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2015年7月31日金曜日

低ホスファターゼ症治療薬 ストレンジック皮下注(アスホターゼ アルファ)






低ホスファターゼ症は、組織非特異型アルカリホスファターゼ (TNSALP) の遺伝子がうまく機能しなくなる遺伝子の病気です。


TNSALPという酵素が生まれつき体中で作られなかったり、少なかったりするために全身の骨・軟骨に異常が出る難病です。


TNSALPは無機ピロリン酸及びピリドキサール-5'リン酸塩を元に骨の材料を作ったり、細胞の栄養を作ったりしているのですが、低ホスファターゼ症では、TNSALPがはたらかないので無機ピロリン酸及びピリドキサール-5'リン酸塩などのTNSALP基質の濃度が体の中で増えてしまいます。


すると、骨石灰化障害、リン酸やカルシウムの調節障害が引き起こされるのです。



主な症状として、骨の変形や破壊、疼痛、顕著な筋力低下、呼吸不全、けいれん発作、腎機能障害、歯の異常等の複数の臓器の進行性障害があります。


低ホスファターゼ症の一般的な病型は、発症時期によって周産期型、乳児型、小児型及び成人型等に分類されます。


未成年患者の主な死亡原因は呼吸不全です。


最も重症な未成年患者における死亡率は50〜100%とされています。


海外における低ホスファターゼ症は10万人出生あたり1人と推定され、日本における低ホスファターゼ症の患者数は、100〜200人と推定されています。



日本には低ホスファターゼ症を効能・効果として承認された薬剤は今まで存在しておらず、治療法は対症療法のみでした。


乳児期における不十分な胸郭形成に伴う自発呼吸不能に対しては、気管挿管による人工呼吸療法が行われます。

骨の石灰化が障害されることに伴う高カルシウム血症に対しては、カルシウム制限食事療法又はカルシウム排池のための利尿剤の投与が行われます。

中枢神経系のビタミンB6不足に伴うけいれん発作に対してビタミンB6製剤の投与が行われます。

膜性骨の石灰化による頭蓋骨縫合早期癒合症に対しては、外科的手術等が行われます。



ストレンジック皮下注は、ヒトTNSALPの触媒領域、ヒト免疫グロブリン G1のFc領域及び10個のアスパラギン酸の融合タンパク質製剤であり、欠損しているTNSALP を補充します。


そうすることで、骨石灰化を阻害する無機ピロリン酸が分解され、その結果として生成した無機リン酸がカルシウムと結合し、ヒドロキシアパタイト結晶の生成と骨の石灰化が促進され、正常な骨格形成が促されます。


ストレンジック皮下注は低ホスファターゼ症を効能・効果とする希少疾病用医薬品に指定 (指定番号(26薬) 第345号) されています。


Whyte MP, Genetics of Bone Biology and Skeletal Disease. ed. by Thakker RV, et al., Elsevier, San Diego, 2013; 337-60
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0123878292/

Caswell AM, et al.,Hypophosphatasia and the extracellular metabolism of inorganic pyrophosphate: clinical and laboratory aspects. Crit Rey Clin Lab Sci, 1991; 28: 175-232,

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1647780

Whyte MP, Pediatric Bone: Biology and Disease, ed. by Glorieux FH, et al., Academic Press, London, 2012; 771-94

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0123820405/

Greenberg CR, et al., A homoallelic Gly317-->Asp mutation in ALPL causes the perinatal (lethal) form of hypophosphatasia in Canadian mennonites. Genomics, 1993; 17:215-7

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8406453

Fraser D, Hypophosphatasia. Am J Med, 1957; 22: 730-46

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/13410963

Mornet E, et al., A molecular-based estimation of the prevalence of hypophosphatasia in the European population. Ann Hum Genet. 2011: 75: 439-45 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21488855

厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 低フォスファターゼ症の個別最適治療に向けた基礎的・臨床的検討に関する研究 平成21年~23年度 絲合研究報告書

http://www.bone.med.osaka-u.ac.jp/


低ホスフアターゼ症とアルカリフォスファターゼ



低ホスフアターゼ症は、TNSALPをコードする遺伝子の不活化変異により生じる遺伝性疾患です。


ヒトのアルカリフォスファターゼ(ALP)には、小腸型、胎盤型、生殖細胞型及び組織非特異型の4種のアイソフォームが存在しています。


いずれのALPも無機ピロリン酸、ピリドキサール-5'リン酸塩及びホスホエタノールアミン等のリン酸モノエステルの分解を手助けしています。


無機ピロリン酸には骨石灰化阻害作用があります。無機ピロリン酸の分解により生成された無機リン酸は、カルシウムとともにヒドロキシアパタイト結晶を形成し、骨石灰化の調節に重要な役割を担っています。


また、ピリドキサール-5'リン酸塩は、ALPによりピリドキサールに変換されて組織/細胞内へ取り込まれ、活性型ビタミンB6として生体内の種々の酵素反応の補酵素として機能します。



