タンパク質と褥瘡について以下の報告があります。
- 創部滲出液からのタンパク質喪失が低タンパク血症と関連している
- 十分なカロリーが投与されていても投与タンパク量が40g以下では、窒素平衡がプラスに改善するまで褥瘡治癒が始まらない
- タンパク質補給3~4日後、窒素出納がプラスに転じると褥瘡治癒が始まり、この際に血清アルブミン、総タンパク、体重の増加を伴う
Malholland, J.H. et al. Protein metabolism and bedsores. Ann. Surgery 118:1015-1023, 1943. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1617769/pdf/annsurg01465-0103.pdf
タンパク質をある程度多めに補給するグループと(エネルギー比16%)と超高タンパク質な食事を補給するグループ群(エネルギー比25%)で分けて褥瘡の治り具合を調査した研究があります。
その研究結果では、“エネルギー比25%”グループで褥瘡面積の減少が大きく、早期に治癒することが示されました。
タンパク質補給8週間目
完全治癒率
“エネルギー比16%”グループ・・・0%
“エネルギー比25%”グループ・・・66%
褥瘡サイズの減少率
“エネルギー比16%”グループ・・・42%
“エネルギー比25%”グループ・・・73%
但し、タンパク質をたくさん摂ればいいのかというと、決してそうではありません。
尿素窒素(BUN)が高値を呈するおそれがあり、高齢者では肝や腎障害などの基礎疾患に対し注意が必要と考えられます。
Chernoff, R.S. et al. The effect of a very highprotein liquid formula on decubitus ulcer healing in long-term tube-fed institutionalized patients. J.Am. Dietetic Assoc 90: A-130, 1990.
タンパクエネルギー低栄養状態のリスクが高い高齢者では特に、基礎代謝量の低下、味覚障害に伴う食欲の低下、下痢や嘔吐などの消化器症状の存在、除脂肪体重の減少 、環境因子(ストレス)の存在 、精神ならびに身体障害などがさらなるリスクファクターとなります。
高齢者における食欲の低下は、エネルギー摂取量のみでなく、タンパク質やビタミン、ミネラルの摂取量まで減少させます。
年をとると、食が細くなるというようなことはよくいわれますが、これらタンパク質やビタミン、ミネラルの必要量までが加齢とともに極端に低下するという確固たる根拠はありません。
事実 、施設入所の高齢者や点滴による栄養を受けている高齢者においてビタミンB1やビタミンCなどの欠乏症、特にB1欠乏による食欲不振、体重減少が指摘されています。
Itoh R, et al. Biochemical assessment of vitamin status in“healthy”elderly Japanese, relationship between intakes and biochemical measures of thiamine, riboflavin and ascorbic acids. Nutr Res Int 39: 509-519, 1989
さらに高齢の入院患者の4割は栄養不足に陥っているともいわれています。
ある臨床試験データによるとビタミンB1を投与することで食欲不振 や疲れやすさ、倦怠感の改善が得られました。
Smidt LJ, Cremin FM, Grivetti LE, et al. Influence of thiamin supplementation on the health and general well-being of an elderly Irish population with marginal thiamin deficiency. J Genterol 46: M16-22, 1991.http://geronj.oxfordjournals.org/content/46/1/M16.long
このように高齢者における潜在的なタンパク質やビタミンB1の欠乏が明らかになっています。