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2015年5月19日火曜日

微量元素と抗酸化ビタミンは褥瘡の予防と治療に関係する栄養素




微量元素


亜鉛

亜鉛は多くの酵素活性および酵素構造の維持に不可欠な微量元素です。

特に創傷治癒に関与しています。

DNAおよびRNAポリメラーゼ、DNA転写因子など核酸やタンパク合成に必須です。
細胞を再生させるために必要な元素なのです。

さらに過剰な活性酸素を消去する抗酸化酵素 Cu/Zn-SODの構成因子としての役割を担っています。

田中芳明ら. 創傷治癒促進因子を用いた褥瘡患者の栄養管理. 日臨外会誌 63:1633-40,2002.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ringe1998/63/7/63_7_1633/_pdf




酸素を運ぶヘモグロビンの合成には鉄が必要です。

血液中の鉄分が不足すると赤血球の数が減少します。
酸素が皮膚や軟部組織への十分供給されなくなるため、皮膚や組織がもろく弱くなり褥瘡を招いてしまいやすくなります。

Bergstrom N, Braden B. A prospective study of pressure sore risk among institutionalized elderly. J Am Ceriatr Soc.40:744-58,1992
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1634717


鉄が腸管から吸収される量は最大で1日1mg程度です。

鉄は体の中に取り込まれると能動的に排泄される機構はありません。
腸管粘膜や皮膚の剥離などにより1日1mg程度が排泄され、吸収と排泄のバランスが保たれ一定の量が体内に存在しています。

出血などでそのバランスが崩れると貧血を起こしてしまいます。

他の微量栄養素と異なり、過剰な鉄を外へ排泄する機構がないことから、定期的に静脈投与によって補給することは問題があると指摘されています。

鉄の静脈投与に関しアメリカ静脈経腸栄養学会(ASPEN)のガイドラインでは、日常的に補給しないことが記載されています。

またヨーロッパ臨床栄養代謝学会 (ESPEN)のガイドラインでは、1.0~1.2mg/dayの投与にとどめることが推奨されています。

日本では、通常1日投与量として2mg/A製剤を用いることが多く、過剰となる可能性があります。


東海林 徹. 輸液製剤と微量元素―その意義と問題点―. JSPEN26:1077-1083、2011.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/26/4/26_4_1077/_pdf

Mirtallo J, Canada T, Johnson D, et al. Safe practices for parenteral nutrition. JPEN 28S: S52-S57, 2004.
http://pen.sagepub.com/content/28/6/S39.full.pdf

Braga M, Ljungqvist O, Soeters P, et al. ESPEN Guidelines on Parenteral Nutirition : Surgery. Clinical Nutrition 28,
http://espen.info/documents/0909/surgery.pdf


褥瘡患者さん、特に感染を伴う高度な炎症や酸化ストレスの存在が危惧される場合には、Harber-Weiss反応が活性化されヒドロキシルラジカルの産生が過剰となって、炎症が治りにくくなります。

日本人は鉄を摂り過ぎる経口にあるので鉄の補充に関しては十分に配慮する必要性があります。

検査では血清鉄濃度が組織濃度を反映しないので、血清フェリチン濃度の測定が推奨されます。





コラーゲンを作ったり、増やしたりするのをたすける働きがあります。

コラーゲンの材料のプロリン、リシンは水酸化酵素によって、三重らせん構造を形成することでコラーゲンになります。

この水酸化酵素が働くためには、ビタミンC、鉄、銅が必須です。

また、コラーゲンの量を増やすリシル酸化酵素という酵素がありますが、この酵素の働きを助けるのが銅です。

さらに、銅は造血に関与しています。銅が欠乏すると貧血を生じてしまいます。


プロリン、リシン
  |
  |水酸化酵素
  |    ↑
  ↓    銅、鉄、ビタミンC
コラーゲン



カルシウム

カルシウムは骨の材料だけでなく、コラーゲンの生成や組織の生成にも関与しています。
傷を治すにはカルシウムは欠かすことができない元素です。




抗酸化ビタミン


ビタミンA、C、Eは抗酸化作用を持つビタミンです。
酸化ストレスが存在する状態では炎症が長引き、傷が治りにくくなります。
細胞内の酸化ストレスを軽減し、傷を治りやすくするビタミンです。

ビタミンAはコラーゲン合成と免疫機能に重要な役割を持っています。
さらに上皮組織の細胞が正常な再生するように調節するはたらきがあります。

ビタミンCはコラーゲン生成に重要です。鉄の吸収促進やビタミンEの再利用にも関係しています。

ビタミンEは末梢血管を拡張し、血液循環を改善することで栄養や酸素を体の先まで届けてくれます。