TNSALPは体内に広く分布しています。


とくに肝臓、腎臓及び骨において高度に発現が認められています。


Buchet R, et al., Multisystemic functions of alkaline phosphatases. Methods in Molecular Biology, 2013; 1053: 27-51
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23860646



骨型TNSALPは、骨芽細胞膜及び軟骨細胞膜及び基質小胞膜に発現し、主に骨石灰化における無機ピロリン酸分解機能を担っています。



肝型TNSALPは肝の毛細胆管及び内皮細胞に発現し、エンドトキシンの脱リン酸化機能を有することが報告されていますが、肝型TNSALP欠損に起因する肝臓病変は報告されていません。


TNSALPは、通常グリコシルホスファチジルイノシトールを介して細胞膜にアンカーされています。


しかし、骨型及び肝型TNSALP は、一部血中へ放出され全身循環しており、血中ALP活性の約95%を占めることが報告されています。

Magnusson P, et al., Different responses of bone alkaline phosphatase isoforms during recombinant insulin-like growth factor-I (IGF-I) and during growth hormone therapy in adults with growth hormone deficiency. J Bone Miner Res, 1997; 12: 210-20
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9041052


腎型TNSALPは、近位尿細管に発現が認められ、その機能は十分に明らかにされていません。


しかし一部の低ホスファターゼ症患者で腎石灰化が認められることから、局所的な 無機ピロリン酸代謝に関連した石灰化に寄与している可能性が考えられています。


Belachew D, et al., Infantile hypophosphatasia secondary to a novel compound heterozygous mutation presenting with pyridoxine-responsive seizures. JIMD Rep, 2013; 11:17-24
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23479201

Baumgartner Sigl S, et al., Pyridoxine-responsive seizures as the first symptom of infantile hypophosphatasia caused by two novel missense mutations (c.677T>C, p.M226T; c.1112C>T, p.T371I) of the tissue-nonspecific alkaline phosphatase gene. Bone, 2007, 40: 1655-61

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17395561

低ホスファターゼ症では、無機ピロリン酸の上昇によりヒドロキシアパタイトの生成が抑制され、骨石灰化が阻害されることによって、くる病又は骨軟化症が発現し、高カルシウム血症及び高リン酸血症が発現することもあります。


また、ピリドキサール-5'リン酸塩の調節不全により、組織 /細胞中ビタミンBa欠乏を生じ、中枢神経系において神経伝達物質の生合成阻害 (y-アミノ酷酸合成 におけるグルタミン酸デカルボキシラーゼ活性低下等) に伴うビタミンB6依存性けいれん発作が生じると考えられています。


ストレンジック皮下注の作用機序



ALPのはたらきを補うためにALPを静脈内投与しても、低ホスファターゼ血症は是正されるのですが骨におけるX線学的所見は改善しなかったというデータがあります。


このことから、効率的な骨石灰化にはTNSALPの骨への局在が重要であると考えられています。


ストレンジック皮下注は骨の構成成分であるハイドロキシアパタイトに結合することにより、骨への組織選択性を向上させると考えられていいます。


ストレンジック皮下注を投与することで、主に骨におけるTNSALP活性が正常化され、蓄積された無機ピロリン酸やピリドキサール-5'リン酸塩などの生体内基質が低下することにより、骨石灰化異常の改善が期待されます。


Whyte PM, et al., Infantile hypophosphatasia: enzyme replacement therapy by intravenous infusion of alkaline phosphatase-rich plasma from patients with Paget bone disease. J Pediatr, 1982; 101: 379-86
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7108657

Whyte PM, et al., Enzyme replacement therapy for infantile hypophosphatasia attempted by intravenous infusions of alkaline phosphatase-rich Paget plasma: results in three additional patients. J Pediatr. 1984; 105: 926-33

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/6502342



ストレンジック皮下注12mg/0.3mL
ストレンジック皮下注18mg/0.45mL
ストレンジック皮下注28mg/0.7mL
ストレンジック皮下注40mg/1mL
ストレンジック皮下注80mg/0.8mL


[効能・効果]
低ホスファターゼ症


[用法・用量]
通常、アスホターゼ アルファ(遺伝子組換え)として、1回1mg/kgを週6回、又は1回2 mg/kgを週3回皮下投与する。なお、患者の状態に応じて、適宜減量する。



2015年7月24日金曜日

βブロッカー投与中の患者さん 注意すること




従来高血圧治療の第一選択薬の一つとして位置付けられていたβブロッカーでしたが、2014年改訂された高血圧治療ガイドライン2014では、主として心疾患合併高血圧に対して選択すべき薬剤とされ、第一選択薬からは除外されてしまいました。


除外された理由は、近年の臨床試験でβブロッカーを使うと糖尿病になりやすくなる作用があることが分かり、さらに臓器障害や心血管病の抑制効果が他の薬に比べて劣るというデータが明らかになったためです。

