵素注射療法」適正使用講習を受講し、修了試験に合格された方には「デュピュイトラン拘縮酵素注射療法」適正使用講習修了証が発行されます。


デュピュイトラン拘縮研究会 http://www.dck.jp/activities/system.html


講習を修了した医師及び当該医師の所属する医療機関はデータベースに登録され、本薬の納入は講習を修了した医師が所属する医療機関のみへの納入が許可されます。


なお、欧米の市販後においても同様の方策がとられているようです。



ザイヤフレックス注射用


[効能・効果]
デュピュイトラン拘縮

[用法・用量]

通常、成人には、コラゲナーゼ(クロストリジウム ヒストリチクム)として0.58mg を中手指節関節又は近位指節間関節の拘縮索に注射する。効果が不十分な場合、投与した拘縮索に対する追加投与は 1 ヵ月間の間隔をあけ、最大 3 回までとすること。

[承認条件]

  • 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
  • 本剤についての講習を受け、本剤の安全性及び有効性を十分に理解し、本剤による治療方法に関し精通した医師によってのみ用いられるよう、必要な措置を講じること。