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2015年5月28日木曜日

乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン ジェービックVとエンセバックのちがい



ジェービックVとエンセバックの同じところ

有効成分


不活化日本脳炎ウイルス(北京株)を有効成分としています。


培養方法


ワクチンはウイルスを培養して製剤とします。その、ウイルスを増殖させる宿主として Vero 細胞を使用しています。


保存剤


チメロサール等の保存剤を含みません。


効果


ジェービックVの臨床試験の結果
 初回2回接種
  •   中和抗体陽転率は99.2%
  •   接種後平均中和抗体価は2.4±0.5

 3回接種
  •   中和抗体陽転率が100.0%
  •   接種後平均中和抗体価(log10)3.8±0.3


エンセバックの臨床試験の結果

 初回2回接種後
  •   中和抗体陽転率は100%
  •   接種後平均中和抗体価(log10)は2.575


 3回接種後
  •   中和抗体陽転率が100%
  •   接種後平均中和抗体価(log10)は3.866


ジェービックVとエンセバックの違い

培養後の精製方法


ジェービックV
 しょ糖密度勾配遠心法で精製

エンセバック
 しょ糖密度勾配遠心法に加え、クロマトグラフィー工程を経て精製

エンセバックのほうが精製に一手間かけています。


個装箱


ジェービックV
 プラスチック製のトレイに溶解液のバイアルと製剤のバイアルが入っています。
エンセバック
 溶解液のバイアルと製剤のバイアルがそのまま入っています。

ジェービックVのほうがかっちりしていて、バイアル同士の接触がないので割れたりの心配はないが、取り出しにくいです。
エンセバックは取り出しやすいですが、割れてしまわないか不安です。


キャップ


ジェービックV
 金具で固定されています。
エンセバック
 プラスチックの爪で留められています。
エンセバックのほうが少ない力でキャップを開けることができます。

化血研のインフルエンザやB型肝炎ワクチンのキャップも同じものを採用しているようです。

ビームゲン0.25mL・0.5mL バイアルキャップ変更のご案内(化血研)


製造、販売会社

ジェービックV
製造販売:一般財団法人阪大微生物病研究会
販売:武田薬品工業株式会社

エンセバック
製造販売:一般財団法人 化学及血清療法研究所
販売:アステラス製薬株式会社



異なるメーカーの日本脳炎ワクチンを摂取してもよいですか?

ジェービックVとエンセバック2つの異なるメーカーの細胞培養日本脳炎ワクチンの互換性については、確認されていません。

しかし、定期接種実施要領には、標準的接種スケジュールの場合、あるいは積極的勧奨の差し控えの影響で接種未完了の方が残りの回数を受ける場合のいずれにおいても。乾燥培養日本脳炎ワクチンを使用して規定の回数を接種することが定められています。

異なるメーカーであれ細胞培養ワクチンを使用して、規定の回数の接種を完了することが重要と考えられます。


2015年5月27日水曜日

イリボー(ラモセトロン塩酸塩)錠が女性にも処方可能に





2015年5月26日イリボー錠が女性の下痢型過敏性腸症候群の治療に使用することが可能になりました。

効能・効果、用法・用量及び使用上の注意改訂のお知らせ(アステラス製薬)
https://med.astellas.jp/jp/provide.aspx?path=/med/jp/emergency/shiyo/shiyo-20150527070000.pdf


イリボー(ラモセトロン塩酸塩)は選択的セロトニン 5-HT3受容体拮抗薬です。

腸管に存在する 5-HT3 受容体を阻害することにより、排便亢進や下痢を抑制します。

イリボーは2008年7月にフィルムコーティング錠、2013年8月に口腔内崩壊錠が「男性における下痢型過敏性腸症候群」を効能・効果として承認されました。

最初に医薬品製造販売承認を申請時には、女性にも使用できるように申請していたようですが、女性における薬物動態、有効性及び有害事象の発現割合が男性と異なる傾向が認められたため、国がメーカーに対し「女性における」使用については再検討を指示したという経緯があります。

イリボー錠 2.5μg 及び 5μg 審査報告書(平成20年4月10日)
http://www.info.pmda.go.jp/shinyaku/P200800026/80012600_22000AMX01708_A100_1.pdf


今回、「女性における」使用については再検討を行い、男性とは異なる用法用量を設定し、承認されました。


過敏性腸症候群

過敏性腸症候群は、腹痛や腹部不快感をともなう下痢や便秘などの便通異常が慢性的にくり返される疾患のことです。
血液検査や内視鏡検査でも異常が見つからず、原因は不明です。

その病態には消化管運動の異常、内臓知覚過敏、心理社会的要因やストレスなど様々な要因が関与していると考えられています。

機能性消化管障害に関する国際的なワーキンググループである Rome 委員会が提唱するRomeIII基準において、過敏性腸症候群は便形状に基づき、下痢型、便秘型、混合型及び分類不能型にサブタイプ分類されています。

Rome III: The Functional Gastrointestinal Disorders 3rd ed.(Degnon Associates, Inc〈McLean〉): 490-509, 2006
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2701540/

Longstreth GF et al.,Functional bowel disorders. Gastroenterology 130; 1480-1491, 2006
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16678561


日本での下痢型過敏性腸症候群の治療について、「機能性消化管疾患診療ガイドライン 2014―過敏性腸症候群(IBS)」(日本消化器病学会編、南江堂、2014 年)が発行されています。

http://www.nankodo.co.jp/g/g9784524265572/

これによると、まずは食事及び生活指導を行い、必要に応じて薬剤を投与するとされています。

薬剤治療としては、プロバイオティクス・高分子重合体、消化管機能調節薬の他、男性に対しては5-HT受容体拮抗薬が推奨されています。


イリボー(ラモセトロン塩酸塩)の作用機序


セロトニンにより腸管神経節上に存在する5-HT3受容体が活性化すると、腸管の収縮・運動及び水分分泌が促進されます。

下痢型過敏性腸症候群の患者さんでは健康な人と比べて食後のセロトニン分泌が亢進している場合があることが報告されています。

つまり、出すぎたセロトニンが受容体にくっつくのを邪魔して、腸管の収縮・運動及び水分分泌を抑制することで下痢をとめたり腸の働きを良くしたりします。

Hansen MB. The enteric nervous system III: a target for pharmacological treatment. Pharmacol Toxicol 93: 1-13, 2003
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12828568