Elliott WJ, et al,.Incident diabetes in clinical trials of antihypertensive drugs: a network meta-analysis. Lancet. 2007 ; 369(9557):201-207. 
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17240286

Opie LH,.Beta-blockade should not be among several choices for initial therapy of hypertension. J hypertens.2008;26(2):161-163.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18192824

しかし、βブロッカーは高血圧治療の第一選択薬を除外されてしまいましたが、今でも多くの患者さんに使用されています。


それは、高血圧治療の目的が、単に血圧を下げることだけとは限らないからです。


頻脈性心房細動による動悸や息切れがQOLを低下させたり、心不全を誘発する場合や安定労作性狭心症があって冠動脈インターベンションが行えない場合などにβブロッカーはとても有用な薬剤なのです。


高血圧に加えて心不全、頻脈、狭心症の合併や、心筋梗塞後であれば、βブロッカーが積極的に使用すべき薬剤となります。


βブロッカーを開始する際には、副作用を見落とさない慎重さが求められます。


少量から導入されているかチェックします。


特に糖尿病、異型狭心症、気管支喘息、徐脈が疑われるときは十分な注意が必要です。


こと徐脈に関しては、自覚症状がないとしても安静時の心拍数が1分間に50回を下回るようであれば、服用中止と他の降圧薬への変更を提案します。


徐脈の自覚症状には、めまいや目の前が暗くなるなどがあります。


患者さんとの話の中で、どことなくだるくて元気がない、ぼやっとするなどのとらえどころのない訴えがある場合も要注意です。

2015年7月23日木曜日

妊娠中や授乳中に頭痛薬を使用してよいか




妊娠や出産・授乳期であっても絶対に薬を飲んではいけないことはありません


頭痛時の適切な対処法を知り、頭痛時の不安を取り除くことがとても大切です。



妊娠や出産・授乳期は、催奇形性や赤ちゃんへの薬が移行する可能性を考えて、できるだけ薬を薬に頼らない治療を選択することが望ましいとされますが、頭痛の発作がひどく治療が必要な場合には薬を使います。


頭痛がとてもひどい場合には、まずアセトアミノフェンが勧められます。


妊娠期間中のトリプタン系薬剤使用の安全性は確立されていません。


ただし、妊娠初期にトリプタン系薬剤を使用しての胎児奇形発生率の増加は報告されていません。


片頭痛患者さんが妊娠した場合、妊娠中は片頭痛の発作は減るので、予防薬を必要とされる患者さんは極めてめずらしいです。


授乳婦がトリプタン系薬剤を使用した場合には、スマトリプタンは使用後12時間、その他のトリプタン系薬剤は24時間経過した後に授乳するのがよいとされています。


とはいえ、薬を飲むと授乳を中止せざるを得なくなりますね。



では、薬を使わない方法にはどのようなものがあるかというと。


リラクゼーション、バイオフィードバック、鍼治療、アロマテラピーがあります。


妊娠中の生活は、できるだけストレスをためないようにして、寝不足や寝過ぎや空腹、眩しい光や騒音を避け、刺激を受けないようにしましょう。


洋服は、発作を誘発するようなきつい服装にせず、ゆったりくつろげる服を選びましょう。


ストレス発散方法を見つけ、いつでも相談できる人を探しておくようにしましょう。


片頭痛発作が起きた時には、明るすぎない場所で安静になります。


次に、こめかみを冷やします。


家族には家事や育児を手伝ってもらうようにするとストレス軽減になります。

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015版 治療薬の有効性評価一覧





2015年7月に「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」の2015年改訂版が公表されました。

