クロロキンによる網膜症
マラリア治療のために開発された「クロロキン」という薬を使った人に、目が見えにくくなる網膜症などの症状が起こりました。
製薬会社や国が薬の危険性について注意を払っていれば、被害を最小限に食い止められたかもしれません。
クロロキンは1955年(昭和30年)ごろに開発されマラリア、リウマチ、全身性エリテマトーデスの適応で発売されました。
そして日本でのみ腎炎、ネフローゼ、てんかんにも適応が認められため、世界に比べより多くの方が使うことになりました。
1962年以降、クロロキンによる網膜症の症例報告が増加しましたが、網膜症が添付文書の使用上の注意に記載されたのは1969年でした。
1972年より再評価が行われ、マラリア、リウマチ、全身性エリテマトーデスに関して有効性があることが1976年に公表されました。
しかし、クロロキンは、薬害裁判の影響を受け1974年に製造中止となっていました。
その後日本で抗マラリア薬の開発はされていません。
クロロキン薬害が生じた背景には、有効性データが乏しく本来適応として承認されてはいけない疾患が承認され投与されてしまった点があります。
現在の欧米のクロロキン投与の用法では 4mg/kg/日以下が推奨されていますが当時の日本では 900~1800 mg/日という7倍近い量が投与されてしまっていた点があります。
さらに、副作用を早期に見つけるための網膜スクリーニングの体制が整うまでに時間がかかったことなどが挙げられます。
横川直人, わが国で使えない薬:ヒドロキシクロロキンとミコフェノール酸モフェチル.カレントテラピー 28 :87-91, 2010
http://www.d3.dion.ne.jp/~lifemdc1/ct28-10.pdf
製薬会社や国が薬の危険性について注意を払っていれば、被害を最小限に食い止められたかもしれません。
クロロキンは1955年(昭和30年)ごろに開発されマラリア、リウマチ、全身性エリテマトーデスの適応で発売されました。
そして日本でのみ腎炎、ネフローゼ、てんかんにも適応が認められため、世界に比べより多くの方が使うことになりました。
1962年以降、クロロキンによる網膜症の症例報告が増加しましたが、網膜症が添付文書の使用上の注意に記載されたのは1969年でした。
1972年より再評価が行われ、マラリア、リウマチ、全身性エリテマトーデスに関して有効性があることが1976年に公表されました。
しかし、クロロキンは、薬害裁判の影響を受け1974年に製造中止となっていました。
その後日本で抗マラリア薬の開発はされていません。
クロロキン薬害が生じた背景には、有効性データが乏しく本来適応として承認されてはいけない疾患が承認され投与されてしまった点があります。
現在の欧米のクロロキン投与の用法では 4mg/kg/日以下が推奨されていますが当時の日本では 900~1800 mg/日という7倍近い量が投与されてしまっていた点があります。
さらに、副作用を早期に見つけるための網膜スクリーニングの体制が整うまでに時間がかかったことなどが挙げられます。
横川直人, わが国で使えない薬:ヒドロキシクロロキンとミコフェノール酸モフェチル.カレントテラピー 28 :87-91, 2010
http://www.d3.dion.ne.jp/~lifemdc1/ct28-10.pdf
クロロキン年表
1955年
クロロキンが網膜症を起こすしくみはまだよく分かっていません。
クロロキンは、メラニン色素に高い親和性を持つことが知られていて、メラニン親和性の比較試験の標準物質としても利用されています。
そのメラニン親和性のために、メラニンを多く含有する眼球網膜などの組織に特異的に分布し残留・蓄積した結果として、網膜の神経節細胞及び光受容体を含む神経網膜の損失、並びに網膜色素上皮の萎縮をきたすと考えられています。
Duncker G, et al : Chloroquine-induced lipidosis in the rat retina : a functional and morphological study. Ophthalmologica 209 : 79-83, 1995.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7746650
欧米での治療ガイドラインにおいて、全身性エリテマトーデスおよび皮膚エリテマトーデスに対して、ヒドロキシクロロキンは標準的な治療薬として位置付けられています。
しかし、日本においては未承認薬であるため、個人輸入により治療に用いられてきました。
こうした背景から、関連学会と連携する研究会の要望に基づいて厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において評価がなされ、医療上の必要性が高い薬剤として2010年12月、サノフィが開発要請を受けました。