Siriwardena AK et al., A 5-HT3 receptor agonist induces neurally mediated chloride transport in rat distal colon.J Surg Res 55: 55-59, 1993
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8412082

C Bearcroft, D Perrett, and M Farthing. Postprandial plasma 5-hydroxytryptamine in diarrhoea predominant irritable bowel syndrome: a pilot study. Gut 42: 42-46, 1998
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1726971/


女性の過敏性腸症候群


お腹ゴロゴロ!過敏性腸症状群(IBS)に悩む女性は男性の2倍 | 「マイナビウーマン」

IBSに悩む女性は男性の2倍で、いつでもなりうる症状ですが多くの場合20代から30代で始まるようです。




過敏性腸症候群は病因・病態に男女差があることが知られています。

この要因には、ストレスに対する反応行動、性ホルモン、内臓知覚痛の中枢神経系活性化の違いなどがあり、多くの臨床的及び生理的反応性の違いを生み出していると考えられています。

セロトニンは過敏性腸症候群に関連した消化管運動障害において重要な役割を果たしていることが知られています。

下痢型過敏性腸症候群患者さんでは食後のセロトニン血中濃度の上昇が関与している可能性が報告されています。

女性はエストロゲンやプロゲステロンが低くなる月経期に血中セロトニン濃度が上昇します。

女性の過敏性腸症候群患者さんでは卵巣ホルモンがセロトニンを介し、消化管運動の変化に関与していると言われています。

また、女性の過敏性腸症候群患者さんでは卵巣ホルモン(エストロゲン)が少なくなる月経期に腹痛知覚の増加が観察され、エストロゲンが増えてくる排卵期に痛みが和らぐことから、エストロゲンに腹痛知覚に対する抑制効果があると考えられています。

さらに、セロトニン神経系は末梢における消化管の感受性や痛みに関連した情動回路の調整をおこない、痛みに関連した過敏性腸症候群の症状における男女差に関与している可能性も報告されています。


Mathieu M and Julien M. Gender-related differences in irritable bowel syndrome: Potential mechanisms of sex hormones. World J Gastroenterol 20: 6725-6743, 2014
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4051914/


女性と男性では薬の使い方が違います。


男性
5μg を 1 日 1 回経口投与。 
症状によって投与量を増やしたり減らしたりできますが、1 日最高投与量は 10μg まです。

女性
2.5μg を 1 日 1 回経口投与。 
効果不十分の場合には増やすことができますが、1 日最高投与量は 5μgまでです。


用量調整を行う場合は 1 ヵ月程度の症状推移を確認しなければなりません。

つまり、薬を飲んですぐ効果が無いからといって飲むのをやめたりするのではなく、最低でも1ヶ月は飲み続ける必要があります。

また、今日は「お腹が痛くないから飲まない」というような症状変化に合わせて飲んだり飲まなかったり、頻繁に用量を調整することを行ってはいけません。



安全性について

うんちが硬くなりすぎたり、便秘や腹部膨満感が副作用としてあらわれることがあります。

臨床試験では、いずれも軽度又は中等度のもので、薬を中止することで症状は回復しています。

アメリカにおいて、類似の5-TH3受容体拮抗薬で「虚血性大腸炎」が発現するおそれがあるという報告がされているので、万が一、ひどい腹痛、血便がみられるようであれば、お医者さんに相談しましょう。

Lin Chang MD et al,. Ischemic Colitis and Complications of Constipation Associated With the Use of Alosetron Under a Risk Management Plan: Clinical Characteristics, Outcomes, and Incidences. Am J Gastroenterol 105: 866-875, 2010
http://www.nature.com/ajg/journal/v105/n4/full/ajg201025a.html



2015年5月21日木曜日

なぜ、肝臓が悪いとかゆくなる?





胆汁は肝細胞でつくられ、胆道系を通って十二指腸に排泄されます。肝炎、肝硬変、閉塞性黄疸などではしばしばこの経路のどこかで胆汁の流れが阻害されることがあります。

この状態を状態を胆汁うっ滞といいます。

胆汁うっ滞では胆汁の成分が肝臓内や胆管内に停滞し、さらには血液中に漏れ出します。

胆汁うっ滞の患者さんに、全身のかゆみを訴える方が多くいらっしゃいます。


では、胆汁うっ滞の重症度とかゆみの強さの度合いは相関するのでしょうか。

答えはNOです。

相関しません。

そのほか、かゆみの強さは、皮膚や血清胆汁酸のレベルとも相関しません。


肝臓が悪い患者さんで見られるかゆみの特徴


一般的によく使われる痒み止めである抗ヒスタミン薬が効かないということがあります。

かゆい部分を見ても、皮膚が膨らんでいたり、赤くなっていたりすることはありません。

かゆい部分をいくら掻いても、その感覚はなくなりません。

掻いているときは気持ちよさも若干あるのですが、掻くのをやめると、痛みが襲ってきます。


慢性肝疾患患者さんのかゆみのメカニズム


原発性胆汁性肝硬変の患者さんにオピオイド受容体拮抗薬のナロキソンを投与すると痒みが抑制されることが知られています。

このことから、慢性肝疾患患者さんのかゆみにはオピオイドμ受容体の活性化が関与しているといわれています。


オピオイド受容体にはμ(ミュー)とκ(カッパー)の2種類が存在しています。

  μ受容体が活性化するとかゆみが誘発されます。

  κ受容体が活性化するとかゆみが抑制されます。


通常では、どちらの受容体も均衡を保っているのですが、かゆみの発言時にはμ受容体の活性が有意になっています。





そこで、かゆみを抑えるにはどうしたらよいでしょうか。


κ受容体を活性化させ、再びμとκの受容体の均衡を元に戻すことができれば、かゆみは治まります。


κ受容体を刺激して活性化させる薬がナルフラフィン(ノピコール、レミッチ)です。





関連:




肝臓病とかゆみ




慢性肝炎、肝硬変そして難病指定の原発性胆汁性肝硬変の患者さんの多くに、かゆみを訴えられる方がいらっしゃいます。

このかゆみは抗ヒスタミン薬などがほとんど効かない「難治性のそう痒症」といわれています。


難治性のそう痒症を患っている患者さんは、居ても立ってもいられないかゆみに悩まされ、生活の質は低下し、肉体的・精神的にボロボロになってます。


肝臓病の患者さんのうちどのくらいの割合でかゆみを感じておられるのでしょうか?


日本肝臓病患者団体協議会が肝炎患者さんに行ったアンケートによると、22.4%の方がかゆみを感じておられるという結果でした。




肝炎患者の生活実態と意見(日本肝臓病患者団体協議会)
http://homepage2.nifty.com/t73/_src/sc1566/ankeito.pdf


かゆみで眠れないから困るんです!


アメリカの患者団体の調査によると、原発性胆汁性肝硬変患者さんの半数がかゆみを感じておられ、そのかゆみを感じておられる方の4人に3人が、かゆみによって睡眠が妨げられているという結果が明らかにされました。

Rishe E, Azarm A, Bergasa NV. Itch in primary biliary cirrhosis: a patients' perspective. Acta Derm Venereol. 2008; 88 (1): 34-7
http://www.medicaljournals.se/acta/content/?doi=10.2340/00015555-0350


また、原発性胆汁性肝硬変患者さんや肝硬変の患者さんは、他の健康な方と比べて寝る時間が遅く、さらに入眠までにかかる時間が有意に延長していることが報告されています。

この要因の一つに、「かゆみ」があるのではないかと示唆されています。

Montagnese S, Nsemi LM, Cazzagon N, et al. Sleep-wake profiles in patients with primary biliary cirrhosis. Liver Int 2013; 33:203-9
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/liv.12026/abstract;jsessionid=4B72E6811D817043D9893E0E2A7A7024.f02t03





関連:




2015年5月19日火曜日

微量元素と抗酸化ビタミンは褥瘡の予防と治療に関係する栄養素




微量元素


亜鉛

亜鉛は多くの酵素活性および酵素構造の維持に不可欠な微量元素です。

特に創傷治癒に関与しています。

DNAおよびRNAポリメラーゼ、DNA転写因子など核酸やタンパク合成に必須です。
細胞を再生させるために必要な元素なのです。

さらに過剰な活性酸素を消去する抗酸化酵素 Cu/Zn-SODの構成因子としての役割を担っています。

田中芳明ら. 創傷治癒促進因子を用いた褥瘡患者の栄養管理. 日臨外会誌 63:1633-40,2002.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ringe1998/63/7/63_7_1633/_pdf




酸素を運ぶヘモグロビンの合成には鉄が必要です。

血液中の鉄分が不足すると赤血球の数が減少します。
酸素が皮膚や軟部組織への十分供給されなくなるため、皮膚や組織がもろく弱くなり褥瘡を招いてしまいやすくなります。

Bergstrom N, Braden B. A prospective study of pressure sore risk among institutionalized elderly. J Am Ceriatr Soc.40:744-58,1992
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1634717


鉄が腸管から吸収される量は最大で1日1mg程度です。

鉄は体の中に取り込まれると能動的に排泄される機構はありません。
腸管粘膜や皮膚の剥離などにより1日1mg程度が排泄され、吸収と排泄のバランスが保たれ一定の量が体内に存在しています。

出血などでそのバランスが崩れると貧血を起こしてしまいます。

他の微量栄養素と異なり、過剰な鉄を外へ排泄する機構がないことから、定期的に静脈投与によって補給することは問題があると指摘されています。

鉄の静脈投与に関しアメリカ静脈経腸栄養学会(ASPEN)のガイドラインでは、日常的に補給しないことが記載されています。

またヨーロッパ臨床栄養代謝学会 (ESPEN)のガイドラインでは、1.0~1.2mg/dayの投与にとどめることが推奨されています。

日本では、通常1日投与量として2mg/A製剤を用いることが多く、過剰となる可能性があります。


東海林 徹. 輸液製剤と微量元素―その意義と問題点―. JSPEN26:1077-1083、2011.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/26/4/26_4_1077/_pdf

Mirtallo J, Canada T, Johnson D, et al. Safe practices for parenteral nutrition. JPEN 28S: S52-S57, 2004.
http://pen.sagepub.com/content/28/6/S39.full.pdf

Braga M, Ljungqvist O, Soeters P, et al. ESPEN Guidelines on Parenteral Nutirition : Surgery. Clinical Nutrition 28,
http://espen.info/documents/0909/surgery.pdf


褥瘡患者さん、特に感染を伴う高度な炎症や酸化ストレスの存在が危惧される場合には、Harber-Weiss反応が活性化されヒドロキシルラジカルの産生が過剰となって、炎症が治りにくくなります。