2016年1月から骨粗鬆症学会ホームページでPDFファイルをダウンロードできます。
http://www.josteo.com/ja/index.html


前回のガイドライン発表の2011年から4年経っての大幅改訂です。



今回の改訂の目玉は、前回のガイドライン以降に発売された治療薬がどのような位置づけとして評価されたかというものです。



前回のガイドライン以降に発売された治療薬は、ビスホスホネート薬のボンビバ、副甲状腺ホルモン薬のテリボン、抗LANKL抗体薬のプラリアです。



2015年版ガイドラインには、骨粗鬆症治療薬の有効性評価一覧が掲載されています。



これは、2011年版ガイドラインの骨粗鬆症治療薬の推奨グレード一覧から変更されたものです。



2011年版では骨密度や各骨折に対しての治療薬の推奨度をA~Dで分類していました。



これが、2015年版では改められ、骨密度上昇効果と骨折発生抑制効果に関して治療薬の有効性をA~Cの3段階で評価しています。



推奨度ではなく、薬剤に関する有効性の評価に変わりました。



骨密度上昇効果
評価A
上昇効果がある
評価B
上昇するとの報告がある
評価C
上昇するとの報告はない

骨折発生抑制効果
評価A
抑制する
評価B
抑制するとの報告がある
評価C
抑制するとの報告はない


ここまで、明瞭に評価されると、評価Aは使いやすいですし、評価Cには使用を躊躇しそうです。







注目の薬剤の位置付けは、



ボンビバは、骨密度の上昇効果や背骨の骨折抑制には有効性がありますが、その他骨折の抑制報告はないようです。



テリボンは、骨密度の上昇効果や背骨の骨折抑制には有効性がありますが、その他骨折の抑制報告はないようです。

フォルテオでは非椎体骨折抑制の報告があるので、同じ副甲状腺ホルモン薬でも有効性が異なるようです。



プラリアは骨密度の上昇効果およびすべての骨折に対して抑制するとの報告があるようです。



大腿骨近位部骨折を抑制する、とされた治療薬はプレマリンとボナロンやベネットそしてプラリアです。


大腿骨近位部骨折は寝たきりの原因となり得るもので、高齢化がすすむ中、予防をしていかなければなりません。



手軽で安価なビスホスホネートのボナロンやベネットですが、飲み忘れや飲み方が難しいという声も聞かれます。



プラリアは高価ですが、6ヶ月に1回の注射で済みます。

在宅や施設などで頻回の通院が困難な場合もあり、6ヶ月に1回というのは助かります。

今後も注目されていく薬剤となるでしょう。




骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版

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2015年7月15日水曜日

エリテマトーデス治療薬 プラケニル錠(ヒドロキシクロロキン硫酸塩)




プラケニル錠はヒドロキシクロロキン硫酸塩を有効成分とする抗炎症作用、免疫調節作用、抗マラリア作用、細胞増殖抑制作用等を有する薬剤です。



1955年4月に米国で承認されて以降、2015年3月時点では、主にマラリア、全身性エリテマトーデス(SLE:Systemic Lupus Erythematosus)、円板状エリテマトーデス(DLE:Discoid Lupus Erythematosus)、関節リウマチの治療薬として 70 ヵ国以上で承認されています。



日本でも、以前はヒドロキシクロロキン硫酸塩を有効成分とする経口剤が製造許可され販売されていたことがありました。


プラキニール錠やエルコクイン錠の商品名で販売されていました。


これらのお薬はマラリア、関節リウマチ、ランブリア症、円板状エリテマトーデス、多形日光疹等に対し使用されていました。



しかし、1960年ごろヒドロキシクロロキン硫酸塩と類薬である、クロロキンの高用量での使用による網膜症が国内外から報告が相次ぎました。



いわゆるクロロキン薬害事件の発生です。



これにより、日本国内ではクロロキンは1974 年に製造中止となり、誘導体であるヒドロキシクロロキン製剤も販売を中止してしまいました。



しかしながら、海外ではヒドロキシクロロキンを1日平均投与量として 6.5 mg/kg を超えない用量で投与すれば網膜障害を含む眼障害が発現するリスクは低いことが明らかとなり、エリテマトーデスの治療に長年にわたり使用され続けています。





エリテマトーデスとは、

皮膚をはじめ種々の臓器に炎症の症状が現れる自己免疫性結合組織疾患の総称です。


エリテマトーデスには皮膚エリテマトーデスと全身性エリテマトーデス2種類あります。


皮膚症状を主体とするのが皮膚エリテマトーデス(CLE:Cutaneous Lupus Erythematosus)です。円板状エリテマトーデスや深在性エリテマトーデスのように皮膚病変の診断名として使用される場合もあります。



皮膚症状のみならず、発熱、関節痛、口腔潰瘍、日光過敏、貧血、タンパク尿等の様々な全身症状を伴い、多臓器に障害を及ぼすのが全身性エリテマトーデスです。






世界標準から取り残された日本のエリテマトーデス治療



ヒドロキシクロロキンは国際的に有名な医学書(教科書)のハリソン内科学にエリテマトーデス治療の第一選択薬として記載があります。


さらに、海外のエリテマトーデス診療ガイドラインに全身性エリテマトーデスや皮膚エリテマトーデスの標準的治療薬としてヒドロキシクロロキンは位置付けられています。

Kuhn A et al. J Am Acad Dermatol. 65: e179-193, 2011
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20739095

American College of Rheumatology Ad Hoc Committee on Systemic Lupus Erythematosus Guidelines. Arthritis Rheum. 42:1785-1796,1999

https://www.rheumatology.org/practice/clinical/guidelines/Referral_Mgmt_SLE_Adults.pdf

Bertsias G et al. Ann Rheum Dis. 67: 195-205, 2008

http://ard.bmj.com/content/67/2/195.long


一方、日本では、ヒドロキシクロロキンは市販されておらず、エリテマトーデスに対する治療は副腎皮質ステロイドの局所投与及び全身投与が多用されていました。



副腎皮質ステロイドの全身投与による副作用に悩まされているエリテマトーデス患者さんも少なくなく、個人輸入でヒドロキシクロロキンを入手し使用されるケースもありました。



