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2015年4月15日水曜日

エビリファイ(アリピプラゾール)の注射




アリピプラゾール(エビリファイ)は、日本では「統合失調症」を効能・効果として 2006 年 1 月に承認されています。


また、2012 年 1 月に「双極性障害における躁症状の改善」が適応追加されました。

さらに2013 年 6 月に「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)」が追加で承認されています。

2015年3月に、4週に1回注射する「エビリファイ持続性水懸筋注用」が承認されました。


エビリファイ持続性水懸筋注用は、アリピプラゾール水和物を有効成分とし、1回の注射で効果が長く続くように工夫された水性懸濁筋肉内注射製剤です。


統合失調症の治療においては、初発時や急性期での治療だけでなく、維持期における精神症状の悪化及び再燃の予防も重要です。




アドヒアランスが低下した場合又は薬物治療を中止した場合には、再発率、入院のリスク並びに自殺のリスクが増加します。

三澤史斉,(2009)急性期治療における抗精神病薬非経口投与の現状と将来、 臨床精神薬理, 12: 1115-1123, http://www.seiwa-pb.co.jp/search/bo01/bo0103/bn/12/10index.html

Valenstein M et al, Pharmacy data identify poorly adherent patients with schizophrenia at increased risk for admission.Med Care, 40: 630-639, 2002
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12187177

Weiden PJ et al,Partial Compliance and Risk of Rehospitalization Among California Medicaid Patients With Schizophrenia. Psychiatr Serv, 55: 886-891,2004
http://ps.psychiatryonline.org/doi/full/10.1176/appi.ps.55.8.886

Herings RM et al,Increased suicide attempt rate among patients interrupting use of atypical antipsychotics. Pharmacoepidemiol Drug Saf, 12: 423-424, 2003
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12899119



また、1年間の治療予後に影響を与える大きな因子の1つがアドヒアランスであることが報告されています。

Schennach R et al,Predictors of relapse in the year after hospital discharge among patients with schizophrenia. Psychiatr Serv, 63: 87-90, 2012
http://ps.psychiatryonline.org/doi/full/10.1176/appi.ps.201100084




薬物治療のアドヒアランス向上の解決策の1つとして持効性注射剤の使用が考えられます。


なお、日本ではすでに統合失調症の効能・効果を有する持効性筋肉内注射剤が幾つか発売されています。

定型抗精神病薬

ハロペリドールデカン酸エステル(ネオペリドール、ハロマンス)

フルフェナジンデカン酸エステル(フルデカシン)

非定型抗精神病薬

リスペリドン(リスパダールコンスタ)

パリペリドンパルミチン酸エステル(ゼプリオン)


定型抗精神病薬の持効性注射剤については、錐体外路症状や倦怠感等の副作用の発現頻度が高く、持効性注射剤に関する海外診療ガイドラインでは、非定型抗精神病薬の使用が推奨されています。

Keith SJ, et al,Academic highlights: guidelines for the use of long-acting injectable atypical antipsychotics.J Clin Psychiatry. 65(1):120-31.2004
http://www.psychiatrist.com/JCP/article/Pages/2004/v65n01/v65n0121.aspx




したがって、より利便性と安全性の高い非定型抗精神病薬の持効性注射剤の開発が期待されていました。


海外では、すでに発売されています。

2013 年 2 月に米国で、2013 年 11 月に欧州で承認されています。

2014 年 6 月時点で34の国又は地域で統合失調症に係る効能・効果で承認されています。




使用にあたっての注意事項

急性期の治療や複数の抗精神病薬の併用を必要とするような不安定な患者には使用してはいけません。

エビリファイ持続性水懸筋注は持続性製剤であり、精神症状の再発及び再燃の予防を目的とする製剤ですし、また、一度投与すると直ちに薬物を体外に排除する方法がないためです。


過去にアリピプラゾールによる治療の経験がない場合には、まずエビリファイの経口剤を投与し、忍容性を確認した後、本剤を投与しましょう。


現在、エビリファイの経口剤以外の抗精神病薬を使用している患者さんでは、エビリファイの経口剤に切り替え、症状が安定した後に本剤を投与するほうがよいです。


初回投与後徐々に血漿中薬物濃度が上昇します。急には血中濃度が上がらないので、初回投与後は 2 週間を目処に、エビリファイの経口剤の併用を行いましょう。

併用の際は、経口アリピプラゾール製剤の用量に注意しましょう。
目安は、切り替え前の半分です。



CYP3A4 阻害剤及び/又は CYP2D6 阻害剤との併用に注意しましょう。

キニジン、パロキセチン等やイトラコナゾール、クラリスロマイシン等を併用する場合には、アリピプラゾールの血漿中濃度が上昇するおそれがあります。





エビリファイ持続性水懸筋注

[効能・効果]

統合失調症


[用法・用量]

通常、成人にはアリピプラゾールとして 1 回 400 mg を 4 週に 1 回臀部筋肉内に投与する。なお、症状、忍容性に応じて 1 回量 300 mg に減量すること。