日本人は鉄を摂り過ぎる経口にあるので鉄の補充に関しては十分に配慮する必要性があります。

検査では血清鉄濃度が組織濃度を反映しないので、血清フェリチン濃度の測定が推奨されます。





コラーゲンを作ったり、増やしたりするのをたすける働きがあります。

コラーゲンの材料のプロリン、リシンは水酸化酵素によって、三重らせん構造を形成することでコラーゲンになります。

この水酸化酵素が働くためには、ビタミンC、鉄、銅が必須です。

また、コラーゲンの量を増やすリシル酸化酵素という酵素がありますが、この酵素の働きを助けるのが銅です。

さらに、銅は造血に関与しています。銅が欠乏すると貧血を生じてしまいます。


プロリン、リシン
  |
  |水酸化酵素
  |    ↑
  ↓    銅、鉄、ビタミンC
コラーゲン



カルシウム

カルシウムは骨の材料だけでなく、コラーゲンの生成や組織の生成にも関与しています。
傷を治すにはカルシウムは欠かすことができない元素です。




抗酸化ビタミン


ビタミンA、C、Eは抗酸化作用を持つビタミンです。
酸化ストレスが存在する状態では炎症が長引き、傷が治りにくくなります。
細胞内の酸化ストレスを軽減し、傷を治りやすくするビタミンです。

ビタミンAはコラーゲン合成と免疫機能に重要な役割を持っています。
さらに上皮組織の細胞が正常な再生するように調節するはたらきがあります。

ビタミンCはコラーゲン生成に重要です。鉄の吸収促進やビタミンEの再利用にも関係しています。

ビタミンEは末梢血管を拡張し、血液循環を改善することで栄養や酸素を体の先まで届けてくれます。





2015年5月13日水曜日

肺動脈性肺高血圧症 マシテンタン(オプスミット錠)





マシテンタンは、スイスのアクテリオン社が創製したスルファミド-ピリミジン誘導体のエンドセリン受容体拮抗薬です。

アメリカで2013年10月に「肺動脈性肺高血圧症」、ヨーロッパでは2013年12月に「肺動脈性肺高血圧症(WHO 機能分類クラスⅡ-Ⅲ)」の効能・効果で承認されている薬です。


マシテンタンは 肺動脈性肺高血圧症において活性化したエンドセリン-1 経路を阻害することで、血管を拡げ血圧を下げるはたらきがあると考えられています。


マシテンタンは、肺動脈性肺高血圧症治療薬の第一選択薬として期待される薬剤とされています。

また、PDE-5 阻害薬や経口 PGI2 製剤による治療をすでに受けている患者さんに対して追加した場合でも上乗せ効果が期待できる、併用療法に適した薬剤であると考えられています。



マシテンタンの特徴


マシテンタンの特徴はエンドセリンAとエンドセリンBの2つの受容体を阻害することと、他のエンドセリン受容体拮抗薬よりも、むくみの副作用が出にくいという点です。


エンドセリン受容体にはエンドセリンAとエンドセリンBの2つの受容体が存在します。

エンドセリンA受容体は主に血管平滑筋細胞上に発現し、血管収縮に関与しています。

一方、エンドセリンB受容体は主に血管内皮細胞及び血管平滑筋細胞上に発現しています。
血管内皮細胞は血管拡張に関与し、血管平滑筋細胞は血管収縮に関与しています。


肺動脈性肺高血圧症の病態下においては、血管内皮細胞の機能が障害され、血管を拡げる作用のある一酸化窒素産生が低下することによりエンドセリンB受容体を介した血管拡張が減弱しています。

一方で、血管平滑筋細胞上のエンドセリンB受容体がはたらくので、肺動脈性高血圧症の病態下におけるエンドセリンA及びエンドセリンB受容体はともに血管収縮の方向に機能していることになります。

Iglarz M et al.Vascular ETB Receptors Do Not Mediate Relaxation But Induce Vasoconstriction In Experimental Pulmonary Hypertension. Am J Respir Crit Care Med 189: A3344, 2014
http://www.atsjournals.org/doi/abs/10.1164/ajrccm-conference.2014.189.1_MeetingAbstracts.A3344


エンドセリンA受容体とエンドセリンB受容体2つを阻害するほうが、一つのみを阻害するよりも有効性が高いことは考えられると思います。


エンドセリンA受容体選択的アンタゴニスト投与すると、残ったエンドセリンB受容体に刺激がかたよることになり、長期にわたり刺激持続することによって血管透過性亢進物質の産生を介した浮腫等の有害事象の発現に繋がることが懸念されています。

実際、動物実験や臨床試験で、アンブリセンタン等のエンドセリンA受容体選択的アンタゴニストが体液貯留及び血管内皮細胞増殖因子(VEGF)による血管透過性を亢進させること、並びに血漿中バソプレシン濃度を上昇させることが報告されています。

Stuart D et al.Myocardial, smooth muscle, nephron, and collecting duct gene targeting reveals the organ sites of endothelin A receptor antagonist fluid retention. J Pharmacol Exp Ther 346 (2) : 182-9, 2013
http://jpet.aspetjournals.org/content/346/2/182.long

Vercauteren M et al.Vasopressin is involved in endothelin receptor antagonist-induced fluid retention in rat. Differential effect of selective ETA and dual ETA/ETB receptor antagonists. Eur Respir J 40: Suppl 56, 716s, 2012
http://erj.ersjournals.com/content/40/Suppl_56/P3898.abstract




マシテンタンは、エンドセリンA受容体選択的アンタゴニストに比べ、肺動脈性高血圧症病態下におけるエンドセリンB受容体による血管収縮に対しても効力を有することから、より高い有効性が期待でき、さらには浮腫などの有害事象の懸念も小さいことが期待されています。


既存エンドセリン受容体拮抗薬との比較

ボセンタン

ボセンタンは、胆汁酸塩排出ポンプを阻害します。

このことにより蓄積された胆汁酸塩が肝細胞障害を引き起こすため肝酵素値を上昇させることがあるとされている。

一方、マシテンタンは胆汁酸塩排出ポンプを介した肝障害作用は弱く臨床試験においてマシテンタンにより血清中胆汁酸塩の上昇を示す結果は得られませんでした。

マシテンタンは、ボセンタンで認められる肝酵素上昇のリスクはほとんどなく、肝酵素上昇によりボセンタンの投与ができなくなってしまった患者さんにおいても、新たな選択肢となる薬です。