個人輸入による医薬品の使用は、非常に危険な行為です。
偽造医薬品や粗悪品の使用リスクが高く、それらを使用したことによる副作用に対する被害救済も受けることができないためです。



このような背景があり、日本ヒドロキシクロロキン研究会がプラケニル錠をエリテマトーデス治療に使用できるよう要望書を国へ提出しました。



そして、厚生労働省の第6回医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において医療上の必要性の高い薬剤に該当するとの評価を得ることができました。



プラケニルは用法・用量に注意しましょう



用量設定は実体重ではなく理想体重です。



プラケニルは投与しても脂肪組織へは移行しにくい薬物です。



そのため、実体重に基づいて投与すると、特に肥満患者では過量投与となる恐れがあります。



過量投与によって網膜障害等の副作用発現リスクが高まる可能性があるため、実体重ではなく、理想体重(下表)に基づいて投与量を決定することになっています。


理想体重は実際の身長から算出します。(ブローカー式桂変法)





用法について、理想体重が46kg以上62kg未満の患者ではプラケニル200mgと400mgを1日おきに交互に投与しなくてはなりません。


とても煩雑です。




【関連】
クロロキン薬害事件とヒドロキシクロロキン

2015年7月10日金曜日

特発性肺線維症治療薬 オフェブカプセル(ニンテダニブエタンスルホン酸塩)



オフェブカプセルの有効成分であるニンテダニブエタンスルホン酸塩は、腫瘍細胞の増殖を抑制する血管新生阻害化合物の探索研究において発見されました。



ニンテダニブは、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)の受容体型チロシンキナーゼの ATP 結合部位に競合的に結合し、リガンドとの結合を介した自己リン酸化を阻害することにより、細胞内シグナル伝達を阻害すると考えられています。


特発性肺線維症


特発性肺線維症は、特発性間質性肺炎の疾患分類の一つです。



肺胞隔壁で炎症・線維化病変が起こる疾患です。



特発性肺線維症の発症機序は明らかではありません。



外的刺激や内因的刺激により肺胞上皮と基底膜が傷害され、その修復過程で線維芽細胞が増殖したり細胞外基質が過剰に増えたりすることで線維化病変が形成されると考えられています。



病状が進行すると呼吸困難、肺機能の悪化、急性の呼吸機能低下がおきます。



最終的に死に至る難治性疾患です。



特発性肺線維症と診断された方の生存期間は2~3年との報告もあります。

Raghu G et al.An official ATS/ERS/JRS/ALAT statement: idiopathic pulmonary fibrosis: evidence-based guidelines for diagnosis and management. Am J Respir Crit Care Med. 183: 788-824, 2011
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21471066




日本で特発性肺線維症に対する治療薬として承認されている薬剤はピルフェニドン(ピレスパ錠)のみでした。



他の薬物療法として副腎皮質ステロイド、アザチオプリン、シクロホスファミド水和物、アセチルシステイン等が医療現場では使用されています。



また、薬物療法以外の治療法として肺移植の選択肢もあります。



しかし、日本での肺移植適応は困難なため、新たな特発性肺線維症治療薬が医療現場で強く求められていました。




作用機序


特発性肺線維症等の線維症では、細胞外基質タンパク質を産生する線維芽細胞が正常な制御を受けずに増殖してしまっています。



増殖した線維芽細胞は筋線維芽細胞となり細胞外基質を産生します。



その細胞外基質が肺胞壁に過剰に沈着する結果、肺胞構造の変形やガス交換の障害を来すと考えられています

King TE et al.Idiopathic pulmonary fibrosis. Lancet.378: 1949-1961, 2011http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21719092



さらに、肺線維症の発症には、筋線維芽細胞の増殖、遊走や寿命の延長に対して促進作用を有するPDGFが関与しています。

Bonner JC.Regulation of PDGF and its receptors in fibrotic diseases. Cytokine Growth Factor Rev. 15: 255-273, 2004http://www.cgfr.co.uk/article/S1359-6101(04)00016-4/abstract



特発性肺線維症患者の肺組織中上皮、内皮そして平滑筋細胞/筋線維芽様細胞において FGF 及び FGFR-1 発現の増加や、間質細胞において FGFR-2 発現の増加が認められています。

Inoue Y et al.Basic fibroblast growth factor and its receptors in idiopathic pulmonary fibrosis and lymphangioleiomyomatosis. Am J Respir Crit Care Med. 166:765-773, 2002
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12204879



血清中 VEGF 濃度が高値を示す特発性肺線維症患者の生存率に低い傾向が認めらたと報告もされています。


Ando M et al.Significance of serum vascular endothelial growth factor level in patients with idiopathic pulmonary fibrosis. Lung. 188: 247-252, 2010http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20066538