ヒドロキシクロロキン硫酸塩は、4‐アミノキノリン類に属し、主な作用として抗炎症作用、免疫調節作用、抗マラリア作用を有する薬剤です。
クロロキンと類似した作用機序及び化学構造を持ちます。
しかしクロロキンと比較して、組織に対する結合は弱いためヒドロキシクロロキンはクロロキンより網膜毒性は低くいとされ未承認薬・適応外薬検討会議では
と評価されています。
プラケニル錠200mg(ヒドロキシクロロキン硫酸塩、サノフィ)という名称で「皮膚エリテマトーデス・全身性エリテマトーデス」を効能・効果し、2015年8月収載予定です。
医療上の必要性の高い未承認薬ヒドロキシクロロキンの製造販売承認申請について(サノフィ)
http://www.sanofi.co.jp/l/jp/ja/download.jsp?file=B808572E-8390-435D-9E78-4CD682D3AE15.pdf
- クロロキン(レゾヒン;吉富製薬-武田薬品)の発売開始。
- 適応症としてマラリア、慢性関節リウマチ様関節炎、亜急性・慢性エリテマトーデス、腎
- 角膜症の報告。
- クロロキンによる眼障害は1948年から報告されはじめた。
- Hobbsらクロロキンによる網膜症の発現例報告。
- クロロキン製剤であるキドラ(小野薬品)が販売開始。
- 適応症として腎炎
- 中野彊らクロロキンによる網膜症発現報告。
- 日本においても網膜症発現報告が増加。
- 視力障害に関する外国論文の数27編。
- クロロキン劇薬・要指示薬指定。
- 厚生省は「本剤の連用により角膜障害、網膜障害等の眼障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い異常があらわれた場合には投与を中止すること」とするクロロキン添付文書の使用上の注意改訂指示。
- 「クロロキン被害者の会」が結成
- クロロキン製剤製造中止。
- クロロキン販売メーカーが東京地裁に提訴される(1988年和解)
クロロキン網膜症の機序
クロロキンが網膜症を起こすしくみはまだよく分かっていません。
クロロキンは、メラニン色素に高い親和性を持つことが知られていて、メラニン親和性の比較試験の標準物質としても利用されています。
そのメラニン親和性のために、メラニンを多く含有する眼球網膜などの組織に特異的に分布し残留・蓄積した結果として、網膜の神経節細胞及び光受容体を含む神経網膜の損失、並びに網膜色素上皮の萎縮をきたすと考えられています。
Duncker G, et al : Chloroquine-induced lipidosis in the rat retina : a functional and morphological study. Ophthalmologica 209 : 79-83, 1995.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7746650
ヒドロキシクロロキンが全身性エリテマトーデス治療薬として開発中
欧米での治療ガイドラインにおいて、全身性エリテマトーデスおよび皮膚エリテマトーデスに対して、ヒドロキシクロロキンは標準的な治療薬として位置付けられています。
しかし、日本においては未承認薬であるため、個人輸入により治療に用いられてきました。
こうした背景から、関連学会と連携する研究会の要望に基づいて厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において評価がなされ、医療上の必要性が高い薬剤として2010年12月、サノフィが開発要請を受けました。
ヒドロキシクロロキン硫酸塩は、4‐アミノキノリン類に属し、主な作用として抗炎症作用、免疫調節作用、抗マラリア作用を有する薬剤です。
クロロキンと類似した作用機序及び化学構造を持ちます。
しかしクロロキンと比較して、組織に対する結合は弱いためヒドロキシクロロキンはクロロキンより網膜毒性は低くいとされ未承認薬・適応外薬検討会議では
「本剤は、クロロキン網膜症の懸念があるものの、国際的に適正使用量(<6.5 mg/kg日)が設定されており、また、定められた項目による定期的な眼科的検査を行うことにより充分回避可能であると考える。(ワーキンググループ議事録抜粋)」
と評価されています。
プラケニル錠200mg(ヒドロキシクロロキン硫酸塩、サノフィ)という名称で「皮膚エリテマトーデス・全身性エリテマトーデス」を効能・効果し、2015年8月収載予定です。
医療上の必要性の高い未承認薬ヒドロキシクロロキンの製造販売承認申請について(サノフィ)
http://www.sanofi.co.jp/l/jp/ja/download.jsp?file=B808572E-8390-435D-9E78-4CD682D3AE15.pdf