アンブリセンタン

アンブリセンタンの副作用として、末梢性浮腫や肺水腫が知られています。

アンブリセンタンのようなエンドセリンA受容体拮抗薬での浮腫(むくみ)の原因は、阻害されていないエンドセリンB受容体が活性化することで一酸化窒素産生が起こります。

一酸化窒素は末梢血管透過性を亢進させ、肺胞上皮での肺胞液排泄を低下させることにより、末梢性浮腫や肺水腫を引き起こすと考えられています。

Iglarz M et al.Endothelial ETB Receptor Can Mediate Abnormal Vascular Permeability. Am J Respir Crit Care Med 187:A1716, 2013
http://www.atsjournals.org/doi/abs/10.1164/ajrccm-conference.2013.187.1_MeetingAbstracts.A1716

マシテンタンのようにエンドセリンAとエンドセリンB両受容体に結合し、阻害する薬剤はエンドセリンB受容体も阻害するので血管透過性亢進を抑制すると考えられ、肺水腫の発現を抑制することが期待できます。

むくみやすく、アンブリセンタンの投与ができない患者さんでも、安全に使用できる薬かもしれません。



肝障害に注意


マシテンタンの治験のデータでは重度の肝機能障害を発現する可能性は高くないことが示されています。

しかし、アメリカにおいては、肝機能障害の発現に関して添付文書の警告欄で注意喚起がなされています。
さらに投与開始前及び投与開始後も必要に応じて繰り返しの肝機能検査を義務付けられています。

また、ヨーロッパにおいては、中等度の肝機能障害患者に対しては本剤の投与は推奨されていません。
そして、投与開始前及び投与開始後も月に1回の血清アミノトランスフェラーゼ測定を義務付けられています。


貧血に注意


国内外の臨床試験では、100人に4人程度に貧血、ヘモグロビン減少が起こることが示されました。
肺動脈性肺高血圧症患者さんは、抗凝固薬が投与されている場合が多く、多くの患者さんで出血リスクが高いと考えられます。

出血や出血に起因する貧血に関する注意が必要です。

定期的なヘモグロビン濃度測定を実施することで大事になるのを防ぎましょう。


低血圧に注意


効果の裏返しなので仕方ない・・・とは言えません。

国内外臨床試験では、他の肺血管拡張薬と同様に低血圧に関連する有害事象が認められました。

低血圧に関するリスクについては、腎機能障害を有する患者さんや、もともと低血圧の傾向が見られる患者さん(収縮期血圧 90 mmHg 未満)、そして血管拡張作用により病態が増悪する可能性のある特定の基礎疾患(体液減少、重度左室流出路閉塞、自律神経障害等)を有する患者さん慎重に投与される必要があります。



オプスミット錠10mg

[効能・効果]
肺動脈性肺高血圧症

[用法・用量]
 通常、成人には、マシテンタンとして10 mgを1日1回経口投与する。




関連:

2015年5月12日火曜日

肺動脈性肺高血圧症(PAH)





肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、血管の病気です。肺と心臓をつなぐ血管の内側が狭くなったりエンドセリン受容体を介した血管が上手く拡がらない障害を生じる血管障害です。

血管の内皮細胞と平滑筋細胞との相互作用の異常により、血管収縮、血管平滑筋細胞増殖、血管内皮増殖及び血栓などを生じます。

プロスタサイクリン経路、一酸化窒素経路、活性化したエンドセリン-1経路が病態に重要な役割を果たしていると考えられています。


肺動脈性肺高血圧症と診断をうけた後の患者さんの平均生存期間は4~5年といわれています。

Kawut SM et al.New predictors of outcome in idiopathic pulmonary arterial hypertension. Am J Cardiol 95(2):199-203, 2005
http://www.ajconline.org/article/S0002-9149(04)01524-3/abstract

Humbert M et al.Survival in incident and prevalent cohorts of patients with pulmonary arterial hypertension. Eur Respir J 36(3): 549-555, 2010
http://erj.ersjournals.com/content/36/3/549.abstract

Benza RL et al.An evaluation of long-term survival from time of diagnosis in pulmonary arterial hypertension from the REVEAL Registry. Chest 142(2): 448-456, 2012
http://journal.publications.chestnet.org/data/Journals/CHEST/24699/448.pdf




肺動脈性肺高血圧症 情報提供サイト PAH.jp(グラクソ・スミスクライン)
http://pah.jp/index.html

肺動脈性肺高血圧症は、心臓から肺に血液を送る血管(肺動脈)の末梢の小動脈の内腔が狭くなって血液が通りにくくなり、肺動脈の血圧(肺動脈圧)が高くなる病気です。 
心臓の中でも、肺動脈に血液を送る室を右心室といいます。 
この右心室は高い圧力に耐えられるようにできていないため、肺動脈圧の高い状態が続くと機能が低下してしまいます(右心不全)。 
長い間の研究で、さまざまな治療薬が試みられていましたが、最近、肺血管を拡張させる薬が開発され、治療効果も上がってきています。


肺動脈性肺高血圧症 難病情報センター
http://www.nanbyou.or.jp/entry/171

何故このような病気が起こるのかは解明されていません。 
この病気の原因解明が必要であり、有効な治療法の研究開発のため、「肺動脈性肺高血圧症(PAH)」は「難治性呼吸器疾患(指定難病)」に認定されています。