受容体型チロシンキナーゼであるPDGFR、FGFR 及び VEGFR を選択的に阻害することで特発性肺線維症の病態の進行を抑制します。









オフェブカプセルとピレスパ錠


日本呼吸器学会、米国胸部学会議(American Thoracic Society)、欧州呼吸器学会(European Respiratory Society) 及び 南米胸部学会(Latin American Thoracic Association) の診療ガイドラインにおいて、アザチオプリン、シクロホスファミド及びシクロスポリン等の免疫抑制剤は特発性肺線維症に対する効果が乏しいので特発性肺線維症患者の治療には推奨されていません。



また、特発性肺線維症治療におけるコルチコステロイドの単独投与及び免疫抑制剤との併用使用も推奨されていません。



ピルフェニドン(ピレスパ錠)については、一部の患者では選択肢となり得ると記載されていますが、大多数の特発性肺線維症患者に対して使用することは推奨されていません。



現在、特発性肺線維症に使用可能な主な薬剤はニンテダニブ(オフェブ)及びピルフェニドン(ピレスパ)の 2 剤です。



オフェブとピレスパは、いずれも、努力肺活量(FVC)、肺活量(VC)等を指標に病態の進行抑制効果が示されています。



オフェブとピレスパを直接比較する臨床試験はこれまで実施されていないので使い分けは不明です。



特発性肺線維症の治療に際してオフェブを用いた治療を開始すべきか、ピレスパで開始するかどうかについては、個々の患者の状態を考慮した上で、判断されます。

Raghu G et al. An official ATS/ERS/JRS/ALAT statement: idiopathic pulmonary fibrosis: evidence-based guidelines for diagnosis and management. Am J Respir Crit Care Med. 183: 788-824,2011
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21471066



オフェブとピレスパの併用


オフェブとピレスパの作用機序は異なっています。

そのため、併用される可能性もあります。



併用時の安全性について、オフェブカプセルの国内臨床試験で検討されています。



オフェブとピレスパ併用とオフェブ単独の有害事象の発現は併用投与例で悪心及び嘔吐の割合が高くなっていました。

下痢の発現割合は同程度でした。



しかし、症例数が少なく、投与期間も短いデータなので併用投与の可否は慎重に判断する必要があります。

2015年7月9日木曜日

フェロミアは制酸剤と併用しても服用時間をあける必要はありません



鉄剤には制酸剤を併用すると吸収が悪くなるので、併用する際には服用時間をずらすなどが必要なものがあります。



両薬剤の添付文書の使用上の注意に併用注意として記載されています。



しかし、すべての鉄剤が制酸剤と併用すると吸収が悪くなるわけではありません。



鉄剤の種類には、無機鉄と有機鉄があります。


無機鉄:硫酸鉄(フェロ・グラデュメット錠)
有機鉄:クエン酸第一鉄ナトリウム(フェロミア錠)


制酸剤と鉄剤の併用が問題となるのは無機鉄の場合です。



制酸剤は胃内pHを高め、制酸剤に含まれる陰イオン(炭酸イオン、水酸化イオン)と鉄が高分子の重合体を形成しやすくなります。



高分子鉄重合体は吸収されにくく、また吸収可能な低分子量の鉄が少なくなってしまうことで鉄の吸収が低下してしまいます。



硫酸鉄と制酸剤との併用により鉄吸収阻害が臨床においても報告されています。

O'Neil-Cutting MA, Crosby WH, The Effect of Antacids on the Absorption of Simultaneously ingested Iron, J.Amer.Med. Assoc, 255, 1468-1470 (1986) .
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3005669

Hall GJ, Davis AE, Inhibition of iron absorption by magnesium trisilicate, Med. J. Aust. , 2, 95-96 (1969) .http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/5803866

G. Ekenved, Influence of a liquid antacid on the absorption of different iron salts, Scand. J. Haematol.(Suppl.) , 28, 65-77 (1976) .
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1064903




クエン酸第一鉄ナトリウムは酸性から塩基性の広いpH域で低分子鉄として溶解することが報告されています。


したがいまして、クエン酸第一鉄ナトリウムは制酸剤の影響を受けにくいと考えられています。
石野芳雄,Physico-chemical properties and stability of tetrasodium biscitrato iron (II). 医薬品研究,19,44-52(1988).
http://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/200902030883595066



フェロミアは制酸剤の影響を受けにくい。

無機鉄は酸性の水溶液中では6個の水分子がくっついて溶解しています。


Fe(H2O)6 2+の状態で存在



塩基性になるとpHの上昇により水分子のH+が解離します。



そして、鉄が水酸化イオンと手を取り合い-Fe-OH-Fe-OH-Fe-のように無限の鎖をなすことで、高分子鉄重合体が形成されます。



硫酸鉄のような錯体構造を持たない鉄は水溶液中でpHが上昇するとH+が外れ容易に高分子鉄重合体を形成してしまいます。



一方、クエン酸第一鉄ナトリウムはクエン酸との錯体構造を形成しています。



水分子の影響を受けないので水溶液中のpHが上昇した状態でも、クエン酸と鉄分子が安定して低分子キレートを形成できます。



クエン酸第一鉄ナトリウムは制酸剤との併用による吸収阻害を受けにくい経口鉄剤であると考えられます。



以上のような事実が明らかになってはいますが、すべての鉄剤と制酸剤を包括して同様あるいは同程度の相互作用として添付文書に記載されています。



鉄剤と制酸剤をみたら脊髄反射的に疑義照会するのではなく、無機鉄と有機鉄の違いを理解して対応しましょう。



2015年7月8日水曜日

C型肝炎治療薬 ハーボニー配合錠(レジパスビル アセトン付加物/ソホスブビル)



※話題となっている価格に関しては触れていません。


ハーボニー配合錠は、レジパスビル 90 mg 及び ソホスブビル 400 mg を有効成分として含有する配合剤です。



レジパスビルは、C型肝炎ウイルスの複製に関わるNS5Aを阻害することにより、ウイルスの増殖を抑制すると考えられています。



ソホスブビルは、平成27年3月にジェノタイプ2のC型肝炎ウイルス感染症治療薬として承認された「ソバルディ錠400mg」の有効成分です。



ソホスブビルの活性代謝物のウリジン三リン酸体はC型肝炎ウイルスの複製に関わるNS5Bポリメラーゼを阻害することでウイルスの増殖を抑制すると考えられています。



海外では、C型肝炎ウイルス感染症治療薬としてで米国及び欧州を含め34カ国で承認されています。(2015年2月)



C型肝炎ウイルス感染者は、世界で約1億8000万人います。
Ghany MG et al, Diagnosis, management, and treatment of hepatitis C: an update. Hepatology, 49(4): 1335-1374, 2009


日本には130万~240万人いて、そのうち約70%がジェノタイプ1と推定されています。
Sievert W et al, A systematic review of hepatitis C virus epidemiology in Asia, Australia and Egypt. Liver Int, 31 Suppl 2: 61-80, 2011
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21651703



現在、日本のC型慢性肝炎患者(ジェノタイプ1)に対する治療薬として以下が承認されています。


インターフェロン製剤
リバビリン
NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤
 テラプレビル
 シメプレビル
 アスナプレビル
 バニプレビル
NS5A阻害剤
 ダクラタスビル


2015年7月レジパスビル アセトン付加物/ソホスブビル配合錠がC型慢性肝炎患者(ジェノタイプ1)に対する治療薬として新たに承認されました。


C型肝炎の治療とハーボニー錠の位置付け

ガイドラインでは、C型慢性肝炎患者のうち、



インターフェロン適格で未治療の高ウイルス量患者及びインターフェロン適格の前治療後再燃患者は、シメプレビル又はバニプレビルとペグインターフェロン/リバビリンとの3剤併用レジメンが推奨されています。

インターフェロン適格の前治療無効患者は、シメプレビル又はバニプレビルとペグインターフェロン/リバビリンとの3剤併用レジメン、若しくはダクラタスビル/アスナプレビル併用レジメンが推奨されています。

インターフェロン適格の前治療無効患者並びにインターフェロン不適格の未治療及び不耐容患者では、ダクラタスビル/アスナプレビル併用レジメンが推奨されています。



一方、NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤とペグインターフェロン/リバビリンの3剤併用レジメンで既に治療された患者は、現時点で推奨されている治療法はありません。


また、代償性肝硬変患者に対しては、前治療歴及びインターフェロン適格性に応じて、ペグインターフェロン/リバビリン併用レジメン又はダクラタスビル/アスナプレビル併用レジメンが推奨されています。


NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤とペグインターフェロン/リバビリンの3剤併用レジメンは、インターフェロンやリバビリンの副作用などが問題となることがあります。



ダクラタスビル/アスナプレビル併用は、インターフェロン及びリバビリンを含まないレジメンなので副作用は大幅に軽減されています。



治療効果を示すSVR24率(投与終了24週間後までウイルス陰性化が持続した患者割合)も84.7%と高い値が示されています。



しかし、ジェノタイプ1a患者や投与開始前にNS5A領域の耐性変異を有する患者におけるSVR24率は低くなることが報告されています。



さらに肝機能障害等の有害事象も報告されています。



ハーボニー配合錠は、インターフェロン及びリバビリンを含まない12週間の治療法です。



投与開始前における患者因子及びウイルス因子を問わず、C型慢性肝炎及びC型代償性肝硬変患者(ジェノタイプ1)に対して、高い有効性と安全性が示されています。


ハーボニーとアミオダロンの併用は注意




海外において、ソホスブビルとアミオダロン及びβ受容体遮断薬が併用されていた患者で心不整脈イベントが認められています。



これらの発現機序は現時点では不明ですが、米国添付文書では 、アミオダロンの併用に関しては推奨されない旨及び併用せざるを得ない場合は心モニタリングを旨注意喚起されています。