特定非営利活動法人 PAHの会
http://www.pha-japan.ne.jp/



肺動脈性肺高血圧症の治療


最新の肺高血圧症に関するガイドラインには、2013年に開催された第5回肺高血圧症世界シンポジウム(ニース)での議事録を集約した米国心臓病学会誌のガイドラインや欧州心臓病学会(European Society of Cardiology: ESC)及び欧州呼吸器病学会(European Respiratory Society: ERS)が作成した肺高血圧症診断・治療アルゴリズムがあります。

Galie N et al.Updated Treatment Algorithm of Pulmonary Arterial Hypertension. J Am Coll Cardiol 62(25 Suppl D): D60?72, 2013
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0735109713058749


日本では、日本循環器学会が日本呼吸器学会や日本リウマチ学会、日本胸部外科学会など関連学会の協力を得て 1999年から 2000 年にかけて初版ガイドラインを発出し、その後2006年及び2012年に部分改訂を行っています。

基本的には最新の欧米ガイドラインに準拠して作成されているようです。

肺高血圧症治療ガイドライン 2012 年改訂版(2011 年度合同研究班報告)
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2012_nakanishi_h.pdf


肺動脈性肺高血圧症の治療ではエンドセリン経路、一酸化窒素経路及びプロスタサイクリン経路の 3 系統の治療薬を中心に使用しています。

単剤で治療を開始し、効果が不十分な場合は残る2つの異なる系統の薬剤を追加する併用療法が推奨されています。


近年では肺動脈性肺高血圧症の治療環境は急速に改善しています。


しかし完治させる方法は依然として肺移植以外にはありません。

肺移植や PGI2製剤の静脈内持続投与に至る前に経口治療薬で病態をコントロールし、肺動脈性肺高血圧症の疾患重症度を示す WHO機能分類がクラスⅢ又はⅣの患者をクラスⅠ又はⅡの状態に改善させること、もしくはクラスⅠ又はⅡの患者がその状態を維持することが治療の目標とされています。

McLaughlin VV et al.Treatment goals of pulmonary hypertension. J Am Coll Cardiol 62: D73?81, 2013
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0735109713058774

Barst RJ et al.Updated evidence-based treatment algorithm in pulmonary arterial hypertension.
 J Am Coll Cardiol 54(1 Suppl S): S78-84, 2009
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3686287/


経口のエンドセリン受容体拮抗薬であるボセンタン(トラクリア)、アンブリセンタン(ヴォリブリス)そしてマシテンタン(オプスミット)は、最新の治療アルゴリズムにおいて WHO 機能分類クラスⅡ及びⅢの 肺動脈性肺高血圧症患者さんに対して最も高い推奨度の治療薬として位置付けられています。


関連:
肺高血圧症の治療 | YG研究会 賢く生きる

2015年5月11日月曜日

ツイートまとめ 無資格調剤の反響




無資格調剤の現場、録音に 薬剤師「量って」、事務員が飲み薬配合:朝日新聞デジタル

朝日新聞は、薬剤師法が禁じる無資格調剤の様子が録音された音声記録を入手した。薬剤師資格のない事務員が飲み薬を作るなどしている記録は、昨年11月から今年3月まで続き、調剤の様子だけでなく、患者とのやりとりも含まれている。




朝日新聞がファーマライズホールディングス傘下の薬局1店舗で薬剤師資格のない事務員が飲み薬を作るなどしていた無資格調剤行為をスクープしました。

その後同ホールディングスは陳謝しました。



アルギニンとグルタミンは褥瘡の予防と治療に関係する栄養素



アルギニンを2週間経口投与した臨床試験では創傷治癒と免疫応答の改善が示されました。

Kirk SJ, Hurson M, Regan MC et al. Argunine stimulates wound healing and immune function in elderly human beings. Surgery 114: 155-160, 1993

創傷部位に挿入したカテーテルにおけるヒドロキシプロリン集積と総タンパク含有量が著明に
増加し、マイトゲン刺激同種異型刺激に対する末梢血リンパ球の反応が大きく、インスリン様成長因子-1の濃度が著明に上昇しました。




アルギニンの創傷治癒と免疫応答の改善は以下の2つの作用が関わっていると考えられています。


アルギニンの成長ホルモン分泌促進作用

アルギニンは視床下部-下垂体系に作用して成長ホルモンやインスリン様成長因子-1などの分泌を刺激します。

成長ホルモンには、タンパク合成促進作用や筋細胞へのアミノ酸の取り込みを促進する作用があるといわれています。




アルギニンのプロリン、ポリアミン合成

アルギニンはアルギナーゼの作用により、オルニチンへ変換される。

オルニチンは、コラーゲンの合成に必要なプロリンへ変換され創傷治癒に働く。

また、オルニチンは細胞の成長因子であるポリアミンへ変換され、組織の形成や分裂に関わる。



アルギニン

|←アルギナーゼ

オルニチン→ポリアミン(細胞の成長因子)

プロリン

コラーゲン合成、創傷治癒


Rodwell  VW.  Chapter  30,  Conversion  of  amino  acids  to  specialized  products.  In  Harper`s  Illustrated Biochemistry  27th  Edition.  Edited  by  Murray  RK.  Granner  DK.  Rodwell  VW.  LANGE  medical  books/McGraw-Hill. NY.USA, 2006, p270-280



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2015年5月9日土曜日

褥瘡介護にオススメのタンパク質、ビタミンB群強化製品








  • 高齢者の栄養に特に配慮したビタミンB1補給飲料です。
  • 「ビタミンB1は炭水化物からのエネルギー産生と皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。」
  • 高齢の方が好まれる味付けに工夫。
  • 少量なので無理なく経口摂取。
  • 少量でエネルギー補充(200kcal/125mL)。
  • ビタミンB110mg。
  • 栄養機能食品(ビタミンB1)。




特に高齢者で潜在的欠乏症を呈する場合が多い糖代謝に必須のビタミンB1強化しています。

1パックで日本人の食事摂取基準の10倍(10mg)量が摂取できます。

また、抗酸化やATP産生に必須のビタミンB2も食事摂取基準の5倍( 5 m g )含んでいます。

さらに水溶性ビタミンは1パックで食事摂取基準の50%を満たすことができます。

その結果、食欲不振の改善、体重減少の改善、予防が期待できます。







  • 高たんぱく質組成で、たんぱく質のエネルギー比率は22%です。
  • 効率的なエネルギー補給/エネルギー産生に配慮した栄養組成です。
  • 1日あたり1,000mL(1,000kcal)を標準的な摂取量とし、「日本人の食事摂取基準(2010年版)に準拠した組成です。
  • グルタミンペプチド、食物繊維(ガラクトマンナン)、乳果オリゴ糖を配合しています。
  • バッグは、扱いやすい開口部付きです。
  • ビタミンB群、β-カロテン、ビタミンE、ビタミンC、亜鉛、セレンを高配合しています。
  • エネルギー効率のよい中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)を配合しています。


タンパク質のエネルギー比率を22%と高めています。

タンパク合成を促進させるグルタミン、亜鉛を強化するだけでなく、高齢者では摂取量が低下する抗酸化ビタミンやミネラルを多く含有する製品です。


関連:

タンパク質とビタミンBは褥瘡の予防と治療に関係する栄養素 | YG研究会 賢く生きる



2015年5月8日金曜日

タンパク質とビタミンBは褥瘡の予防と治療に関係する栄養素




タンパク質と褥瘡について以下の報告があります。
  1. 創部滲出液からのタンパク質喪失が低タンパク血症と関連している
  2. 十分なカロリーが投与されていても投与タンパク量が40g以下では、窒素平衡がプラスに改善するまで褥瘡治癒が始まらない
  3. タンパク質補給3~4日後、窒素出納がプラスに転じると褥瘡治癒が始まり、この際に血清アルブミン、総タンパク、体重の増加を伴う
 Malholland, J.H. et al. Protein metabolism and bedsores. Ann. Surgery 118:1015-1023, 1943. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1617769/pdf/annsurg01465-0103.pdf


タンパク質をある程度多めに補給するグループと(エネルギー比16%)と超高タンパク質な食事を補給するグループ群(エネルギー比25%)で分けて褥瘡の治り具合を調査した研究があります。

その研究結果では、“エネルギー比25%”グループで褥瘡面積の減少が大きく、早期に治癒することが示されました。

タンパク質補給8週間目
 完全治癒率
 “エネルギー比16%”グループ・・・0%
 “エネルギー比25%”グループ・・・66%

 褥瘡サイズの減少率
 “エネルギー比16%”グループ・・・42%
 “エネルギー比25%”グループ・・・73%


但し、タンパク質をたくさん摂ればいいのかというと、決してそうではありません。

尿素窒素(BUN)が高値を呈するおそれがあり、高齢者では肝や腎障害などの基礎疾患に対し注意が必要と考えられます。

Chernoff, R.S. et al. The effect of a very highprotein liquid formula on decubitus ulcer healing in long-term tube-fed institutionalized patients. J.Am. Dietetic Assoc 90: A-130, 1990.
  
タンパクエネルギー低栄養状態のリスクが高い高齢者では特に、基礎代謝量の低下、味覚障害に伴う食欲の低下、下痢や嘔吐などの消化器症状の存在、除脂肪体重の減少 、環境因子(ストレス)の存在 、精神ならびに身体障害などがさらなるリスクファクターとなります。

高齢者における食欲の低下は、エネルギー摂取量のみでなく、タンパク質やビタミン、ミネラルの摂取量まで減少させます。

年をとると、食が細くなるというようなことはよくいわれますが、これらタンパク質やビタミン、ミネラルの必要量までが加齢とともに極端に低下するという確固たる根拠はありません。

事実 、施設入所の高齢者や点滴による栄養を受けている高齢者においてビタミンB1やビタミンCなどの欠乏症、特にB1欠乏による食欲不振、体重減少が指摘されています。

Itoh R, et al. Biochemical assessment of vitamin status in“healthy”elderly Japanese, relationship between intakes and biochemical measures of thiamine, riboflavin and ascorbic acids. Nutr Res Int 39: 509-519, 1989

さらに高齢の入院患者の4割は栄養不足に陥っているともいわれています。

ある臨床試験データによるとビタミンB1を投与することで食欲不振 や疲れやすさ、倦怠感の改善が得られました。

Smidt LJ, Cremin FM, Grivetti LE, et al. Influence of thiamin supplementation on the health and general well-being of an elderly Irish population with marginal thiamin deficiency. J Genterol 46: M16-22, 1991.http://geronj.oxfordjournals.org/content/46/1/M16.long

このように高齢者における潜在的なタンパク質やビタミンB1の欠乏が明らかになっています。



2015年5月3日日曜日

レボフロキサシン(クラビット)と整腸剤の選択





耐性乳酸菌製剤はクラビット(レボフロキサシン)などのニューキノロン系投与時の腸内細菌叢の異常による諸症状に対して適応を取得していないので、レセプト審査上査定を受けます。


耐性乳酸菌製剤にニューキノロンの組み合わせで査定 
http://yakuza-14.blogspot.jp/2015/05/blog-post_3.html




ニューキノロン系抗菌剤投与時の整腸剤は何を選択すればよいでしょうか?


酪酸菌製剤(ミヤBM)を使う

酪酸菌製剤は抗菌剤に対して耐性を持つよう作られていませんが、芽胞というバリアを形成するので、抗生物質投与時の下痢発症に対する予防・治療効果が報告されています。

山崎喜久雄,他,抗生物質併用がミヤ BM 細粒(宮入菌)に及ぼす影響についての基礎的検討,新薬と臨床,45, 871-876 (1996).