日本でも同様に注意喚起されています。

ハーボニー配合錠とアミオダロンの併用は可能な限り避けること。

ハーボニー配合錠とアミオダロンを併用する場合には、患者又はその家族に対して併用投与により徐脈等の重篤な不整脈が発現するリスクがあること等を十分説明し、不整脈の徴候又は症状が認められた場合には、速やかに担当医師に連絡するよう指導すること。

併用投与開始から少なくとも3日間は入院下で適切に心電図モニタリングを実施し、退院後少なくとも2週間は患者又はその家族等が心拍数を連日確認し、不整脈の徴候の発現等に注意して十分に観察し、異常が認められた場合には適切な対応を行うこと。

アミオダロンを長期間投与した際の血漿からの消失半減期は消失半減期は19~53日と極めて長いため、本剤の投与開始前にアミオダロンの投与を中止した患者に対しても、上記の対応を実施すること。


NS5A阻害剤での治療が無効だった患者への投与について

NS5A阻害剤を含む治療が無効であった患者に対するハーボニー配合錠投与は推奨できません。



ダクラタスビルを含む治療が無効だった患者の耐性変異を解析すると、NS5A領域の主な耐性変異に、ジェノタイプ1aではQ30E/R、L31M/V及びY93C/N、ジェノタイプ1bではL31I/M/V及びY93Hが検出されました。



非臨床試験で、これら変異に対してレジパスビルの抗ウイルス活性の低下が認められました。
McPhee F et al, Resistance Analysis of Hepatitis C Virus Genotype 1 Prior Treatment Null Responders Receiving Daclatasvir and Asunaprevir. Hepatology, 58(3): 902-911, 2013http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/hep.26388/pdf

Karino Y et al, Characterization of virologic escape in hepatitis C virus genotype 1b patients treated with the direct-acting antivirals daclatasvir and asunaprevir.J Hepatol, 58(4): 646-654, 2013
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23178977



レジパスビルとダクラタスビルで交差耐性が認められていることを踏まえると、NS5A阻害剤を含む治療が無効であった患者に対するハーボニー配合錠投与は推奨できないと考えられます。



NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤既治療患者への投与について


ソホスブビル又はレジパスビルとNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤との間で交差耐性は認められていません。


NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤とペグインターフェロン/リバビリンの3剤併用レジメン施行後の患者に対しての国内外の臨床試験成績も芳しい結果が得られてい。



したがって、NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤とペグインターフェロン/リバビリンの3剤併用レジメン施行後の患者に対し、ハーボニー配合錠投与による有効性は期待できると考えられます。





▽ハーボニー配合錠

[効能・効果]
セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善

[用法・用量]
通常、成人には1日1回1錠(レジパスビルとして90mg及びソホスブビルとして400mg)を12週間経口投与する。



2015年7月3日金曜日

SGLT2阻害薬の代謝の違い




デベルザ、アプルウェイはシトクロムP450(CYP)による酸化代謝を受けます。


ルセフィはCYPとUDPグルクロン酸抱合によって代謝されます。


ほか、ジャディアンス、カナグル、スーグラ、フォシーガはUDPグルクロン酸抱合で主に代謝されます。


排泄に関しては、SGLT2はP糖タンパクの基質となります。


カナグルとジャディアンスはP糖タンパクの他に多剤耐性関連タンパク2(MRP2)や乳がん耐性タンパク(BCRP)の基質にもなります。



SGLT2阻害薬のタンパク結合率の違い



SGLT2阻害薬のタンパク結合率は80%以上です。


なかでもカナグル、ルセフィ、フォシーガ、スーグラは90%以上のタンパク結合率です。



薬が腎臓の糸球体を通過するには分子サイズや電荷そしてタンパク結合率の影響を受けます。



薬は血中ではアルブミンなどの血漿成分と結合した状態で存在しています。



しかし、糸球体を通過できるのはタンパク質と結合していない遊離型の薬物です。



タンパク結合率が少ない薬物ほど組織移行性がよいと考えられています。



一般的にタンパク結合率が異なる薬剤間では臨床効果に差が出るといわれています。



2015年7月2日木曜日

SGLT2阻害薬の消失半減期と最高血中濃度到達時間の比較




SGLT2の消失半減期には薬剤それぞれ差異があります。


短いもので、トホグリフロジン(デベルザ、アプルウェイ)の5.40時間です。


長いのはイプラグリフロジン(スーグラ)の14.97時間です。


大きな開きがあります。



消失半減期の違いが臨床にどのような違いがもたらされるのでしょう。


消失半減期が長いことは臨床効果の持続が期待できます。





SGLT2阻害薬は尿量が増える副作用があります。


特に、消失半減期が長い薬では、その副作用も長く続くことになってしまいます。


したがって、多尿や頻尿、夜間頻尿を生じやすくなります。


一方、消失半減期が短い場合、には夜間頻尿を避けるために朝などの夜間頻尿を生じない時間に服用することで夜間頻尿や低血糖リスクを減らすことができます。