また酪酸菌製剤の適応は、腸内菌叢の異常による諸症状の改善なので保険上もクリアです。

しかし、ニューキノロンに対しての臨床効果についてはほとんど検討されていません。

通常乳酸菌製剤を使う

通常乳酸菌製剤の適応は、腸内菌叢の異常による諸症状の改善なので、ニューキノロンの併用にかかわらず整腸剤として使用できます。

しかし、抗菌剤による乳酸菌への影響を考慮し、服薬時間をずらす方法が考えられます。

抗菌剤の消化管内濃度がMIC 以下になった時間に乳酸菌製剤を服用すれば消化器症状の改善効果は期待できます。

例えば、アルミニウム含有製剤とレボフロキサシンを併用する場合は、1~2時間程度服用時間を空けて服用するように添付文書に明記されています。

同様にニューキノロン系抗菌薬と乳酸菌製剤の服用時間間隔をあけるのです。

ただし、消化管内の抗菌剤の動態についてはほとんど検討されていないので現時点では乳酸菌製剤を服用するタイミングを明確に示すことはできません。(1~2時間は目安になると思います)


抗菌薬を変更する

抗菌剤服用により消化器症状が出やすい患者さんの場合はニューキノロンからセフェム系など耐性乳酸菌製剤を使用できる抗菌剤へ変更するのも現実的です。

耐性乳酸菌製剤にニューキノロンの組み合わせで査定



※ラックビーR散は、テトラサイクリン系薬剤との併用は適応外です。


耐性乳酸菌製剤はクラビット(レボフロキサシン)などのニューキノロン系投与時の腸内細菌叢の異常による諸症状に対して適応を取得していないので、レセプト審査上査定を受けます。

この手のお話は、よく耳にします。

添付文書を見れば分かる話なのに、なぜなのでしょう。



耐性乳酸菌製剤は1970年代に開発され、ペニシリン系、セファロスポリン系、アミノグリコシド系、マクロライド系、テトラサイクリン系およびナリジクス酸投与時の腸内細菌叢の異常による諸症状に対する投与として添付文書上の適用となっています。

ニューキノロン系抗菌薬の先駆けともいわれるノルフロキサシンが登場したのが1980年ころです。


耐性乳酸菌製剤は1970年以降の新しい抗菌剤に対する耐性乳酸菌製剤の感受性について十分に検討されていません。


しかし、一部の医療関係者には耐性乳酸菌製剤はすべての抗菌薬に耐性を示すと認識しているようです。
江頭かの子 他、長崎大学医学部・歯学部附属病院における整腸剤適正使用への取り組み,薬学雑誌,126, 1155-1161 (2006).  
http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10069/8345/1/YAKUZA126_1155.pdf


また一部の医療書籍においてニューキノロン系抗菌薬と耐性乳酸菌製剤との併用の処方例が紹介されたこともニューキノロンと耐性乳酸菌との適応外の併用に影響していると思われます。

後藤秀美,今日の治療指針.2007 年版,医学書院,2007,356-357.
http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=20122



2015年5月2日土曜日

経口ステロイド薬の等価換算表







経口ステロイド薬は作用時間の違いでから大きく3つに分類されます。

短時間型のヒドロコルチゾン(コートリル)、

中間型のプレドニゾロン(プレドニン)、メチルプレドニゾロン(メドロール)、トリアムシノロン、

長時間型のデキサメタゾン(デカドロン)、ベタメタゾン(リンデロン)



通常、ヒドロコルチゾンの抗炎症力価(1mgあたりの炎症を抑える力)を1とすると、プレドニゾロンが4倍、メチルプレドニゾロンとトリアムシノロンが5倍、デキサメタゾンが25倍、ベタメタゾンが25~30倍といわれています。


プレドニゾロン5mgとメチルプレドニゾロン4mgとデキサメタゾン0.5mgとベタメタゾン0.5mgが同じ強さです。


表を見て分かるように、各種ステロイド剤の抗炎症作用の強さの違いを補正して、1錠の抗炎症作用はどの薬も同じ程度になるように用量規格(mg)が設定されています。


コートリルは例外でプレドニゾロン5mg 1錠=コートリル10mg 2錠です。



服用量を増減する際、1錠単位で行うか、錠剤を半分1/4に割るなど大変でしたが、1錠の単位量の少ないものもあります。


プレドニゾロン錠1mg、メドロール錠2mgなどです。


薬の取り違いには注意が必要です。




【参考】
ステロイドの換算表について、「『今日の治療薬』に記載されている内容と違う」とのご指摘を受けました。
ベタメタゾンやデキサメサゾンの抗炎症作用力価比には幅があります。
参考にする文献によって等価投与量にちがいが生じます。

南江堂 今日の治療薬2016
 







ベピオゲルやデュアック配合ゲルが効かない?





ベピオゲルが発売されて1ヶ月経ちました。

患者さんから早速、「効果が無いんだけど」とのお言葉が。


2週間で効果が無いと決め付けるのは、時期尚早です。

ベピオゲルの臨床試験では、2週間後の皮疹の減少率は20%くらいでした。
20%では、効果を実感できるには個人差があると思われます。



12週間、すなわち3ヶ月程度塗り続けて60%のニキビが減少したというデータがあるので、効果がないと決めつける前に、まずは3ヶ月塗り続けてください。

※薬を塗って痛みや痒み出て、症状が悪化するようならばお医者さんにご相談ください。



デュアック配合ゲルも同様です。

デュアック配合ゲルのほうがベピオゲルより効果が強いですので、効果の実感は早いと思います。




しかし、2ヶ月くらいは塗り続けないと、効果が出ない場合もあります。

デュアック配合ゲルの場合、3ヶ月塗って効果がなければ、違う治療法を考えます。



もちろん、日頃のスキンケアが効果の良し悪しに影響を与えます。まずは、お肌にストレスを与えないライフスタイルを心がけましょう。